- 著者
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山内 邦男
- 出版者
- 公益社団法人 日本農芸化学会
- 雑誌
- 日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
- 巻号頁・発行日
- vol.34, no.3, pp.240-245, 1960 (Released:2008-11-21)
- 参考文献数
- 25
- 被引用文献数
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レンニンによる凝固の諸過程にある脱脂乳即ち, (1) レンニン無添加脱脂乳, (2) 2°でレンニン添加後未放置の脱脂乳, (3) 2°でレンニン添加後一昼夜放置した脱脂乳,及び(4) 35°でレンニン凝固させた脱脂乳を低温で超遠心分離し(78,000G, 60分),上澄液に残留するレンニン効力,窒素,カルシウム及び燐を定量した.同様の実験をカルシウムを添加した脱脂乳についても行った.上澄液のレンニン効力から求めると,添加したレンニンの約1/2が沈澱として除かれる計算となり,これはおそらくカゼインミセルとの会合によるものと推定された.上澄液に残るレンニン効力は(2), (3)及び(4)において差は認められなかった.カルシウム無添加脱脂乳では全カゼインの約10%がprimary reaction完結後の上澄液(3)にもなお残留した,レンニン作用により全カゼインの約1%の非蛋白態窒素及び約4%の非カゼイン態窒素が生成した.沈澱のカルシウム/窒素比及び燐/窒素比は(1), (2), (3)及び(4)においてそれぞれ有意な差はないようであった.更に凝固生成後のカードの硬化と収縮とはレンニンの継続的作用とは無関係に起る非酵素的変化であることを馬血清を用いた阻害実験で確認した.