著者
高橋 敏
出版者
スポーツ史学会
雑誌
スポーツ史研究 (ISSN:09151273)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.41-51, 2017 (Released:2018-06-20)

群馬県下には、今日なお上州(上野国)といわれた江戸時代の在村剣術から二五代にわたって受け継が れてきた古武道が確固として命脈を保っている。高崎市吉井町に現存する樋口家と馬庭念流である。兵農 分離の刀狩りで剣術はおろか武器を根こそぎ取り上げられた筈の多胡郡馬庭村に、百姓身分でありながら 道場を構えて根を下ろし、周辺農村から上州一円、北関東、江戸にまで門人を獲得し、最盛期には門人が 数千と豪語された一大流派を築いた。更に明治維新以降の近代化のなかで前代の剣術諸流派が剣道に収 斂・統一される趨勢のなか、脈々と今日まで継承されてきた。そこには江戸時代の上州という風土と社会 が深くかかわっているように思われる。本講は、北関東上州の一農村の田舎剣法から門人数千の一大剣術 流派に発展した馬庭念流を手がかりに二世紀半にも及ぶ未曾有の平和な江戸時代に、身分制度の厚い壁を 破って展開していった武芸について考えてみたい。 上州、関東においては、兵農分離は身分制度として断行されたが、刀狩りは実施されず、武器の所持、 剣術の継承は禁止されることはなく許容された。樋口家は中世以来の在地土豪の権益を失い、公的には百 姓身分になったが、私的な領域においては姓を名乗り、帯刀し、念流を伝授することは黙認された。要は 在地土豪の念流を継承する郷士と馬庭村百姓の二つの顔を持つことになった。 馬庭念流は、江戸時代初頭から四代に長命にして剣技・指導力に優れた当主に恵まれ、北関東を中心に 多くの門弟を集め、江戸にまで進出して道場を経営し、一大流派の結社に発展する。門人は百姓町人のみ ならず、高家新田岩松氏、七日市藩前田氏、小幡藩織田氏、支配領主旗本長崎氏の主従にまで門下の列に 加えている。 なかでも流派念流の結社としての勢力を誇示したのが有名神社の社前において秘剣を披露し、師匠以下 門人名を列記した大額を奉納する儀礼であった。上野四社から江戸神田明神・浅草寺、鎌倉八幡、伊勢外 宮・内宮、遠く讃岐金刀比羅宮にまで足を運び、大枚を投じ奉額している。 このような現象は念流だけではなかった。千葉・斎藤・桃井の江戸三大道場と謳われた民間剣術流派の 盛業に顕著のように、幕藩領主に囲い込まれ、正統とされた剣術が衰退し、民間の剣術がこれに代わって 勃興していったことと軌を一にしたものであった。いわば幕藩秩序そのままの武士が独占する伝統守旧の 剣術から民間の活性化された在村剣術が掘り起こされて、身分制度の枠を打破して、武芸として百姓町人 までが入門、習練する時代が到来したのである。まさに戦国乱世の殺人剣から幕藩領主の子飼いの指南の 剣術を経て、新たに自衛のため、修行のための武芸に生まれ変わろうとしていた。もちろん武芸の大流行 は、念流が江戸から勢力拡大を図る北辰一刀流千葉周作と伊香保神社掲額をめぐって一髪触発のところま でいったように、諸流派の競合・対立を引き起こすことも多々あった。しかし、大勢は総じて流派間の共 存と連携を深めていったことの方が事実である。幕府法令からは民間の帯刀、剣術は厳禁されているが、 時代の武芸熱は冷めるどころか高揚し、諸流派を渡り歩く武者修行の旅が一般化していく。これを可能に したのが諸流派間を結び、連携する一種のネットワークの形成であったように思う。そこには支配秩序に 直結する武士のみならず姓名、諱まで名乗る武士風体の百姓・町人が多く含まれ、身分制度の壁を越えた 一大武芸の文化ネットワークが広がっていた。 剣術、武芸の歴史といえば、権力争奪に絡む殺伐とした合戦、暗殺、仇討ち、テロといった殺人剣を類 推する向きが多いが、平和の時代を背景に自己鍛錬の武芸として定着していったことを見落としてはなら ない。近代剣道に転換する素地はつくられていたのである。
著者
近藤 成一 海老澤 衷 稲葉 伸道 本多 博之 柳原 敏昭 高橋 敏子 遠藤 基郎 渡邉 正男 神野 潔 野村 朋弘 金子 拓 西田 友広 遠藤 珠紀 山田 太造 岡本 隆明
出版者
放送大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01 (Released:2013-05-15)

未刊古文書釈文作成のための協調作業環境を構築することにより、未刊古文書の釈文を歴史学のコミュニティにおいて協同で行うことを提起し、史料編纂のあり方について新たな可能性を模索するとともに、歴史学のコミュニティの実体形成にも寄与する基礎とした。釈文作成のために外部から自由な書き込みを許す部分と、作成された成果を史料編纂所の管理のもとに公開する部分を構築し、前者から後者にデータを選択して移行するシステムを設けた。
著者
野本 済央 小橋川 哲 田本 真詞 政瀧 浩和 吉岡 理 高橋 敏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム = The IEICE transactions on information and systems (Japanese edition) (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.96, no.1, pp.15-24, 2013-01-01
参考文献数
38

対話音声に対し怒りの感情を高精度に推定するための新しい特徴量について提案する.怒りの種類は,怒鳴った怒り(hot-anger)と静かな怒り(cold-anger)の二つに分類される.hot-angerの推定には従来研究により韻律的特徴の有効性が示されてきたが,cold-angerの推定はこれまで困難であった.本論文では,2話者による対話を前提とし,韻律的特徴以外に対話特有の特徴も捉えることでcold-angerの推定も可能とする.一方の話者が怒っており,もう一方の話者が怒られている対話状況に現れる顕現的な特徴を捉えるため,各話者の発話区間の時間的関係性から"対話的特徴"(発話時間,相づち回数,発話権交替時間,発話時同比)を提案する.コールセンタ対話音声に対し分析を行い,提案する対話的特徴がhot-anger,cold-angerによらず怒り対話音声の推定に有効であることを明らかにした.更にSVMを用いた実験により,韻律的特徴と併用することでcold-angerにおいてF値で24.4pt,hot-angerにおいて8.8ptの精度向上を確認し,提案する対話的特徴量の有効性を示した.
著者
高橋 敏行 冨永 悌二 横堀 寿光 吉本 高志
出版者
日本脊髄外科学会
雑誌
脊髄外科 (ISSN:09146024)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.1-6, 2001
被引用文献数
1 1

Cervical interbody fusion cages (CIFC) are currently used for anterior cervical fusion. There are few reports documenting their biomechanical property in the cervical spine. The purpose of the present study is to investigate biomechanical stability of the caprine cervical spine implanted with a CIFC device. Thirty-two spinal units (C3-4 and C5-6) were harvested from 16 fresh-frozen caprine cervical spines. Each spinal unit underwent discectomy and transection of the posterior longitudinal ligament, and then was implanted with single CIFCs, double CIFCs, autograft, or autograft and anterior cervical plate. An iliac crest tricortical bone was used as an autograft. The degrees of displacement of the cervical spine specimens by multidirectional moments in flexion, extension, lateral bending and axial rotation were evaluated using a video-recording. The stiffness against the multidirectional loads was calculated from load-displacement curves. There were no statistical differences in stiffness between the single-cage and autograft groups in flexion, extension and axial rotation. The autograft group showed significantly increased stiffness compared with that of the single-cage group in lateral bending. The stiffness values were far larger in both the double-cage and autogtraft with plating groups than in the other groups in all directions. There were no statistical differences in stiffness between the double-cage and autogtraft with plating groups in flexion, lateral bending and axial rotation. The double-cage group showed significantly decreased stiffness compared with that of the autograft with plating group only in extension. The stiffness values of the single- or double-cage groups would represent the characteristic biomechanical properties derived from the structure and shape of the implants.
著者
野本 済央 小橋川 哲 田本 真詞 政瀧 浩和 吉岡 理 高橋 敏
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.1, pp.15-24, 2013-01-01

対話音声に対し怒りの感情を高精度に推定するための新しい特徴量について提案する.怒りの種類は,怒鳴った怒り(hot-anger)と静かな怒り(cold-anger)の二つに分類される.hot-angerの推定には従来研究により韻律的特徴の有効性が示されてきたが,cold-angerの推定はこれまで困難であった.本論文では,2話者による対話を前提とし,韻律的特徴以外に対話特有の特徴も捉えることでcold-angerの推定も可能とする.一方の話者が怒っており,もう一方の話者が怒られている対話状況に現れる顕現的な特徴を捉えるため,各話者の発話区間の時間的関係性から“対話的特徴”(発話時間,相づち回数,発話権交替時間,発話時間比)を提案する.コールセンタ対話音声に対し分析を行い,提案する対話的特徴がhot-anger,cold-angerによらず怒り対話音声の推定に有効であることを明らかにした.更にSVMを用いた実験により,韻律的特徴と併用することでcold-angerにおいてF値で24.4 pt,hot-angerにおいて8.8 ptの精度向上を確認し,提案する対話的特徴量の有効性を示した.
著者
児玉 敏宏 池田 拓洋 法岡 貴子 湯川 彰英 雑賀 博子 高橋 敏夫 北 裕次 前田 明文 阿部 富彌
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.143-146, 1993

腎性骨異栄養症の補助診断およびその病態の評価をする目的で, 維持透析患者43例に対し2年間にわたり定期的身長測定を実施し, その身長変化と種々の臨床検査, 骨塩量, ビタミンD<sub>3</sub>投与量との比較検討を行った.<br>身長は3か月毎に測定したが, 今回は1988年1月から1990年1月までの2年間における身長の変化を観察し, その身長変化と年齢, 透析歴, 血清Ca, P, ALP, C-PTH, AI, BMG, カルシトニン (CT) 等の血液検査との比較検討を行った.<br>また, Digitallmage Processing Methodにて骨塩量 (ΣGS/D) を測定し, 身長変化と比較した. ビタミンD<sub>3</sub>投与量と身長変化との関係も合わせて検討した.<br>身長縮小値と透析歴との間にr=0.307の正の相関傾向が, 血清Ca値との間にr=0.345の正の相関傾向が認められた. 身長縮小値と血清ALP値との間にr=0.670, p<0.01と正の相関が, 血青C-PTH値との間にr=0.701, p<0.01と正の相関が見られた. ΣGS/Dと身長縮小値, 血清ALP, C-PTH値との間に負の相関が認められた. ビタミンD<sub>3</sub>投与量と身長縮小値との間には相関は見られなかった.<br>2年間に2cm以上の身長縮小をみた5症例中4症例に, 血清C-PTH値の異常高値が認められた.
著者
有馬 博 高橋 敏秋
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部紀要 (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.37-52, 1975-12

1 前報3)のSU-74型加工トマト収穫機試作にひき続き,1975年にSU-75 FS型加工トマト選果機を試作し実験した。2 この選果機は歩行型クローラ台車にホッパー,さん付きバーコンベア,平ベルト逆転式選別コンベア,選果台その他からなる選果装置を搭載した小型の一挙収穫用作業機である。3 作業車は2~8名としうち1~3名がホッパーへ果実を振り落とす。果実はバーコンベアで搬送され逆転コンベアできよう雑物を除去されたのち選果台に達する。他の作業車は,選果台附近にいて熟度選果を行い出荷可能果を畦上のコンテナへ収容する。4 台車から選果装置を取り外し,代わりに荷台を搭載すればコンテナ運搬車として利用できる。5 ほ場実験の結果,果実収穫作業,コンテナ運搬作業とも従来の作業方法の約2~3倍の作業能率(kg/人/分または箱/人/分)をあげることができ,果実の損失もなかった。6 この選果機は単純小型の構造で品種や栽培条件に制約を受けることが少ないので国内の栽培地へただちに導入できるであろうと推察された。