著者
伊藤 武士
出版者
一般社団法人 日本考古学協会
雑誌
日本考古学 (ISSN:13408488)
巻号頁・発行日
vol.7, no.10, pp.127-137, 2000-10-04 (Released:2009-02-16)
参考文献数
13

秋田県秋田市に所在する秋田城跡は,古代日本最北の城柵官衙遺跡である。律令国家により天平五年(733)に出羽柵として創建され,その後秋田城と改称された。8世紀前半から10世紀にかけて律令国家体制下における出羽国の行政及び軍事の拠点として蝦夷や移民の支配と統治を行った。奈良時代には出羽国府が置かれていたとされ,また近年は,日本海を通じた大陸の渤海国や北方地域との外交と交流の拠点としての役割も注目されている。秋田城跡では1972年以降秋田市教育委員会による継続調査が実施され,外郭区画施設及び政庁などの主要施設や実務官衙などの所在と変遷が確認され,城内外の利用状況も明らかになりつつある。近年の調査では,外交交流,行政,軍事などの面において,秋田城が城柵として果たした役割やその特質に関わる重要な成果があがっている。第63次調査では,鵜ノ木地区から上屋と優れた施設を伴う8世紀後半の水洗便所遺構が検出されている。便所遺構の寄生虫卵の分析から,ブタを常食とする大陸からの外来者が使用した可能性が指摘され,奈良時代に出羽に来航した渤海使や,外交拠点として秋田城が果たした役割との関連性が注目されている。第72次調査では,画期的内容の行政文書が漆紙文書として多数出土している。それらは,移民や蝦夷などの住民の把握と律令的支配を行うための死亡帳,戸籍,計帳様文書などであり,古代律令国家の城柵設置地域における地方行政制度や住民の構成と生活実態を知るうえで重要な成果となっている。また,第72次調査では,9世紀前半の非鉄製小札甲も出土している。平安時代前期の非鉄製小札甲の出土例や伝世品はなく,日本古代の甲の変遷を考えるうえで重要な成果となっている。漆紙文書や小札甲の出土は,秋田城が平安時代に行政と軍事の枢要機関として果たした役割を示唆している。秋田城跡の調査においては,今後も行政や軍事といった城柵としての基本的機能や役割を追究すると共に,最北の城柵としての特質についても解明していく必要がある。
著者
戸田 博也
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 (ISSN:18823505)
巻号頁・発行日
no.9, pp.23-34, 2016-02

イスラム教スンニー派過激派武装集団である「イスラム国」(IS)(以下、「イスラム国」とする)は、国際法上の「国家」と見なしうるのか。国際法上「国家」であると言うためには一定の成立要件が必要となる。まず、国際法上の国家の成立要件を論じる際に、多くの教科書や論文で引き合いに出されるのが、1933年の「国家の権利義務に関するモンテヴィデオ条約」第1条である。同条は、「国際法上の人格としての国はその要件として、(a)永続的住民、(b)明確な領域、(c)政府、及び(d)他国と関係を取り結ぶ能力を備えなければならない」と規定する。多くの日本における国際法の教科書が、この(a)から(d)の「4つの要件」を、諸国家に受け入れられた一般的な要件としている。ところで、国家領域の一部が分離独立する等により新国家が成立するという文脈で、「国家」になろうとする実体に対して、既存の国家による国家承認が行われる。既存の国家は国家承認を行う場合、当該4要件に従って判断することになるのであり、4要件を詳細に熟知しておく必要がある。ところが、日本の国際法学者による論文や教科書では、この4要件についてあまり詳細な議論がなされてきていない。したがって、本稿では、この4要件について詳細な分析・検討を行う。さらに、「イスラム国」は上記4要件を満たした存在なのだろうか。それとも、満たしていないのだろうか。この点も、考察の対象とする。本稿における検証の結果、以下のことが指摘できる。イスラム国は、モンテヴィデオ条約が示す国家の4要件、すなわち、①永続的住民、②明確な領域、③政府(実効的支配を行う政府)、④他国と関係を取り結ぶ能力(外交能力)、という要件から判断した結果、①と②の要件は満たしているが、③と④の要件は満たしていないと判断しうる。したがって、「イスラム国」は国際法上の「国家」ではないという結論に至る。
著者
林 典雄 加藤 明
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.485-489, 1990-09-10
被引用文献数
2

等尺性収縮が持つ特性よりROM訓練への応用が示唆され, 肩関節屈曲100度以下の拘縮肩に対し臨床応用した。16名にストレッチングを主体とした治療, 17名に等尺性収縮を主体とした治療を行い, 1%以下の危険率にて後者の有効性を示した。筋肉におけるレベルで考えるとき, 筋腱移行部 (MTJ) の伸展性欠如が一つの原因であり, その治療を行うには等尺性収縮が非常に有効であることが示唆された. また, 筋収縮がもたらす熱発生は, コラーゲンを中心とした結合組織の粘性低下をもたらし, より有効なROM訓練が行い得ると考えられる。
著者
梅澤 佑介
出版者
慶應義塾大学大学院法学研究科内『法学政治学論究』刊行会
雑誌
法學政治學論究 : 法律・政治・社会 (ISSN:0916278X)
巻号頁・発行日
vol.100, pp.257-288, 2014-03

一 はじめに二 多元的国家論の自己批判三 「三〇年代」におけるラスキの個人主義的服従論四 「三〇年代」におけるラスキの「思慮なき服従」論 (一) 自由主義の思想史的背景と労働者階級 (二) 民主主義、資本主義、ファシズム五 結論
著者
飯塚 義博
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.77, no.679, pp.2241-2249, 2012-09-30 (Released:2013-04-25)

This article traces the development of public cemeteries in Meiji period Tokyo and examines how they were dealt with in the Tokyo SHIKUKAISEI IINKAI (Urban Improvement Committee) Plan. First, analysis of the development process of public cemeteries in Meiji-period Tokyo through official notices (futatsu) and regulations (hourei). Second, spatial changes in public cemeteries over three decades --ranging from the late Edo Period to the early Meiji period before the release of the SHIKUKAISEI IINKAI Plan and the late Meiji period after the completion of improvement projects. The article reaches two conclusions:1. There were no "public cemeteries" in Edo period, but grew from the Shinto funeral sites established in the first half of the Meiji period and graveyards based on the Cemetery Regulations (Bochi Toriatsukai Kisoku) to alter the urban space on the fringes of Tokyo. 2. While the SHIKUKAISEI IINKAI Plan added no new public cemeteries, it rather re-appropriated and enlarged existing ones.
著者
杉浦 真治 山崎 一夫 石井 宏幸
出版者
THE LEPIDOPTEROLOGICAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.12-14, 2002-01-10 (Released:2017-08-10)
参考文献数
10
被引用文献数
3

ゴマフシロキバガScythropiodes leucostola(Meyrick)(チョウ目ヒゲナガキバガ科)の幼虫が,ナラメリンゴタマバチBiorhiza nawai(Ashmead)(ハチ目タマバチ科)によってコナラの芽に形成された虫えいに穿孔し摂食しているのが観察された.これまで,虫えいを摂食するチョウ目では10科が知られているが,我々の知る限りヒゲナガキバガ科では初めての記録である.ゴマフシロキバガは様々な樹種の葉を食べることが知られており,これまで報告された多くのえい食者と同様,機会的えい食者であると考えられた.また,摂食された虫えいから,ナラメリンゴタマバチの成虫が多数羽化してきたことから,ゴマフシロキバガの幼虫による摂食が虫えい形成者に与える影響は少ないものと考えられた.

4 0 0 0 OA 佐幕派史談

著者
長谷川伸 著
出版者
大道書房
巻号頁・発行日
1942
著者
勝部 三奈子
出版者
言語文化教育研究学会:ALCE
雑誌
言語文化教育研究
巻号頁・発行日
vol.17, pp.255-276, 2019

<p>本研究は,日本語教師同士のインタビューの断片を,社会構築主義的な立場から会話分析の行為連鎖と成員カテゴリー化装置という分析概念を用いて微視的に分析し,インタビューにおける質問と回答,説明の行為連鎖の中で用いられるカテゴリー化とその述部の現れ方を記述した。この分析によって,インタビューの説明の達成のために「職人」と「研究者」というカテゴリーとそれに結びつけられる述部が用いられていること,また限られたカテゴリーに関するリソースを一般化することによって所属の教育機関に紐づけられた日本語教師のステレオタイプの構築と分断が行われていたことが,可視化される形で明らかになった。ステレオタイプの構築は意図的ではなく,会話の進行の中で無意識に行われており,このことは日々行われる教師間の会話に内省を促すものである。</p>
著者
瀬戸 邦弘
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
2007-01

制度:新 ; 文部省報告番号:甲2317号 ; 学位の種類:博士(人間科学) ; 授与年月日:2007/1/24 ; 早大学位記番号:新4377

4 0 0 0 OA 電気年鑑

著者
電気之友社 編
出版者
電気之友社
巻号頁・発行日
vol.昭和6年, 1931