著者
小室 弘毅
出版者
関西大学人間健康学部
雑誌
人間健康学研究 : Journal for the study of health and well-being (ISSN:21854939)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.19-34, 2022-03-31

荒川修作(1936-2010)は、パートナーのマドリン・ギンズとともに「天命反転 Reversible Destiny」という基本概念を掲げ、活動してきた現代芸術家である。彫刻作品、絵画を経て、1990年代から荒川は建築作品を発表していく。それが現代芸術の中でも荒川を特異な存在にしている。しかし建築は荒川が、人が死ぬという天命を反転させる「天命反転」を実現するために欠かせないものであった。本稿は、荒川が建築により実現しようとした天命反転という概念・思想を教育学の観点から考察することを目的としている。はじめに、教育学における荒川研究と荒川そのものに焦点を当てる。次に本稿と関係する荒川の天命反転思想における「天命反転」「人間となる有機体」「建築する身体」といった重要概念について検討する。そのうえで、荒川が実際に子どもとかかわっている映像作品を分析することで、教育者としての荒川の子どもとのかかわりと子どもへのメッセージについて考察する。最後に荒川の天命反転思想と建築の教育学的可能性について論じる。
著者
望月 善次
出版者
岩手大学教育学部附属教育工学センター
雑誌
教育工学研究 (ISSN:02852128)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.53-66, 1989-03

野口芳宏氏(木更津市立波岡小学校教頭)は、授業の名手として名高い。野口氏の(「国語」)授業力の考察は、生成途上にある国語科授業研究の上に示唆するところ大きいのではないかと考えられる。氏の授業力の「構造」を明らかにし、それに基づいた「国語科教師教育教程」を作成しようとするのが、野口氏の授業を考察しようとする筆者の全体構想である。今回は、それに至る一つの道程として、氏の授業の中でも著名なものの一つである「うとてとこ」(谷川俊太郎」についての第1回の考察を行う。許された誌面の関係から、「授業記録」の提出がその中心的作業となる。

2 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1894年10月24日, 1894-10-24
著者
菅原 祥
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 人文科学系列 (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.241-272, 2021-03-31

炭鉱はかつて,ポーランドにおいて最重要の産業として大きな重要性を有していた。ところが近年,ポーランドにおいては炭鉱や石炭がますますネガティブに表象されるようになりつつある。そのような中,本稿は,ポーランドの代表的な産炭地である上シロンスク地域に焦点を当て,そこにおいて社会主義時代から現在に至るまで炭鉱の経験がどのように可視化され,表象され,またいかなるまなざしを向けられてきたのかを,この地域に現存する有名な炭鉱住宅,ギショヴィエツとニキショヴィエツに着目して論じることで,そうしたローカルなコンテクストの中における炭鉱へのまなざしが,現在においてどのような意義や重要性を有しているのかについて検討する。分析の結果,ニキショヴィエツおよびギショヴィエツをめぐっては,単なる「工業施設」としての炭鉱というイメージ以外に,少なくとも以下の3 つの炭鉱をめぐるイメージが確認できた。①「自然」を破壊するものであると同時にそれ自身も「自然」とみなすことができるような,両義的かつ神秘的なトポスとしての「炭鉱」,②「文化遺産」「産業遺産」としての炭鉱,あるいは「小さな祖国」としての産炭地,③戦前から社会主義期,さらにはポスト社会主義の現在へと連綿と続く炭鉱夫の集合的経験・集合的記憶の領域を,支配的秩序に対する一種の「抵抗」の足がかりとして再発見することの可能性。このように,ポーランドにおいては「炭鉱」をめぐる上記のようなさまざまな記憶,経験,イメージ,言説が複雑に絡み合っている。本稿の分析の結果,そのような多様なイメージや記憶が交錯する場として「炭鉱」を再考することには大きな意義と可能性があるということが示唆された。

2 0 0 0 汎交通

出版者
日本交通協会
巻号頁・発行日
vol.49, no.8, 1949-12
著者
井川 輝美 渡辺 守
出版者
盛岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

昆虫の種数は100万種以上にも達し、陸上では他の生物を凌駕し繁栄している。しかし、海の昆虫は希で、外洋にはHalobates属に属する5種の昆虫しかいない。外洋性Halobatesは生態学上・進化生物学上極めて興味深い位置を占めているが、外洋での調査の困難さ故にその生態について分かっていることは少ない。本研究の目的は、日本近海の外洋性Halobatesの個体群調査を行いその生態を解明しようとしたものであり、研究成果の概要は以下の通りである。日本近海の研究調査航海に参加し、定量的採集調査を行った(参加航海:1999年7月三重大学練習船勢水丸99-09次航海、熊野灘〜東シナ海;1999年4月東京大学海洋研淡青丸99-07次航海、紀伊半島沖;2000年6月東京大学海洋研淡青丸KT00-08次航海、四国・九州沖;2001年5月東京大学海洋研淡青丸KT01-07次航海、東シナ海;2002年5月東京大学海洋研白鳳丸KH02-01次航海、東シナ海;2002年9月東京大学海洋研淡青丸KT02-13次航海、東シナ海)。これらの航海において日本近海で初めて、Halobatessの定量調査が行われた。調査海域ではH.micans, H.germanus, H.sericeusが確認された。3種のうち2種が比較的狭い海域に高密度に生息し、しかも、種構成が経時的に変化することが示された。2種が同じ海域で高密度に生息することが確認されたのは本調査海域が最初である。西岸境界流である強力な黒潮の流れが赤道付近に生息するH.micans、H.germanus 2種を北へ輸送し、3種の共存する特異的な海域が形成されたと考えられる。また、黒潮流域に形成される様々なサイズの渦がヘテロな環境を形成し、3種共存が可能となっていると推察される。種構成の経時的変化は、表面水温の季節・年次変動と季節風の影響と考えらる。
著者
若木 重行 谷口 陽子 岡田 文男 大谷 育恵 南 雅代
出版者
国立研究開発法人海洋研究開発機構
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2021-07-09

本研究では、考古遺物としての漆工芸品の漆塗膜の理化学的分析より漆工芸品の製作地を推定するための方法論を提示することを目的とする。その実現のため、漆・下地・顔料などの漆塗膜の各成分の分離、ならびに分離した微少量の試料に対する多元素同位体分析を実現するための分析化学的手法開発を行う。漢代漆器・オホーツク文化期の直刀に対して、開発した手法による分析と蒔絵の種類・製作技術の解析などの情報を統合し、総合的に製作地の推定を試みる。