著者
赤間 恵都子
出版者
十文字学園女子大学
雑誌
十文字学園女子大学紀要 = Bulletin of Jumonji University (ISSN:24240591)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.192-181, 2015

四季の風景を平等に取り上げる『枕草子』は,春秋に重きを置く平安文学の中で特異な作品である。四季の中でも文学的な風物の乏しい冬に,唯一,注目される雪は,清少納言が特に好んで描いた素材であった。本稿は,『枕草子』の雪景色を取り上げ,作品内で雪がどのような場面に描かれているのかを考察し,雪景色が作品生成の源となる風景として,『枕草子』執筆に大きな役割を担っていたことを論じる。まず,初出仕した清少納言が宮廷で出会う主人定子や上流貴族たちの印象深い姿が,雪景色と共に描かれる。そして,宮仕えに慣れた清少納言は,香炉峰の雪の段で,定子後宮を代表する女房として称賛される。定子後宮は公的な場で女性が漢詩漢文を自由に口にできる革新的な文化を持っており,清少納言はその気風にたちまち適応した。そんな定子後宮のモデルとして『枕草子』に引かれる村上朝の風雅な逸話にも,月雪花の漢句が引用されていた。中関白家が没落し,定子が内裏に入れず大内裏の職御曹司に滞在していた時,職御曹司の庭で雪山作りが行われた。雪山完成直後,女房たちの間で雪山がいつ消えるかの賭けが始まり,その賭けの途中で定子の内裏参入が実現する。この時の定子の内裏滞在は第一皇子誕生に結びつくが,政治情勢は彰子立后を企てる道長側に傾いていた。そこで,『枕草子』に表立って記述することが憚られた一条天皇と定子の会合は,雪山の賭けを利用して書き留められたと考えられる。最後に,『枕草子』が決して語らない定子葬送の日の雪景色がある。それは他のどの場面よりも深く降り積もった雪景色であり,定子を喪った作者を作品執筆へと突き動かした風景だったと考える。以上,初出仕から定子崩御に至る清少納言の宮仕え生活の折々で,雪が重要な場面に登場していたことを確認する時,『枕草子』は雪景色から生まれた作品だったと言えるのである。
著者
糸井 充穂 宇田川 誠一 田近 謙一 田代 健治 大竹 伸一 阿部 建之
出版者
日本大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、医学教育に必要でありながらカリキュラムの改正や削減で十分に時間を割くことができない理数系の基礎科目を一般教育で強化・充実をはかるために、物理学・数学及び生物学分野を融合した、視覚的・実質的な数理複合教材を開発した。具体的には、ハイスピードカメラを用いた物理学実験の試行やJAVAシミュレーションの視覚補助教材効果の検証と医学教育と関連した物理学実習項目の強化を行った。またこれらの教材の教育効果を追跡するため、研究期間を通してアンケート調査を行った。
著者
鈴木 実 安西 竜也
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集B編 (ISSN:18848346)
巻号頁・発行日
vol.79, no.801, pp.799-803, 2013 (Released:2013-05-25)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

Underwater shock wave, generated by the imploding detonation of propane-oxygen mixture, was applied for extinction processing of microbes. We filled the water containing microbe into a stainless steel pipe having inner diameter of 10.9 mm, and transmitted the underwater shock waves which have the maximum pressure of about 100MPa. As microbe of the treatment experiments, Microcystis species were used. We found that the mortarity rate of Microcystis species increases gradually with the increase in the number of times of shock processing. Although the maximum mortality rate of Microcystis species was 99.9% in one day after processing, it turned out that it becomes 100% in one week after processing. The mortality rate became small when the value of the consistency of Microcystis species was large.
出版者
鉄道作業局
巻号頁・発行日
vol.明治38年度, 1906
著者
平田 圭二
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.48, pp.51-54, 2003-05-16
被引用文献数
2

早いもので,情報処理学会に音楽情報科学研究会 (SIGMUS) が発足して10 年が経過しました.そこで,これから 10 年の SIGMUS を支える方々に向けて,「誰も聴いちゃいねえ」といういかにも敵を作りそうな題でより良い SIGMUSを作る話題の一端を提供してみたいと思います.It has been 10 years since the Special Interest Group on Music (SIGMUS) was established. Time flies like an arrow. Then, for those who will develop SIGMUS for this coming 10 years, I would like to just provide a starting point for managing SIGMUS better with the title ``No one listens to it'', which likely arouses someone's antipathy.
著者
佐藤 壮広
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.28-34, 2011 (Released:2016-12-09)

沖縄本島の地図と自身の身体を重ね合わせるようにして、沖縄戦の負の記憶や米軍基地を前にしての現在の抑圧状況を感受する民間巫者。沖縄でユタと呼ばれている宗教的職能者のなかには、シマの痛みを身体の痛み(症状)と重ね合わせつつ、過去・現在を語る者がいる。報告者はそれを「身体地図」としてイメージ化し、論文やエッセイを書き、またそれを文化事業のひとつとして衆前で語っている。人類学的な方法を介しながら、語りから描写、そして描写から語りへという一連の行為的な循環がここでは生じている。またこれは、他者の痛みの体験をイメージ化すること、そしてそれを語ることの関係性という、解釈や理解というより大きな課題にかかわる作業である。報告では、沖縄の民間巫者(ユタ)の語りから報告者が構造化した「身体図式」というイメージを提示し、それを報告者がどのように語ってきたかを晒した上で、その限界と可能性の一端について述べてみたい。

5 0 0 0 OA 古事類苑

著者
神宮司庁 編
出版者
古事類苑刊行会
巻号頁・発行日
vol.第8冊, 1930
著者
田口 東
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.433-438, 2008-08-01
被引用文献数
2

東急田園都市線では2007年春より,朝の急行を各駅停車に格下げした.混雑による遅れを緩和する目的である.田園都市線の混雑のハードさは"鉄"にはよく知られており,某メーカが,電車内でPC液晶が破損した原因を調べたところ,想定をけるかに上回る圧力が測定され,設計を変更したという話もある.社会環境を考えると,線路の増設などのハードウェアではなく,電車の利用方法というソフトな解決策を考えるのは合理的であろう.そのためには,電車の運行を詳細に既述できるモデルが重要である.本文では,時空間ネットワークと応用例を紹介し,乗り換え案内だけではない,計画の分野への応用の可能性を述べる.

5 0 0 0 OA 少年ターザン

著者
和田義三 著
出版者
子供マンガ新聞社
巻号頁・発行日
1949
著者
柏崎 礼生 宮永 勢次 森原 一郎
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT)
巻号頁・発行日
vol.2014-IOT-27, no.4, pp.1-6, 2014-10-02

プライベートクラウドや組織内仮想化基盤からパブリッククラウドへと移行する過渡期において,プライベートクラウドとパブリッククラウドの双方を接続しデータやアプリケーションの可搬性を高めたハイブリッドクラウドが展開される.ハイブリッドクラウドにおいてはプライベートクラウドとパブリッククラウドにおいて同じ,あるいは互換性の高いハイパーバイザーで構築されている事が望ましい.VMware 社は 2013 年に ESXi ハイパーバイザーを用いたパブリッククラウドサービス vCloud Hybrid Service (現 vCloud Air) の提供を開始し,2014 年には日本でのサービス提供が始まった.大阪大学では ESXi を用いた仮想化基盤を構築・運用しているため,このサービスは移行先のパブリッククラウドの有力な選択肢の一つである.本稿では VMware 社の協力のもと,vCloud Air 環境における計算機資源の性能評価を行う.
著者
湯浅邦弘著
出版者
研文出版
巻号頁・発行日
1999
著者
岡本 文子
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋國文研究 (ISSN:02865459)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.22-32, 2007-03
著者
照屋 大地 宮崎 大智 中條 拓伯
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J100-D, no.3, pp.287-297, 2017-03-01

複数の高速なデータ入力とインターネットへのデータ出力が必要となる組み込みシステムのプロトタイピングのためのフレームワークPyJerを提案した.PyJerを用いた開発では汎用の高位合成ツールとメモリアクセスチューニングのための高位合成ツールを組合せそれぞれの利点を活かすことが可能となる.これによってSoCを用いた組み込みシステムの高速なプロトタイピングが実現できる.複数ツールの使用に起因する複雑なビルド手順の自動化を行い,開発サイクルの短縮を可能とした.またPyJerによってセンサ入力の並列化を行ったアプリケーションのプロトタイピングを行い,ハードウェア使用率の低いこと,CPUを用いた実装と比較してパフォーマンスの向上が期待できることを確認した.
著者
李 常慶
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.1-15, 2006

中国では,1990年代から2000年代の始めにかけて,『四庫全書』続修の一環として,四庫全書関連大型叢書,すなわち,『続修四庫全書』,『四庫全書存目叢書』,『四庫禁毀書叢刊』が刊行された。本稿は,まずそれらの刊行要因およびその経緯について詳しく検証した。ついで,それをもとにして,広い文化的視野から四庫全書関連叢書の刊行事業を分析した。これらの考察を通じて,古典籍の整理と刊行は,古典籍を保護し伝承するのに必要なものであること,および,これらの叢書が単に出版物として読者に益をもたらすのみならず,その出版自体が大きな文化史的意味を持つものであることを明らかにした。