著者
黒木 由夫 山添 雅己 澤田 格 有木 茂
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.851-859, 2008-08-15

肺サーファクタントは,肺胞Ⅱ型細胞で合成され,肺胞腔に分泌される脂質蛋白質複合体で,その物理化学的表面活性作用により肺胞虚脱を防ぐことにより安定な呼吸を維持する生理活性物質である.肺は常に外界に開放しているので,肺サーファクタントによる生体防御機能は重要である.肺サーファクタント蛋白質のSP-AとSP-DはC型レクチンのコレクチンに属しており,レクチンドメインとコラーゲン様ドメインを有するハイブリッド分子で,肺における自然免疫機能を担っている.in vivoおよびin vitroの研究により,肺コレクチンによる免疫調節機能の分子機構が明らかになってきた.
著者
廣瀬 英晴 菊地 久二 斉藤 仁弘 小堀 雅教 芝原 健夫 安斎 碕 大橋 正敬
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.517-524, 1989
被引用文献数
1

本研究は, 吸水および溶解量の少ない可視光線重合型レジンの開発を目的として, シクロホスファゼンモノマー3種および市販モノマー3種を用いて可視光線重合型のアンフィルドレジンを試作し, それぞれの硬化物の水中での吸水量, 溶解量, MeOH中での膨潤量, 溶解量, THF中での膨潤量および機械的性質について検討したものである.その結果, 吸水量は, いずれのモノマーを用いた場合も経時的に増大した.また, 30日間水中浸漬した場合の溶解量は, 4PN-(EMA)<sub>8</sub>, 4PN-(TF)<sub>1</sub>-(EMA)<sub>7</sub>, 4PN-(TF)<sub>2</sub>-(EMA)<sub>6</sub>, Tri-EDMA, BMPEPPおよびBis-GMA+Tri-EDMAの場合, それぞれ順に0.16, 0.20, 0.51, 0.65, 0.17および0.81%を示した.MeOH中での膨潤量は, Bis-GMA+Tri-EDMAおよび4PN-(TF)<sub>2</sub>-(EMA)<sub>6</sub>の場合を除き, いずれも経時的に増加する傾向を示した.30日間MeOH中に浸漬した場合の溶解量は, シクロホスファゼンモノマーを用いた場合および市販モノマーを用いた場合, それぞれ0.09〜0.36および1.36〜5.40%を示した.30日間THF中に浸漬した場合の経時的な膨潤量は, シクロホスファゼンモノマーを用いた場合に市販モノマーを用いた場合と比較して小さかった.一方, 圧縮強さは, いずれのモノマーを用いた場合も230〜275MPaを示し, 曲げ強さは, シクロホスファゼンモノマーを用いた場合は, いずれも45MPa以下を示し, 市販モノマーを用いた場合は59〜90MPaを示した.
著者
高野 守
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.147-153, 1993
被引用文献数
2

本研究は, 可視光線重合型レジンの重合率を改善することを目的とし, BisGMAを用いた2種の二元系レジンのモノマー組成と重合率および粘度との関係を検討したものである.可視光線重合型アンフィルドレジンは, モノマーとしてBisGMA[2, 2-ビス{4-(3-メタクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル}プロパン], TriEDMA(トリエチレングリコールジメタクリレート)およびBMPEPP[2, 2-ビス(4-メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン]を用い, BisGMAに希釈モノマーをそれぞれ20〜100wt%の範囲で配合して調製した.試作したレジンについて, フーリエ変換赤外分光光度計を用い, KBr液膜法に準じて吸光度スペクトルを測定した.測定は, 光照射前および90秒間光照射した後の所定時間に経時的に行った.硬化させたレジン中の残存二重結合量(RDB)は, いずれの系の場合も, 光照射開始5分以降対数時間と直線関係で減少した.また, RDBは, BisGMAに配合する希釈モノマーの配合量の増加に伴い減少し, 80wt%で極小を示した.二元系レジンの重合率は, 成分モノマー単独の重合率の相加平均より大きかった.希釈モノマーの配合量が20〜80wt%の範囲の場合, 2種の二元系レジンの重合率はほぼ同じであった.二元系レジンの粘度は, いずれも希釈モノマーの配合量の増加に伴い単調に減少したが, 粘度の低減効果はTriEDMAの方がBMPEPPより大きかった.二元系レジンの重合率は, 成分モノマーの重合率の相加平均およびその粘度の増減に支配されることが示唆された.
著者
友清 直
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.225-232, 1992
被引用文献数
1

本研究は, 可視光線重合型レジンの重合率を改善することを目的とし, 複合増感剤の組成と重合率との関係を検討したものである.可視光線重合型アンフィルドレジンは, モノマーとしてトリエチレングリコールジメタクリレートを用い, これに種々組成を変化させた複合増感剤を配合して調製した.光増感剤としてはカンファーキノン(CQ), ベンズアンスロン(BA), ジベンゾイル(DB), チオキサンテン-9-オン(T9), 8-キノリンスルホニルクロライド(QC)および3-フェニル-5-イソオキサゾロン(PIO)を用いた.還元剤としては, メタクリロキシエチル-p-ジメチルアミノベンゾエート(DMAB-EMA)を用いた.重合禁止剤は, 2, 6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(BHT)を用いた, 複合増感剤の基本組成(NON)は, CQ0.30wt%, DMAB-EMA1.40wt%およびBHT0.01wt%とし, これに他の光増感剤を1〜3種配合して用いた.試作したレジンについて, FT-IRを用い, KBr液膜法に準じて吸光度スペクトルを測定した.測定は, 光照射前および90秒間光照射後の所定時間に経時的に行った.硬化させたレジン中の残存二重結合量(RDB)は, BA-PIO系のレジンの場合を除いて, いずれの場合も, 光照射開始5分以降経過時間(対数表示)と直線関係で減少した.BA-PIO系のレジンは, 重合反応の誘導期を示した.NONに光増感剤1種を配合した複合増感剤を用いた場合の重合率は, 光照射開始5分後でQC>DB>T9>NON>BAの順であった.複合増感剤に用いる補助光増感剤としては, QCが最適で, その配合量は0.30wt%であった.
著者
渡辺 真希子 後藤 裕明 中山 伸一
出版者
Japan Society for Information and Media Studies
雑誌
情報メディア研究 (ISSN:13485857)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.1-18, 2021-05-21 (Released:2021-05-21)
参考文献数
33

疾患を持つ子どもの親とその家族は, 医療者との治療に関する意思決定において情報を必要とすることが分かっているものの, 小児がんの子どもを持つ親の情報探索行動については殆ど明らかとなっていない. 本研究は, 親の治療決定の同意との関連から親の情報探索行動を明らかにすることを目的とする. さまざまな医療情報源の使用頻度と他の決定要因との調査を行い, どの種類の情報源が子どもの治療決定に関する親の同意に影響を与えるかについて重回帰分析を用いて評価した. 僅かではあるが主治医(β= 1.72, p = .028)と, 主治医が所属する機関に関わらず広く医療機関のウェブサイト(β= 0.87, p = .016)が治療決定の同意に正の影響を与えること, 医師が発信するウェブサイト(β= -0.8, p = .042)が治療決定の同意に負の影響を与えること, 親の批判的ヘルスリテラシーよりも伝達的ヘルスリテラシー(β= 0.63, p = .003)が情報探索行動の決定的要因としての治療決定の同意に関連することが分かった. これらの結果は, 医師が発信するウェブサイトを利用する親は, 複数の医師からの情報についても探索し, 情報源として主治医及び医療機関のウェブサイトを利用する親より治療選択の同意に慎重である可能性を示唆した. 親の情報探索における伝達的ヘルスリテラシーが治療選択の同意において関連が深いことは, 親が診断の初期段階に幅広い情報源を使用したことを示唆している. そのため医療スタッフ及び情報提供の専門家は, 小児がんの子どもを持つ親の情報探索行動が個人属性に影響されることを考慮し, 診断の初期段階で親の識字能力や学歴に応じた情報を提供する必要があることを考察した.
著者
髙橋 辰政
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.412-419, 1990
被引用文献数
7

重合した可視光線重合型レジン中の残存二重結合量(RDB)の経時的変化を検討した.RDBは, 試作のアンフィルドレジン5種, 市販のコンポジットレジン8種および歯冠用硬質レジン3種について, フーリエ変換赤外分光光度計を用い, 液膜法に準じて測定した.吸光度の測定は, 光照射前および光照射後の所定の時期に行い, RDBは, 光照射前の二重結合量に対する百分率で表示した.5種のアンフィルドレジンのRDBは, いずれも光照射開始5分以降対数時間と直線関係で減少した.また, モノマーの種類によって5分でのRDBおよびこの時間以降でのRDBの減少速度に差が認められた.5種のアンフィルドレジンのなかで, 光照射開始5分後のRDBの最も少ない値を示したのは, モノマーとしてBMPEPP(BPE-200)を用いた場合で, 逆に最も多い値を示したのは, モノマーとして4PN-(TF)_2-(EMA)_6を用いた場合であった.Tri-EDMAを用いたアンフィルドレジンの場合, 光照射時間の延長にともない, RDBは減少したが, 1カ月後ではいずれの照射時間のものもほぼ同じ値を示した.市販可視光線重合型コンポジットレジンおよび歯冠用硬質レジンのRDBは, いずれも光照射開始5分以降対数時間と直線関係で減少した.また, いずれのレジンの場合もRDBは, ベースモノマーがBis-GMA系の場合に少なく, UDMA系で多かった.
著者
Shingo MATSUDA Fusao IKAWA Hideo OHBA Michitsura YOSHIYAMA Toshikazu HIDAKA Kaoru KURISU Susumu MIYAMOTO Isao DATE Hiroyuki NAKASE
出版者
The Japan Neurosurgical Society
雑誌
Neurologia medico-chirurgica (ISSN:04708105)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.197-203, 2019 (Released:2019-06-15)
参考文献数
42
被引用文献数
1 7

Various guidelines regarding surgical site infection (SSI) have recently been established. However, perioperative management of the wound and use of antibiotics have never been standardized completely in departments of neurosurgery in Japan. This survey investigated current perioperative management and administration of surgical antibiotic prophylaxis (SAP) and compared with guidelines intended to reduce SSI associated with neurosurgery in Japan. Questionnaires were distributed to members of the conference on Neurosurgical Techniques and Tools and the Japan Society of Aesthetic Neurosurgery via internet. The questionnaires asked about methods of perioperative management. A total of 255 members returned answers to the questionnaires. The questionnaires revealed that partial or no removal of the hair and hair shampooing at the day before surgery were performed in 96.1% and 88.1% of each institute following the World Health Organization (WHO) guidelines. Use of SAP at just before, during, and after surgery were 65.0%, 86.2%, and 63.0%, respectively. The postoperative period of use of intravenous SAP prolonged beyond 24 h in 80.0% against the recommendation of WHO. Perioperative management of wounds and use of SAP varies in institutes in Japan and some procedures were far different from the WHO guidelines. Japanese neurosurgeons should notice the prolonged SAP and comply with the WHO guidelines.
著者
田中 ひとみ
出版者
城西大学
雑誌
城西現代政策研究 (ISSN:18819001)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.25-34, 2007-03

My insist is about the New type of the judgement. Some civil judgement has theeffect to the third person who has the lawful interest with the former suit. In caseof the guarantee, the person who borrows the house at second hand, and so on.And for that, the reason in the former judgement has the effect to the third personwho has the interest with the suit.The third person is bound by the former judgement. But in the latter suit, he orshe can insist his or her own refutations.By this theory, the actual civil relations are solved consistently among the peoplewho have the interest in the case. And more, the court provides the civil dueprocess for the third person. I call this new type as derivative suit, derivativejudgement.
著者
中島洋子
雑誌
日頭顎顔会誌
巻号頁・発行日
vol.4, pp.70-87, 1988
被引用文献数
1
著者
高木 彩
出版者
千葉工業大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

2018年度に引き続き、2019年度も情報分野の4つの萌芽技術(人工知能(AI)、機械学習、自動運転、仮想現実(VR))を取り上げ、そのリスク認知を規定する要因について検討を行った。2019年度は、「萌芽技術のリスク認知と感情要因との関連」を明らかにすることを目的として、2つの調査研究を実施した。1つ目の調査では、大学生を対象に予備的検討を行った。この調査では、各萌芽技術に対するイメージ(連想語)と感情要因(ポジティブ感情、ネガティブ感情)等を測定し、萌芽技術のリスク認知との関連を検討した。その分析結果からは、萌芽技術に抱くポジティブ感情が弱く、ネガティブ感情が強いほど、萌芽技術に対するリスク認知が大きい傾向にあることが示唆された。それに加え、畏怖感情(dispositional awe)の得点が高い人ほど、萌芽技術のリスクを大きく認知する傾向にあることが示唆された。以上の予備的検討の結果を踏まえ、次の研究では、より幅広い年齢層の一般市民を対象としたWEB調査を実施した。この調査では、萌芽技術のリスク認知と感情要因との関連をさらに詳しく検討するために行った。主な調査項目として、4つの萌芽技術のリスク認知、ベネフィット認知、受容態度に加え、感情要因として、対象技術への感情(ポジティブ感情、ネガティブ感情)と、個別の感情経験(畏怖、嫌悪感情など)の個人差要因を測定した。現段階では、調査を実施しデータの収集まで完了しており、これから分析に着手する予定である。
著者
久良木 優太 宮澤 和貴 青木 達哉 堀井 隆斗 長井 隆行
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回 (2020)
巻号頁・発行日
pp.1Q3GS1104, 2020 (Released:2020-06-19)

人間は複数の感覚情報を利用することによって,1つの感覚情報よりも正確で抽象度の高い情報表現を得ることができる.とりわけコミュニケーションにおいてこの情報表現は重要となる.コミュニケーションでは,話し手が自らの感覚器官により観測した情報を言語化して表現する一方で,聞き手は話し手から得た言語情報を自らの感覚器官で得られる情報へと変換することで話し手の言葉を理解する.このように情報は双方向にやり取りされるため,マルチモーダル情報を単方向に予測するだけでは不十分であり,双方向に予測可能でなければならない. 本研究ではBERTを用いて物体画像と言語情報を相互に予測可能なモデルを提案する.提案モデルの有用性を検証するためにクロスモーダル情報予測とマルチモーダル情報の分類タスクを行った.結果として,マルチモーダル情報表現を獲得し,物体画像と言語情報に関するクロスモーダル情報予測が可能なことを示した.また,マルチモーダル情報を利用することで,単モダリティのみを利用した場合よりも分類精度が向上することを示した.

1 0 0 0 IR 《学部消息》

著者
[著者名なし]
出版者
東京大学理学部
雑誌
東京大学 理学部廣報
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.10-12, 1974-01-20

12月理学部会合日誌/教授会メモ/動く対象集団に対する標本調査/東大百年史編集理学部委員会委員名簿/加納さん御苦労様でした/人事異動/理学博士学位授与者/学部長と理職との交渉/編集後記