著者
奥谷 文徳
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2019-04-25

本提案では、折紙工学を用いて今までの材料では不可能な「動き」を可能とする。上述したように折紙の技術は工学の分野に応用されてきたが、折紙構造の静的な状態、つまり展開状態と折られた状態の2つの状態のそれぞれの活用に留まっている。折紙はそれらの状態以外に、折り畳まれつつある状態を持つ。この折り畳まれつつある状態こそ、弾性変形や局所的な幾何学的な制約を利用した折紙の真髄である。折り紙構造の動きを最大限に活用した円筒形状ロボットを実現し、「動き」を活用した折紙構造の実用化により、紙から折るだけで作れる構造により「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」製造できる技術を実現する。
著者
小室 修 粕谷 英樹
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.928-934, 1991
被引用文献数
20

本論文では、基本周期のゆらぎと振幅のゆらぎを独立に制御できる新しい分析合成システムを用いて、正常音声の場合について、基本周期ゆらぎのどのような性質が音声の声質に寄与しているかを調べた。聴取実験により、定常母音においては、基本周期ゆらぎのトレンド成分(遅い成分)が原音声の品質を保持するために特に重要であることが分かった。そこで、トレンド成分の特徴を簡単に制御できる基本周期ゆらぎの生成モデルを提案した。聴取実験により、提案したモデルによるゆらぎの方が正規性白色雑音のゆらぎよりも、原音声の品質を保存する上で優れていることが分かった。また、基本周期が大きく変化する非定常母音では、基本周期の変化の概形を保存するだけで原音声の品質を保存することが分かった。
著者
遠藤 康男 粕谷 英樹
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.338-341, 1993
被引用文献数
3 2

嗄声における基本周期 (周波数) , 振幅系列のゆらぎを定量化するために比較的良く用いられるさまざまなゆらぎパラメータについて比較検討を行った.パラメータとしてjitter/shimmer factor, 変動指数, ジッタ/シマーパラメータを用いた.これらのパラメータと熟練した耳鼻科医がGRBAS尺度に関して評定した聴覚的評点との関係という観点から比較検討を行った.喉頭癌, 声帯ポリープ, 反回神経麻痺患者が発声した持続母音の52例を用いた実験により, ジッタ/シマーパラメータが病的音声の聴覚的印象と最も対応が良いことを示した.
著者
遠藤 康男 粕谷 英樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.81, no.7, pp.1031-1041, 1998-07-25
参考文献数
25
被引用文献数
5

音声における周期ごとのゆらぎは知覚される自然性, 声質を記述するのに重要である.この周期ごとのゆらぎを考慮した音声の分析・変換・合成システムを提案する.システムにおいてゆらぎは, 基本周期ゆらぎ(ジッタ), 実効値ゆらぎ(シマ), 周波数スペクトルゆらぎに分けられ, 自己回帰移動平均(ARMA)モデルで定式化される.このモデルはゆらぎの大きさだけでなくスペクトル特性も定量化する.周波数スペクトルは主成分スペクトル成分に変換され次元が大幅に縮小される.この主成分スペクトルに対しARMAをあてはめる.実験の結果以下のようなことが示された.(1)日本語母音/a/の周波数スペクトルは8個の主成分スペクトル成分で表される.(2)モデルはもとのゆらぎを再現できる.(3)原音声と再合成した母音信号は聴覚的にほとんど違いがない.このシステムはさまざまな音声の研究分野で有用である.
著者
茂泉 優
出版者
東北数学教育学会
雑誌
東北数学教育学会誌
巻号頁・発行日
vol.50, pp.52-62, 2019-03-31

本稿の目的は,数学学習において小集団学習を実施し,学習者の学習観や授業観,協同や競争の概念および満足度を調査することで,効果的な小集団学習の方向性について明らかにすることである。そのために,高等学校にてTGT方式による小集団学習を実施した。実施にあたり,拡散的思考を必要とする課題を扱い,集団間の競争を用いた。分析にあたっては,先行研究に依拠した尺度を用いた。その結果,以下の3点が導かれた。第一に,協同と競争が対極にある傾向が見られた。第二に,複数の学習観や授業観が存在し,志向に応じた教授法が示された。第三に,本小集団学習は,数学学習内容を習得するのに有用であり,社会性を向上させることが分かった。The purpose on writing is to put small-group learning into effect in mathematics study and investigate learner’s view of learning, view of class and concept of cooperation and competition and degree of satisfaction and is to reveal directionality of effective small-group learning. Small group learning by Teams-­Games­-Tournament was conducted in a high school for it. When it was put into effect, I dealt with a problem which requires divergent thinking and used competition between the group. The linear measure which depended on the previous research was used in case of an analysis. As a result, the following three points were indicated. The First point is that the tendency cooperation and competition is in the opposite side can be seen. The Second point is that more than one view of learning and view of class existed, and a teaching method according to the intention was indicated. The Third point is that this small-group learning is useful acquiring mathematics study contents, and the sociality is improved.
著者
竹内 孔一
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.421-426, 2019-09-01 (Released:2019-09-01)

近年,認知言語学を基に構築されている概念体系を利用した用語整理手法が提案されており,概念体系の構築と利用について期待が高まりつつあると考えられる。著者は複合名詞内の係り関係を分析した語彙概念構造を発展させて,意味役割と述語の概念をシソーラス状に体系化した述語項構造シソーラスを構築して公開している。そこで,本稿では,構築している述語項構造シソーラスの基本的な設計方針と,データ構造の説明,および最近の発展について説明する。さらに,概念体系データが専門用語の整理や自然言語処理で使われた例について説明し,概念体系データの今後の展望について述べる。
著者
山本 ゆうじ
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.415-420, 2019-09-01 (Released:2019-09-01)

体系的翻訳,特に用語管理の側面は,用語が企業・組織の翻訳資産として重要であるにもかかわらず軽視されていることも多い。用語管理は,ニューラル機械翻訳の時代で意義を失ったかのように考えられることもあるが,これは誤解であり,むしろさらに重要性を増している。本稿では,組織での体系的翻訳における用語管理の概要を述べる。体系的翻訳での現状の課題を分析し,翻訳品質と,用語管理の専門性について説明する。その後,アジア太平洋機械翻訳協会(AAMT)により策定されたシンプルな用語集形式UTXによる用語管理の概要と活用例を紹介する。
著者
山本 昭
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.409-414, 2019-09-01 (Released:2019-09-01)

標準化活動において重要となる用語の定義について概説した。ISO 704「専門用語-原則と方法」を基に,定義文の書き方の基本を述べた。内包的定義はもっとも推奨される定義であり,外延的定義は限られた場合に有効である。不十分な定義や循環的定義など,望ましくない定義と,それを避ける方法も示した。定義文とともに提供される,注記等の項目も概説した。
著者
石崎 俊
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.404-408, 2019-09-01 (Released:2019-09-01)

専門分野の用語(ターミノロジー)は多分野との情報流通のために必要であり,今後ますます重要になるので,国内外での情報流通のための専門用語の管理や概念体系の作成などの活動の概要を説明する。情報流通の重要な手段としては,国内外における用語の標準化活動があるので,過去の経緯や現在の課題,今後の可能性などについて概要をまとめる。まず情報技術の標準化を担当するISO/IEC/JTC 1における用語の標準化について概要を説明し,次いで,言語と用語の標準化を担当するISO/TC 37における翻訳・通訳も含めた用語の標準化の概要を説明する。JIS法が産業標準化法に改正されることに伴って,翻訳サービスなどに用いる用語のJIS化の動きについても概要も説明する。
著者
稲垣 理美
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.403, 2019-09-01 (Released:2019-09-01)

2019年9月号の特集は「用語管理と標準化」です。専門的な分野の概念をあらわす用語の取扱いには高い精度が求められ,「ターミノロジー学」として研究も行われてきました。特に用語管理や標準化については,知識の伝達,交換といった人間の行動を助けたり解明したりする上で大きな役割があると考えられます。また情報のハンドリングを目的に,異なる分野との意味のマッピングなども試みられています。さらに,情報通信技術の高度化や人工知能の研究・実用が進んだ現在において,用語活用の可能性が高まっています。そこで今回の特集では,用語の取扱いやその標準化の変遷と現在の取組みについて実例に基づき紹介することに焦点を当てました。はじめに石崎俊氏に専門用語管理や概念体系の作成といった活動が情報流通において果たす役割とその重要性,ISOにおけるターミノロジー活動について概説していただきました。続いて,山本明氏に用語定義をいかに曖昧なく記述するかという点から,用語の定義についてご執筆いただきました。具体的な活用事例として,山本ゆうじ氏に翻訳における用語の標準化活動について,アジア太平洋機械翻訳協会(AAMT)により策定された用語集形式UTXを取り上げてご執筆いただきました。また竹内孔一氏に認知言語学を基に構築された概念体系について,専門用語の整理や自然言語処理への活用例も含めてご執筆いただきました。最後に,様々なデータ連携を目指した横断的なデータ活用基盤として整備されている情報共有基盤(IMI)について,その取組みと「法人インフォ」における活用事例を情報処理推進機構の斉藤浩氏,清水響子氏にご執筆いただきました。今後,用語管理や標準化をどのように活用していくことができるか,知識の伝達を行う多くの皆様のご参考になれば幸いです。(会誌編集担当委員:稲垣理美(主査),野村紀匡,光森奈美子,南山泰之)
著者
恩田 宗生 小原 知治 鈴木 由美子 久保田 善彦
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.1-6, 2014 (Released:2018-04-07)
参考文献数
10

グループ学習の後に個人活動を加える集散型学習の学習効果、及び個人の協同作業に対する認識の違いが集散型学習に与える影響について、コンセンサスゲームを用いて分析した。集散型学習によってコンセンサスゲームの解答が有意に正解に近づき、さらに学習に対する自信や納得度が高まるなどの学習効果が明らかになった。また、協同効用因子が高い群と低い群では、思考の深まりの認識に大きな差があることが明らかになった。これらの調査から、グループ学習後に自分の言葉で思考をまとめ直す集散型学習の重要性とその留意点が示唆された。