著者
森勢将雅 村主 大輔 馬場 隆 片寄 晴弘
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.1244-1253, 2013-04-15

電子的に合成される歌唱が音楽コンテンツ制作に用いられるようになって以来,パソコンを用いた音楽制作はこれまでにない盛り上がりを見せている.Vocaloidに代表的される歌唱合成ソフトウェアでは,煩雑なパラメータの調整(歌唱デザイン)が自然な歌声を生み出すために必要であり,クリエイタは,作業時間の多くを歌唱デザインに割いている.本研究では,歌唱デザインの1つの形として,歌唱素材に対して,特定の歌手の歌唱スタイルを転写する方法を取り扱う.本論文では,島唄風歌唱における歌唱技巧「グイン」を対象とし,入力された歌声を島唄風に変換する技術,および,歌唱デザインを支援するインタフェース「グインレゾネータ」を提案する.F値により性能を評価した結果,67.8%であることが示され,主観評価では知覚的にグインを転写できることが確認された.
著者
菅野 翔平 片寄 晴弘
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.1463-1473, 2023-11-15

近年,男性ボーカルのポップス楽曲が歌いにくいと指摘する声をよく耳にするようになった.主要因の1つとして単純なメロディ音高の上昇が考えられるが,これまでに精緻な調査は実施されていない.また,ミックスボイスと呼ばれる発声法が多用されるようになったとの指摘もあるが,こちらも精緻な調査に基づく主張ではない.この状況に際し,我々は50年規模の調査を実施することとした.発声法の分類については,メインボーカル(非コーラス),コーラスの分類,さらに,メインボーカルについてはチェスト,ファルセット,ミックスボイス,プルの4種類のタイプ分類を目指すが,大量データに対してのラベリングはきわめて煩雑な処理となる.そこで,深層学習による発声法の自動分類処理を実装したうえ,メロディの基本周波数推定をあわせて,過去52年間合計1,560曲に対して分析を実施した.この結果,約一音半分の平均ピッチの上昇と,地声から高音域に用いられる発声法へと徐々に変化している状況を確認した.また,メロディピッチの上昇とミックスボイス,プルによる歌唱の推移に強い正の相関を確認した.
著者
飯尾 淳
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.113, 2023-02-15

公衆トイレのサインには面白いものが多数あり,それらを収集しデータベース化している.現在2,000件以上のデータが集められている.トイレサインからはいろいろと学ぶことがある.世界のトイレサインを比較すると文化の違いを発見できる一方で,全世界で共通する傾向も見出せる.
著者
白鳥 孝幸 村井 源
雑誌
じんもんこん2021論文集
巻号頁・発行日
vol.2021, pp.38-43, 2021-12-04

恋愛物語は非常に人気の高い物語ジャンルであるが,物語論的な特徴を定量的に分析する試みはあまりなされていない.本研究では,現代日本恋愛小説における特徴を明らかにすべく,社会的に評価の高い恋愛小説117 作品を収集した.そして,エンディングに着目した恋愛小説の類型化を行い,年代ごとで各類型の割合がどのように変化しているのかを調べた.また,シーンの分割と物語機能を付与したデータを用いてn-gram 分析を行い,各年代ごとに頻出の物語パターンの抽出を行った.
著者
森谷 裕美子
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 文学研究篇 = The Bulletin of The National Institure of Japanese Literature (ISSN:18802230)
巻号頁・発行日
no.45, pp.183-200, 2019-03-15

狐は歌舞伎と浄瑠璃によく登場する動物である。近世演劇において、狐はどのように登場し、どのような役割を果たしているのであろうか。拙稿では元禄期(宝永期を含む)を中心として、狐の関わる作品を概観しその特徴を考察する。狐の登場する作品は、元禄期を通じて頻繁に舞台にかけられている。作品を概観すると狂言の「釣狐」系統の作品が多いことに気づく。「釣狐」は、観客にとっても馴染み深く、話の筋にもあまり影響をもたらさずに一場面に取り入れることができ、利用しやすかったのではないか。役者評判記の評文を見ると、狐は滑稽な場面によく登場している。所作、軽業で演じられることも特徴の一つである。そして、日本古来の狐ではない「殺生石」以外においては、悪い狐は少ない。歌舞伎役者、大和屋甚兵衛は、狐の演者として評価が高く、甚兵衛により、狐の演技の基盤が作られたと言えるかもしれない。一方、浄瑠璃作品においては、善狐が多いものの、滑稽な場面が少ない。「丹州千年狐」、「天鼓」においては、狐の親子の情愛が描かれ、それは人間の感情とは変わることがない。神の使いでもあり動物でもある狐は、聖俗の両面があり、観客はいろいろな狐の姿を楽しんだ。The Fox is an animal that often appears in Kabuki and Jōruri plays. How fox appears in the early modern theater and what kind of roles did he played?In this article, we stepped back and looked at the big picture of works performed in the Genroku period (including the Hōei period) in which fox appeared. The works in which fox appeared were frequently performed during the Genroku period. We noted that Tsuri-gitsune (one of the works of Kyōgen) have been adopted in many works. Tsuri-Gitsune would had been easy to use perhaps because the work could be incorporated into a scene without affecting the story and since the audiences back then were familiar with the work. According to a review in the Yakusha-hyoban-ki (Reputation notes of Kabuki actors), foxes are commonly appearing in ridiculous scenes. They are also characterized by poses and movements almost danced as well as acrobatics. The bad foxes are few, except Sessho-seki which is not an ancient Japanese fox. A kabuki actor, Yamatoya Jinbee had a high reputation as actor playing a fox. Jinbee might had laid the groundwork of the fox's acting.On the other hand, in Jōruri works, there are many good foxes, but there are less ridiculous scenes. In Tanshu-sennen-gitsune and Tenko, the affections of the fox parent and child are depicted which no difference from human sentiments.Since fox had double sides as a secular animal and as a holy creature, the audiences must had enjoyed the various appearances of the fox in those days.
著者
柴田 勝征
雑誌
研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.2014-NL-218, no.7, pp.1-6, 2014-08-25

福岡県の算数教育実践研究サークルの教師たちは,30 年の実践の中で数々のユニークな成功例を導き出してきた.その原因を探っていく中で,認知と言語の発達史に関する驚くべき事実が浮かび上がって来た.人類の認知のあり方には,ズームアウト型 (トップダウン型= “西洋脳”) とズームイン型 (ボトムアップ型= “東洋脳”) があり,各民族ごとに,どちらのタイプの人間が多いかがほぼ決まっている.そして,その認知型とその民族の言語の文法構造の間には,非常に強い相互作用 (抗争・対立/協調・協力) の数万年の歴史があった.
著者
今井 信行 鄭 昇姫
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 = The University Bulletin of Chiba Insitute of Science (ISSN:18823505)
巻号頁・発行日
no.13, pp.151-154, 2020-02-28

千葉科学大学薬学部薬学科では2008年に初めて韓国人留学生が入学した後、韓国人留学生の入学者が増加し、現在の在学人数は80人に達している。また、韓国で薬剤師になるためには、薬学系大学を卒業してから薬剤師国家試験に合格しなければならない。ただし、日本の薬剤師免許を持っている人は、卒業した大学のカリキュラム等の受験資格確認書類を韓国保健福祉部長官に申請して承認されれば、韓国の薬剤師国家試験を受験する資格が与えられる。
著者
シュエ ジュウシュエン 池田 心
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2023論文集
巻号頁・発行日
vol.2023, pp.131-138, 2023-11-10

囲碁の問題集はプレイヤが上達するための勉強によく使われている.市販の問題集はたくさん存在するが,問題数が限られているし,個人ごとの弱点や好みに合わせて提供することも殆ど不可能である.そこで本研究はプレイヤの要望に応じた囲碁問題の自動生成を目指す.まずは囲碁問題の自動生成に向ける第一歩として,本稿では問題の局面と正解手が与えられると仮定するうえで,不正解手の自動生成を行う.本稿での調査対象を布石問題とする.具体的には市販の布石問題集を,ヒューリスティック特徴量と強い囲碁プログラムによる特徴量で分析し,不正解手が選ばれる条件を明らかにする.また,調査の結果に基づき,ルールベースの方法で不正解手の自動生成も行う.
著者
鈴木 渉 齋藤 玲
出版者
宮城教育大学
雑誌
宮城教育大学紀要 = Bulletin of Miyagi University of Education (ISSN:13461621)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.223-230, 2016-01-29

本稿の目的は,まず,第二言語習得研究(Second Language Acquisition Research),特に,第二言語学習におげるアウトプット(話すことや書くこと)の役割に関する研究について概観し,次いで,認知心理学の観点から,それらの研究の課題や今後の方向性について展望することである。本稿で取り上げる認知心理学における知見とは,記憶検索(memory retrieval)の現象のひとつとしての検索経験(retrieval practice)の効巣である。本稿では,検索経験の効果に関する近年の研究成果に基づいて,第二言語学習におけるアウトプット研究のこれからの展開の可能性を示したい。
著者
中西 渉
雑誌
情報教育シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2021, pp.254-260, 2021-08-21

センター試験および大学入学共通テストの「情報関係基礎」ではプログラミングの問題が出題され,そこでは DNCL というプログラミング言語が使われてきた.筆者はこれらのプログラミングの問題でどのような文法事項が使用されてきたかを調査し,その上で共通テストで用いられることが予想されている新しいプログラミング言語 DNCL2(仮称)とその学習環境について考察した.結果として,筆者が開発している学習環境 PyPEN の実装について多くの示唆が得られた.