著者
後藤 将之
出版者
成城大学
雑誌
コミュニケーション紀要 (ISSN:02887843)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.71-86, 2015-03

The author, a nearly 30-year long educator having taught at various universities and research institutions, discusses problems of classroom attendance and students' psychology of class taking, mainly from a specific type of students' mind-set, which is here called as "GPA perspective," in this Part 1 of a series of intended research reports. GPA perspective is a concept used by sociologist H. S. Becker and collaborates in 1968, a concept that refers to an attitude of students who are only interested in grade-getting and nothing other. Since a GPA perspective-oriented student is motivated to nothing but to acquire the best possible GPA while paying the least possible effort, some untraditional behaviors in classrooms are frequently enacted and observed. The author, a specialist of symbolic interactionism sociology, describes many concrete instances of GPA perspective-oriented students' not-before-seen behaviors in classroom, their attitudes and opinions explicit and implied in classroom interactions, particularly focusing on one but many faceted aspect of educational process: classroom attendance.
著者
長島 光一
出版者
拓殖大学政治経済研究所
雑誌
拓殖大学論集. 政治・経済・法律研究 = The review of Takushoku University : Politics, economics and law (ISSN:13446630)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.67-86, 2018-09-30

本稿は,福島原発事故を契機に提起されている原状回復請求(除染請求)について,これまでの裁判例を整理し,手続法たる民事訴訟法の視点から訴訟を提起するに際して問題となる請求の特定,確認の利益等の論点を分析するものである。これまでは,民法の物権的請求権のひとつである妨害排除請求の権利実現の問題は顕在化されてこなかった。しかし,妨害排除請求権を根拠に原状回復を求める場合,除染をするという作為請求について,権利者たる原告がその実現方法を具体的に特定していないために却下される判決が相次いでおり,この権利をどのように理解し,どのように考えれば権利が実現するかが実務においても問題になっている。これまでの環境公害訴訟では不作為請求をめぐり同様の議論があったが,解釈や裁判例の積み重ねでそれを乗り越えた過去がある。そこで,民事訴訟手続により権利を確定したうえで,民事執行手続に入るという両者の制度趣旨をふまえて,権利の確定と権利の実現は異なるという違いを再考すべきであり,原状回復請求を認めた上で,執行段階でその権利実現に向けた調整をすればよいと結論付けられる。したがって,除染請求につき,請求の特定レベルで却下するのではなく,妨害排除請求権の有無を判断すべきであり,執行段階でその権利実現を議論し,紛争解決を目指す必要がある。
著者
安田 真穂 Maho Yasuda
出版者
関西外国語大学・関西外国語大学短期大学部
雑誌
研究論集 = Journal of Inquiry and Research (ISSN:03881067)
巻号頁・発行日
vol.85, pp.135-149, 2007-03

『妬記』は南朝宋の虞通之が太宗の勅命によって撰した、女性の嫉妬にまつわる話を集めた書物である。本稿ではこれまで小説という観点から論じてこられなかった『妬記』を、その成立意義と「妬」を題材とした小説の流れから論じた。『妬記』に語られた女性の嫉妬は、実は夫への深い愛情ゆえの嫉妬であったことを読み取り、臨場感のある描写によって夫婦間の心の機微を巧みに捉えて描いていることを指摘した。そして『妬記』の出現以降、嫉妬によって殺された妾たちの復讐の念は、儒教道徳の圧力を受けない志怪小説という虚構世界で自由に表現できるようになる。家庭の中で秘されるべき「妬」は、こうして小説のテーマとなって語られ、唐宋代には更に別のテーマと絡み合いながら複雑で膨らみをもった虚構小説へと変わっていく。つまり『妬記』は、嫉妬を小説のテーマの一つへと昇華させ、「妬」が生み出す怪異を語る流れを作った、先駆的な作品であったと指摘した。
著者
入江 啓彰
出版者
近畿大学短期大学部
雑誌
近畿大学短大論集 = The Bulletin of The Junior College of Kinki University (ISSN:03867048)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.1-11, 2015-12-01

[抄録]地域経済の現状を的確に捉えるためには, 客観的な経済統計の利用が欠かせない. なかでも域内総生産は当該地域の経済活動を包括的に捉えることの出来る経済統計である. しかし大阪府では, 大阪市を除いて府下市町村での域内総生産(市町村 GRP)の推計は行われていない. 本稿では, 他県での推計事例や先行研究を参考に, 独自に大阪府下の市町村 GRP の長期推計を行った. 推計結果から, 大阪府経済の長期低迷の主因は大阪市であること, 大阪市以外では, 府北東部の市は停滞しているが, 府南部の第二次産業比率の高い市町村が大阪経済を下支えしていたことがわかった. また推計結果を活用した分析事例として, タイル尺度により地域間格差を計測した. 大阪府の地域間格差は, 労働生産性でみると, 関西国際空港の開港に伴い急拡大したが, その後は縮小してきていることがわかった. [Abstract] In order to accurately grasp the current state of the regional economy, we need economic statistics. In particular, gross regional product(GRP)is economic statistics that can capture comprehensive economic activities in the region. However, in Osaka Prefecture, an estimate of gross regional product of the municipality has not been performed except Osaka City. In this paper, I estimate the long-term gross regional products of municipalities in Osaka Prefecture. According to the estimation results, it is found that a long-term downturn in Osaka economy is mainly attributed to economic stagnation of Osaka City. In addition, from the calculation results of the Theil index, regional inequality of Osaka Prefecture has been found smaller in recent years.
著者
佐藤 直之 Sila Temsiririrkkul Luong Huu Phuc 池田 心
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2016論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.57-64, 2016-10-28

近年,人間らしい挙動をするゲーム人工プレイヤに関する技術が注目されている.古典的ボードゲームだけでなくリアルタイム制のビデオゲームでも研究例が多い.一方で,日本で人気があるゲームジャンルの1つであるシューティングはあまりその対象として注目されてこなかった.シューティングは概して人間による1人用ゲームだが,対戦型シューティングというジャンルがあり,そこではキャラクタの自然で人間らしい動作が求められる.我々はシューティングの既存組み込み人工プレイヤの観察によって,大域的な視野の不足や精密に過ぎる動作,細かな振動の動作は,人間らしくない印象を与える要因であると考えた.そこで我々は十分に遠い先を読む探索と,弾の将来の位置予測を反映したInfluenceMap の併用でキャラクタの大域的で精密すぎない動きの実現法を提案した.またキャラクタの動作を複数フレームにまたがり固定する事で細かな振動を抑制した.この実装と被験者実験により,この手法の有効性を確かめた.
著者
保坂 大樹 河部 瞭太 山下 遥 後藤 正幸
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.1390-1402, 2019-08-15

近年,消費者のWebサイト閲覧行動は重要なマーケティング分析の対象となっている.サイトの閲覧行動を分析することで,サイト間の関係性やユーザの嗜好を把握し,Web広告の掲載やメールの配信などのマーケティング施策の最適化や効率化が可能となるためである.しかし,蓄積されたWeb閲覧履歴データ中のサイトやユーザの関係性は複雑であり,サイト単位やユーザ単位の分析が困難となる場合が多い.したがって,そのような状況においても適用可能,かつ有効な分析手法が望まれている.本研究では,単語の意味分析において良い性能を示しているWord2vecとその拡張モデルに基づき,各サイトや各ユーザをそれぞれ意味空間上の多次元正規分布として表現するとともに,意味空間上のサイトやユーザの関係性に基づいて分析を行うための手法を提案する.学習された意味空間上の表現を用いた分析により,単純な閲覧,被閲覧の関係ではなく,閲覧行動の背後に存在するサイトやユーザの潜在的な特性や関係性を把握することが可能となる.また,提案手法では,サイトやユーザが持つ性質の広がりが多次元正規分布の分散行列として学習される.最後に,提案手法の有効性を検証するために,実際の閲覧履歴データ分析に適用し,得られる結果に関する考察を与える.さらに,分散行列をサイトの閲覧者の多様性,またはユーザの嗜好の多様性として解釈し,より詳細な分析が行えることを示す.
著者
久保 尋之 土橋 宜典 津田 順平 森島 繁生
雑誌
研究報告 グラフィクスとCAD(CG)
巻号頁・発行日
vol.2011-CG-143, no.2, pp.1-6, 2011-06-20

人間の肌のような半透明物体のリアルな質感を再現するためには、表面下散乱を考慮して描画することが必要不可欠である。そこで本研究では半透明物体の高速描画を目的とし、曲率に依存する反射関数 (CDRF) を提案する。実際の映像作品ではキャラクタの肌はそれぞれに特徴的で誇張した表現手法がとられるため、本研究では材質の散乱特性の調整だけでなく、曲率自体を強調する手法を導入することで、表面下散乱の影響が誇張された印象的な肌を表現可能なスキンシェーダを実現する。
著者
塚田 武志 小林 直樹
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.31-47, 2011-03-25

言語の包含判定問題とは,与えられた言語 L1 と L2 について L1 ⊆ L2 が成立するか否かを判定する問題であり,理論的な興味の対象であるだけでなく,プログラム検証などへの広い応用を持つ重要な問題である.この問題に関する既知の最も強い結果の 1 つが文脈自由言語と超決定性言語の包含判定の決定可能性である.このオリジナルの証明は,Greibach と Friedman によって与えられている.我々はこの問題に対して,小林らによって提案されている型に基づく言語の包含判定の手法を適用し,決定可能性に対する別証明を与えた.この手法は以下のような利点を持つ.(1) 部分型関係やポンプの補題などのよく知られた概念で理論が展開できる.(2) 型推論を効率的に行う方法は多数提案されており,それらを利用することができる.また,提案する証明は小林らのアイデアを正規言語よりも広いクラスに適用したはじめての例であり,その他の非正規言語クラスへの応用も期待される.