著者
松崎 丈
出版者
宮城教育大学
雑誌
宮城教育大学紀要 = BULLETIN OF MIYAGI UNIVERSITY OF EDUCATION (ISSN:13461621)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.111-124, 2023-03-31

本研究では、ろう重複障害教育担当教員における実践的見識を明らかにすることを目的に、ろう重複障害のある子どもたちに対する教育実践を20年以上経験した教員3名にインタビュー調査を行った。質的データ分析の結果、8件の概念的カテゴリー(ろう重複障害教育の孤立無援化、長期化している構造的な諸問題、ろう重複障害教育担当教員同士で同僚性を形成、家族と協働でろう重複障害児のキャリア教育を考える、コミュニケーションの実践的見識の蓄積、専門家が導入するオンサイト研修、ろう重複障害児とのコミュニケーション実践の質的向上、同僚性に基づいた研修や環境の変革)が生成された。これら概念的カテゴリー同士の関係から、今後のろう重複障害教育において個々の教員の実践的見識を形成するために必要と考えられる事柄を考察した。
著者
宮口 和義 田口 師永
出版者
石川県立大学
雑誌
石川県立大学研究紀要 = Bulletin of Ishikawa Prefectural University (ISSN:24347167)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.105-111, 2022

本研究は児童を対象に、二重跳び最高記録を調査するとともに、前跳びによる 30 秒間および 10 秒間スピード跳びを測定し、両者の関係を検証するとともに、二重跳び習得に向けた明確な指標を提示することを目的とした。対象は 1 年から 6 年の小学生 1022 人(男子 538 人、女児 484 人)だった。二重跳びが 1 回以上跳べる児童は 1 年では 19.7% であったが、3 年で88.8%、6 年では 93.7% となっていた。5、6 年生でも 6% の児童が 1 回も跳べないことがわかった。二重跳びと 30 秒間スピード跳びとの間に中程度(r=0.45)の、10 秒間スピード跳びとの間に低い相関(r=0.37)が認められた。二重跳びのレベル別にスピード跳びの記録を比較した。その結果、30 秒間で 70 回以上跳ぶことができれば、二重跳びを 1 回跳べることが示唆された。二重跳びの練習方法の一つとしてスピード跳びが有効であることがわかった。
著者
田口 英明
出版者
湘南工科大学
雑誌
湘南工科大学紀要 = SHONAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY JOURNAL (ISSN:09192549)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.57-73, 2023-03-31

本稿の目的は,筆者がこれまで行ってきた元禄から享保期の上層民を対象とした経済思想史研究の論点を整理し,それをまとめるための視角を設定することにある。本稿では,江戸時代の実務家の経済思想史研究の流れの中に本研究を位置付け,元禄・享保期に着目する理由を明らかにした上で,経済思想史研究と書物の社会研究史の架橋となるような視角として,当該期の実務家の思想の中に「作為」の意識を析出するという枠組みを設定している。それを踏まえて,当該期の上層民に「自然」なものと認識されていた社会観・経済観を概観する。そして,元禄期に萌芽的に見られた「作為」の意識が,幕府の制度変更に対応・対抗する形で成長していく過程を,田中休愚の事例を中心に考察している。I have, in the last three years, published several papers concerning economic thoughts of upper town people from GENROKU to KYOHO period. This paper aims to review main points of these papers and constitute a study framework for this theme. In the first part of this paper, I will survey previous studies of history of economic thoughts and will try to position my study into them. I assume that in economic thoughts of upper town people in these periods, we can detect personalities which allowed them to adapt themselves to changes in society and economy they faced. They also tried to take ingenuity and intentional activities to improve their domestic economy and then their local economy.
著者
小山 静子
出版者
実践女子大学
雑誌
実践女子大学下田歌子記念女性総合研究所 年報 = The Annual Bulletin of the Shimoda Utako Research Institute for Woman (ISSN:24342718)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.(71)-(86), 2021-03-15

Shimoda Utako (1854–1936), a renowned female educator, was severely criticized in the socialist daily newspaper The Heimin Shinbun in 1907. The newspaper insulted her and printed as many as 41 serial articles between February 24th and April 13th where she was referred to as “the vamp.” This paper examines the logic and background of the Shimoda-bashing in relation to contemporary insults directed at female students, and considers their historical meaning. The results are the following. First, Shimoda, along with female students, was sexualized, and baselessly slandered in the media as being sexually “corrupt.” Second, both Shimoda and female students were perceived as threats to the conventional gender order, who challenged the traditional idea of femininity, since Shimoda was active in a male-dominated area and female students were considered to be getting secondary education that was supposed to belong to men. Third, Shimoda, in particular, was seen as an “enemy of the working class” by socialists in the context of class conflict. The relentless personal attacks on Shimoda were based on a two-fold antipathy toward her, induced by class politics as well as gender politics.
著者
村上 哲生 矢口 愛
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要. 家政・自然編 = Journal of Nagoya Women's University. Home economics・natural science (ISSN:09153098)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.79-84, 2009-03

Stenopsyche marmorata Navas(Trichoptera, caddis fly)larvae boiled down in soy sauce are commonly eaten in the Ina District, Nagano Prefecture, Central Japan. The origin and habit transition of eating aquatic insects("Zazamushi")are introduced in this paper. The term "Zazamushi" originally referred to larvae of the stone fly Plecoptera). Eutrophication of Lake Suwa, the water head of the Tenryu River that flows through Ina Valley, has caused shifts in dominant riverine insect species from stone flies to net spinning caddis flies since the 1930s. The benthic community of riffles in the Tenryu is now dominated by net spinning caddis flies such as S. marmorata and Hydropsyche sp., the biomass of which reaches 4 gm-2 in dry weight. The large biomass, supported by the supply of particulate organic matter from Lake Suwa, has made it possible to commercialize canned "Zazamushi". The products available now are mostly composed of S. marmorata larvae(98%)and a small atio of other aquatic insects.
著者
佐藤 美奈子
出版者
近畿大学全学共通教育機構教養・外国語教育センター
雑誌
近畿大学教養・外国語教育センター紀要. 外国語編 = Kindai university center for liberal arts and foreign language education journal. Foreign Language edition (ISSN:2432454X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.15-38, 2019-11-30

[要約]本研究は,ヒマラヤの小国ブータン王国における英語教授言語を主題とする.ブータンは,国語であるゾンカ語を含め19もの少数言語を擁する多言語社会である.1961年の普 通教育導入に際し,英語を教授言語として選定した.現在ブータンにおいて英語はゾンカ 語と並ぶ全国的な共通語として機能し,英語を第一言語とする世代も登場している.本研 究では現地調査をもとに,教授言語に対する人びとの認識とその変化を検証した.その結 果,教育による平等な社会の実現を目指した初期の政策から,その後ゾンカ語を核とする 国家アイデンティティの育成へと比重を移した教育政策上の転換が人びとの教育観や言語 観に反映され,「望ましい教授言語」の認識にも変化が生じていることが明らかになった.
著者
勝原 良太
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要
巻号頁・発行日
vol.34, pp.249-271, 2007-03-31

この報告は、勝盛典子氏(神戸市立博物館学芸員)の論文「大浪から国芳へ――美術にみる蘭書受容のかたち」(神戸市立博物館研究紀要 第十六号)をうけて書かれたものである。勝盛氏が調査されたニューホフ著『東西海陸紀行』の挿絵を再調査したところ、浮世絵師・国芳は同本から、十四作品十五個所の自作に図様を転用していることが判明した。本稿ではこれらの調査結果を図版と対比させながら一括して報告する。調査を終えてわかったことは、国芳が同本挿絵から利用する時、その部分については克明に写し取っているということである。そして同時に、自己の作品全体の中に転換・消化して、作品をオリジナルなものに高めている。その手腕は非凡の為、原拠挿絵と国芳作品を併置して見た時、両図の関係は明らかであるにもかかわらず、これらを切り離して見た時、両図の関係は気づかれにくいものとなっている。この点から考えても、国芳のアレンジの優秀さが知られる。
著者
服部 伸一
出版者
関西福祉大学研究紀要編集委員会
雑誌
関西福祉大学研究紀要 = The journal of Kansai University of Social Welfare (ISSN:24326828)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.113-123, 2023-03-31

本稿では,データベースを用いて,小学校の体育授業でどのような事故が起きているのか,その実態を把握することを目的とした.主な結果を以下に示す.1 )小学校の体育授業において,15 年間で32 件の死亡事故が発生しており,1 ~ 3 年生で全体の59.1%を占めていた.「水泳」25.0%,「準備・整理運動」及び「短距離走」15.6%,「持久走・長距離走」12.5%という結果であり,水泳・陸上運動で多くなっていた.死亡事故の種別については,「心臓系突然死」40.6%,「溺死」21.9%,「大血管系突然死」及び「中枢神経系突然死」がそれぞれ15.6%の順となっており,突然死が71.8%を占めていた.2 )障害事故は215 件発生しており,4 年生以上で全体の67.4%を占めていた.障害事故の種別については,「外貌・露出部分の醜状障害」29.8%,「視力・眼球運動障害」18.6%,「精神・神経障害」14.0%,「歯牙障害」12.1%の順であった.運動種目別の障害事故数については,「跳び箱運動」が10.2%,「体操(組体操)」9.8%,「サッカー・フットサル」7.0%,「マット運動」6.5%の順であり,特に器械運動系の種目で多くなっていた.3 )負傷事故は,高学年になるほど増加傾向となっていた.また,種別としては「骨折」(31.9%)が最も多く,次いで,「捻挫」29.5%,「挫傷・打撲」27.6%となり,上位3 つで全体の89.0%を占めていた.負傷の部位については,「上肢部」43.7%,「下肢部」31.7%,「体幹部」10.6%の順であった.運動種目別では,「跳び箱運動」18.4%,「バスケットボール」13.8%の順で多くなっていた.
著者
小林 伸二
雑誌
大正大學研究紀要
巻号頁・発行日
no.108, pp.59-78, 2023-03-15
著者
稲元 格
出版者
近畿大学法学会
雑誌
近畿大學法學 = The law review of Kinki University (ISSN:09164537)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3・4, pp.88-57, 1994-03-25
著者
稲元 格
出版者
近畿大学法学会
雑誌
近畿大學法學 = The law review of Kinki University (ISSN:09164537)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1・2, pp.352-318, 1993-12-25
著者
石賀 安枝
出版者
鳥取看護大学・鳥取短期大学
雑誌
鳥取看護大学・鳥取短期大学研究紀要 = MEMOIRS OF TOTTORI COLLEGE OF NURSING AND TOTTORI COLLEGE (ISSN:21898333)
巻号頁・発行日
no.86, pp.31-44, 2023-01-16

日本人の最大の死亡原因である生活習慣病の予防が国民的課題となっている.幼児期は食を営む力の基礎を養う重要な時期であるといわれており,この時期からの望ましい食生活の形成に対する取り組みが保育所においても実施されている.未就学児に対する栄養教育として広く使われている教材「三色食品群」について,その使用の際に発生する不都合を「管理栄養士・栄養士,保育士,子ども」の立場で考察し,「三色食品群」の利点を活かしつつ,これに代わる新しい栄養教育教材の提案を行った.