著者
鍛代 敏雄
出版者
東北福祉大学芹沢銈介美術工芸館
雑誌
東北福祉大学芹沢銈介美術工芸館年報 (ISSN:21862699)
巻号頁・発行日
no.11, pp.49-62, 2020-06-23

本稿は、福島県いわき市に鎮座する飯野八幡宮の宮司家・飯野氏に相伝された中世の古文書を読み解いて、石清水八幡宮の所領・好嶋庄(主に西方)について再検証を試みる基礎的な考察である。 本文書は福島県いわき市などの自治体史をはじめ、はやくから注目されてきたところの東北地域を代表する中世文書群であり、現在では重要文化財に指定されている。本文で述べるように、文書目録も整備されている。ところが、岩清水八幡宮の荘園史にかんする研究の立ち遅れもあって、本書の岩清水側からアプローチした研究がなされてこなかった。 そこで、新しい史料情報を提供するために、石清水八幡宮研究の観点から、「飯野家文書」を再検討することにした。その結果、従来の目録中に所載された石清水八幡宮関係文書14点を抽出し、文書内容の調査・研究に基づいて、文書名を修正し、新たな史料的価値を見出すことができた。 Writing reads and unties the medieval ancient document which was forwarded to Iino family of the Iino Hachimangu chief priest of a Shinto shrine work enshrined in Iwaki-shi, Fukushima, and is the basic consideration which tries reinspection about a domain in Iwashimizu hachimangu shrine and yoshimanoshou (mainly, the west). It's the medieval documentary crowd who represents the northeast area you have just done empty attention of fast including autonomous body history in Fukushima-ken and Iwaki-shi, and it's designated as an important cultural asset present. A documentary catalog is also maintained so that it may be told by a body. But, there was also lagging of a study about manor history in Iwashimizu hachimangu shrine, and the discussion I approached from the Iwashimizu side of Honjo was performed, and I did. So I decided to reconsider "Iino family document" from the angle of the Iwashimizu hachimangu shirine study to offer new information of historical sources. In the result and whole conventional inventory, shosai, 14 Iwashimizu hachimangu shirine related documents were picked out and a documentary name was corrected based on an investigation of document content and a study. and it was possible to find the new historical sources-like value. I'd like to utilize in a charge lecture of the paleography concerned with curator qualification acquisition about these outcomes.
著者
渡邉 泰洋
出版者
拓殖大学政治経済研究所
雑誌
拓殖大学論集. 政治・経済・法律研究 = The review of Takushoku University : Politics, economics and law (ISSN:13446630)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.103-127, 2019-03-20

世界的にみて,刑法における性犯罪の処罰をめぐり議論が盛んに行われ,諸外国では性犯罪規定の改正が続けられている。そのような中にあって,わが国でも,2017年に性犯罪規定に関する刑法の大改正が行われ,1908年の刑法施行以来110年ぶりに性犯罪概念が大きく変更された。特に,構成要件の拡大に伴う強姦罪から強制性交等罪への改称や罰則の強化は,従来の犯罪の主体と客体,あるいは行為態様に大幅な修正をもたらすものであり,これらは近年の性に関する社会の意識変化を反映するものといえる。また,国際水準からみても,先進国の性犯罪法制に近接しており,改正の意義は大きい。しかしながら,わが国の改正された性犯罪規定においても課題は少なくない。そこで,同様に近年性犯罪規定の大改正を行ったスコットランド2009年性犯罪法を比較の対象として,わが国の課題と思われる事項を検討した。スコットランドは他の諸国と比べると改正作業はやや遅れたが,イングランドを含む他国の制度内容や運用状況を参考にした経緯があり,逆に後発のメリットもあると思われる。その結果,スコットランド法は,わが国とは次の点で大きく異なり,種々の示唆を与えると考えられる。第1に,性犯罪規定の多様さである。わが国がわずか10ヶ条であるのに対して,62ヶ条の規定を有する。第2に,わが国の性犯罪の手段とされる「暴行と脅迫」を不要とし,被害者の「同意」を犯罪成立要件とし,処罰範囲が広いこと,第3に,挿入による性的暴行罪をめぐる議論を重視していること,第4に,児童の保護規定が充実していること,などである。本稿では,このような比較を通じて,今後見直しが予定されているわが国の性犯罪規定に対する各種の指摘を試みている。
著者
秦 康範
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.61, no.12, pp.e12-e16, 2020-11-15

全庁的な防災情報システムが積極的に活用され,被害の軽減に有効に機能した事例を筆者は残念ながら聞いたことがない.災害時の情報共有を円滑にするために整備した手前,なかなか広言されないものの,被災自治体への調査を実施すると,むしろ情報システムが機能しなかった例は枚挙に暇がない.「なぜ防災情報システムは使えないのか?」,その背景や理由の一端について筆者の私見を述べる.効果的な防災情報システムを整備するためには,縦割り行政による部分最適から脱却し,全体最適を実現するツールとして防災情報システムを位置づけ,標準的な仕組みを国が推進・整備する必要がある.
著者
長井 歩 今井 浩
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.1769-1777, 2002-06-15

詰将棋を解くプログラムの研究はこの10年の間に大きく進歩した.その原動力となったのは,証明数や反証数という概念の導入である.詰将棋に適用すると,直感的にいうと,証明数は玉の逃げ方の総数を,反証数は攻め方の王手の総数を表す.前者は攻め方にとって,後者は玉方にとって非常に重要な値である.証明数・反証数を対等に扱った,最もナイーブなアルゴリズムは,Allisによるpn-searchという最良優先探索法である.我々は近年,df-pnアルゴリズムという,pn-searchと同等の振舞いをする深さ優先探索法を提案している.この論文では,df-pnアルゴリズムを用いて詰将棋を解く強力なプログラムを作成し,その過程で導入した様々な技法を提案する.これらの技法をdf-pnの上に実装することにより,我々のプログラムでは300手以上の詰将棋のすべてを解くことに初めて成功した.しかもそれは,シングルプロセッサのワークステーションで解くなど,解答能力と解答時間の両面で優れた結果を出すことができた.
著者
渡邉 俊彦
出版者
拓殖大学海外事情研究所附属台湾研究センター
雑誌
拓殖大学台湾研究 = Journal of Taiwan studies, Takushoku University (ISSN:24328219)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.59-76, 2020-03-25

台湾では2015年6月に中華民国国家発展委員会より公布の「推動ODFCNS15251為政府文件標準格式實施計畫」および2017年10月に公布の「推動ODF-CNS15251為政府文件標準格式續階實施計畫」により,「開放性檔案」と呼ばれる仕様が公開されたファイル形式の利用が進む。台湾が選択したその形式は国際標準化団体OASISにより国際標準として策定されたODFであり,それをODF-CNS15251として国内規格化させ,次に上記実施計画を以て同規格を政府文書の標準ファイル形式と位置づけ,普及の措置を提示した。本稿は実施計画の概観と,その普及の一例として一部大学の対応を取り上げ考察への根拠とした。現状台湾では入力編集が必要な文書はODFを用い,閲覧専用ではPDFを用いるとの方針が既に徹底され,ODFは一定程度普及したものと考えられる。一方ここで言う普及とは,政府機関がダウンロードを通じ閲覧者へ提供するファイルにおいて,と限定的ではある。他方,方策により教育機関でODFの利用を主軸とした情報教育が今後更に行われることが予想され,ODFが個人利用においても浸透する可能性を台湾は持ち合わせる。実施計画はそれを見越したものである点も指摘されるべきであり,要するに台湾でのODF普及の位置づけとは,政府側による標準化と個人側によるそれの受身的な利用,そしてその延長上には教育を通じた個人側の自主的な利用を段階的に促すものである。この一連の流れは台湾をODF普及の先駆的事例として見做すべきモデルであると結論付けた。
著者
松谷 太郎 宇恵野 雄貴 福永 津嵩 浜田 道昭
雑誌
研究報告バイオ情報学(BIO) (ISSN:21888590)
巻号頁・発行日
vol.2017-BIO-50, no.33, pp.1-6, 2017-06-16

がんゲノムの変異パターンと,その背景にある変異源の分布は変異シグネチャー (Mutation Signature : MS) と呼ばれ,本研究では機械学習の手法を用いてこれを明らかにする.MS の推定は発がんメカニズムの解明の後押しになるなど重要な課題であり,先行研究では非負値行列因子分解や混合メンバーシップモデルを使った学習が行われていたが,MS の数が予測困難である等の問題点がある.本研究では MS ごとの変異の生成過程に対して潜在的ディリクレ再配置 (LDA) と呼ばれるトピックモデルを採用し,サンプルごとの体細胞突然変異からその背後にある生成モデルを推定する.学習に変分ベイズ法を用いることで,変分下限から MS 数を予測することが可能となり,シミュレーションベースではその推定に成功した.また,COSMIC データベースを用いた実データ解析にも着手している.
著者
高橋 由記
雑誌
大妻国文
巻号頁・発行日
vol.46, pp.31-46, 2015-03
著者
柏崎 礼生 坂根 栄作 込山 悠介 宮崎 純 中沢 実 岡部 寿男
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2020-IOT-49, no.7, pp.1-8, 2020-05-07

新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の日本国内での蔓延に伴い,2020 年 2 月中旬以降に開催が予定されていた大規模な集客を見込むイベントは中止,延期を余儀なくされた.学術においても状況は同様であり,日本国内においては特に卒論・修論発表会の終わった 2 月中旬から 3 月下旬まで学会・研究会が集中して開催される時期である.本稿では 3 月上旬に開催された,参加人数が例年 500 人を超える規模のイベントがどのようにオンライン開催の意思決定を行い,そのための準備を進め,運用を行ったのか情報共有を行い,同様の有事が発生する未来に対する議論と提言を行う.
著者
坂井 弘紀
出版者
和光大学表現学部
雑誌
表現学部紀要 = The bulletin of the Faculty of Representational Studies (ISSN:13463470)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.19-37, 2020-03-11

テュルクの口承文芸において、夢は、神話、伝説、英雄叙事詩、昔話など、ジャンルを問わず、きわめて大きな役割を果たしている。ここでは、夢にまつわる伝承、逸話、その解釈について、実例をあげながら、テュルク口承文芸における、夢の果たす役割とその特徴について考えていく。 テュルクの民間伝承では、歴史上の英雄にまつわる夢は、誕生や武勲、死去について告げる。その際、夢の中に聖者・賢者が現れることもあり、夢は側近や夢占い師、長老によって解釈される。英雄叙事詩では、英雄の誕生やその登場、難問の解決方法を、その家族や関係者、愛馬が夢を通じて知る。昔話のジャンルでは、夢を売買したり、見つけたりするという行為も見られる。語り手になるきっかけは夢のお告げであるという事例も少なくない。そして、山や鳥、 ヘビや竜などがしばしば夢解釈の重要なアイテムとされ、民間伝承のストーリーにも登場する。夢解釈はテュルク口承文芸の一ジャンルを成し、現在でも人々のあいだで利用されている。
著者
栗山 圭子
雑誌
神戸女学院大学論集 = KOBE COLLEGE STUDIES
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1-13, 2018-06-20

二条天皇の皇子である六条天皇 (1164~1176) の乳母は、藤原邦子という女性である。本稿は、邦子がなぜ六条天皇の乳母に抜擢されたのかという点を考察することにより、当該期の政局について論じるものである。父親である後白河院と対立した二条天皇を後援したのは、摂関家と二条天皇乳母の家系 (葉室流) である。藤原邦子は、摂関家家司をつとめた藤原邦綱の娘であり、葉室流藤原成頼の妻である。「乳父」邦綱と「乳夫」成頼が、「乳母」邦子を介して六条天皇の補佐を行った。六条乳母邦子は二条親政下の体制を象徴しているのである。
著者
小松 加代子
出版者
多摩大学グローバルスタディーズ学部グローバルスタディーズ学科
雑誌
紀要 = Bulletin (ISSN:18838480)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.71-78, 2009-03-01

Kwan Yin 観音is introduced from Buddhism to describe “Holy Spirit” in Christian theology by some Asian Women Theologians. Doing theology is a political activity and everyday “praxis” for Asian Women. Kwan Yin is one of the symbols they have created to mediate between their own experience and Christian teachings. Kwan Yin is also believed to be rooted in the ancient Goddess worship that permeates through East Asian countries. This paper will examine the meaning and the role of the Kwan Yin metaphor in the Asian Women’s Theology and how far this symbolic intertextuality may be developed.
著者
黒田 誠
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.1-15, 2016-03-31

真下耕一監督によるアニメ作品『Madlax』を対象に、仮構作品が鑑賞手順として要求する仮構世界受容の過程において前提とされる暗黙の了承事項が意図的に脱臼させられ、全方位的に仮構的意味構成軸を散乱させる表現が達成されている実態を検証する。本稿はこの企図に基づき前26話中の第1話と第2話までの映像表現の内容の概念化を図り、仮構世界の保持する原型的多義性を反映した映像表現の理念化を図る作業を進めたものである。