著者
稲川 郁子
出版者
日本体育大学
雑誌
日本体育大学紀要 (ISSN:02850613)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.1083-1093, 2021

This paper is about Ju-no-Kata, one of the seven types of Kata handed down in Kodokan. It is based on “Judo-Hongi,” written by Jigoro Kano, and “A Study of Teaching Methods in Ju-no-Kata,” written by Kunio Murakami. The method is to sort out the characteristics of these documents and to focus on the passages that mention Maai. Kano attempted to convey the correct Ju-no-Kata movements and their sig-nificance to practitioners. Murakami wrote mainly about the rational teaching method of Ju-no-Kata. The waza in which relatively large differences were found in the descriptions of the both documents were Naname-uchi and Tsuki-age. The waza with relatively significant changes after the publication of both docu-ments was Katate-age. From several discourses, it can be seen that Kano had a flexible attitude toward the modification of Kata. After Kano’s death, the Kata underwent several minor revisions due to research by Kodokan students. The current unified view is contained in a textbook published by Kodokan. Some of the descriptions are different from those of Kano and Murakami. In recent years, Kata has become a competition. The judging criteria for Kata competitions clearly states “position and Maai.” The concept of Maai is im-portant for each competitor, instructor, and judge. In Kata, it is important to understand the significance of each movement, and to practice with an awareness of the Maai necessary for the expression of Riai.
著者
末續 鴻輝
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2017論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, pp.230-235, 2017-11-03

完全情報ゲームの多くの研究は2人プレイのものに限定され,3人以上でプレイするゲームに関する研究は,Li[1]や,Straffin[2],Propp[3]などの研究があるものの,その絶対数は少ない.その理由の一つには,3人以上のゲーム独自の問題がある.2人ゲームにおいては,ゲーム木をすべて書き下し,終了局面から再帰的に遡ることで,それぞれの局面において先手に必勝手順が存在するか,あるいは後手に必勝手順が存在するかどうかを判定することができる.しかしながら,3人以上のゲームにおいては,このように一意に勝者を定めることはできない.本研究では,Liが導入した順位の拡張とも言える概念を導入し,よく知られた完全情報ゲームNIMの多人数版の解析を行う.さらにこれが,正規形のゲーム (最後の着手をしたプレイヤーの勝ちとなるゲーム)だけでなく逆形のゲーム (最後の着手をしたプレイヤーが負けとなるゲーム)を含めた拡張となっていることを示す.
著者
山元 一晃 浅川 翔子 加藤 林太郎 Kazuaki YAMAMOTO Shoko ASAKAWA Rintaro KATO
出版者
金城学院大学
雑誌
金城学院大学論集. 人文科学編 = Treatises and Studies by the Facalty of Kinjo Gakuin University. Studies in Humanities (ISSN:18800351)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.129-139, 2021-09-30

筆者は,看護師を目指す留学生のためのライティング教材の開発を行った。本稿は,開発に至った背景,開発の過程,その内容,想定される使用方法などについて述べる。まず,開発に至った背景については,看護学生・看護師向けのライティング教材を分析し,留学生の日本語教育にそのまま応用することは難しいことを明らかにした。その後,開発の経緯や内容について述べた。看護師と日本語教師が共同で開発にあたり,看護学科で用いられている課題を分析し,その上で必要なものを選んだ。さらに,実際のテキストを示しながら,本書の特徴を述べた。看護実習の流れにそった内容になっており,大きく「実習前」「実習中」「実習後」に分け,形式に関する説明を加え,電子カルテなど実際に看護実習で情報を得るための資源を入れ,ステップアップできる練習問題を豊富に用意した。最後に,想定される使用法や,今後の課題を述べた。
著者
蓮尾 一郎 星野 直彦
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.710-715, 2014-06-15

量子計算のためのプログラミング言語について,その研究の動機と動向を解説する.特にKnillによる「量子データ,古典制御」なる計算モデルと,量子プログラミング言語の3つの大きな潮流――宣言的量子プログラミング言語,量子的副作用を持つ関数型言語,量子ラムダ計算――のそれぞれを概説する.
著者
芝 世弐
雑誌
研究報告ゲーム情報学(GI) (ISSN:21888736)
巻号頁・発行日
vol.2021-GI-46, no.2, pp.1-3, 2021-06-12

2020 年 11 月に行われた世界将棋 AI 電竜戦において深層学習とモンテカルロ木探索を組み合わせた所謂 PV-MCTS 系のプログラムが優勝し,将棋の探索エンジンとしては同系のものが今後主流となると思われていた.しかしながら,2021 年 5 月に行われた第 31 回世界コンピュータ将棋選手権においては決勝 8 チーム中 1 チームのみが同系エンジンであった.本研究はこの事象を持ち時間の観点から説明を試みる前段階として探索アルゴリズムの時間利用の適性を評価しようとするものである.
著者
高橋 敏
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.108, pp.149-164, 2003-10-31

生命の危機にさらされたとき人々はどのようにこれに立ち向かうのか。日本歴史上人々は天変地異の大災害や即死病といわれる伝染病の大流行に直面した。文明の進歩、医学の革新等、人々の生命に関する恐怖感は遠のいたと一見思われがちの現代であるが、二〇〇三年のSARSの大騒動は未だ伝染病の脅威が身近に存在することを思い知らしめてくれた。本稿は安政五年(一八五八)突如大流行したコレラによって引き起こされた危機的状況、パニック状態を刻明に実証しようとしたものである。人々は即死病といって恐れられたコレラが襲って来る危機的状況のなかでどのようにこれに対拠したのか、本稿は駿河国富士郎大宮町(現富士宮市)を具体例として取り上げる。偶々大宮町の一町人が克明に記録した袖日記を解読することから始める。長崎寄港の米艦乗組員から上陸したコレラ菌は東へ東へ移動し次々と不可思議な病いを伝染させ、未曾有の多量死を現実のものとした。コレラに対するさまざまな医療行為が試みられるが、一方で多種多様、多彩な情報を生み出し、妄想をまき散らしていく。まさに、現実の秩序がくつがえる如く、人々を安心立命させていた精神(心)の枠組が崩壊し、人々はありあらゆる禦ぎ鎮魂の呪術を動員し救いを求めていく。コレラ伝染の時間的経過と空間的ひろがりに対応して人々の動きは活発化し、非日常の異常に自らを置く方策を腐心していく。コレラの根源を旧来の迷信の狐の仕業、くだ狐と見なして狐を払うため山犬、狼を設定し、三峯山の御犬を借りようとする動きやこの地域に特に根強い影響力を有する日蓮宗の七面山信仰がコレラを抑える霊力をもつとして登場する。極限状況の人々の動向にこそ時代と社会の精神構造があらわにされるのである。
著者
高野 秀之 タカノ ヒデユキ Hideyuki Takano
雑誌
嘉悦大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.77-99, 2009-10-01

本稿は、平成20 年度嘉悦大学特別研究『認知言語学を理論基盤とした文法教育の研究』の第1章として共同研究者に提供した、言語学史の概要部分を加筆・修正したものである。その中で、筆者は認知言語学を最新の言語観として位置づけ、言語学の歴史において、その要請はことばに関する哲学的な議論の当然の帰結であると主張している。近代以降の言語学史において、最新の言語理論というものは、直前の言語観をアンチテーゼとして成立したものであるという見方が、一応、共通の認識になっている。しかし、それでは言語研究の歴史の中で展開されてきた言語観の変遷は不問に付され、最新の言語観と直前のそれとの差異ばかりが過剰なまでに強調されているような印象を受ける。理論言語学の目的は、最新の言語理論がどれだけ言語一般の特性を表すものであるかを共時的に検証するとともに、そこに至るまでの言語観の変遷を通時的に実証することにある。ことばをどのように扱うのかという問題は、ある言語理論がどれだけ多くの言語に対応するものであるかを論じるだけではなく、それぞれの時代において言語学者がどのような視座に立ち、何を取捨選択してきたのかを振り返ることによって初めて明らかにされるものである。今回の取り組みが、哲学者や思想(史)家から浅薄なものであるという指摘を受けることになったとしても、それは次の言語理論を創出する過程においては、必要不可欠な作業であると考える。言語学者自身が言語観の変遷を振り返ることにより、言語学は更なる発展を遂げるのである。
著者
冠 昭夫 若松 義男 都木 恭一郎 KANMURI Akio WAKAMATSU Yoshio TOKI Kyoichiro
出版者
航空宇宙技術研究所
雑誌
航空宇宙技術研究所資料 = Technical Memorandum of National Aerospace Laboratory (ISSN:04522982)
巻号頁・発行日
vol.523, pp.78, 1983-11

今日,わが国では,H-Iロケット以後の大型人工衛星打上げロケット用に,液体酸素・液体水素ブースターエンジンの開発が検討されており,そのトレード・オフにおいては,二段燃焼サイクルの高圧エンジン開発の方向が有力とされている。そこで,高圧の液体酸素・液体水素エンジン開発上の技術的問題点を明らかにするとともに,わが国の高圧液酸・液水エンジンに関する研究および開発における指針決定に資する事を目的として,この種のエンジンとしては,現在までのところ唯一の実用例である,スペースシャトル・メイン・エンジン(SSME)の開発過程で生じた不具合事例の調査・検討を行った。公表されている文献・記事を基に,主燃焼器・プリバーナ・低圧ターボポンプ・高圧ターボポンプ・配管弁類などのコンポーネント毎に不具合事例の収集を行い,事例毎に内容・原因・対策を明らかにし,主要なものを中心に検討・考察を加えた。二段燃焼サイクルの高圧エンジン開発過程で発生した技術的問題点が明らかになるとともに,開発に際しての基本的コンフィグレーションに対する技術的検討および材料やエンジン各要素の基礎的データ蓄積のためのラボ試験などの重要性が,改めて確認された。
著者
久田 健吉
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.83-97, 2004-01-10

ヘーゲルの国家論の特徴は、国家は人倫を大切にする国家でなければならないとした点にある。人倫を大切にする国家、つまり人倫の国家とは絶対的人倫の理念の認識に基づく諸個人の共存の国家であって、個人が己の個別的意志を普遍的意志へと陶冶していくことにおいて成り立つ国家である。しかし、同時にその国家はその個人を陶冶させる国家でもなければならない。それゆえ国家はこの人倫を発展させる知恵を、制度の知恵としてもつのでなければならない。そうしなければ国家は真の国家とはならない。ヘーゲルはこう考えていたのである。人倫の心とは信頼と尊敬の心。私の終生のテーマとの関連で言えば、隣人愛や慈悲や恕の心となろう。この心の源は市民生活の中にある。法的権利は守られてはいるが、ある意味で弱肉強食の世界になっている市民社会。この市民社会の中にあって、共生の生活をし、互助組織をつくってこの心を育んでいる市民たち。ヘーゲルはこの心ほど大切なものはなく、この心を育てる国家こそ真の国家、こういう国家になってはじめて市民が思いを寄せる国家になることができる。バラバラな「ドイツ的自由」の国家でなく、強固な国家権力をもつ国家を実現することができる。宥和の国家を実現することができる。ヘーゲルはこう考えていたのである。
著者
松浦 敏雄
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.661, 2021-11-15

このコラムでは,主として高校でのプログラミング教育を想定して,プログラミングの面白さを伝えるにはどうしたらよいかについてお話しします.プログラミング教育の目的は,プログラミングの面白さ・難しさ(思い通りに動かないなど)を体験することを通して,コンピュータの本質に近づくことと考えています.具体的な目標は,自ら簡単なプログラムを組めるようになることです.この目的を少ない授業時間(50分×10回程度を想定)で達成するための具体的な方法を提案します.