著者
小林 祥泰
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.24-24, 2006

いま、全国のへき地医療機関から産婦人科を始めとした医師不足の悲鳴があがっている。この傾向がとみに顕在化したのは平成16年度から施行されたマッチングシステムを取り入れた新卒後臨床研修制度以降であるが、このシステムだけが元凶ではない。へき地の自治体が大学医局に医師派遣を頼り切って医師育成の努力をしてこなかったこと、大学自体も地域医療人育成を念頭に置いていなかったことにも一因がある。マッチング制度は研修医に選択の自由を与え、病院には臨床教育の充実を求めている。大学医学部が本来最も重視されるべき臨床教育を見直さなくてはならない時が来ている。日本の臨床教育は欧米に比して実践的でなく、英国視察団の「卒業時の臨床力不足」指摘が新臨床研修制度のきっかけとも言われている。日本では今まで臨床教育に対する熱意は研究、臨床の次であり、まして臨床医を育成するのに必要な患者や家族とのコミュニケーション教育の機会も乏しかった。このような教育は大学病院だけでは出来ない。大学病院でも実践的な米国式のクリニカルクラークシップ(CC)への移行が必要である。さらに地元の地域医療に熱意を持つ学生を入学させることも重要であり、我々は2006年度から独自の地域枠推薦入試を開始した。これは県内へき地出身者対象で、地域医療機関で体験学習して評価を受け、さらに市町村長等の面接も受けるというものである。文科省特別教育研究経費で専任助手を採用し、地域を巡回して啓蒙した結果、優秀な人材を確保することが出来、来年度定員を倍増した。実践的臨床教育のためCCの実践化、シミュレーター活用、WEB登録評価方式を導入したが、さらに指導医の意識改革のため、2005年度地域医療人育成GPでのべ46名の指導医等を米国医学教育の現場体験視察に派遣した。シアトルのワシントン大学では医学部のない周囲の4州のために約70名の地域医療人育成プログラム(州の頭文字をとって通称WWAMI programと呼ばれる)を30年前から実施し、通算帰州率70%という効果をあげている。我々はWWAMI siteの診療所等まで訪問し、へき地における臨床教育の実際、地域医療人育成にかける彼等の熱意を目の当たりにしてきた。また、コロラド大学とセントルイス大学の家庭医学コースの臨床教育も見学体験してきた。これだけ多くの指導医が早朝からレジデントや学生と一緒に回診やカンファレンスに参加したのも珍しいが、まさに「百聞は一見にしかず」で実践的臨床教育とは何かを全員が実感して帰国した。帰国後、WWAMI program指導者を招いてのFDを兼ねた研修報告会は盛況で他の教員や学生の啓蒙に貢献した。さらに1年生から、現場で活躍している地域医療人の講義を組み込み、6年次には3週間の地域医療実習を開始した。研修担当専任講師も採用し、遠隔医療システムも導入、中長期的な地域医療人育成に取り組んでいる。
著者
石坂 雅昭
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.23-34, 1995-03-15
被引用文献数
8 3

日本の積雪地帯のうち,メッシュ気候値が整備されている地域を,その地域の積雪の堆積環境から推定される雪質を考慮して,「湿り雪地域」,「乾き雪地域」,および「しもざらめ地域」の三つに分けた.ただし,湿り雪地域と乾き雪地域の境界は,さほど明瞭ではないので,その中間的な遷移領域として「中間地域」を設けた.湿り雪地域では,厳冬期にも融雪や降雨による積雪表層からの水の浸透によって,積雪の全層が水を帯び,雪温は一冬季をとおしてほぼ0℃で経過し,温暖変態が支配的である.一方,これより気候的に寒い地域でしもざらめ雪地域でない積雪地域を乾き雪地域とした.すなわち乾き雪地域では,厳冬期には雪温が0℃以下に保たれることが多く,寒冷変態が卓越する.しもざらめ雪地域では,寒冷な上に積雪が少ないので,積雪層内の温度勾配が大きく,しもざらめ雪が発達する.湿り雪地域と乾き雪地域は気温によって,またしもざらめ雪地域は,気温と積雪量によって決まると考えた.前者は筆者らが行った中部地方の積雪調査にもとづき,1月の平均気温の気候値から推定した.すなわち,1月の平均気温が0.3℃以上の気候値をもつ地域が湿り雪地域に,-1.1℃以下が乾き雪地域に分類され,その間の気温帯は中間地域となった.また,後者は秋田谷・遠藤(1982)の判別式の変数に気候値から推定したものを代入して求めた.
著者
佐藤 方彦 勝浦 哲夫
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.1-17, 1975 (Released:2008-02-26)
参考文献数
123
被引用文献数
1 2

A number of studies on weighting and unweighting formulas for calculating mean skin temperature are reviewed. From the view point of simplicity of experimental technique and calculation in field studies, a four-p int mean based on a system devised by Ramanathan (1964) is noted especially.The present authors concluded from a review of many previous studies concerning mean skin temperasure during muscular works that increases in cutaneous venous tone, increases in heat loss from body surface by the additional wind caused by the movements, and increases in evaporative heat loss accompanied with rises in body core temperature are the principal reasons why the mean skin temperature shows no significant rises during muscular works.A nomogram for calculation of mean skin temperature from the heart rate and oxygen intake under various conditions of air temperature and work intensity is indicated. This nomogram was made to be used for female young adults.
著者
大西 正輝 泉 正夫 福永 邦雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.83, no.11, pp.1187-1195, 2000-11-25
被引用文献数
27

ネットワーク技術の発展は, 従来の講義形態からネットワークを介して距離的に離れた複数の講義室で同時に講義を行う遠隔講義形態へ移行する可能性を示唆している.遠隔講義では, 講義に使用する資料等はネットワークを介して配布する形になる.しかし, あらかじめ電子教材を作成するのは手間がかかることなどから, すぐに普及する傾向にはない.一方, 黒板を用いる講義はOHPやビデオが普及した現在でも講義内容を強く印象づけたり, 受講者が順次理解していく過程にマッチしている手法として根強い支持を得ており, 大学・予備校などでも広く行われている.本論文では板書主体の講義を撮影するときや, ネットワークで利用するための電子教材を作成するときに必要となる板書をブロック分割する手法を提案する.板書のブロックは小さな矩形の集合であると考え, 一定時間書き込みのない場合に板書文字領域を囲う小さな矩形を生成する.次に講義のレイアウトから生成したファジールールに従い, これらの矩形を統合・分割することでブロック分割を行う.また, 本手法の応用例として, 抽出したブロックを順につなぎ合わせてHTML形式のファイルを作成し, WWW配信するシステムを構築した.
著者
永井 由佳里 野口 尚孝
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.185-194, 2001-11-30
被引用文献数
11

デザインの創造的な思考過程を言葉から形への変換過程と考えた場合, デザイン目標として与えられたキーワードによってどのように思考モードが異なるかを知るため, 約80人の被験者に実験をおこなった.まず形への変換の難易度が異なる二種類の言葉からそれらに相応しい花瓶の形を考えさせる課題を課した.その結果, 形に結びつきにくい言葉の場合はキーワードから連想できる具体的な事実や対象を描くことから花瓶の形を考える傾向があることがわかった.次に「悲しい気持ちにさせる」というキーワードに相応しい椅子の形を考えさせた.その結果, 形に結びつきにくい言葉の場合, ドローイングの過程でキーワードから思い浮かべられる人間の姿勢やものの状態などを媒介にして, 言葉の意味を形に近いレベルにまで構造化し, 椅子の形に結びつけていることがわかった.以上から, デザイン思考過程における思考の抽象度をデザイン目標から形としてのデザインの創出までの距離として考えれば, この距離が長いほど思考の努力が必要であり, その過程でのドローイングの役割も大きいことが推測できた.
著者
日本衣服研究所 編
出版者
目黒書店
巻号頁・発行日
1943
著者
小林 潤平 関口 隆 新堀 英二 川嶋 稔夫
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.28, 2014

日本語文章における視点の停留場所は,文を構成する意味のまとまりに対応しているとの報告がある。現在の日本語リーダーには改行を含むレイアウトが多く採用されているが,改行によって意味的まとまりをもった文字列が分断されている場合が多く,読み効率の低下を招いている可能性がある。そこで本研究では,意味的まとまりのひとつである文節を改行で分断しないようにレイアウトする日本語リーダーを開発し,その効果を検証した。
著者
斯波 照雄
出版者
中央大学
雑誌
商學論纂 (ISSN:02867702)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.327-338, 2014-11

1 0 0 0 OA 蚕種説

著者
カルマルス 著
出版者
吉田屋
巻号頁・発行日
1869
著者
洒落斎唐人 著
出版者
中外堂
巻号頁・発行日
vol.初編, 1869
著者
Dhananjoy S. Chingangbam Joykumar M. Laishram Hitoshi Suzuki
出版者
The Genetics Society of Japan
雑誌
Genes & Genetic Systems (ISSN:13417568)
巻号頁・発行日
vol.90, no.1, pp.21-30, 2015-02-01 (Released:2015-06-25)
参考文献数
42
被引用文献数
3 5

The Indian subcontinent and Southeast Asia are hotspots of murine biodiversity, but no species from the Arakan Mountain system that demarcates the border between the two areas has been subjected to molecular phylogenetic analyses. We examined the mitochondrial cytochrome b gene sequences in six murine species (the Rattus rattus species complex, R. norvegicus, R. nitidus, Berylmys manipulus, Niviventer sp. and Mus musculus) from Manipur, which is located at the western foot of the mountain range. The sequences of B. manipulus and Niviventer sp. examined here were distinct from available congeneric sequences in the databases, with sequence divergences of 10–15%. Substantial degrees of intrapopulation divergence were detected in R. nitidus and the R. rattus species complex from Manipur, implying ancient habitation of the species in this region, while the recent introduction by modern and prehistoric human activities was suggested for R. norvegicus and M. musculus, respectively. In the nuclear gene Mc1r, also analyzed here, the R. rattus species complex from Manipur was shown to possess allelic sequences related to those from the Indian subcontinent in addition to those from East Asia. These results not only fill gaps in the phylogenetic knowledge of each taxon examined but also provide valuable insight to better understand the biogeographic importance of the Arakan Mountain system in generating the species and genetic diversity of murine rodents.
著者
細川 端彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PN, フォトニックネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.455, 2010-03-01

周波数は情報通信の重要な基盤であるとともに,最も高精度が得られる物理量としても知られている.マイクロ波領域において,その正確さと安定度は10-16台に達しているが,レーザー技術の進展などにより,光領域においてそれ以上の精度をより迅速に得る可能性が見え初めている.またこのような高精度周波数標準を光ファイバーを通し品質劣化無く遠方へ伝送する技術も急進展している.この大きなきかっけとなったのは2000年に開発され2005年にはノーベル賞を受賞した,光周波数をマイクロ波の精度で光コムであり,そこからさらに,単一イオン標準,光格子時計,超高安定狭線幅レーザーなどが次々とレベルアップし現在に至っている.このような標準技術の高度化は,基礎科学や先端技術開発にも大きな影響を与えている.本発表では原子時計の概要から,光領域での基本要素技術とその現状を紹介し,得られた光精度の周波数標準を光ファイバーで伝送する技術についても紹介する.