著者
Kakin Oksana
出版者
お茶の水女子大学生活社会科学研究会
雑誌
生活社会科学研究
巻号頁・発行日
no.25, pp.51-63, 2018-10-23

「『未熟さ』の商品化」とは,技術が未熟な者が熟練していく過程をファン向けの商品にすることを指す.この現象は,現在の日本のアイドル文化に見られるが,これまであまり研究されてこなかった.本稿の目的は,そうした日本アイドルの「未熟さ」の商品化を明らかにすることである.研究手法は,ジャニーズ系アイドルを事例として取り上げ,女性コアファンを対象に半構造化インタビューを用いた質的調査を行うものである.分析にはグラウンデッド・セオリー・アプローチを用い,エドガール・モランのスター理論に基づき考察を加えた.分析の結果,コアファンにとってアイドルの最大の魅力は,その二面性であることが分かった.それは理想を映す「神」的側面と,親近感を与える「人間」的側面の間のギャップである.アイドルは,ファンを作るために,従来のスターと同様にそうした「人間」と「神」の二面性を活かすが,「人間」的な一面の活かし方が異なっている.そこには,アイドルとしての能力の「未熟さ」をみせつつ,ファンに育てる感覚を与え,商品としての「未熟さ」を享受することを促していくという特徴がある.つまり現在のジャニーズ系アイドルには,今までなかった新しいスターの在り方がみられるといえる.The commodification of "immaturity" is a unique phenomenon that can be observed inJapanese culture. Since long ago Japanese people found enjoyment in observing the process oflearning, growing, and maturing by performers of traditional Japanese arts. The audience wouldfind a student that has a potential to become a great performer and would support the student'sgrowth while "consuming" the process of her maturing. One of the examples of that is so-called"newcomers' plays" of traditional kabuki theater. Currently, a similar commodification ofimmaturity can be observed among contemporary Japanese idols. For example, it can be seen inthe AKB48 selection system and Jonny's Jr. system. However, very little work has beenundertaken on this phenomenon.The purpose of this paper is to examine the phenomenon of the commodification of"immaturity" that is observed among contemporary Japanese idols. Semi-structured interviewsurvey was conducted among 13 respondents in the period from May to September 2017. Therespondents were recruited among female Japanese core fans of young male idols under talentagency Johnny & Associates. The data were analyzed according to GTA methodology, based onEdgar Morin's Star theory.From the results of the survey, the following findings have been made. Differently fromprevious assumptions that idol is either "a pseudo-boyfriend" or "an object to be brought up",contemporary Japanese idols were found to have both of these two sides and the gap betweenthe sides is what attracts fans to idols. Analyzing this finding with Moran's theory, it can be saidthat idols have two dimensions, 1) an immature but cute, close like a son, "human" dimension,and 2) a cool, skilled, like an ideal boyfriend but far away "god" dimension. The gap betweenthose dimensions, this duality is the main point of attraction for core fans. The idols that canperform that gap skillfully are able to obtain many core fans.Thus it can be stated that contemporary Japanese idols are a new form of Morin's "star", anda new relationship between idols and fans that consume their growing and maturing process canbe found in Japan. Just like previous stars they perform the gap between "human" and "god"dimensions but the way of performing "human" dimension is different as it includes showingtheir "immaturity" to fans, giving fans an illusion of taking part in idols' growth, and letting fansconsume idols' "immaturity" as a commodity.
著者
西田 尚輝
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.482-498, 2020 (Released:2021-12-31)
参考文献数
26

失業保険の費用を労働者,雇用主,国のあいだでどのように分担するかは,福祉国家によって異なる.しかし従来の権力資源論,資本主義の多様性論,インサイダー・アウトサイダー理論は,各国の失業保険の費用分担構造の違いを体系的に説明しなかった.本稿の目的は,制度の経路依存性と長期的過程に着目して,失業保険の雇用主拠出にかんする新たな説明を提示することである. 本稿は,戦間期ヨーロッパ諸国の失業保険の比較歴史分析によって,失業保険のコスト分担パターンを決定したのは,20 世紀初頭に福祉プログラムがどのように構造化されたか(市民権ベース/職業ベース)と,どのような組織が失業保険を実施していたか(労組/他組織)という2 つの要因だったことを示す.職業ベースの福祉プログラムを採用した国のうち,フランスのように多元的な失業金庫制度をもっていた国は,その制度選択の結果として,戦間期においても労働者だけが保険料を負担する旧来の制度を維持したのに対し,ドイツのように労働組合のみが失業金庫を管理運営していた国は,第一次世界大戦後に,未組織労働者の無保険状態の解消のために失業保険を一般化し,雇用主にも保険料負担を求めた. 福祉国家の大部分は拠出金で賄われているため,その費用を誰が負担するのかという問いを考えることは重要である.本稿は失業保険という政策領域でこの問いに取り組み,今後の研究にいくつかの道を開くものである.
著者
Shota Teramoto Yusaku Uga
出版者
Japanese Society of Breeding
雑誌
Breeding Science (ISSN:13447610)
巻号頁・発行日
pp.21053, (Released:2022-02-09)
被引用文献数
7

Root system architecture (RSA) determines unevenly distributed water and nutrient availability in soil. Genetic improvement of RSA, therefore, is related to crop production. However, RSA phenotyping has been carried out less frequently than above-ground phenotyping because measuring roots in the soil is difficult and labor intensive. Recent advancements have led to the digitalization of plant measurements; this digital phenotyping has been widely used for measurements of both above-ground and RSA traits. Digital phenotyping for RSA is slower and more difficult than for above-ground traits because the roots are hidden underground. In this review, we summarized recent trends in digital phenotyping for RSA traits. We classified the sample types into three categories: soil block containing roots, section of soil block, and root sample. Examples of the use of digital phenotyping are presented for each category. We also discussed room for improvement in digital phenotyping in each category.
著者
高田 知紀 梅津 喜美夫 桑子 敏雄
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_167-I_174, 2012
被引用文献数
10

東日本大震災では,多くの神社が津波被害を免れたことが指摘されている.本研究では,日本の神社に祀られる祭神の多様性は,人びとの関心に応じた差異化の結果であるという仮説から,宮城県沿岸部の神社についてその祭神と空間的配置に着目しながら被害調査を行った.祭神については特に,ヤマタノオロチ退治で知られるスサノオノミコトに着目した.スサノオは無病息災の神として祀られることから,洪水や津波といった自然災害時にも大きな役割を果たすと考えられる.また,地域の治水上の要所に鎮座していることが多い.東北での調査から,スサノオを祀った神社,またスサノオがルーツであると考えられる熊野神社は,そのほとんどが津波被害を免れていることを明らかにした.この結果は,地域の歴史や文化をふまえたリスク・マネジメントのあり方について重要な知見を提供する.
著者
河上 繁樹
出版者
関西学院大学
雑誌
人文論究 (ISSN:02866773)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.1-14, 2002-12-10
著者
高井 渉
出版者
一般社団法人 電気設備学会
雑誌
電気設備学会誌 (ISSN:09100350)
巻号頁・発行日
vol.32, no.7, pp.470-473, 2012-07-10 (Released:2014-09-01)
参考文献数
1
著者
鵜澤 由美
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.141, pp.225-263, 2008-03

これまで、近代以前の日本には誕生日の習慣はなかったと考えられ、誕生日に関する研究もほとんどされてこなかった。しかし、日本でも天皇や将軍などの誕生日は祝われ、古くは奈良時代に誕生日の行事が行われていたのである。そこで本稿では、近世における誕生日の実態を明らかにするべく、誕生日の祝われ方、位置付けなどを考察していく。将軍の誕生日には、将軍の御前で祝が行われるとともに、殿中に祗候している者たちに餅や酒が下賜されるという行事が行われた。将軍の誕生日は、将軍と、殿中で祗候する詰衆や旗本、御家人との主従関係を意識させる儀礼の一つであったのである。この祝の構造は大名家の一部でも見られ、藩主の誕生日に家臣が集められて祝儀が行われた。公家にとっての誕生日は節句のようなものであり、当主が自らの誕生日を最も盛大に祝っていた。家族や友人と祝宴を開くのが一般的であった。産土神である御霊社への参詣も行われた。また、天皇の誕生日は、近世に入っても毎月行われ、女官が心経を読誦した。下級武士や庶民は、子供や孫の誕生日を中心に祝った。赤飯を炊き神に上げ、親類や隣人と会食をするなど、家族的な行事だった。誕生日には餅や酒が出され、また厄除けの力があるという小豆も食べられた。神仏の信仰も重視されている。日頃の無事を喜び、今後も息災であることを願ったと推測される。年を取るのはみな一斉に正月であったけれども、前近代の人々も、自分や家族などの生まれた日を特別な日として意識していた。一年に一度めぐってくる誕生日を記念し、祝うという概念があったのである。明治以降、西洋文化が輸入され、戦後に満年齢が制度化されて誕生日に加齢の要素が加わり、生活の欧米化も加速していく中で、今日のような祝い方になったと考えられる。

33 0 0 0 OA 浮世道中膝栗毛

著者
十返舎一九 著
出版者
諧文堂
巻号頁・発行日
vol.1, 1882
著者
白木 信義 福屋 真悟 久米 康隆 生駒 成亨
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1453, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】階段昇降動作の自立は日常生活における活動範囲へ影響を及ぼし,中でも降段動作は,前方降段のみならず側方降段,後方降段を行うことで機能代償を図ることもあり,その実用性について運動学的,運動力学的な調査を行った報告もみられる。降段動作は重心を前下方へ移動するため,支持脚においては主に膝関節伸展筋の遠心性収縮を求められる動作であり,矢状面における関節角度や関節モーメントの変化を調査した報告がみられる。しかし,降段動作における重心移動には,前額面における支持脚の股関節内転角度の変化も寄与していると想定されるが,そこに着目した調査はみられない。そこで今回,前方降段時と側方降段時における支持脚関節可動域の前額面,矢状面における角度変化の違いを調査し,運動学的な知見を得ることで動作特性の一部を明らかにすることを目的とする。【方法】対象は整形外科的,神経学的疾患のない健常成人男性10名とした(年齢24.6±3.9歳,身長169.7±6.0cm,体重57.5±6.0kg)。降段動作は前方降段,側方降段の2種類とし高さ10cmの台からの降段動作を支持脚(上方脚)を左として実施した。動作開始,終了時とも,両上肢を胸の前で組み,体幹は伸展位とし,支持脚踵部は極力浮かさないよう指示した。その動作をビデオカメラにて前額面から前方降段,側方降段とも各3回ずつ,そして矢状面から同様に各3回ずつ撮影を行った。なお,ビデオカメラは三脚で固定し被験者からの距離は5mとした。支持脚の股関節内転角度を前額面から,膝関節屈曲角度,足関節背屈角度を矢状面から計測するため,蛍光マーカーを前額面計測用に両上前腸骨棘,左膝蓋骨近位部に,矢状面計測用に左下肢の大転子,大腿骨外側上顆,外果,第5中足骨頭に貼付して撮影を行った。撮影完了後の動画データをArea61ビデオブラウザにて画像データに分割し,各動作開始直前肢位,そして各3回行った降段動作時における振り出し側の足部が床面につく直前のデータを抽出した。その各データにおける支持脚股関節内転角度,膝関節屈曲角度,足関節背屈角度を,ImageJにて計測を行った。各動作時における足部が床につく直前の3回のデータについてはその平均値を採用し,その値と動作開始直前肢位の値との差から角度変化を求めた。その結果をもとに,前方降段時と側方降段時における支持脚股関節内転角度,膝関節屈曲角度,足関節背屈角度の違いをそれぞれ対応のあるt検定にて比較検討した。【結果】股関節内転角度は,前方降段時3.8±2.8°,側方降段時1.5±1.6°となり有意に前方降段時が大きかった(p<0.05)。膝関節屈曲角度は,前方降段時38.2±6.0°,側方降段時30.3±4.7°となり有意に前方降段時が大きかった(p<0.01)。足関節背屈角度は,前方降段時23.2±5.0°,側方降段時16.0±6.5°となり有意に前方降段時が大きかった(p<0.01)。【考察】当初,前方より側方降段時の方が,支持脚股関節内転角度がより大きくなり,その分,膝関節の屈曲角度を減じることで,膝関節への負荷を減らした動作方略を取ると予測したが結果は違っていた。前方降段においては,振り出し側下肢の股関節屈曲,支持脚股関節より頭側の身体質量の前方移動に伴う前下方への加速度が発生するため,受動的に支持脚膝関節屈曲,足関節背屈が要求され,その加速度を制御するため支持脚膝関節伸展筋,足関節底屈筋には重心移動,加速度変化に伴う遠心性収縮の調整が要求されると考える。そのため,前方降段のほうが膝屈曲角度の変化が大きい状況であったと考える。加えて,前下方への重心移動を膝関節,足関節のみで制御するのではなく,支持側股関節にも,股関節内転での重心の下方移動が要求されるため,前方降段のほうが股関節内転の変化が大きい状況であったと考える。逆に,側方降段では,上記の重心移動,加速度変化は,前方降段時ほどは要求されず,支持脚の股関節外転筋,膝関節伸展筋,足関節底屈筋も制御しやすい状況となり,最低限の股関節内転,膝関節屈曲,足関節背屈角度にて降段動作が行えたのではと考える。しかし,それを証明するためには筋電図による計測や,関節モーメント,床反力などの運動力学的な評価を加える必要があると考えるため今後の課題としたい。【理学療法学研究としての意義】降段動作の動作特性を運動学的,運動力学的に詳細に把握することで,理学療法における各関節への負担を考慮した動作指導,治療の実施へつなげることが可能になると考える。
著者
金子 治 中井 正一
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文集 (ISSN:13404202)
巻号頁・発行日
vol.79, no.695, pp.83-91, 2014-01-30 (Released:2014-07-10)
参考文献数
23
被引用文献数
3 4

There were several cases reported where buildings had to stop functioning normally because of the damage to foundations during the 2011 Great East Japan earthquake. The authors carried out static analyses using a foundation structure model in order to investigate the cause of damage to pile foundations by focusing on three typical buildings. Lateral load at pile head and differential movement of soils were estimated based on a seismic response analysis by using recorded ground motions of the 2011 Great East Japan earthquake and by looking into the soil profiles and structural characteristics of buildings. Load-deformation characteristics of pile elements and soil springs were formulated so that the model can incorporate nonlinear behaviors. Results obtained from the analysis explain fairly well the actual damage of pile foundations. It was confirmed that a controlling factor causing damage to pile foundations is the existence of soft soils and the variation of surface soil layers. The proposed procedure can be considered as a practical seismic design method of foundations that ensures a required performance for large earthquakes.
著者
下沢 敦
出版者
共栄学園短期大学
雑誌
共栄学園短期大学研究紀要 (ISSN:1348060X)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.13-45, 2003

南北朝期に至り、京都大番役が廃れたことから、旧来の大犯三ヶ条に大きな異動が生じ、解釈方法が変更され、大犯三ヶ条は、謀叛人、殺害人、夜討強盗山賊海賊、の3大検断項目だけに限定されることになり、体系的整合性を向上させた。夜討強盗山賊海賊の類である悪党は、大犯三ヶ条中の1条項として、明確な法的位置付けを獲得するに至った。謀叛人、殺害人、悪党は、何れも死罪や流刑に相当する大犯であるが、悪党の処断には幅があった。しかし、(1) 現行犯、(2) 犯行の露見、(3) 証拠分明、(4)悪党との評判などにより、悪党であることが判明している場合には、速やかに死罪に処すべきとされた上、悪党を見付け次第、その場で打ち果たすことさえ、法的に容認されるに至っていた。秋霜烈日の如き悪党処断法が厳然と存在していたにも拘らず、悪党は、依然として全国で猛威を振るい続け、倭寇に進化を遂げ、海外に進出し、被害を一層拡大させる者すら、一部には出現していた。

33 0 0 0 OA 掌中官員録

出版者
西村組出版組
巻号頁・発行日
vol.明治8年, 1875

33 0 0 0 OA 馬事読本

著者
武揚堂編纂部 編
出版者
武揚堂
巻号頁・発行日
1943

33 0 0 0 OA 蝶千種

著者
神阪雪佳 著
出版者
山田芸艸堂
巻号頁・発行日
vol.1, 1904
著者
加藤 翔太 佐久間 康富
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
日本都市計画学会関西支部研究発表会講演概要集 (ISSN:1348592X)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.13-16, 2020

近年、民間事業者による都市公園の管理運営が進められてきている。本研究では、天王寺公園エントランスエリア「てんしば」を対象に、大阪市と近鉄不動産の公共性と収益性ならびに事業評価の実態を把握し、公共性と収益性の担保のあり方を目的としている。調査の結果、収益性よりも公共性を重視し、多くの利用者が利用する場所を確保するために芝生広場を維持管理していること、イベントやテナントの選定の際には誰もが利用しやすい環境を担保していることがわかった。公共性に配慮し公園機能を充実させることによって、集客力を向上させる。その結果、持続的な公園運営を可能にし、ひいては賑わいの拠点としてエリアの活性化が期待される。