著者
小田切 正
出版者
北海道教育大学教育学部旭川校特殊教育特別専攻科障害児教育研究室
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
no.15, pp.217-230, 1996-03

「天の下にあるものはすべて,同じ法則,同じ運命のもと,すべては同一の自然の相の下に現れるにすぎない。人間を縛って,この秩序の棚の内に拘束しなければならない」菅季治(1917-1950)の「人生の論理-文芸的心理学への試み」の「前かき」に,モンテーニュからかりたこのことばがある。地上にあるすべてのもの,そして人間すべて上も下もなく同一であり,「宇宙における人間の位置」についての,このただしい自覚がいまや必要だという。現実の人間の,この理念とはなんとひどくかけ離れていることだろうか,たがいに傷つけあい倒し合う人間,かがれ歪んでいる人間,争いのなかの傷つけあう人間を見聞きするくらいかなしいことはない,と菅はいう。本稿では,ひきつづき戦中におけるひとりの哲学徒の,人間心理の内面をとらえた思索と行動(観察と記録)をあきらかにしたが,その文学,哲学,思想,文芸をかりた臨床的な研究方法のなかに,今日のあらたな教育的人間学の構築への手順も期待できると思われる。とくに今回は,菅のキエルケゴールの考察から多くとった。末尾に,「人生の論理」から「孤独」「弱い魂」「たいくつ」の各節を資料掲載とした。
著者
小田切 正
出版者
北海道教育大学教育学部旭川校特殊教育特別専攻科障害児教育研究室
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
no.19, pp.263-270, 2000

本稿の目的は,ひきつづき菅季治(1917〜1950)の戦中における生活思想,哲学のもつ意義をあきらかにすることである。菅の哲学研究の命題は,「ものははたらくはたらきは矛盾的自己同一 関係 関係のろんり」の追求であり,「なる 動く はたらく」,または「生成・運動」論の探求である。では,その「論理」は,どのような「はたらき」を対象化して,みちびかれたものかが,重要な,菅の哲学研究の課題となる。本稿では,とくに「人生の論理」(1950)「哲学の論理」(1950)のなかから,学問研究のあり方として,なにを探求し,なにを方法・内容としているか,をあきらかにするとともに,彼の戦中における研究・実践の一つの到達点をしめした。また,菅の西田幾多郎にむけられた批判点,ならびにコミュニケーション(交わり)論も,あらためて着目すべきものとしてとりあげた。
著者
小田切 正
出版者
北海道教育大学教育学部旭川校特殊教育特別専攻科障害児教育研究室
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
no.14, pp.138-152, 1995-03

菅季治(1917〜1950)の主としてスピノザ(B. Spinoza 1632〜1677)哲学による「心理学への試み」の特質と,その心理学的論述について考察するのが,本稿のねらいである。人間が他の人(他者)をみとめ,他者からみとめられる相互の人間関係がなりたつには,なによりも自由で平等な,たがいの人格がみとめられるということがあってのことである。自分と他者とを一体のものとみなし相互にはたらきかけあうことのなかに,自分(他者も自分)を見出していくというのが,人間のあり方である。菅が,戦争・国家・権力・支配という総力戦のなかで,人間どう生きるかを問いながら,その哲学の課題としたのも,この相互の関係の基本についてのものだったのである。(「哲学の論理」にくわしく展開されている)私の手もとに,菅が使用したスピノーザ「哲学体系」(原名倫理学)(小尾範治訳,昭和2年発行岩波文庫)がある。これには,菅がつけたいくつもの傍線のもと,赤鉛筆で三ヶ所,つよくうったものが目をひく。その一ヶ所は,概括するならつぎのものである。「われわれの存在を維持し,その活動能力を増大するものを善といい,これにたいしてわれわれの存在の維持を妨げ,阻害するものを悪という。こうしてわれわれは,あるものが,われわれの喜びとなり,あるものが悪となるものであることを知るのである」(第四部人間の屈従,或いは感情の力について下線は菅のもの)戦争真ただ中の菅の哲学ならびに心理学的論述の前提は,このなかにいいつくされているといってより。人間,どうあるべきか,同生きるべきか,の目標をかかげるとうよりか,まず人間,どう生きているか,どうあるかのほんとうのあり方(欲望,感情-よろこびとかなしみ)をあきらかにすることが,根本と考えられたのである。人間のあり方とは,なによりも自分をまもることであり,自分を維持し,肯定されることをのぞむものであり,けっしてきずつけられ,屈従すること,否定されることをのぞむものではないということである。菅の遺著「人生の論理」は,戦中に書かれたことを基本にしているが,人間,どうあるかのありのままのあり方と,その生き方を凝視し,観察・記録(主として文学・哲学・思想と菅自身の人間観察による)したものであり,同時に,その日常性,通俗性にたいする,するどい批評をとおして,人間,どう生きるかをふかく問うものとなっている。末尾には,資料として「愛」「競争意識」「世間」「卑屈」の各節を採った。
著者
小田切 正
出版者
北海道教育大学教育学部旭川校特殊教育特別専攻科障害児教育研究室
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
no.20, pp.265-274, 2001

これまで菅季治(1917〜1950)の生活思想,哲学思想の意義をあきらかにしてきた。その主要著書は「人生の論理」(1950年,草美社)「哲学の論理」(1950年,弘文堂刊)である。本稿は,遺稿「語られざる真実」(1950年,筑摩書房)にふれながら,戦後における菅のシベリア抑留体験をあきらかにするとともに,抑留者引揚問題が国内政治の最大の問題になるなか,証人としての菅の,国会における意見陳述,ならびにその意見表明にしめされた立場,内容について解析を行なったものである。それ自体,菅の生活・哲学思想の論理の展開でもある。
著者
小田切 正
出版者
北海道教育大学教育学部旭川校特殊教育特別専攻科障害児教育研究室
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
no.17, pp.225-234, 1998-02

菅の「人生の論理」の執筆は,1943年9月,戦時である。本論では,菅の論述のもとになっている,キエルケゴールならびにアミエルに焦点をあて,その整理と解釈を試みた。菅がうけたキエルケゴールやアミエルの影響についは,これまでも指摘があったが,誤解にもとづくと思われるものがある。これまでみてきたことからあきらかなように,菅の,豊かな感性のうえに築かれた,哲学的土台は,戦時にあって人間的価値をもった教養をしめていて,その心理の論述も,冷静な観察の眼を生かした考察となっている。とりわけ,絶対的,一元的な哲学の伝統のなかで,他者との自由な,人間的な社交と交際,それによるさまざまな問題の解決につなげていくことを見通した「相互承認論」の展開は,じつにあらたな人間関係の転換点をしめしている。すべての人が「自由な人」になることが,人間の根本のありかただというのが,菅の哲学の基本である。「自他」「相互承認論」を基礎づけているのが,この人間観であり,その原点となっているのが,人間を縛するものからの自由ということである。その批判のキーワードは,「世間」である。戦時の全活全般が,「他者抹消」(戦時がこの死生観のうえに築かれていたし,哲学がそうであったことに注目したい)が公の論理とされていただけに,菅がいまわれわれによびかけていることの意味は,時代を超えて重い。
著者
小田切 正
出版者
北海道教育大学教育学部旭川校特殊教育特別専攻科障害児教育研究室
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
no.13, pp.1-12, 1994-03

菅季治(1917〜1950)は,若くして生涯を閉じた,ひとりの忘れられた哲学者であり,北海道が生んだ教師でもある。その残したしごとは,25才から26才にかけて執筆されたものであるが,自由のない,不毛な時代にもかかわらず,その哲学,思想,文学,人間にむけた関心は,知識人としてのたしかな思索のあとをしめしており,その稀有な思想と生き方は,いまに生きつづけている。その核心は,自己同一性がいかにして成りたつか,という自己と他者との関係性,相互関係(はたらきかけ,相互活動)にむけられている,と同時に,同一性における,一人ひとりの内面のうごき,欲望(そのあらわれとしての快と不快)のあらわれ方にたいする,心理・行動の観察(記録)にむけられているのが特質である。菅の遺著「哲学の論理」は,人間のあり方のうちでも「他者」との関係性を追求しているが,これにたいして「人生の論理-文芸的心理学への試み」は,獲得されるべき自己,同時に,そとにあるものをつつみ,みずからをつくりだしていくなまの自己実現のプロセスをえかきだして,感清-情念の世界を基本に一個の人間学の構築をめざしている。本稿は,その成りたち,内容と方法,ならびにその先駆としての意義をあきらかにした。
著者
高島 忠義
出版者
慶應義塾大学法学研究会
雑誌
法学研究 (ISSN:03890538)
巻号頁・発行日
vol.89, no.4, pp.81-112, 2016-04

一 はじめに二 事実の概要 1 ICRW 2 商業捕鯨に関するモラトリアム三 管轄権問題四 判決内容(管轄権を除く) 1 八条一項の解釈 2 八条一項の適用 3 附表規定の違反 4 救済措置(以上本号)五 判決の分析と影響 1 国際法上の論点 2 新しい南極海鯨類調査計画(以上八十九巻五号)論説
著者
大河内 美香 逸見 真 黒川 久幸 竹本 孝弘
出版者
公益社団法人 日本航海学会
雑誌
日本航海学会論文集 (ISSN:03887405)
巻号頁・発行日
vol.134, pp.27-35, 2016

The purpose of this study is to analyze the causes of dispute concerning oil exploitation on the continental shelves. Since the sovereign rights to exploit natural resources on the continental shelves belong to coastal states, delineation of continental shelves is a critical problem for them. Previous research has been limited to specialized areas, such as geology, geopolitics, or nationalization of natural resources, etc. This study aims to augment the extant literature by considering oil concession agreements, international treaties, and maritime transportation systems. In conclusion, disputes are caused by unestablished criteria for delineation and resource distribution. The effective methods to prevent these disputes are the moratorium on exploration, unitization of transboundary deposits, and dispute settlement clauses.
著者
勝木 祐仁 篠野 志郎
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.65, no.538, pp.211-218, 2000
参考文献数
27

The aim of this study is to clarify the designing principle of hotels during Taisho and early Showa period through examining the architectural handbooks and documents written by hotel managers or architects of the period. The profitability was found to be the most important factor for hotel managers in designing a hotel throughout the period. Although documents by architects and architectural handbooks before around 1930 ignored profitability aspect, guidelines which appeared in documents of the sort after the period directed architects to consider profitability. It shows that function and form became subordinate factor to profitability in designing hotels during the period.
著者
中川 明子 椎木 英理子 藤川 大輝
出版者
徳山工業高等専門学校
雑誌
徳山工業高等専門学校研究紀要 = Research reports of Tokuyama College of Technology (ISSN:03862542)
巻号頁・発行日
no.36, pp.1-11, 2013-02

This study aims to clarify historic value of Toishi Hachimangu at Toishi in Shunan city. At the same time, we aim to judge that this shine corresponds to Registered Tangible Cultural Properties (buildings). We measured the buildings of this shrine, and made plans, took photographs, and investigated literatures. As the result, we clarified historical details until the completion of buildings of this shrine from 1938 〜 1941 by old books. The designing adviser of this shrine was SUNAMI Takashi who belonged to the department of the interior in 1939. The designer was INAGAKI Hideo. Among buildings of shrine, especially front shrine was designed as Rohaiden which is vernacular style of Yamaguchi. SUNAMI was an architect who respected the venerableness and style of each shrines. He showed his policy on Toishi Hachimangu, too. We concluded this point is its historic value. At the same time, its age and its contribution to the historical scene of national land, we concluded this shrine corresponds to Registered Tangible Cultural Properties (building).
著者
中川 明子 大來 美咲
出版者
徳山工業高等専門学校
雑誌
徳山工業高等専門学校研究紀要 (ISSN:03862542)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.51-56, 2014-12-01

It has been said that the Roh-Haiden in the Yamaguchi Prefecture is rare across Japan. There are 11 Roh-Haidens in Shunan City, according to Yamaguchiken-Jinja-Shi, but about half have not been studied. Therefore, this study aimed to clarify the characteristics of all Roh-Haidens in Shunan City. At first, we measured these Roh-Haidens and made their plans; at the same time, we took their photos. We investigated their characteristics using their plans, photos, and old books. The results of this study are the following: most are located in Mae-Yamashiro-Saiban, and it is estimated that this style was established in the latter half of the 19th century in this region. The size and the structure types of the Roh-Haidens are related.
著者
宮川 泰明
出版者
日経BP社
雑誌
日経パソコン (ISSN:02879506)
巻号頁・発行日
no.717, pp.103-106, 2015-03-09

同じチップセットでも数倍もの価格差がある場合もある。台湾エイスーステック コンピューターの「Z97-DELUXE(NFC&WLC)」と「Z97-K」で見てみよう。実勢価格はそれぞれ4万円と1万4000円だ。 内容物を見ると、付属品の違いが目立つ。