著者
田中 薫 Kaoru TANAKA
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.145-164, 1999-03-20

平成9年度1年間の日本の書籍の総新刊発行点数は6万2,336点であった。この数字を約1億2,500万人という総人口に対して、「多い」と考えるか「少ない」と考えるかは何とも言えない。しかし、膨大な量であることは否定できない。現代はそれほどおびただしい数の書籍が出版されている時代なのである。またそうした現実が成立するのは、出版物の流通機構がきちんと確立されているおかげである。そして、学術書や実用書などは別にして、虚構の世界であっても、小説等の出版物をフィクションであることを承知の上で、「娯楽」として楽しんでいるうちは問題がない。しかし、虚構であるにもかかわらず、あたかもそれが真実であるかの如くに書物にして発表する人たちがいる。つまり歴史や科学を堂々と捏造する人たちが存在しているのである。それらの作品の一部を「偽書」と言っている。現在、わが国では「言論・出版・表現の自由」が保障されている。だが、それを逆手にとったような、「偽書」あるいは「トンデモ本」の出版があとを絶たない。そしてそれがまた別の多くの新たな問題を引き起こす。しかしそれが可能であることが「出版」というメディアの持つ一つの特徴とも言える。そこでその問題に「偽書問題」と名付けてその是非について論じてみたい。
著者
矢倉 大夢 中野 倫靖 後藤 真孝
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:21888752)
巻号頁・発行日
vol.2016-MUS-112, no.3, pp.1-10, 2016-07-23

本稿では,作業時に集中度を高めることを目的として聴取する楽曲,「作業用 BGM」 に特化した楽曲推薦システムを提案する.従来,ユーザが好むであろう楽曲を推薦する手法が研究されてきたが,「とても好き」 な楽曲は作業者の集中を阻害することが知られており,作業用 BGM として推薦する楽曲に適していない.提案システムは,「とても好き」 や 「とても嫌い」 ではなく、「好き」 もしくは 「どちらともいえない」 楽曲を,BGM 聴取時のユーザからのフィードバックに基づいて推薦する.具体的には,楽曲のサビ区間までをダイジェスト的に聴取する (部分的にしか再生されない) システムとして設計することで,楽曲を 「スキップ」 するフィードバックによって 「嫌い」 な楽曲を推定する従来手法に加え,「もっと聴く」 フィードバックを導入して 「好き」 な楽曲を推定する.さらに,「好き」 として推定された楽曲は,ユーザの集中度を行動ログから推定して 「とても好き」 か 「好き」 かを識別する.これは集中度が高い時のフィードバックは,低い時より嗜好度を強く表しているという仮説に基づく.そして,楽曲間類似度に基づく Label Spreading により,頑健にかつ再生履歴が少ない状況でも適切に楽曲を推薦することを可能にした.
著者
小島 道裕
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.180, pp.107-128, 2014-02-28

洛中洛外図屏風歴博甲本は、現存最古の洛中洛外図屏風として知られているが、制作された目的や、発注者については明らかでなく、作者についても定説を見ない状況が続いていた。これに対して筆者は、描かれた事物の分析によって、室町幕府の実権を握る細川高国が、将軍足利義晴のために御所を自邸の付近に造り、家督を嫡子稙国に譲ったことを契機として、絵師狩野元信に発注した、という仮説を立てた。しかし、発表後に、これに対する批判も出されたため、今回の共同研究での成果も踏まえて、それらについて検討を行なった。描かれた将軍御所が何であるかは、年代や制作目的の鍵となる問題だが、筆者が想定したとおり、細川高国が造った「柳の御所」であることが、文献史料の再検討から確定し、発注者は、細川高国ないしその周辺であることが明らかとなった。作者については、土佐派とする説は積極的な根拠がなく、狩野松栄とする説も時代的に無理があって、画風からも歴史的背景からも、美術史のこれまでの通説通り、狩野元信周辺に求めるのがやはり妥当である。筆者の説を否定する立場の黒田日出男氏は、この間いくつかの論考を発表しているが、結果的には筆者の説とほとんど変わらないものとなっており、異なる部分については黒田氏の方が誤っていることを指摘した。筆者の解釈や記述にも誤りや不十分な点があったが、本共同研究をはじめとするこの間の研究の進展で、総体的には学界としての定説に近づいていると言える。
著者
吉田 孝次郎
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究
巻号頁・発行日
vol.9, pp.69-103, 1993-09-30

祇園会の山鉾に使用する工芸品は、質、量、品種に於いて世界の至宝といっても過言でないものを現在も使用しているが、特に懸装染織品は、近世染色美術史を痛感し得る内容をそなえ、中国大陸文化圏をはじめ、印度、中近東、大航海時代以降の欧州の染織品を数多く有している。
著者
清野 惇 セイノ アツシ Atsushi SEINO
雑誌
修道法学
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.212-197, 2007-09-30
著者
AIDA Takeshi
出版者
GRIPS Policy Research Center
雑誌
GRIPS Discussion Papers
巻号頁・発行日
vol.16-02, 2016-05

This study investigates how pesticide use by neighboring farmers affects a given farmer’s pesticide use. Although it is common knowledge that pesticide use has spatial externalities, few empirical economic studies directly analyze this issue. Applying the spatial panel econometric model to the plot-level panel data in Bohol, the Philippines, this study shows that the pesticide use, especially for herbicides, is spatially correlated although there is no statistically significant spatial correlation in unobserved shocks. This implies that farmers apply pesticides by mimicking neighboring farmers’ behavior rather than rationally responding to the intensity of infestation.
著者
持橋 大地 吉井 和佳 後藤 真孝
雑誌
研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.2013-NL-213, no.11, pp.1-8, 2013-09-05

本論文では,単語に潜在空間における座標を明示的に与え,その上でのガウス過程を考えることで,通常の混合モデルに基づくトピックモデルより高精度なテキストモデルが得られることを示す.提案法は潜在層が二値ではなく,ガウス分布に従う RBM の生成モデルともみることができ,MCMC により単語の潜在座標を学習することは他の多くの応用や,可視化にも自然に繋がることができる.
著者
村社 仁史 種坂 英次
出版者
近畿大学農学部
雑誌
近畿大学農学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Agriculture of Kinki University (ISSN:04538889)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.355-364, 2013-03-01

[Synopsis] Historical changes in production of the matsutake mushroom, which are symbiotically associated with Japanese red pine trees as a secondary forest in the Heguri-Yama (presently called Yata-Hills) located in the northwestern area of Nara Prefecture, are overviewed with focusing on human activities and vegetative succession. Evergreen Quercus plants as primary natural vegetation of the Heguri-Yama frequently appeared in literature, such as ‘Kojiki’ , `Nihonshoki' and ‘Manyoshu’ edited during the 8th and 9th centuries. The matsutake harvest in this area was first described in 1259 in the literature `Toji-Hyakugoh-monjo' as seasonal tribute esteemed for Buddhism monks, and frequently appeared in this literature until the 16th century. This mushroom was recorded in contracts as a cash product in the 18th and 19th centuries. Since the early 20th century, the matsutake has become an important economic product of several local communities in collaboration with the tourism initiated by a local railway company. Nevertheless, matsutake production has gradually decreased after the late 1960s, and most local matsutake populations have become extinct. Aged red pine forests have been overtaken by evergreen forest, as it was like in ancient days under natural succession.
著者
横井 創磨 佐藤 一誠 中川 裕志
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:21888833)
巻号頁・発行日
vol.2015-MPS-103, no.5, pp.1-5, 2015-06-16

大規模な文書データに対して頻度分布のロングテールに位置する単語は情報量が少ないため,トピックモデルと呼ばれる単語の統計モデルを分布の背後に仮定することで,検索エンジンやオンライン広告などの性能が向上することが知られている.しかし,このような場面において用いられるトピックモデルは,予め仮定する潜在トピック数を高次元に設定する必要があり,計算速度や必要メモリ量が問題になる.トピックモデルの最も基本的なモデルである LDA に対して,大量の文書を扱える SGRLD LDA や高次元のトピックを扱える AliasLDA などの手法が存在するが,大量の文書・高次元のトピックを同時に達成するためには非効率的なアルゴリズムを巨大な計算機リソースを用いて実行しなくてはならない.そこで本研究では,これらの手法をうまく組み合わせることで効率的な計算を可能にする.また,勾配計算において更新の方法を工夫することにより,余分な空間を使わずに期待値計算を行うことができる.実験により,提案手法は大規模データかつ高次元トピックでも実行可能であり,さらに既存手法と比較して速く,特に高次元トピックでは 10 倍以上高速であることを示す.
著者
成嶋 隆
出版者
獨協大学法学会
雑誌
獨協法学 = Dokkyo law review (ISSN:03899942)
巻号頁・発行日
no.93, pp.横1 (762)-横68 (695), 2014-04