著者
木元 幸一 林 あつみ 草間 正夫 菅原 龍幸 青柳 康夫
出版者
日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.43-48, 1994
被引用文献数
1 4

茶碗蒸しを作るときにキノコなどを入れる場合が多いが, そのときにマイタケを入れた場合, 茶碗蒸しが固まらなくなってしまうことにより, マイタケ中に存在するプロテアーゼに着目した。マイタケ中より数種のプロテアーゼを同定し, 卵白の加熱凝固阻止や, 卵白アルブミンの加熱分解への作用を調べ, 酵素的性質も明らかにした。<BR>オボアルブミンは, 卵白中に50%以上を占める加熱凝固に関わるタンパク質である。SDS-電気泳動により, オボアルブミンの分解パターンを調べたところ, 中性域と酸性域でよく分解されることが観察され, 中性プロテアーゼと酸性プロテアーゼの存在が示唆された。マイタケ抽出液のDEAE-セルロースとSephadex-G75によるゲル濾過によりプロテアーゼA, B, Cと酸性プロテアーゼが同定された。プロテアーゼAは分子量約20,000と推定され, すでに橋本らに報告されているメタルプロテアーゼと良く似た性質を示した。プロテアーゼBについては, 分子量がプロテアーゼAのおよそ2倍の約45,000と推定された。この点は, 橋本らが報告したものとは異なっており, 至適pHも7と中性的であったが, やはりメタルプロテアーゼと思われる。プロテアーゼCについては, Bと同じ分子量であったが, 至適pHは6付近であった。酸性プロテアーゼはペプスタチンで阻害される典型的なカルボキシルプロテアーゼで, 分子量は約45,000と推定された。<BR>プロテアーゼA, B, Cは, いずれもオボアルブミンを分解したが, 卵白に対しては単独では凝固阻止は見られなかった。しかし, 三種のプロテアーゼを混合すると, 凝固が妨げられた。以上, マイタケ中に未知の新たなプロテアーゼが存在することを見出し, また, 卵白の加熱凝固阻止作用についてはマイタケ中のプロテアーゼが共同で関わっていることが明らかにされた。
著者
森 梓 濱 龍太郎 原田 篤 高久 由香里 橋本 敦史
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第33回全国大会(2019)
巻号頁・発行日
pp.2J3J1304, 2019 (Released:2019-06-01)

本報は、調理動画を対象とした深層学習による物体検出の応用と時系列データの分析に関するものである。私たちの最終目標はパーソナライズされたキッチンの提案であり、そのためにこれまでは目視観察とスプレッドシートソフトウェアを用いた分析を行ってきた。しかし、この従来の手法は十分な精密さと被験者数を得るために膨大な工数がかかった。然して分析視点も限定的にならざるを得なかった。そこで私たちは自動化ツールとして深層学習による物体検出を導入した。約90種類の物体を含む一連の調理動画に対して物体検出を適用し、Pythonを用いてデータ抽出と分析を行い、シンクエリアにおける物体検出数の時系列データが3パターンに分類されることを発見した。この発見は、パーソナライズされたキッチンの提案に向けた調理パターンの理解に貢献する。
著者
石黒 初紀 阿部 加奈子 辰口 直子 蒋 麗華 久保田 紀久枝 渋川 祥子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.95-103, 2005

一般には炭火で調理されたものがおいしいと評価されることは多いがその根拠は明らかにされていない.そこで, 伝熱量および放射の割合を同等にした数種の熱源で鶏肉を焙焼し, 官能検査, においの成分分析を行った.さらに, 試料を焙焼する熱源から発生する燃焼ガスの成分分析を行った.官能検査の結果, においと総合的評価は[炭火焼き]と[ガス網焼き]を比較すると, 有意差は認められなかったが[炭火焼き]が好まれる傾向がみられ, さらにその匂いの差は識別できるものであった.そこで, においについて機器測定を行った.<BR>その結果, エレクトロニック・ノーズによる分析結果からセンサーが測定できるにおい成分の量は[ガス直火焼き], [ガス網焼き], [ヒーター焼き]は同等であるが, [炭火焼き]は他の熱源のものより低いことがわかった.このため, 炭火加熱により生じたにおいに何らかの違いがあることが考えられた.また, GCMSによる分析結果から, 官能検査により炭火加熱をした鶏肉の方が好まれた要因は, 香気成分組成において好ましくないにおいを持つ脂肪族アルデヒド類の割合が焼き網に比べ少なく, 香ばしい香りを有するピラジン類やピロール類の割合が多いためと考えられた.<BR>鶏肉の焙焼香の違いの原因は, 燃焼ガスにあるのではないかと考え, 燃焼ガスの測定を行った.その結果, 炭の燃焼ガスには, 焼き網よりも還元性の強い一酸化炭素や水素が多く含まれ, 酸素の含有量が少なかった.<BR>なお, この燃焼ガスの組成の違いと香気成分の生成との詳細な関連についてはさらなる検討が必要である.
著者
西谷 陽志 坂井 瑠実 申 曽洙 森上 辰哉 清水 康 稲田 紘
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.287-295, 2010-03-28 (Released:2010-04-28)
参考文献数
18
被引用文献数
1 6

透析患者に対し,治療を円滑に行うために必要なシャントの日常管理のうちでも,特に狭窄の診断は極めて重要である.シャント音の聴診はシャント狭窄を簡便に診断する方法として日常的に用いられている.臨床経験上,狭窄の進行に伴って高調なシャント音が聴診されることが知られているが,この診断には客観的な基準がなく,聴診者の主観に頼っているのが現状である.そこでわれわれはこの診断基準の確立に向けた基礎的研究として,シャント音を周波数解析し,狭窄度と周波数スペクトルの関係について解明することを試みた.方法としては,まず患者のシャント(動静脈吻合)の吻合部より中枢部に向けて3~6箇所の部位で複数のシャント音を記録し,短時間フーリエ変換により周波数スペクトルを算出した.次にシャント狭窄度とシャント音の周波数スペクトルとの関係をスペクトルの平均値の有意差により解析した.その結果,吻合部(シャント狭窄部より上流域)および狭窄部上では,狭窄の進行に伴い高周波数帯域のスペクトルの割合が有意に大きいことが確認された.一方,中央部(狭窄部より下流域)では基本的に狭窄度と周波数帯域との間に有意差は確認できなかったが,狭窄部直後の部位については中間周波数帯域のスペクトルを中心に有意に大きくなることが確認された.流体力学理論上,特に吻合部,狭窄部,また,狭窄部直後の中央部では狭窄の進行に伴って乱流が発生し,その影響で高周波数帯域のスペクトルが上昇するものと考えられる.以上の結果から,シャント音による客観的な狭窄度診断のアルゴリズムが確立できることが期待された.

1 0 0 0 OA 福博誌

著者
伊東尾四郎 著
出版者
森岡書店
巻号頁・発行日
1902
著者
中井 厳規 草苅 仁
出版者
日本農業経済学会
雑誌
農業経済研究 (ISSN:03873234)
巻号頁・発行日
vol.89, no.3, pp.226-229, 2017-12-25 (Released:2019-08-21)
参考文献数
11

The objective of this study is to compare the characteristics of food consumption in fatherless and motherless households by examining expenditure elasticities of their household food consumption. Expenditure elasticities are estimated with Engel functions using corresponding data from the National Survey of Family Income and Expenditure. The main finding of this study suggests that motherless households spend relatively more money for eating out, so as to save time. In other words, motherless households deeply depend on outsourcing their meals. On the other hand, fatherless households tend to eat homemade meals mainly for the purpose of saving money.

1 0 0 0 OA 丹鶴叢書

著者
水野忠央 編
出版者
中屋徳兵衛[ほか]
巻号頁・発行日
vol.[91], 0000
著者
余 飛 中谷 礼仁
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.84, no.766, pp.2669-2677, 2019 (Released:2019-12-30)
参考文献数
13
被引用文献数
3

From 1950s to 1980s, in the modern history of China, a significant movement once happened in the ordinary rural areas throughout the whole country, that is People’s Commune. As the precious legacy of the practice of Marxism, it has been researched in a broad range of fields like History, Sociology, Economics and so on. However, in the field of architectural history, the research on the People's Commune still remains a state of blank. The Weixing Commune is known as the first funded People's Commune in 1958 in which a group of architectural professionals from South China University of Technology, which is one of the early-funded architecture school in China whose main staff completed their studies from the western world once took part in the planning and design of it. This paper tries to figure out how they planed the People's Commune, where was their design concept from in the period of social transformation overlapped between Communism and Modernism in 1950s. Through the analysis of the proposal, this study made it clear that facing the new design topic under the ideology of Communism which somehow acted as a political task, the design group tried to use the idea of Neighborhood Unit put forward by an American planner named Clarence Arthur Perry, which is one of the most important concept of modern town planning in 20th century and adjusted it in some way fit to the rural villages to accomplish the spatialization of institution. In conclusion, under the prevailing idea of Modernism in Architecture(1950s), the architects of this case did tried to put forward their proposals in the Commune planning. In the movement of People’s Commune proposed by the Chinese government at that period, most of the Chinese architectural professionals just like the design group from South China University of Technology, did tried to use their knowledge of architecture to change the traditional villages, which somehow acted as a great chance for China to accept the idea of Urban Planning and Moderism architecture from the western world.
著者
久保 勝俊 杉田 好彦 前田 初彦
出版者
日本レーザー歯学会
雑誌
日本レーザー歯学会誌 (ISSN:09177450)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.174-178, 2009-12-01 (Released:2012-04-17)
参考文献数
17
被引用文献数
2

Since the laser was developed in 1960,its applying to optical communication and medical practice has been investigated well. There are many kinds of dental laser and more than twelve of them are used in Japan. High-energy lasers are useful in producing coagulation necrosis in target tissue with a subsequent reaction in the surrounding tissue. Various biostimulatory effects of low-energy laser irradiation have been reported that it acts on regeneration healing, fibroblast and chondral proliferation, collagen synthesis, nerve regeneration. It is used in odontotherapy for diseases of hard tissue and soft tissue, periodontitis and peri-implantitis. The usage rate of a dental laser is 30% of dental clinics in Japan and 60% of them use a laser with carbon dioxide gas. In this paper, we describe the carbon dioxide whether promote the wound healing or not. The laser is used for a lot of medical treatments now. Moreover, the laser is used for not only the treatment; its usage also has been increased for diagnosis and prevention of the disease. Especially, its research and development progress rapidly due to applying to the odontology for medical treatment.
著者
吉沢 克仁
出版者
公益社団法人 日本金属学会
雑誌
まてりあ (ISSN:13402625)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.186-189, 2017 (Released:2017-03-01)
参考文献数
29
被引用文献数
6
著者
布井 雅人 吉川 左紀子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第17回大会
巻号頁・発行日
pp.123, 2019 (Released:2019-10-28)

対象の評価時に、他者が行った評価の平均値を呈示すると、その平均値に近づく形で、参加者の評価は変化する (Klucharev et al., 2009)。さらに、他者の評価と自身の評価のずれの大きさが、評価の変化の程度を予測することも知られている (Huang et al., 2014)。本研究では、他者の評価と自身の評価のずれを正確に認識することができない状態においても、他者の評価方向に自身の選好判断が変化するかどうかを検討した。実験では、各刺激の好意度評定がまず行われた(ベースライン評定)。次に、80人分の好意度評定の平均値(他者評価)が各刺激と対呈示された状態での好意度評定が、別ブロックで行われた。その結果、他者評価とベースライン評定のずれの程度によって、好意度評定の変化の方向とその大きさが有意に予測された。この結果は、自身の事前評価を明確に認識できない状況においても、他者の評価の影響を受け、その方向に自身の好みが変化することを示すものである。