著者
湯田聴夫 小野 直亮 藤原 義久
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.865-874, 2006-03-15
参考文献数
13
被引用文献数
31

ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS: Social Networking Services)というWeb 上でのサービスが世界中で急激な拡大を続けている.SNS においては,先行研究では把握が困難な,相互認証された友人関係という人的ネットワークが大規模に顕在化している.本報告では,日本最大規模のSNS であるmixi(ミクシィ)の2005 年2 月15 日時点における36 万ノード・190 万リンクの人的ネットワークを分析した.基本的なネットワーク解析結果として,次数のゆるやかなスケールフリー性,高い凝集性が確認された.構造を視認するために粗視化を行った.近年開発された解析アルゴリズムを適用し部分的なつながり(link)が密になっている高密度集団(community)を抽出した.解析結果から独特な内部構造が視覚的に確認された.高密度集団は規模別に大中小の3 種類に大別された.詳細に高密度集団の人数のばらつきを調べると,集団の人数に全体のトレンドとしてZipf則が見いだされた.そして100 人から300 人ほどの高密度集団が分離されず,100 人以下から,300人以上の集団へとサイズがスキップするという現象を発見した.発見された内部構造は,既存のモデルでは説明できない独特のものであることを確認した.新しいコミュニケーション・インフラへの進化も期待できるSNS,その研究の端緒を報告する.Social Networking Services (SNS) have recently prevailed all over the World Wide Web. People grow up connections by making a tie to another who acknowledges as being a friend. Such a giant network of people, with each link being a mutually acknowledged friendship, has not ever been under previous investigation. This work analyzed the largest SNS in japan, called mixi, comprised of 360,000 nodes and 1.9million links as of February 15, 2005. Our analysis shows scale-free distribution of degree in its tail, and high cliquishness. To observe structure by coarse-graining, we employed a community (highly intra-connected group) extracting method developed by other researchers. As a result, we uncovered three classes of communities according to size. Overall rank-size plot shows Zipf's law for community-size distribution. Nevertheless, we found the existence of a skip in size, which implies absence of community between 100 and 300 in the number of people. This structure cannot be explained by models such as preferential attachment nor connecting nearest neighbor. We report some results of our analysis in anticipation to future advent and development of SNS as an innovative human communication infrastructure.
著者
永崎 研宣
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.105, pp.17-24, 2005-10-28
参考文献数
42
被引用文献数
2

「デジタルアーカイブ」という言葉が登場し、人口に膾炙するようになったのはこの10年程のことである。文化資産をデジタル化して、記録し、発信するという営み自体はそれ以前より行なわれてきている。しかしながら、かつては、学術利用のために学術的価値のある資料を蓄積・公開したり、博物館・美術館が所蔵資料をデジタル化するといったものが主流だったのに対して、「デジタルアーカイブ」の登場以後は、文化資産の「正しい継承」や商業的利用にも重きが置かれるようになった。デジタルアーカイブはその性質上、評価や批判が容易ではないが、各々の合目的性に基づいて評価し、建設的に批判するための枠組みが必要である。Digital Archives have appeard and spread rapidly in these ten years. We have continued to digitize, store and publish intellectual properties for twenty years or more. At the beginning, scholars dealt with academic materials for their own research and museums digitized their own materials using databases. However, after "Digital Archives" appeared, new concepts such as orthodox succession of culture and commercial use have become the mainstream. It is difficult to evaluate or criticize digital archives, but we must do so for each digital archive based on its particular purpose.
著者
三浦 麻子 川浦 康至
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.233-245, 2008
被引用文献数
10

Web-based knowledge-sharing communities, which are supported by countless voluntary Internet users, are in widespread use today. We explored a number of characteristics of interpersonal communication among participants based on their questioning and answering behaviors. A questionnaire survey on participants of Yahoo! Chiebukuro, one of the most popular knowledge-sharing communities in Japan, was conducted, and access data of their behavior in the community were collected. Based on 7,989 survey samples and access data, we found that there were several significant differences in their behavior and motivation based on their participation style, question content, and gender. Results also suggested that information was exchanged and accumulated actively in the community and interpersonal communication of community participants was developed by an aggressive need for information acquisition and subsequent social support.
著者
FRIGO M
雑誌
Proceedings of the IEEE
巻号頁・発行日
vol.93, no.2, pp.216-231, 2005
被引用文献数
14 3220
著者
橋本 幸士
出版者
西筑摩書房
雑誌
シャ-ロック・ホ-ムズ紀要
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.14-20, 1996-05
著者
森村 進
出版者
神奈川大学
雑誌
神奈川法学 (ISSN:0453185X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.p277-287, 1986
著者
シュバイカ マーセル 宿谷 昌則
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.73, no.633, pp.1275-1282, 2008-11-30
参考文献数
19
被引用文献数
1

1.はじめに建物外皮や暖冷房設備のようなハードウェアだけではなく、住まい手の行動のようなソフトウェアも、建築環境システムのエクセルギー消費に大きな影響を及ぼす。エクセルギーはシステム内外で起きる消費を明示する概念である。ハードウェアについては多くの研究があるが、ソフトウェアについては研究事例がまだ少ない。これらの事例では、放射温度・気温・湿度の他に住まい手にかかわる情報として快適さの度合いや着衣・代謝・体重などが調査されている。実際には、室内熱環境の快適条件を達成するための行動の選択が住まい手にはある。例えば、冷房のスイッチを入れるか、あるいは通風のために窓を開けるのかは、建築環境システムのエクセルギー消費パターンに大きな影響を及ぼす。そこで、本研究では、住まい手の選択に影響を及ぼす要因を見い出すことを試みた。行動選択の要因が明らかになれば、快適さを犠牲にせず、しかも小さなエクセルギー消費ですごせるように住まい手を導くことができると考えられる。2.熱環境の測定方法と調査対象者のプロフィル本研究における熱環境物理量の測定と熱環境調整行動の調査は、2007年夏に東京都内にある320部屋をもつ国際留学生会館で行なった。各部屋の床面積は15m^2で、通路側にドアが一つそして反対側に窓が一つある。各部屋には冷暖房装置が一台ずつ設置されている。今回の測定と調査に加わることを同意した39人の学生の出身は27ヶ国に及び、彼らは3か月から20か月前に日本に来ている。最初に、現在の行動とその背景・好み・知識について英語で書かれた35の質問から成る質問紙調査を行なった。次に、温湿度センサー1台と窓の開閉が記録できるセンサー1台を受け取ることに同意した学生に対して、部屋を快適に保つための夏における行動についてのインタビューを行なった。さらに、この39人の居住する部屋内の温湿度データを6月末から8,月上旬まで6週間にわたって2分間隔で記録収集し、屋外の温湿度・風速・日射量も同様にして測定した。図2に、測定期間における外気温と学生室の室内空気温を示す。Nicolらが示した適応的快適さ範囲も描き込んでみたところ、たとえば、学生Aは適応的快適さ範囲に室内空気温が入っていてもいなくても、冷房を使用せず、学生Bは頻繁に使用していることが分かった。表1は、各階や各方位によって室内温湿度の平均・最高・最低\分散を示す。室内の温度は平均値で、室外より5℃程度高かった。3.エアコン冷房の使用パターンエアコン冷房の使用パターンを明らかにするために、まず最初に各学生が冷房をいつつけるか、そしてどのぐらいの間つけ続けるかを分析した。Nicolが示した方法にしたがって、外気温と関係づけて冷房の使用パターンを分析することにした。図3は、冷房システムをつけている人々の割合と外気温の関係、図4は、冷房システムをつけている時間割合と外気温の関係を示す。これらの関係を、1日24時間、0:00〜8:00、8:00〜18:00、18:00〜0:00の4っの時間帯ごとにロジット曲線で表したところ、その時間帯の平均外気温が27℃で75%の人たちが60%の時間割合で冷房を使用していることが分かった。寮という建物用途から、0時〜8時の時間帯における人数割合と使用時間割合が8時〜18時や18時〜0時の時間帯より大きいことが分かった。図5に示す通り、個々の学生についてロジット曲線を求めると、大きな相違が現れる。これらの相違が何に起因しているのかを見い出すために、学生を四つのグループN・E・L・Aに分類して考察した。Nは暑くても決して冷房を使用せず、暑すぎるようなら、場所を移動するような行動パターンの人たち。Eは、扇風機などでは効果がないときだけ冷房を使用する人たち。Lは、冷房を使用したくないが、他の策を試みる前にそれを使用する人たち。Aは、冷房が必要ではないような条件でも冷房をつける人たちである。図6には、グループN・E・L・Aのロジット曲線はグループ毎の特徴をある程度を表す。例えば、Aは同じ外気温度に対してL・E・Nに比べて冷房を使用する可能性が40%〜60%大きいことが分かる。4.エアコン冷房の使用パターンを決定する要因の考察3.の結果に基づいて、質問紙調査から得られた答えがグループN・E・L・Aの行動パターンにどのように関連しているかを分析した。要因として6つを取り上げた。夜間のエアコン冷房の好き嫌い、エアコン冷房の効果、窓開けの効果、窓閉めの効果、出身地の気候、環境調整のパッシブ手法、性別の7つである。これらの要因ごとに統計的検定を行なって、取り上げた要因が有意かどうかを調べた。図7-aを見ると、エアコン冷房の好き嫌いは、冷房を頻繁につけるかどうかに重要な影響があること、図7-bからdを見ると、LとAは、冷房によって得られる快適さを十分に信頼しており、窓開けのような行為をあまり信頼していないこと、その一方で、NとEは、その反対を信頼していることが分かる。このような結果となったのは、冷房を使用している人は窓開けによる通風の経験がほとんどないからかもしれない。気候については、Koeppenの気候地図17)にしたがって学生を分類した。図7-eにより、暑熱湿潤気候で育った学生は、実測期間中に現われた条件になじみがあり、その多くがグループAに属していることがわかった。その理由は、出身地においてエアコン冷房が一般によく使用されているからと思われる。熱く乾燥した国から来ている学生は、グループNとEに属していることが多かった。それらの国では伝統的な生活様式がかなり残っており、そのことが大きく影響した可能性が高い。寒冷な気候で育った学生はグループLに入っていることが多かった。彼らは実測期間に現われた暑熱湿潤の環境条件に適応するようなパッシブ手法による環境調整の方法を学ぶことがなかったため、エアコン冷房をつけるのが一番簡単な方法とみなしてすぐに使用することにしたのかもしれない。図7-fに示すように、蒸発冷却・自然換気・日よけのようなパッシブ方法の知識と実際の行動とには関連性は見ることができなかった。図7-gにより、性による行動の違いがない。5.まとめ東京における夏の条件で、ある留学生会館に住む40人ほどの学生を対象にして、居室内の熱環境測定と環境調整行動の質問紙調査を行ない、その結果を分析したところ、ロジット曲線のモデルが冷房使用パターンの記述に利用できそうなことが分かった。エアコン冷房の使用パターンに影響すると考えられる要因を7つ取り上げ分析したところ、エアコン冷房の好みや出身地の気候、出身地におけるエアコン冷房の普及の程度などでがエアコン冷房の使用パターンに強く影響するらしいことが読み取れた。今後の課題は建築環境調整のためのエクセルギー消費を減らすために住まい手の行動を変えることは可能であるかどうかを調査することである。