2 0 0 0 OA 自然法の論理

著者
稲垣 良典
出版者
日本法哲学会
雑誌
法哲学年報 (ISSN:03872890)
巻号頁・発行日
vol.1960, pp.77-109, 1961-08-30 (Released:2009-02-12)
参考文献数
70
著者
塩谷 信喜 柴田 繁啓 今井 聡子 小野寺 誠 藤野 靖久 井上 義博 遠藤 重厚
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.282-292, 2010-06-15 (Released:2010-08-13)
参考文献数
38
被引用文献数
1

【背景】アナフィラキシーは,抗原の暴露後に急速に進行する全身性の致死的反応である。当センターは,岩手県中央部の救急医療の中心的な役割を担っており,アナフィラキシー症例を経験する機会も多い。そこで地域におけるアナフィラキシーの実態を明らかにすることを目的に自験例を分析したので報告する。【対象と方法】当センター開設1980 年11 月から2009 年10 月の29 年間にアナフィラキシー症状を呈した302 例を対象とした。原因,年齢・性別,症状について,診療録により後方視的に検討した。【結果】平均年齢は48.0 歳で,男性に多い傾向がみられた。アナフィラキシーショックは193例(63.9%)で,8例(2.7%)が心肺停止となり,4 例が死亡に至った。アナフィラキシーの主要原因は,ハチ毒148 例(49.0%),薬物89 例(29.4%),食物58 例(19.2%),食物依存性運動誘発アナフィラキシー3 例(1.0%),その他4 例(1.3%)であった。ハチ毒では,スズメバチ,アシナガバチによる被害が多く,薬物では,非ステロイド性解熱鎮痛薬,抗菌薬,食物では,海産物とソバが多く認められた。最も多い初期症状は,心血管症状(65.9%),皮膚粘膜症状(42.1%)であった。【結語】主要原因はハチ毒が多く,薬剤,食物と続いた。食物は,全国調査とは異なり,海産物(46%)とソバ(6.9%)が多くを占めた。ハチによる被害の背景には,岩手県は広大な山林面積を有し農林就業者が多いことが考えられた。海産物は地域住民の消費動向によるもの,ソバによる被害は県外の旅行者に関係していると考えられた。アナフィラキシーの原因に占めるハチ毒や食物の割合は,地域による産業別就業や食文化の違いにより影響される。
著者
安田 正次 大丸 裕武
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.1-16, 2014-01-01 (Released:2018-03-22)
参考文献数
25

奥利根・奥只見の中央に位置する平ヶ岳の山頂周辺に分布する湿原は,多雪による多湿化によって成立したとされてきた.しかし,実際の調査データに基づいて湿原の成立を検討した研究はなく,湿原の形成要因は不明瞭なままであった.本研究では,湿原の分布と夏期の積雪の分布との対応を,衛星写真および現地調査によって詳細に検討した.また,積雪の分布に影響を与える冬季の風向を,偏形樹と雪庇から調査した.これらの調査の結果,積雪と湿原の分布は一致しており,積雪による日光の遮断や低温・湿潤な環境のために,樹木が生育できず湿原となっていることが確かめられた.湿原の一部では乾燥地に適応した植物種が認められたが,それらは冬季の強い風によって積雪が吹き飛ばされて積雪が消失するのが早い場所に成立していることが明らかとなった.こういった場所では,冬期に積雪による保護効果が得られないために乾燥害が起きて樹木が生育できないと考えられる.
著者
平野 淳平 大羽 辰矢 森島 済 財城 真寿美 三上 岳彦
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.86, no.5, pp.451-464, 2013-09-01 (Released:2017-12-08)
参考文献数
32
被引用文献数
3 5

本研究では,東北地方南部に位置する山形県川西町において1830年から1980年までの151年間,古日記に記されていた天候記録にもとづいて7月の月平均日最高気温を推定し,その長期変動にみられる特徴について考察した.推定結果からは,1830年代と1860年代,および1900年代に寒冷な期間がみられ,これらの寒冷な時期が東北地方における飢饉発生時期と対応していることが明らかになった.また,20世紀後半には,1980年代から1990年代前半にかけての時期は寒冷であり,この時期の寒冷の程度は,1830年代や1900年代に匹敵する可能性があることが明らかになった.一方,温暖な時期は1850年代,1870年代~1880年代,および1920年代にみられた.1850年代前半には現在の猛暑年に匹敵する温暖な年が出現していたことが推定された.
著者
中村 努
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.288-299, 2013-05-01 (Released:2017-12-05)
参考文献数
24
被引用文献数
1 2

本稿では,川崎市北部において,医薬分業が大病院で実施されるのに伴い,ICTを活用して医薬品を安定供給できるシステムがどのように整備されたのかを明らかにした.流通システムの整備には,差別化の手段として流通システムへの大規模投資を行った医薬品卸の経営戦略と,薬局へのICTの導入率を高める役割を担った薬剤師会による仲介が不可欠であった.川崎市北部は医療サービスに対する需要が大きい,人口に比して薬局,病院,入院病床などの医療資源が不足している,医療資源の多くを大病院に依存している,といった大都市圏特有の医療環境を有する.こうした環境を踏まえ,医薬品卸は情報システムへの大規模投資を行い,薬剤師会はすべての薬局が医薬品にアクセスできるよう,個々の薬局の利害を代表して,ICTの導入を間接的に支援した.こうした環境に対応した関係主体の行動によって,医薬品の安定供給においてICTの機能が発揮されることが明らかになった.
著者
佐藤 善輝 小野 映介
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.270-287, 2013-05-01 (Released:2017-12-05)
参考文献数
46

鳥取平野北西部に位置する湖山池南岸の高住低地を主な対象として,完新世後期の地形環境変遷を明らかにした.高住低地ではK-Ahテフラ降灰以前に縄文海進に伴って低地の奥深くまで海域が拡大し,沿岸部に砂質干潟が形成された.また,K-Ahテフラの降灰直前には砂質干潟から淡水湿地へと堆積環境が変化した.その後,湿地堆積物や河川からの洪水堆積物などによって湿地の埋積が進行し,5,200 calBP頃までには陸域となって森林が広がった.一方,埋積の及ばなかった低地の北部では5,800 calBP頃までに内湾環境が形成された.以後,内湾は河川堆積物による埋積によって汽水湖沼へ変化し,4,600 calBP頃に淡水湖沼化した.湖山池沿岸部では縄文時代後期までに内湾から淡水湿地への環境変化が生じたことが共通して認められ,閉塞湖沼としての湖山池の原型はおよそ4,000~4,600 calBP頃までに完成したと推定される.
著者
大石 貴之
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.248-269, 2013-05-01 (Released:2017-12-05)
参考文献数
43
被引用文献数
1

本研究では,荒茶取引における品質決定のあり方を考察することによって,静岡県牧之原市東萩間地区における荒茶供給構造を明らかにした.荒茶取引は荒茶工場の経営形態に規定されることから,荒茶工場の経営形態ごとに,茶商との取引形態を分析した.東萩間地区における荒茶工場は,個人自園工場,個人買葉工場,茶農協工場,株式会社工場に分類され,個人自園工場や個人買葉工場は特定の範囲の茶商との直接取引や斡旋業者を介した取引によって,茶商との密な取引関係を構築し,それが比較的高品質な荒茶供給につながっていた.一方で茶農協工場や株式会社工場は,斡旋業者を介した取引や農協共販による取引によって,広範囲にわたる茶商との経済的な関係を構築し,質よりも量を重視した荒茶供給を行っていた.その結果,東萩間地区では,荒茶工場に対する茶商の関与度および,生葉生産農家に対する荒茶工場の関与度によって,製品の質が規定されるという荒茶供給構造が形成されていた.
著者
古川 智史
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.135-157, 2013-03-01 (Released:2017-12-02)
参考文献数
38
被引用文献数
2 2

本研究の目的は,1990年代以降の広告産業を取り巻く環境の変化の中で,東京における広告産業の組織再編の実態と地理的集積の変容を考察することである.広告関連企業の分布を1980年と2010年で比較した結果,銀座や神田を中心に,依然として都心部5区に集中する傾向が強いものの,グローバル化による外資系広告会社の立地の増加や,渋谷周辺にインターネット広告企業の新たな集積の形成がみられた.このうち,大手広告会社は,2000年以降,従来外部化していた広告制作の垂直統合,積極的な専門広告会社の設立,他企業の買収を進め,グループの競争力を強化している.その結果,都心部にグループ企業の集積が形成されている.広告制作会社は,広告主のニーズに対応するため,Webを中心として業務範囲を広げ,外注先と柔軟な関係を形成する傾向にある.そのため,広告制作会社にとって都心部に立地する利点は大きく,このことが地理的集積の維持に寄与していると考えられる.
著者
加藤 央之 永野 良紀 田中 誠二
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.95-114, 2013-03-01 (Released:2017-12-02)
参考文献数
33
被引用文献数
1 3

将来の地域気候予測に用いる統計ダウンスケーリング手法に利用するため,東アジア地域における海面気圧分布パターンの客観分類を行い,寒候期を対象として,平均分布型,出現の卓越季節,従来手法による分類結果などを参照し,得られた各パターンの特徴を明らかにした.本手法は,分布パターンを主成分スコアという客観指標に置き換え,主成分空間内でクラスター分析によりこれを分類するものである.対象領域における30年間(1979~2008年: 10958日)の午前9時の海面気圧分布パターン分類を行った結果,寒候期のパターンは強い冬型(3グループ),弱い冬型(3),低気圧型(1),移動性高気圧型(2),移動性高気圧・低気圧型(2),その他(1)の12のグループに分類された.各グループの継続性,グループ間の移行特性(特定のグループから特定のグループへの移行しやすさ,しにくさ)について,確率を用いて定量的に明らかにした.
著者
三浦 尚子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.86, no.1, pp.65-77, 2013-01-01 (Released:2017-12-02)
参考文献数
15
被引用文献数
2 1

本稿は東京都U区を事例地域に,障害者自立支援法施行後,精神障害者を対象とする作業所の新サービスへの移行状況とその利用実態に関する質的調査を行った.その上で,国家レベルの福祉施策の転換が地域レベルの障害者福祉サービス供給に及ぼした影響を,作業所という「ケア空間」の場が果たす役割に関連付けて考察した.その結果,移行先が就労継続支援B型のサービスに集中し,その一因に実際には就労支援に消極的な旧共同作業所が含まれており,「なんちゃってB」を自称していることがあると明らかになった.これらの事業者は,就労が困難な利用者のニーズに対応する一方で,経営基盤が安定する就労継続支援B型を選択して作業所の存続を図っている.自称「なんちゃってB」の出現は,障害者の自己責任を志向し,就労自立に傾倒した新制度に抵抗するための事業者の戦略であり,その結果旧共同作業所は,従前と変わらず精神障害者の居場所として機能している.
著者
任 海
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.86, no.1, pp.51-64, 2013-01-01 (Released:2017-12-02)
参考文献数
17
被引用文献数
1

中国では,1990年の土地使用権の譲渡に関する条例の制定とともに,急激に都市化が進行した.本研究は,中国上海市静安区大中里地域の市街地再開発を事例として,上海市内部での都市化の進展をミクロレベルで考察することを目的とする.再開発地域の居住者には,立退きに際し,金銭形式と住宅形式の二つの形式に基づく五つの補償方法が提示された.この再開発事業では,居住者に関するデータが一部公開されていることから,本研究では1,679世帯の里弄住宅居住者データを用い,居住者による五つの補償方法の選択状況を分析するとともに,移転先との関係を解明することを試みた.その結果,都市環状高速道路で形成される上海市の圏域構造が補償住宅の供給戸数の分布,居住者による補償方法の選択と移転先の決定と密接に関係していることが明らかになった.さらに,中心市街地の再開発と郊外新区の開発の連携は,都市人口分散の手段であることが裏づけられた.
著者
中井 信介
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.86, no.1, pp.38-50, 2013-01-01 (Released:2017-12-02)
参考文献数
43

本稿では東南アジア大陸部の山村で広く行われている豚の小規模飼育について,タイ北部ナーン県におけるモンの山村の事例に基づいて,その実態を明らかにした.特に,1)豚の形質,2)豚への給餌,3)豚の利用形態,の3点を明らかにすることから,山村における現在の豚の小規模飼育の継続要因を考察した.その結果,タイ北部の山村において豚が継続して飼育される要因として,年に一度行われる祖先祭祀での供犠利用に基づく宗教的要請と,正月祝いなどの慶事の宴会利用に基づく他家との関係を確認するための社会的要請が定期的にあることが示された.さらに,小規模な飼育が成立している要因として,豚の餌についての技術的・労働力的要請が示された.すなわち,豚の餌はバナナの葉と茎など山村周辺の自然に由来するものであり,これらは潤沢に存在するが長期貯蔵が不可能であり,毎日自力で採取する必要があるために,各戸の飼育規模が規定されていることが明らかとなった.
著者
大呂 興平
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.85, no.6, pp.567-586, 2012-11-01 (Released:2017-11-16)
参考文献数
35
被引用文献数
2 1

日本の牛肉輸入自由化から20年が経過した.この間,豪州からの牛肉輸入量は急増したが,開発輸入を目的に豪州生産拠点を築いた日本企業はほとんどが撤退し,豪州産牛肉の大半は豪州企業との相対取引により調達されるに至った.本研究では,この取引形態の変動を説明すべく,開発輸入の前提となった生産条件,市場条件,および企業間の能力差の変化を,変化の動因たる主体の行動に注目して分析した.日本企業進出の根拠は,日豪間に大きな内外価格差があったにもかかわらず,豪州企業には日本市場が固有に必要とする品質を実現する能力がなかった点にあった.しかし,時間とともに,日本固有の中長期肥育牛肉の需要は急減し,日本の外食消費や豪州・東アジアにおける短期肥育牛肉の需要が増大した.日本では生産者による低コスト化・高品質化が進んだ一方,豪州では多国籍巨大パッカー傘下の企業が短期肥育牛肉の世界販売を本格化させた.これらの変化が積み重なり,日本企業は自社生産の合理性を失った.
著者
宮澤 仁
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.85, no.6, pp.547-566, 2012-11-01 (Released:2017-11-16)
参考文献数
48
被引用文献数
3 3

本研究では,長崎市を事例地域に地域密着型サービスの介護事業所が取り組む地域交流・連携の実態を明らかにした.まず,外部評価報告書の内容を分析した結果,事業所から地域社会に積極的に働きかけるタイプの取組みに地域差が確認された.全体の傾向として事業所は,所在地の自治会をパートナーとして交流・連携に取り組むことでさまざまな効果を享受していたが,そこにも地域差が存在した.次に,その要因として①地域の環境条件と②事業所の運営方針を想定し,交流・連携に積極的な姿勢を示す複数の事業所と地域社会を調査した結果,各事業所はそれぞれの運営方針を反映した交流・連携の必要動機をもっていること,その実践形態には地域の環境条件が踏まえられていることが明らかとなった.このことは,地域交流・連携の深化には事業所の姿勢や体制を整えるとともに,地域の特性に配慮した交流・連携手法の採用が重要になることを示唆している.