著者
草田 義昭 瀬尾 茂人 竹中 要一 野口 眞三郎 松田 秀雄
雑誌
研究報告バイオ情報学(BIO) (ISSN:21888590)
巻号頁・発行日
vol.2016-BIO-45, no.7, pp.1-6, 2016-03-11

遺伝子発現プロファイルの臨床応用は,近年精力的に研究が行われている.しかしマイクロアレイを用いたデータ解析においては,”バッチ効果” を取り除くことが不可欠であり,さらに逐次サンプルが追加される臨床現場では,1 サンプル毎に正規化が完結することが求められている.我々は,ノンパラメトリックZ標準化 (NPZ) 法を提案し,既存の手法と比較検討を行った.まず,公共のデータベースからエストロゲン受容体 (ER) とヒト上皮増殖因子受容体 2 (HER2) の免疫組織化学 (IHC) 染色の結果を有する 2,813 症例 (24 データセット) のマイクロアレイの発現データを抽出した.続いて,CEL ファイルからバックグランド補正及び,log2 変換のみを行ったもの (Raw), 既存の 4 つの正規化法 [Microarray Suite 5.0(MAS5),frozen robust multiarray analysis (fRMA),radius minimax (RMX)]. に対して,下記の 6 つの数値変換 [無変換,シングルアレイ数値変換(RANK,,Z,NPZ,,YuGene),マルチアレイ数値変換 (ComBat)] を加えて,各々の ER と HER2 の IHC 染色の結果と mRNA の発現の一致率を比較した.シングルアレイ数値変換を行うことで IHC 染色と mRNA の発現の一致率は改善した.一方で,マルチアレイ数値変換は,主成分分析ではバッチ効果を他の手法に比して除去しているように図示されたが,実際には IHC 染色との一致率が低下していた.さらに,乳癌の予後と数値変換の検討の結果,MAS5 後に NPZ を加えることで,無変換,マルチアレイ数値変換と比べて 2 群の差が明瞭となった.今回,我々は乳癌のデータセットを用いて数値変換の与える影響について検討を行った.シングルアレイ数値変換を追加することで,臨床における発現データのバッチ効果の除去に有効である可能性が示唆された.
著者
山内 一輝 阿萬 裕久 川原 稔
雑誌
ウィンターワークショップ2016・イン・逗子 論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.41-42, 2016-01-28

本稿は,オープンソース開発における "開発者" に注目し,各開発者の各ソースファイルに対する貢献度を定量化する基準について提案を行っている.
著者
日暮 琢磨 中島 淳
出版者
横浜市立大学医学会
雑誌
横浜医学 = Yokohama Medical Journal (ISSN:03727726)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1・2, pp.35-46, 2017-05-30

大腸癌の罹患率,死亡率は本邦のみならず世界中で増加傾向であり対策が求められている.特定の栄養素や医薬品の投与によって癌を積極的に予防するという方法を化学予防というが,糖尿病の治療薬のひとつであるメトホルミンを用いた大腸癌の化学予防の取り組みを概説する.メトホルミンは複数の大規模疫学研究により内服者は非内服者と比較して大腸癌を含む種々の癌の発生が少ないことが報告されている.我々はこの事実に着目し,2つの大腸発癌モデルマウスを用いてメトホルミンの予防効果を実証し,その機序がAMPKの活性化とmTORの抑制にあることを示した.更にトランスレーショナルリサーチとして臨床研究を行い,大腸癌の代替指標であるヒト直腸にあるAberrant Crypt Foci が減少すること,ポリープ切除後の新規ポリープの発生を抑制することを,無作為比較試験を実施し報告した.大腸癌の罹患,死亡の抑制に向けて今後更なる発展が期待される.
著者
山口 光治 Koji Yamaguchi
雑誌
国際経営・文化研究 = Cross-cultural business and cultural studies (ISSN:13431412)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.111-123, 2014-03-01

Evidence Based Practice (EBP) appeared at the beginning of 1990s.Social workers have been required “Explanatory Power of Language for Practice” lately. Social work is a professional field. It means that its practice has to be based on theories and research; moreover, social workers have to explain the reasons why they provide the services for the clients. In order to make people aware of social work as a professional, social work practices need to be evidence based. This article has four purposes. First of all, the principles of EBP and introducing EBP to social work field are summarized. Second, significances of EBP in clinical social work are examined through a case of elder abuse. Also, this article clarifies what evidences are and considers how EBP should be applied in clinical social work field. Finally, how EBP works in social work field is examined; moreover, further issues of EBP in social work field are considered.
著者
遠藤 慶一
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.174-177, 2019-01-15

近年,高等教育機関では,PBL(Project-Based Learning:課題解決型学習)と呼ばれる教育手法が広まってきている.PBLは,「課題を発見し,解決する」というプロセスにより学ばせる教育手法であり,問題発見力,問題解決力などの向上に高い効果があると言われている.愛媛大学工学部情報工学科の分散処理システム研究室および愛媛大学大学院理工学研究科電子情報工学専攻ICTスペシャリスト育成コースでは,社会に実際に存在する課題を題材としたPBL(実課題PBL)を実施している.本稿では,分散処理システム研究室およびICTスペシャリスト育成コースで実施している実課題PBLの実例と,実施に際しての工夫点などを紹介する.
著者
古川 雅子
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.173, 2019-01-15

教育の情報化が加速する中で,学習管理システム(Learning Management System : LMS)等の教育プラットフォームに蓄積される膨大な学習ログを活用し,学習者の行動履歴を解析するラーニングアナリティクス(Learning Analytics:LA)と呼ばれる研究が世界中で活発になってきている.今後さらに学習ログの価値が見直され,LA が当たり前になったとき,教育改善のための試行錯誤は,個人的な経験則だけでなく客観的なデータと共通の理解に基づいたものになることが期待されるだろう.
著者
西 基 松下 悠里子 松久 佑美
雑誌
北海道医療大学看護福祉学部学会誌 = Journal of School of Nursing and Social Services, Health Sciences University of Hokkaido
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.41-43, 2007-03-31

2002年に厚生労働省が行った労働者健康状況調査の資料を基に,週休1日制と完全週休2日制の労働者の健康状態を比較した.資料にはそれぞれの集団の特徴の記述はなかったが,週休1日制の労働者の疲労部位の特徴はサービス関係の職種に似ていたものの,ストレスはサービス関係の職種より明らかに低く,特定の職種に偏った集団とは考えにくかった.週休1日制の労働者の平均年齢は,高血圧を有する者の割合から考えて,若くはなく,また,痛風や肝臓病が比較的多かったことから,比較的男性の多い集団と思われた.このような特徴は必ずしも良好な健康状態を担保しないにも拘わらず,週休1日制の労働者の,特に精神的な健康状態は,完全週休2日制の労働者より良好であった.連続した休日は精神的疲労の回復には必ずしも効率が良いとは限らない可能性が考えられた.
著者
新井 正一 土居 亮介 久志野 彰寛 大沼 雅明
出版者
純真学園大学
雑誌
純真学園大学雑誌 = Journal of Junshin Gakuen University, Faculty of Health Sciences (ISSN:21866481)
巻号頁・発行日
no.5, pp.75-80, 2016-03

要旨 : 2011年3月15日に発生した東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所事故によって放射性物質が放出された. 震災後., 原発より南に20km離れた福島県双葉郡広野町において., 震災後1年目の2012年3月および3年半後の2014年8月にダストサンプラーを用いて空気中浮遊塵を収集し., その中に含まれる放射性物質を同定., 量を算出した. その結果., 2012年3月時点では134-Csが9.26×10-7 Bq/l ., 137-Csが2.42×10-7 Bq/l 含まれていた. この空気を吸った場合の内部被ばくを算出すると0.95 μSv/年 となった. 2014年8月時点ではこれら放射性セシウムは検出限界以下となった. 被ばくには内部被ばく., 外部被ばくの合算で評価されるが., 本研究結果および他の先行論文の結果も踏まえて., 福島住民の年間被ばく線量は1mSv以下になることが示唆された. Abstract : Radioactive substances were released due to the accident at the Tokyo Electric Power Company Fukushima Daiichi Nuclear Power Station in relation to the Great East Japan Earthquake occurred in March 2011. After the earthquake disaster, we collected drifting dust in the air by using dust samplers in Futabagun Hironomachi, Fukushima, about 20km south of the nuclear power plant in March 2012, which was one year after the earthquake disaster, and in August 2014, which was three and half years after the earthquake disaster, and identified and calculated the concentration of radioactive substances. As a result, 9.26×10-7 Bq/l of 134-Cs were included and 1.39×10-6 Bq/l of 137-Cs were included. When internal exposure was calculated in case of breathing this air, it was 0.95 μSv/year. As of August 2014, especially radioactive cesium among these radioactive substances was the below detection limit.Radiation exposure is evaluated by the total of internal and external exposures, and in consideration of the results of this research and the precedent researches, it was suggested that the annual radiation exposure level of the residents in Fukushima was below 1mSv.
著者
伊東 めぐみ
雑誌
四條畷学園短期大学紀要 = Annual reports of Shijonawate Gakuen Junior College
巻号頁・発行日
vol.50, pp.74-80, 2017-12-25

2025年(平成37年)は、第一次ベビーブームと呼ばれる1947年~1949年に生まれた「団塊の世代」の人すべてが75歳以上の後期高齢者に達する時期であり、要介護状態の高齢者が急増する時期であると見込まれている。その2025年を目途に、厚生労働省は「地域包括ケアシステム」を構築するべく推進している。本稿では、諸外国における地域包括ケアシステムの事例を紹介・比較し、日本の地域包括ケアシステム構築について考察を行った。その結果、各国に共通している点は、地域住民や、看護・介護の提供者・利用者等の「当事者」からさまざまな議論やプロジェクトが提起され、市民活動の中で組織づくりを行うといったような、下意上達に端を発している点であった。また、地域包括ケアを担う人材確保のために、共通基礎資格の創設に踏み切っている国もみられる。各国の差異を考えなげればならないが、高齢社会における看護・介護サービス需要の急増を支えるという根源的な課題は共通していることから、その動向は我が国に様々な示唆を与えると考えられる。
著者
大町 洋 佐藤 直之 池田 心
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2013論文集
巻号頁・発行日
pp.126-129, 2013-11-01

数独を代表とする一人パズルに対する求解・インスタンス生成の研究はさかんに行われているが,そのうち“上海”やマインスイーパなど不完全情報性を持つものにおける研究は依然少ない.本研究では,上海を題材に,不完全情報性を踏まえた着手決定法を考案し,その上で人間にとって面白いインスタンスを生成することを目的とする.具体的にはまず,モンテカルロ法と評価関数ベースの木探索を組み合わせ,高性能・低性能の仮想プレイヤを作成する.その上でランダムに生成したインスタンスを解かせ,“高性能の仮想プレイヤには解け,低性能の仮想プレイヤには解けない”,つまり簡単あるいは難しすぎず,また不完全情報性による理不尽さの少ない,実力が物をいうインスタンスを提供する.