著者
石井 茂如 滝沢 穂高
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.412-420, 2012-01-15

本研究の目的は胸部X線CT画像から肺結節(肺がんの候補)を検出するための計算機診断支援(CAD)システムを開発することである.我々のCADシステムの最も重要な構成要素の1つとして,結節と血管の3次元物体モデルを用いた結節認識手法であるモデルマッチング法を提案している.この手法は高い精度で結節を認識可能だが,いまだ十分ではない.そこで,本論文ではモデルマッチング法に以下の3つの改良を加える.第1に,肺野内血管の位置とサイズとの関係を表す統計的な分布モデルを構築する.これを事前知識として利用することによって,より信頼性の高い血管モデルを生成し,認識率を向上させる.第2に,血管に隣接する結節を認識するために結節モデルと血管モデルを組み合わせた新たなモデルを導入する.第3に,単円筒モデルを用いた新たなアルゴリズムを用いることで最適モデルの探索を高速化する.これらの改良を8mmスライス間隔のCT画像98例に適用したところ,TP率90%でのFP数を従来法の15.5[個/症例]から9.2[個/症例]に削減することができ,本手法の有効性が確認された.
著者
寺門和哉 RaytchevBisser 玉木徹 金田和文
雑誌
画像の認識・理解シンポジウム(MIRU2011)論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.753-756, 2011-07-20

本論文では新しいアピアランスベースの姿勢推定手法であるLocal Procrustes Regression (LPR)を提案する.LPRでは,全ての学習サンプルとその姿勢パラメータ空間とのマップを学習するのではなく,テストサンプル近傍の学習サンプル同士の距離関係を学習に利用し,テストサンプルの姿勢パラメータを推定する.このとき Procrustes Analysis を用いてテストサンプル近傍の学習サンプルの低次元空間と,それに対応する姿勢パラメータ空間との位置合わせを行う.物体ごとに2つの回転軸において5度ずつサンプリングされた703枚の画像データセット Object Pose Estimation Database (OPED) を用いて実験を行った結果,提案手法の姿勢推定精度は半数以上の物体でSupport Vector Regressionより優れていることが示された.
著者
近藤 奈々 中西 正和
雑誌
情報処理学会研究報告プログラミング(PRO)
巻号頁・発行日
vol.1992, no.49(1992-PRO-065), pp.1-7, 1992-06-12

従来のウインドウ環境におけるインタフェースにおいて、1つの処理を始めるとそれが終わるまで、他のイベントを受け付けないので、ユーザを待たせる原因となっている。これはインタフェースを記述するプログラムが並列性を持っていないためである。本稿では、Xウインドウシステムインタフェースを記述する言語に並列性を導入し、Xサーバと通信機能をもつ並列 lisp 処理系 Momolisp について報告する。Momolisp は Unix 上の1つのプロセスの中で動作し、その中で複数のスレッドを実行させる。
著者
櫻井 保志
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.47, no.7, pp.755-761, 2006-07-15

ユビキタスコンピューティングという言葉があるように,今後センサの小型化や低価格化によって,大規模なセンサネットワークがさまざまなところで構築されるようになると考えられる.その際に,大量のセンサから送られてくる時系列データ,すなわちデータストリームを高速に分析するストリームマイニング技術は非常に重要になってくる.ストリームマイニングの研究には,探索,トレンド検出,予測などさまざまな取り組みがあるが,本稿では,各々の取り組みから代表的な技術を紹介する.さらに,最新の取り組みとして,ストリームからの遅延相関検出技術を紹介する.この技術によって,たとえば類似したトレンドのストリームを出力するセンサ群をリアルタイムに検出したり,あるいは故障によって異常値を出力するセンサを即座に発見することが可能になる.
著者
Harumasa Tada Nobutoshi Todoroki Kazufumi Fukui Masahiro Higuchi
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.9, pp.2328-2338, 2001-09-15

Hierarchical naming has been used in file systems for the last several decades.As the number of files stored in file systems increases the weakness of hierarchical naming is getting recognized.Some researchers have proposed hybrid naming schemes whichintroduce attribute-based naming into hierarchical naming.However they are unsatisfactory or too complicated.In this paper we propose a hybrid naming scheme called HK (Hierarchical-Keyword-based) naming.In HK naming a file is named by a set of keywords and keywords are organized hierarchically.It integrated hierarchical naming and attribute-based naming in a simple way.To show the practicality of our naming scheme we implemented the prototype of the filename management system on UNIX file systems.
著者
高橋 直久 小野 諭
雑誌
情報処理学会研究報告プログラミング(PRO)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.71(1989-PRO-030), pp.31-40, 1989-09-08

宣言的デバッグシステムDDS(Declarative Debugging System)では、プログラマはプログラムに期待する実行結果や途中結果を与え(宣言的に定義し)、それに基づいてシステムがプログラムのテキストと実行履歴を解析しバグ探索空間を絞り込む。本稿では、DDSの設計課題を考察し、実現上重要な3つの機構、すなわち、バグ発生源の判定機構、プログラムの部分実行機構、プログラムの診断機構について議論する。被デバッグプログラムに対して診断に不要な部分の実行を抑止する“計算の凍結”機能が重要であることを示し、その実現法とデバッグへの適用法を明らかにする。さらに、プログラム構造の静的な解析とバグ検出のヒューリスティクスを用いてプログラマの宣言と部分実行結果を解析する手法を提示する。最後に、VAX/VMS上に作成したDDSのプロトタイプを用いたデバッグ例を示し、関数型プログラムのデバッグにDDSが有効であることを示す。
著者
田中 朋之 渦原 茂
雑誌
情報処理学会研究報告プログラミング(PRO)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.50(1991-PRO-060), pp.1-10, 1991-06-21

多くの共有メモリ型の並列Lispでは並列性の記述にfuture式を用いている。本稿ではCommon Lispの多値機能にfutureを導入した場合の問題について考える。futureと多値機能を共存させるためには1つのfutureオブジェクトに複数の値を格納できるようにする必要がある。ところがそのままこの方法を用いると、プログラムにfutureを挿入した場合としなかった場合とで返す値の数が異なってしまう場合があり、Common Lispで定義される多値の意味を変えてしまう。この問題を解決するためにmv?context法とmv?pフラグ法の2つの方法を提案する。この2つの方法はマルチプロセッサ・ワークステーションTOP?1上の並列Lisp、TOP?1 Common Lispにおいて実現した。
著者
秋谷 直矩 丹羽 仁史 岡田 真依 山崎 敬一 小林 貴訓 久野 義徳 山崎 晶子
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.302-313, 2009-01-15

高齢者介護施設において,高齢者とスムーズにコミュニケーションができるロボットを開発するためには,まず,「いかにしてロボットと高齢者がコミュニケーションチャンネルを確立するのか」ということを考えなければならない.そこで,高齢者介護施設における複数人環境でのケアワーカーと高齢者のコミュニケーションチャンネルの作り方を観察した.分析方法として,社会学の一領域であるエスノメソドロジーを用いた.そこでは,行為を始めることを可能にする「対応可能性」,指向の重なりを示す「受け手性」,そして指向の重なりを参与者相互が理解したことを示す「理解の表示」という一連の手続きの制度的特徴が見られた.この調査結果をリソースとして,ロボット開発を行った.その印象評価実験を行ったところ,開発したロボットがユーザに親近感や安心感を与えることが分かった.この実験の結果は,本稿の取り組みが一定の有効性を持つということと,人びとの日常的実践の場面において社会学の手法を用いて調査し,その結果を開発に生かすということの方法論的意義を示した.
著者
中村 健二 田中 成典 古田 均 吉村 智史 北野 光一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.2480-2492, 2008-07-15

近年,インターネットを利用した日常的な情報収集活動において,即時性と信頼性に優れたWebニュースは人々の情報源として広く活用されている.しかし,日々時々刻々と増加する膨大な数のWebニュースから特定のトピックだけを抽出することは困難である.そのため,文書間の類似度を利用してトピックを分類する研究や時系列的な特性に基づきトピックを抽出する研究が活発に行われている.しかし,これら既存研究では,文書中に出現する単語群に依存した分類しかできず,また任意の期間に発生するトピックに適切な単語を関連付けできないという課題がある.そこで,本研究では,時系列的な特性に基づいて抽出したバースト語を用いて,バースト語間の関連を考慮した最新のトピックを抽出する手法を提案する.そして,既研究の従来手法と比較実験を行い,本提案手法の有用性を実証する.
著者
嶋村 誠 河野 健二
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.9, pp.2371-2381, 2009-09-15

バッファオーバフロー攻撃に代表されるリモートコードインジェクション攻撃が大きな問題となっている.このような攻撃を検知するため,近年ではメッセージ中に機械語命令列に相当するバイト列が含まれているかどうかを検査するネットワーク侵入検知システム(NIDS)が提案されている.しかし,これらのシステムでは検知した攻撃コードが実際にサーバ上でどのように振る舞うかは分からない.このため,NIDSが攻撃を検知すると,管理者は適切な対策をとるため,人手で攻撃コードの振舞いを調査しなければならない.本論文では攻撃メッセージを解析し,攻撃コードの振舞いを抽出するシステムであるYataglassを提案する.Yataglassでは,NIDSが検知したメッセージを機械語命令列と見なして擬似的に実行し,攻撃が成功したときに実行されるシステムコール列を抽出する.実際にIntel x86アーキテクチャのLinuxおよびWindowsに対する攻撃メッセージを対象としたYataglassのプロトタイプを作成し,実験を行った.実験の結果,Sambaを対象とする攻撃メッセージや,Metasploit Frameworkから生成された攻撃メッセージが実行するシステムコールを抽出することができた.
著者
石田 武志
雑誌
研究報告バイオ情報学(BIO)
巻号頁・発行日
vol.2010-BIO-20, no.11, pp.1-8, 2010-02-25

細胞などの自己複製現象のメカニズムを数理学的に解明し一般論化することは,分子機械の量産や人工細胞の合成など様々な応用につながる.自己複製機械に関してはフォン・ノイマンが理論的な可能性を証明したが,ラングトンによる単純な形状での自己複製の実現に留まっている.本研究は 2 次元セルオートマトン上で,細胞型の形状の自己複製をシミュレーションし,細胞膜が構成され,細胞内の遺伝子的な情報コードが自己複製されていく現象を再現したものである.
著者
五島 敏芳 Haruyoshi GOTO
出版者
総合研究大学院大学
雑誌
共同利用機関の歴史とアーカイブズ2009
巻号頁・発行日
pp.17-36, 2010-03-30

第1章 基盤機関アーカイブズの構築
著者
井上 智雄 瓶子 和幸
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.1962-1971, 2008-06-15

近年,インタラクティブな広告や対象者に合わせた情報提示手法が研究されている.しかし,従来の研究では対象者の属性情報の獲得が容易ではなく,嗜好情報の登録や専用機器の携帯が必要であるなど利用者の負担をともなっている.そこで我々は,利用者の負担をなくしながらも有効な広告を提示するシステムとして,複数人の関係に基づく適応的広告システムGAS(Group-adaptive Advertisement System)を提案・開発した.本システムの特長は,複数人の間の対人距離からその関係を判別し,それに応じて適切な広告を提示する点にある.評価実験から,対人距離情報などから75%程度の精度で対人関係が判別できることが分かり,また,複数人の関係に基づく広告が,そうでない広告と比べて有効であることが認められた.
著者
吉池 俊貴 庄司 りか 助友 文香 對月 沙織 西川 忠宏 菊川 裕也 王 丹青 馬場 哲晃 串山 久美子
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC)
巻号頁・発行日
vol.2011-EC-21, no.10, pp.1-6, 2011-08-23

著者らはマスクや仮面,フルフェイスヘルメット,着ぐるみ等使用した際に顔面の動きを非接触にて計測しインタフェースとして利用可能なセンシング技術の開発を行っている.これまで,マスク型のオブジェクトにフォトリフレクタを多点配置する事で,非接触にて顔面の動きを計測する事ができた.顔面の動きは主に口,目,眉,頬の動きを計測している.本稿ではこの仕組みを利用して,顔面を入力としたインタフェースとして本機構がどのように利用可能かを提案する.
著者
比企野純太 中野有紀子 安田清
雑誌
第73回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.1, pp.195-197, 2011-03-02

近年,我が国における認知症患者は年々増加傾向にあり,患者数に対して介護者の数が全く足りていないという現状がある.本研究では,会話エージェントが患者に対応することにより認知症患者の精神安定,介護者の負担軽減を目指している.そのための基礎的な検討として,本稿では,簡単な質問を認知症患者に行うとともに,患者の発話に対して適当なタイミングで頷く会話エージェントを実装し,認知症患者複数名による評価実験を行った結果を報告する.特に,会話エージェントの静止画を用いた場合,テレビ番組を視聴した場合と比較して,開発した会話エージェントが聞き役になることによって,患者がどの程度落ち着いた様子でいられたかを定量的に評価するとともに,それによる介護者の負担の軽減について考察した結果を報告する.
著者
早川 豪 岡部 誠 尾内 理紀夫
雑誌
研究報告データベースシステム(DBS)
巻号頁・発行日
vol.2011-DBS-153, no.16, pp.1-4, 2011-10-27

我々はソーシャルネットワークサービス (以下 SNS) 上の人間関係に着目し,SNS での友人の発言を解析してユーザにニュース記事を推薦する手法を提案する.解析には既存手法の様に TF-IDF を用いて興味・関心の強さを測ることに加え,友人それぞれに重要度を与えることで,よりパーソナライズした記事の推薦を可能にする.ユーザスタディでは,本手法を用いることでユーザ本人のみの発言からニュース記事を推薦した場合よりもクリック数が向上し,本手法がユーザにとってより興味・関心のある記事を推薦できることを実証した.
著者
橋本 浩二 モシニャガワシリー
雑誌
情報処理学会研究報告組込みシステム(EMB)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.32(2008-EMB-008), pp.61-66, 2008-03-27

情報家電.組込みシステムの一部にはIPスループット向上を目的として,ハードワイヤードTCP/IPオフロード・エンジン(TOE)が実装されているが,その「最大ピークTCP/IP通信スループット/消費電力」をより高めることが求められている.そこで我々は通信アプリケーション特性に着目し,小さい回路コストで前述の課題に対応可能な高性能・低レイテンシTDEを開発すべく回路・ソフトウェアの構成について検討を行っている.本発表では我々が提案するTCP/IP受信回路の構成および開発状況を報告し,あわせて受信パケットに基づき筒素的に処理内容を推測し,DMA実行する手法についても概説する.
著者
矢嶋 純 安田 雅哉 下山 武司 小暮 淳
雑誌
コンピュータセキュリティシンポジウム2011 論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.3, pp.576-581, 2011-10-12

2009 年,Gentry はイデアル格子を利用した完全準同型暗号の具体的な構成法を示した.Gentry による完全準同型暗号は,限定された暗号文操作が可能な準完全方式(somewhat homomorphic encryption scheme) から構成される.今回,準完全Gentry 方式の安全性を検証するために,準完全Gentry 方式の安全性を支える格子問題に対し,格子縮約アルゴリズムを利用した攻撃実験を行った.本論文では,代表的な格子縮約アルゴリズムの1 つであるLLLアルゴリズムを利用した攻撃実験の結果を報告する.