著者
大竹 晋
出版者
筑波大学哲学・思想学会
雑誌
哲学・思想論叢 (ISSN:02873702)
巻号頁・発行日
no.21, pp.67-80, 2003-01-31 (Released:2013-12-18)

小稿は先に発表した二つの菩提留支研究、拙稿A「菩提留支の失われた三著作」(『東方学』102)拙稿B「『金剛仙論』の成立問題」(「仏教史学研究」44,1)および、それを踏まえた『大乗起信論』研究、拙稿C「[?][?]行派文献と『大乗起信論』」 ...
著者
渡辺 邦夫
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

アリストテレスの倫理学と心の哲学が心身関係論を回避せず積極的に荷担したことを示した。かれは徳の説明において感情の状況に応じた「量」にかかわる主張を提出し、状況に応じた直観的認知としての実践的知性から行動が起こると説明したと解釈した。意志の弱さの問題をめぐってもかれは心身因果にかかわる解明を遂行した。心の哲学ではアリストテレスが、欲求を補佐して行動を生む認知の問題に取り組み、行動における人間の認知を、規範という視点から考察しつつ、心身一元論を守ったと解釈した。またかれはスキルや知識や道徳性の学習成果が付帯的知覚としても知性認識としても現れると考えており、知性主義的で一元論的であったと解釈した。
著者
高草木 光一
出版者
慶應義塾経済学会
雑誌
三田学会雑誌 (ISSN:00266760)
巻号頁・発行日
vol.106, no.1, pp.5-30, 2013-04

小特集 : 澤瀉久敬『医学概論』とその歴史的コンテクスト澤瀉久敬は, 日本で最初に大学医学部で「医学概論」を講義した(大阪帝国大学, 1941年)人物であるが, 彼は医師ではなく, フランス哲学研究者だった。その講義録『医学概論』全三巻(1945–1959年)は, 医学の分野において「近代の超克」を試みた思想書と捉えることができる。その特異なコント理解は, ベルクソンを後ろ楯とする実証主義批判として読むことができ, その医学思想には, 同時代のカンギレムと共通した問題意識も見いだせる。Although Hisayuki Omodaka was the first person to lecture "Iatrology" at Medical School in Japan (Osaka Imperial University, 1941), he was not actually a doctor but rather a France philosophy researcher. All three volumes of his lecture transcripts, "Iatrology" (1945–1959), can be taken as philosophical books that attempted to "Overcome the Modern" in the field of medicine. His unique understanding of Compte may be read as a positivism critique using Bergson as support, demonstrating problem awareness in medical philosophy shared with Canguillem, his contemporary.
著者
末木剛博著
出版者
春秋社
巻号頁・発行日
1983
著者
崎山 治男
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、現代の新自由主義化とグローバル化が労働場面や私的場面での関係性を変容させる力学に関して、心理主義化に注目した理論的かつ実証的な研究を行った。具体的には、労働の感情労働化が進む中で公私における感情マネジメント能力を得ることへと人々が煽られる中で、「生の感情労働化」と社会への包摂ー排除が進むことを、感情社会学と現代社会学、社会哲学における統治論・権力論とを接合させる中で示した。それを裏付けるために、1990年代から現代に至るジェンダー、階層を異にする雑誌や自己啓発書におけるビジネススキル書、恋愛作法書などを分析し、「生の感情労働化」が階層差をも生み出すメカニズムを示した。
著者
名須川 学
出版者
筑波大学哲学・思想学会
雑誌
哲学・思想論叢 (ISSN:02873702)
巻号頁・発行日
no.22, pp.37-49, 2004-01-31

本稿は、デカルト哲学における「比例」(proportion)の概念を、彼の「道徳」(morale)概念との関係において捉え直し、再考することを目的としている。その問題意識の所在は、かの『方法序説Discours de la Methode』(一六三八年)における第二部と第三部との ...
著者
伊藤 珠理
出版者
学習院大学哲学会
雑誌
哲学会誌 (ISSN:03886247)
巻号頁・発行日
no.38, pp.55-75, 2014-05
著者
辻 麻衣子
出版者
上智大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

当該年度に実施した研究の主な成果は、以下の2点である。1. 『純粋理性批判』(以下、『批判』)超越論的演繹論(以下、演繹論)において統覚概念と並んで重要である構想力概念を、以下の2つの側面から詳細に考察した。(1)『批判』刊行の直前期の形而上学講義や草稿を用いて、構想力概念についての分析および『批判』第1版との比較を行った。当時のカントにとって構想力概念は、経験心理学の中で語られる能力であったが、超越論哲学という新たな軸を打ち出した『批判』に至って、この概念の性格もまた変更されざるをえなかった。このような移行の中で、構想力概念もまた両者の狭間で揺れ動いていることを、上記テキストおよび『批判』の精査を通じて明らかにした。(2)能力論における「カントの先駆者」と呼ばれるヨハン・ニコラウス・テーテンスによるテキストを精査し、カントの構想力概念に与えた影響に関する発表を行った。両者が考えた構想力概念の体系には確かに相違点も多くあるが、同時代の他の哲学者には見られないような、特異な共通点もまた存在する。この共通点を両者のテキストから析出し、これまで省みられることの少なかった構想力概念におけるテーテンスとカントとの関係に焦点を当てた。2. 『批判』演繹論における、統覚を中心とした自己意識論から強い示唆を受けて成立したフィヒテの知識学講義を精読し、そこでの自己意識論をカントによるものと比較した。1790年代末に行われた講義をまとめたものである『新たな方法による知識学』を基本テキストとし、そこで「五重の総合」という名称で展開されるフィヒテの自己意識論に着目した。フィヒテがカントの統覚概念をさらに発展させ、理論的認識という側面においてのみならず、実践的側面においても自己意識の統一を第一原理としたことを明らかにした。
著者
佐藤 瑠威
出版者
別府大学会
雑誌
別府大学紀要 (ISSN:02864983)
巻号頁・発行日
no.55, pp.189-198, 2014-02

研究ノート哲学と反哲学知識愛神と人間と世界哲学と宗教と科学歴史信仰19世紀における個別諸科学の成立と発展によって、長い間ヨーロッパにおいて学問の中心的位置を占めてきた哲学は、かつての位置を失い、さらにはその存在理由さえ疑われている。本稿では哲学の存在理由を弁証する立場から、哲学に残された重要な主題として「生きる意味」の問題を取り上げ、なぜ哲学が宗教に委ねるのではなく、この問題を自ら考察すべきであるかを論じる。
著者
竹内 綱史 タケウチ ツナフミ Takeuchi Tsunafumi
出版者
大阪大学大学院文学研究科哲学講座
雑誌
メタフュシカ : the journal of philosophy and ethics (ISSN:13426508)
巻号頁・発行日
no.43, pp.117-122, 2012-12

(大阪大学出版会、2011 年)(dt. Nietzsches Philosophie der Historie — Geschichten, Entstehungsgeschichte, Genealogie), Osaka University Press, 2011.
著者
志村 喬
出版者
上越教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は,欧米の地理教育学研究で台頭しているケイパビリティ・アプローチ論を,社会系教育に適用するための理論的解明を目指した。その結果,教育哲学論としてのA.Senのケイパビリティ理論を基盤にし,教科内容論としてのM.Youngの社会実在主義知識論と,教科指導方法論としてのD.Lambertのカリキュラム・メイキング論が統合された理論であることを解明した。さらに,臨床的国際共同研究が進展する中,日本の参画必要性が示された。
著者
石川 洋子
出版者
日本医学哲学・倫理学会
雑誌
医学哲学医学倫理 (ISSN:02896427)
巻号頁・発行日
no.28, pp.1-9, 2010

Advocacy in nursing, is a central concept in terms of protecting the interests and rights of patients as well as establishing and improving the expertise and social status of nurses. In fact, advocacy is a role played not only by nurses, but by all medical professionals. Advocacy is an important concept for nursing with extensive meaning and contents. Consequently, confusion can occur due to the uncertainty advocacy poses for nursing practice. Moreover, advocacy is accompanied by risk and difficulty, and there are no clear guidelines on how to implement it. It is necessary to enhance education and improve the workplace environment to practice advocacy effectively. It is also essential that nurses reconsider their values and how they support patients while collaborating with other medical professionals.
著者
佐藤 康邦 谷 隆一郎 三嶋 輝夫 壽 卓三 山田 忠彰 勢力 尚雅 高橋 雅人 熊野 純彦 下城 一 船木 享 湯浅 弘
出版者
放送大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

哲学的概念としての「形態」に関する問題は古くて新しい。形態という概念は、内容に対して事物の表面に漂う外面的なものを指す一方で、「かたち」という和語からして、かたいもの・確固とした真理という含意もある。西洋思想では、プラトンのイデア、アリストテレスのエイドスなど、古代ギリシアに遡りうる概念である。近世以降、機械論や還元主義を特徴とする自然科学の立場から、形態概念は排斥されがちであったが、美的形態や有機体の形態を扱うカントの『判断力批判』は、近代思想における形態論の先行例といえる。その形態論的発想は、むしろ、現代では、最先端の科学において見出される。構造主義生物学、ゲシュタルト心理学、認知心理学、量子論、熱力学(シナジェティクス)、複雑システムなどの多領域において、形態論の復権の動きが認められ、自然科学と人文科学との積極的対話の可能性が開かれつつある。倫理学においても、この観点から新たに検討されねばならないだろう。本研究では、形態という概念を手がかりに、人文科学としての倫理学の独自の意義と使命とを問い直すことを意図した。倫理思想史上の諸学説を形態論の観点から再考しつつ、応用倫理学や規範学という狭い領域に限定せず、現代の科学論における形態論復権の動向に対応する新しい倫理学の可能性を探究した。(1)古代ギリシア思想(2)古代ユダヤ思想(3)中世キリスト教思想(4)カントの形態論(5)近代思想(ドイツ観念論・イギリス経験論)(6)現代思想(7)科学論(8)藝術・文藝(9)日本近代思想(和辻哲郎・西田幾多郎・三木清)。以上の分野を専門とする研究分担・協力者を(若手研究者の研究発展にも寄与すべく特に留意)組織し、毎年度数回の全体会議において、各々の個別研究をふまえた対話・討論を行った。以上の研究成果は、最終年度に論集(成果報告書)としてまとめられたほか、別項11にある各員の業績を通じて公表された。