- 著者
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前島 伸一郎
土肥 信之
梶原 敏夫
佐野 公俊
神野 哲夫
- 出版者
- 一般社団法人 日本脳卒中学会
- 雑誌
- 脳卒中 (ISSN:09120726)
- 巻号頁・発行日
- vol.12, no.5, pp.480-483, 1990-10-25 (Released:2009-09-03)
- 参考文献数
- 9
- 被引用文献数
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混合型超皮質性失語を呈した1例を報告し, 局所脳血流からみた責任病巣と発現機序について考察した.症例は67歳の右利き女性で, 左内頚動脈・前脈絡叢動脈分岐部の動脈瘤クリッピング術後, 右片麻痺と失語症のリハビリ目的で当科を受診した.初診時, 意識は清明で, 右顔面神経麻痺と右片麻痺を認め, 右半身の知覚鈍麻を認めた.言語学的には自発話に乏しく, 呼称や語の想起は著しく障害をうけていた.しかし復唱は良好で, 5~6語の短文でも可能であった.言語の聴覚的理解や文字の視覚的理解はともに単語レベルで障害をうけ, 書字は全く不可能であった.CTでは左前脈絡叢動脈領域に低吸収域を認めたほか, 左中前頭回皮質~皮質下にも低吸収域を認めた。123I-IMP SPECTでは左大脳半球全体に血流低下を認めるが, 言語野周囲の血流は比較的保たれていた.本症例は言語野が2ヵ所の病変によって周辺の大脳皮質から孤立した状態であると推定された.