著者
森村 進
出版者
日本法哲学会
雑誌
法哲学年報 (ISSN:03872890)
巻号頁・発行日
vol.1987, pp.74-92, 1988-10-25 (Released:2008-11-17)
参考文献数
22
著者
宇津川 喬子 白井 正明
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.89, no.6, pp.329-346, 2016-11-01 (Released:2019-10-05)
参考文献数
87
被引用文献数
2

粒子形状の研究は理学・工学のさまざまな分野で行われているが,長年にわたる用語の不統一や,近年における画像解析を中心としたデジタルな手法への移行といった傾向があることから,研究の現状を整理する必要がある.本稿では砕屑物の形状,特に昨今注目される「円磨度」に焦点をあて,20世紀以降の研究史を紹介する.円磨度は,半世紀以上前に提案された定義や階級区分が今日でも多用されている.中でも,短時間で半定量的に円磨度を計測できるKrumbeinの円磨度印象図は今後も活用が見込まれることから,より再現性の高い測定を行うための補助フローチャートを提案した.また,2Dおよび3D画像解析では高解像度化に伴う粒子の輪郭の評価が焦点となることから,曖昧であった円磨度と表面構造の境界を再定義した.今後,画像解析は円磨度を含めた形状研究の主軸となる可能性が高く,画像解析に対応した粒子形状の評価方法をさらに議論する必要がある.
著者
矢ケ﨑 典隆
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.83-101, 2015-03-01 (Released:2019-10-05)
参考文献数
64
被引用文献数
1

地誌学は地域を説明するための考察の枠組を提示し,地域スケールに応じた地域像を描くことを目的とする.今日,地誌学を再評価・再構築することが急務である.そこでアメリカ地誌の新しい方法を提示するために,自然と人間,起源と伝播,地域と景観,時間と変化に着目した.コロンブスの到来以降,アメリカ先住民の世界は大きく改変され,北東部には北西ヨーロッパ系小農経済文化地域,南東部にはプランテーション経済文化地域,南西部にはイベリア系牧畜経済文化地域が形成された.19世紀後半に北西ヨーロッパ系小農経済文化地域が全土に拡大した.そして20世紀に入って1960年代末までにアメリカ的生活・生産様式が確立し,1970年代以降,アメリカ型多民族社会・分断社会が形成された.21世紀のアメリカの地域像を描くためには,「世界の博物館アメリカ」という考察の枠組が有効である.アメリカ地誌には探検と発見の可能性に満ちた魅力的なフロンティアが存在する.
著者
小坂 英輝 楮原 京子 今泉 俊文 三輪 敦志 阿部 恒平
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.86, no.6, pp.493-504, 2013-11-01 (Released:2017-12-08)
参考文献数
16

本論では,平野側に大きく湾曲する形状をもつ逆断層のセグメンテーションを検討するために,北上低地西縁断層帯・上平断層群南端部に発見されていた断層露頭を精査した.また,断層露頭周辺の断層変位地形の記載をあわせて行い,断層活動履歴,平均上下変位速度および単位実変位量を求めた.断層露頭の断層は,新第三系の凝灰岩が段丘堆積物に対して48°以上の高角度で衝上する構造をもち,右横ずれ変位を伴う逆断層である.その断層活動は最終氷期後期以降に少なくとも4回,平均上下変位速度は0.3±0.1 m/千年程度,単位実変位量は2.4~3.4 mと推定される.これらの諸元は上平断層群中央部のそれらと同等であり,上平断層群南端は断層セグメントにおいて活動度が低くなるとされる断層末端の特徴を有しない.すなわち,湾曲という断層の平面形態は必ずしも断層セグメントの認定基準にならないことを示唆している.
著者
平田 航 日下 博幸
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.86, no.4, pp.338-353, 2013-07-01 (Released:2017-12-05)
参考文献数
17
被引用文献数
2

「二つ玉低気圧型」は日本で有名な気圧配置の一つで,全国各地に大雨や強風をもたらしやすいと言われている.本研究では二つ玉低気圧を並進タイプ,日本海低気圧メインタイプ,南岸低気圧メインタイプの三つに分類し,降水量や降水の強さ,降雪の深さについて気候学的解析を行った.また,比較のために一般的な日本海低気圧と南岸低気圧についても同様の解析を行った.並進タイプは全国に降水をもたらし,日本の南岸で降水量が多い.日本海低気圧メインタイプでは全国的に降水量が少ないが,本州の日本海側で冬季にふぶきとなりやすい特徴があった.南岸低気圧メインタイプは日本の南岸と北陸地方で特に多くの降水をもたらし,冬季には比較的広い範囲に降雪をもたらす.二つ玉低気圧3タイプで降水分布に生じる違いは,前線の有無に依存する.さらに,二つ玉低気圧が強雨をもたらすときは,南側の低気圧が日本列島により近いコースをとることがわかった.
著者
片岡 健
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.158-172, 2013-03-01 (Released:2017-12-02)
参考文献数
25
被引用文献数
2 3

本研究では,土佐国の長宗我部氏の市町であった岡豊新町を復原した.従来の研究成果を踏まえ明治期地籍図の地筆を基に,天正期『長宗我部地検帳』と明治期土地台帳の記載面積を使用して比定地の地割を再検討した.さらに,同時代史料により岡豊新町周辺の河道を復原して比定地との整合性を検討した.『長宗我部地検帳』と明治期土地台帳の比較によると,『長宗我部地検帳』の測量精度は高い.そこで,地籍図に示される地割のみでなく,天正期以降に地割が再施工された可能性を考慮して,地筆ごとの面積に基づいて屋敷地レベルで比定した.本稿の手法は,発掘成果のない状況で精緻な景観復原を可能にし,さらに,文献史料を基に地割の存続した時期を検討する一つの可能性を示すものである.検討の結果,岡豊新町西部分は定説より南に存在するという新しい復原案を示すことができた.岡豊新町の東町の地割は16世紀後半の景観を反映しており,それが明治期まで残存していた.
著者
三木 理史
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.85, no.6, pp.618-632, 2012-11-01 (Released:2017-11-16)
参考文献数
47

本稿の課題は,「群馬県庁文書」の活用によって,1910年利根川大水害の罹災者の対応を,移住者送出に視点を据えて明らかにし,これまでの移民研究の空隙を埋めることにある.本稿は,群馬県多野郡の朝鮮移住と全県的に推進された北海道移住に重点を置いて考察を行った.群馬県は,商品作物生産が盛んで,かつ農業外労働市場が豊富なため,元来移住者送出数が少なかった.多野郡では,出身者の日向輝武の勧誘活動により,1900年代初めから移住者送出が本格化していたところへ大水害が発生した.しかし,同郡罹災者に東拓の朝鮮移住情報は浸透せず,彼らは新聞広告から情報を得て渡航した.一方,県主導の北海道移住では,義捐金からの補助金拠出に加え,日下部宗三郎ら地元の先駆的移住者の積極的勧誘が促進要因であった.その結果,全般に死者が少なく,耕地や家屋の被害多大な地域で移住者送出依存の高かったことが明らかとなった.
著者
埴淵 知哉 中谷 友樹 村中 亮夫 花岡 和聖
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.85, no.5, pp.447-467, 2012-09-01 (Released:2017-11-10)
参考文献数
33
被引用文献数
1 4

社会調査の回収率は,標本から母集団の傾向や地域差を適切に推定するための重要な指標である.本研究では,回収率の地域差とその規定要因を明らかにすることを目的として,全国規模の訪問面接・留置調査を実施しているJGSS(日本版総合的社会調査)の回収状況個票データを分析した.接触成功および協力獲得という二段階のプロセスを区分した分析の結果,接触成功率・協力獲得率には都市化度や地区類型によって大きな地域差がみられた.この地域差は,個人属性や住宅の種類などの交絡因子,さらに調査地点内におけるサンプルの相関を考慮した多変量解析(マルチレベル分析)によっても確認された.したがって,回収状況は個人だけでなく地域特性によっても規定されていることが示された.しかし,接触成功率・協力獲得率には説明されない調査地点間のばらつきが残されており,その理由の一つとして,ローカルな調査環境とでも呼びうる地域固有の文脈的要因の存在も示唆された.
著者
宋 明杰 阿部 康久
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.214-235, 2012-05-01 (Released:2017-10-07)
参考文献数
40
被引用文献数
2

本稿では,中国の自動車メーカーにおける部品の発注方式の変化について明らかにした上で,このような変化がサプライヤーの選択や分布にどのような影響を与えたのかという点について検討した.調査対象として大手民営メーカーである吉利汽車の低価格車と中高級車を事例として分析を行った.中国メーカーの発注方式は,サプライヤー間の競争を促し,調達コストを下げるために複数のサプライヤーから調達する複社発注が一般的であった.これに対して吉利では,近年,開発・生産を始めた中高級車の場合,外資系(特に日系)完成車メーカーと同様に,各部品に対して一つのサプライヤーから部品を調達する一社発注を行う例が増加している.加えて,高い技術力を持つ大手サプライヤーから一次部品に近いものを一括発注する例が増えており,品質が向上した反面,調達コストは上昇している.サプライヤー分布を見ると,特に高付加価値部品については,省内の中小サプライヤーからの調達は減少し,長江デルタ内外にある外資系等の大手サプライヤーから調達するようになっており,サプライヤーの分布は広域化している.
著者
岡部 遊志
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.193-213, 2012-05-01 (Released:2017-10-07)
参考文献数
35

本稿ではフランシュ・コンテ地域圏を事例として,多層化した政府間関係に注目しながら,競争力に重点を置いた地域政策の展開を分析する.地域政策の制度的側面に関して,権限は地域圏政府とグラン・ブザンソンに配分されているが,予算的な裏付けは地域圏政府のみにあり,政府間関係は地域圏政府を中心に成り立っている.実際においては,地域圏政府が競争力発揮の可能性が高い地域を支援し,他の地域には,その他の主体が予算負担することで配慮がなされ,結果として,地域圏内全体として競争力の向上が図られるかたちになっている.逆に実際の産業の転換に際しては,地域圏政府以外の主体も大きく関わっている.地域の中心的産業であった時計産業の衰退に対して,フランシュ・コンテ地域圏では多くの行政主体が関わってマイクロテクニクス産業への転換を促している.こうした方向への合意は必ずしも十分ではなかったが,地域圏政府などに刺激され,企業や研究機関,地方行政主体などが産地形成に向かって一体となって動いている.
著者
外枦保 大介
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.40-57, 2012-01-01 (Released:2016-12-01)
参考文献数
115
被引用文献数
2 2

本稿の目的は,進化経済地理学の主要業績を読み解くことを通じて,進化経済地理学の発展経路を探索し,今後の可能性を検討することである.進化経済学は,ルーティンを鍵概念として議論を展開しており,議論の特徴の一つである方法論的な多様性や開放性は,進化経済地理学に受け継がれている.重層的空間スケールにおける経済システムの進化を議論する進化経済地理学のうち,本稿では,経路依存性と一般ダーウィニズムのアプローチの議論動向を取り扱った.前者のアプローチでは,地域の発展経路を描く手法が開発される一方で,経路依存性と均衡・非均衡との関係が再考されている.後者のアプローチでは,生物学の概念が導入され,特に「関連した多様性」は関心を呼んでいる.今後の可能性として,理論と実証をつなぐ中間概念の整備,有意義な事例研究の蓄積と既存研究の再評価,重層的な空間スケールにおける多様な主体の進化を取り扱うことを指摘した.
著者
畠山 輝雄
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.22-39, 2012-01-01 (Released:2016-12-01)
参考文献数
28
被引用文献数
5 6

本稿は,2006年の介護保険制度改正に伴い新設された地域密着型サービスの地域差の実態とその要因について明らかにした.地域密着型サービスの地域差は,従来の介護保険サービスに比べて大きく,小規模市町村を中心としたサービスの未実施市町村と,充足指数の高い人口1~5万人程度の中規模町村の存在が要因となって生じていた.サービスの未実施市町村は小規模市町村に多いが,これは市町村による整備目標の未設定という,市町村の意向が反映された結果である.一方で大都市圏の中核都市では整備目標を設定したにもかかわらず,事業の採算性を考慮した事業者の消極的な参入という,事業者の地域的な参入行動が大きく影響していた.このように,サービスの地域差には市町村施策が少なからず影響しているものの,最終的なサービス供給量を規定している事業者の参入行動が大きな影響を与えていることが明らかとなった.
著者
高阪 宏行
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.572-591, 2011-11-01 (Released:2016-09-29)
参考文献数
22
被引用文献数
5 3

本研究は,東京都のNTTタウンページデータベースに掲載されている164種類の約25万店舗に対し,近接性と集積量の2基準から商業集積地を設定し,GISを利用して商業集積地の規模,機能構成,分布を解明することを目的とする.東京都では1,143の商業集積地が設定され,規模に基づき5階層に区分された.最高位の商業集積地数は10,高位が13,上位が46,中位が269,低位が805識別された.階層ごとに商業集積地の機能構成を分析した結果,階層の制約を受けて立地する機能が125種類存在した.階層の制約を受けずに立地する店舗種類は39種類見出され,いずれの階層においても店舗の約40%を占めていた.さらに,立地パターンとしては,区部では最高位・高位・上位の商業集積地は分散分布をとり,区部と多摩地域の低位の商業集積地は,集塊分布であった.また,豊島区を例に,供給の地理を商店街レベルと店舗レベルで再現できた.