著者
伊藤 良子
出版者
京都市立看護短期大学
雑誌
京都市立看護短期大学紀要 (ISSN:02861097)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.37-47, 2011-07
被引用文献数
1

両下肢・末梢方向リズミカル アインライブングを施行した時の心理・主観・自律神経系の反応について明らかにすることを目的に実験研究を行い,成人女性19 名を対象に 10 分間のクレぺリンテストでのストレス負荷後,介入群には下肢アインライブングを,対照群には安静保持を各10 分間施行後,16 分間の安静を保持した.両実験をクロスオーバーランダム化比較試験として行い,測定指標にPOMS・フェイススケール・RE 尺度・心拍変動スペクトル解析・表面皮膚温を用いた.介入群と対照群との2 群間比較では,POMS の介入群で介入後の〈混乱〉に有意の減少が見られた.心拍変動スペクトル解析では介入群でHF 値(副交感神経活動指標)が,介入中の2 〜 10 分と介入後の0 〜 4分の連続した12 分間で有意(p < .05)に増加した.以上から下肢アインライブングによる副交感神経系活動の活性化と,心理・主観的緊張緩和効果が確認され,下肢アインライブングのリラックスケア活用への可能性が示唆された.
著者
石井 研士 黒崎 浩行 川島 堅二 葛西 賢太
出版者
国学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究は、現在急速に進行しつつある高度情報化が、精神文化としての宗教にどのような影響を及ぼし、宗教団体がどのような対応をとったか、あるいは対応を迫られたかを調査研究することを目的としている。また、高度情報化社会と宗教との関係を考察する上で、その前史ともなるラジオ、テレビといった映像メディアと宗教との関係にも留意することとした。具体的な調査内容として、以下の項目を念頭に置いて研究調査を行った。1)音声メディア・映像メディアにおける資料収集と分析2)宗教団体のニューメディア利用の調査研究3)コンピュータ・ネットワーク上の宗教サイトおよび利用者情報の収集と主催者へのインタビュー4)コンピュータ・ネットワーク上の宗教的行為についてのインテンシヴな調査5)上記に関する面接調査6)インターネット利用の国際比較本研究が「基礎的研究」と謳っているように、この領域での研究成果の蓄積は、現象自体が新しいこともあってほとんどない。こうした中で、ラジオ放送における宗教番組の変化と現状を石井がとりまとめ、あわせて昭和28年から始まったテレビ放送における宗教番組の収集、川島による日本のウェブサイトの分析、とくにキリスト教関係のホームページの現状とその分析、および海外との比較、黒崎による宗教ウェブサイトの傾向の時系列的な分析、神社ウェブサイト主催者へのインタビュー等の調査結果は、今後の研究の基礎になるものと考えることができる。他方で、ほとんど研究蓄積のない領域だけに、研究すべき事柄が多く残ったことも確かである。とくに、テレビにおける宗教状況の把握が十分でなかったことは、現在においてもテレビの与える影響力の大きさを考えたときに、残念かことであった。今後こうした領域の研究調査を地道に継続し、成果を公開することで、現代社会と宗教に関する多くの問題点が明らかになるものと考えられる。

4 0 0 0 OA 解剖学名彙

著者
鈴木文太郎 著
出版者
丸善
巻号頁・発行日
1917
著者
桑山 亜也
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.228-232, 2011-06-01

刑務所・少年院といった矯正施設に収容された人の読書支援の拡充やその環境整備のためには,次の3つの視点がある。すなわち,(1)矯正施設に収容された人も,一般社会に生活するわれわれ市民と同様に日本国憲法上の自由が保障され,また同様のニーズがあり,それを充たす権利を有すること,他方で,(2)その自由や権利に対しては,矯正施設に収容されているということそれ自体,または,定められた矯正処遇や教育を受けなければならないこと等によって制限があること,そして,(3)収容された人には,一般社会に生活する人とは異なる読書のニーズがあること,である。本稿では,特に刑務所に焦点を当て,これら3つの視点を総合的に考慮することの必要を説く。
著者
庄村 雅子
出版者
東海大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、文献レビュー、国内外の視察調査結果と看護相談の質的分析を統合したがん看護相談支援モデルを、SF-36のQOL評価を主要評価項目として効果を査定し、評価・修正し提示することを目的とした。支援モデルに基づき、対象患者41 名、家族19名に介入し、患者と家族のSF-36平均値は増加傾向を示したが、統計的に有意な差は認めなかった。下位項目スコアは、PFは男性で高く、RP、GH、VT、SF、RE、MHはChild-Pugh Bで低かった。相談開始時に、TNMステージIII以上でMHスコア40点未満は生存期間が短かった。ベースラインのMH40未満でOS低値であったことから、心の健康を保つ重要性が確証された。未分析の結果を総合して支援モデルを評価し、介入効果を高めるために、電話フォローを全対象に併用し、介入頻度と内容を追加・修正することや、介入評価法の検討、およびRCTデザインを取り入れることなどが課題に残された。
著者
間野 英二
出版者
京都大學文學部
雑誌
京都大學文學部研究紀要 (ISSN:04529774)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.1-58, 1985-03-30

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。
著者
佐藤 斉華
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.95-117, 2007-06-30

本論文は、ネパールのチベット系ヨルモにおいて急速に過去のものとなりつつある嫁盗り婚(略奪婚)という結婚締結の一選択肢がいかに語られているかを考察することを通じ、グローバルな広がりを持つ「開発」という「近代」的価値言説との交叉において構築されつつある彼らの現在の一段面を照らしだそうとするものである。比較的近年までかなりの規模で嫁盗りを実践してきたと見られる彼らが、この慣行について自ら積極的に語ることは現時点では基本的にない。知りたがりの外部者(例えば筆者=人類学者)に促されて語るとしても、例外なく否定的に、消え去るべき「昔のこと」として語るのみであり、その語り口は近代(西欧)が嫁盗り婚に向けた「過去の」「野蛮な」慣習という視線と一見軌を一にするとも見える。しかし、語りの内容や語る行為において遂行されること(=発話のパフォーマティヴな側面)を子細に腑分けしていくにつれ浮かびあがってくるのは、彼我の類似性・同一性であるより、むしろ彼我の間に横たわる距離であった。即ち、彼らによる嫁盗り婚の否定は、「女性の権利」や「解放」といった嫁盗り婚否定を支える「近代」的価値観の採用によるものではない。それは彼らにおいてローカルに培われてきた価値観の、さらなる純化/強化(=社会的対立/宗教的秩序攪乱の回避)にむしろその根拠をおいている。またそれは確かに、「進歩」を掲げる近代的世界に向けた彼らの積極的参画の働きかけではあった。だがこれらの発話は、彼らの近代世界への参画を一義的に促進する効果を持つというより、その根底にある価値観の異質性とともに、開発への一途な信奉と(既にそれを手放した「開発された」中心に身をおく立場からは)見えるその素朴さにおいて、近代世界における彼らの周縁的位置をむしろ再-構築してしまうという、相矛盾する動きの同時遂行ともなっていたのである。