著者
柳澤 佑介 松崎 公紀
雑誌
研究報告ゲーム情報学(GI)
巻号頁・発行日
vol.2015-GI-33, no.9, pp.1-6, 2015-02-26

近年,コンピュータ大貧民においてモンテカルロ法プレイヤが広く用いられ,その改良についてさまざまな研究が行われている.大貧民のモンテカルロ法プレイヤでは,各プレイアウト (シミュレーション) のはじめに,相手手札を仮想的に生成・推定する処理を行う.本研究では,この相手手札の生成・推定を行う方法を4つ提案し,対戦実験を通してその効果を評価する.特に相手手札の推定は,既存のプレイヤから得た札譜に加えて,相手プレイヤの提出手役履歴をもとに行う.実験の結果,手札生成および手札推定の手法によりモンテカルロ法プレイヤが強化されることを確認した.しかし,本研究で提案した手札推定では負の効果を持つこともあるという問題点も見られた.
著者
伊藤誠悟
雑誌
マルチメディア、分散協調とモバイルシンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.1792-1799, 2014-07-02

本論文では,3次元距離センサ付きスマートフォンを携帯して,屋内環境を移動する状況を想定し,ランドマーク,フロアプランおよび無線LANを用いた位置推定手法を提案する.提案手法による位置推定では,無線LANを用いた位置推定により数メートル程度の精度で位置推定を実施した後,3次元距離センサから抽出するランドマークとビジュアルオドメトリを用いて更に精度の高い位置推定を行う.実屋内環境において提案手法の評価実験を実施し,無線LANおよび3次元距離センサをそれぞれ個別に用いた場合の位置推定手法より位置推定精度が向上することを確認した.
著者
山本 太郎 関 良明 高橋 克巳
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN)
巻号頁・発行日
vol.2013-GN-88, no.11, pp.1-8, 2013-05-09

我々は,情報工学と社会科学の学際的アプローチにより,インターネットを利用する際の 「安心」 に関する研究を行っている.その一環として,不安を制御することによる安心の獲得を実現するための現実的なソリューションを検討するにあたり,23 種類の実在ネットワークサービスの各利用者を対象として,各サービスにおける不安に関する Web アンケート調査を 2011 年に実施した.本論文では,そのうち画像共有サイト 2 種について,それぞれ不安を感じるサービス利用者 89 名および 100 名が,どのような不安を,どのような理由で感じ,どのような解決策を望んでいるのか等について,調査結果を提示するとともに,得られた知見と考察について言及する.
著者
小宮山 純平 本多 淳也 鹿島 久嗣 中川 裕志
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:21888833)
巻号頁・発行日
vol.2015-MPS-103, no.14, pp.1-8, 2015-06-16

バンディット問題 (multi-armed bandit problem) は,情報の活用と探索の間のトレードオフをモデル化した問題である.バンディット問題にはいくつかの亜種があるが,そのうち比較バンデイット問題 (dueling bandit problem) と呼ばれるものは,一対比較によるフィードバックを用いて最適化を行う.比較バンディット問題の枠組みを用いることによって,検索エンジンのランキング手法の比較や,人間の選好抽出の問題に対して,効率的な最適化を行うことができる.本研究では,比較バンディット問題における理論的な性能限界およびそれを達成するアルゴリズムを提案する.このアルゴリズムは,経験尤度を用いた通常のバンディット問題におけるアルゴリズム (本多,竹村,2010) の比較バンデイット問題への拡張である.提案手法を評価するため,検索エンジンの実データにおけるランキング手法の比較や,寿司データセット (神嶌,2003) などによる人間の選好抽出における性能を既存手法と比較する.
著者
奥宮 清人 稲村 哲也 木村 友美 Kiyohito Okumiya Tetsuya Inamura Yumi Kimura
出版者
放送大学
雑誌
放送大学研究年報 = Journal of The Open University of Japan (ISSN:09114505)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.69-79, 2015-03-20

インドのラダーク地方において、チャンタン高原(標高4200-4900m)の遊牧民、都市レー(標高3600m)の住民、及び農牧地域のドムカル谷(標高3000-3800m)の農民・農牧民を対象に医学調査を行なった。その結果、①生活習慣病(糖尿病、高血圧など)が都市でより多く発症していること、②標高が高いほど高血糖の率が高いこと、③高カロリー食・高ヘモグロビンの群に高血糖の率が高いだけでなく、低カロリー食・低ヘモグロビンの群においても高血糖が多い、などが明らかになった。①についてはエピジェネティックスや節約遺伝子の考え方によってある程度説明できる。しかし、②や③については説明がつかない。そこには、高所における低酸素への適応が作用しているからである。 Beallによれば、高所への遺伝的適応の方式として、チベットの住民は、肺活量を大きくし、低酸素に対する呼吸応答を調節し、血管を拡張して多くの血液を体に流す「血流増加方式」をとっており、アンデスの住民は、「ヘモグロビン増加方式」をとってきた。 私たちの健診の結果、Beall仮説を指示する結果がでた一方、高齢者の場合、都市レーや生活スタイルが変化しはじめたドムカルで、多血症(高ヘモグロビン)が多くみられるという、Beall仮説に矛盾する結果がでた。また、多血症と糖尿病の相関が認められた。 そこで、その原因を究明した。その結果、高所における酸化ストレスの実態、低酸素と酸化ストレスの関係、酸化ストレスと糖尿病の強い関連がわかってきた。チベット系住民は、NO増加による血管拡張と血流増加によって、低酸素に対する有利な適応をしてきた。ところが、高齢とともに、生活スタイルの急激な変化によって適応バランスが崩れると、多血症や高脂血症を発症して体内低酸素を生じ、その結果、NOの過剰な増加等により酸化ストレスが高まり、かえって糖尿病や老化を促進する。糖尿病と酸化ストレスは相互に影響しあい、症状は重篤化するのである。
著者
小泉 和子
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.63-78, 1995-03-31

「歴博本江戸図屏風」の右隻第五扇と六扇の下部に人形を並べた家が描かれているが、この家は人形店であること、しかも並べてあるのは当時、幼児の疱瘡除けとして使われた土人形か張り子の赤物であるということがよみとれる。この場所は浅草寺の門前通りであると判定されるが、この地域は江戸時代から近代に至るまで人形産地であった。このことは貞享四(一六八七)年の『江戸鹿子』をはじめとして幾多の地誌類によって確認される。しかも当初は素朴な土人形や張り子人形であって、後世のいわゆる雛人形とよぶ着付け雛にかわるのは一八世紀前期の享保年間からだという。するとこの情景は、素朴な人形として描かれていることからみてすくなくとも一八世紀にまで下がることはないだろう。浅草ではじまった赤物は、やがて武州の鴻巣で発展し、さらに練物で作られるようになって鴻巣名物となる。熊谷・川越・大宮・越谷・鴻巣など武州一帯では一七世紀中期すぎころから野間稼ぎとして雛人形の製造がはじめられていた。その中で鴻巣では一七世紀後期になると、この地域一帯で盛んになった桐簞笥製造の際、多量に出る大鋸屑を用いた練り物を開発し、好評を博すようになったのである。これは鴻巣は江戸との関係が密接であったため、おそらく早い段階から江戸の情報が入り、浅草を真似て赤物を製造していたからではないかと考えられる。ともあれ一七世紀中期すぎには鴻巣でも雛製造をはじめていたとすると、浅草はそれより早かった筈であるから、この場面は一七世紀中期以前ということになるのではないか。
著者
高橋 公也 池田 研介 九州工業大学情報工学部 立命館大学理工学部
雑誌
物性研究 (ISSN:05252997)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.26-88, 1995-04-20

本記事は昨年(1994年1月12-14日)京都大学基礎物理学研究所でひらかれたモレキュール型研究会「音響系・光学系におけるカオス」において話題にとりあげられたいくつかの問題を、特に非線形力学系の立場から世話人が再編集しなおしたものである。個々の発表に関しては既に本誌に昨年掲載されているが(物性研究Vol.62,No.5(1994))その内容が音響学、楽器製作、楽器演奏、非線形光学、非線形動力学等の多岐多様な分野におよぶため世話人の立場から問題点を洗い直す方がよいのではないかと考え、このような記事を掲載するものである。
著者
萩谷 昌己
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.734-743, 2014-06-15
著者
植田 康孝 廣田 有里

本稿は,音楽業界で起きているAKB48 のWTA(Winner Takes All:勝者の市場独占)状況と至ったメカニズムを分析することを目的とする。ネットワーク外部性,収穫逓増,経路依存性が働かないはずの音楽ソフト市場において,WTA 現象に至ったメカニズムの解明を試みた。解明にあたっては,社会学,人文学,経済学のアプローチを援用した。分析を行った結果,音楽ソフト市場においてWTA 現象が観察された。更に,AKB48 が歌う歌詞のテキストデータにテキストマイニングとコレスポンデンス分析を施した結果,東日本大震災や福島原発事故などの社会危機の状況下,経済的にも社会的にも心理的にも挫折した若者に対して,AKB48 が発する歌詞の中に,「希望」や「ポジティブ」を示す語句が多く含まれ,共起頻度が高いことが観察された。AKB48 は震災以降,歌詞の内容,曲調,支援活動を含めて価値あるシステムとなる「エコシステム」を人々に提供している証左である。