著者
大須賀 隆子 Takako OSUGA
雑誌
淑徳短期大学研究紀要 = Bulletin of Junior College of Shukutoku (ISSN:02886758)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.127-149, 2012-02-25

「大地保育とは、太陽と水と土に象徴される自然を充分に取り入れる自由保育方式の総称」であり、「創美(創造美育協会)の精神から生まれたものだ」1)と塩川豊子注1)は述べている。本論文では、倉橋惣三が実践した保育論を基に自由保育について定義し、戦後日本において自由保育をタイトルとして書かれた4冊の書籍を概観することを通して、塩川豊子が実践した自由保育の特色が、「どろんこ保育」「自由画の指導」「食事場面と午睡場面の自己決定」にあると捉えた。この3つの保育実践が、戦後大きく影響を受けたと塩川豊子が言う創美とりわけ宮武辰夫、そして創美を通して学んだと言うホーマー・レインとA.S.ニイルの教育思想とどのように関連しているかを考察することによって、塩川豊子の自由保育の根幹にあるものを明かにしようと試みた。
著者
中 尚義 五十里 啓司 成澤 海舟 橋本 巨
出版者
The Visualization Society of Japan
雑誌
可視化情報学会論文集 (ISSN:13465260)
巻号頁・発行日
vol.36, no.12, pp.71-81, 2016 (Released:2016-12-31)
参考文献数
22

トンボは飛翔のための空気力を得るために三次元的な流れを生成している.しかしながら,トンボの自由飛翔時の三次元流れは実験的には未だ明らかでない.本研究では実験的に三次元流れを明らかとするため,断層撮影を用いた可視化実験およびPIV解析を行った.断層撮影では測定の再現性が重要となることから,可視化実験にはトンボの羽ばたき運動を模擬した羽ばたきシミュレータを使用した.流れの可視化は前方および側面方向の2方向から行った.その結果,直線飛翔時のトンボは翅の中央部において後方に向かって強い流れを生成していることが確認された.また,翅の基部方向に向かって流れが引き寄せられていることが明らかとなった.これは後方に向かう強い流れによって横方向から流れが引っ張られていると考えられる.このことから,直線飛翔時のトンボは翼幅方向の余分な流れを作らず,後方への強い流れのみを生成しているといえる.
著者
久保田 進彦
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.67-79, 2020-01-11 (Released:2020-01-11)
参考文献数
37
被引用文献数
1 3

デジタル化は現代の消費環境を特徴づける重要な要素の1つである。社会生活や経済活動の各所にデジタル技術が用いられることで,消費環境は大きく変化している。それではデジタル化が進展する中で,企業や組織のブランド戦略はどのような方向を目指すべきであろうか。本研究ではこうした問題意識に基づき,Bardhi and Eckhardt(2017)によって提示された「リキッド消費」を鍵概念としながら,デジタル社会におけるブランド戦略について俯瞰的に検討していく。具体的には,まずKubota(2020)における議論を引き継ぐかたちで,リキッド消費をブランド消費行動の観点から再検討する。そしてここから,文脈への適合と消費の手軽さがもたらす心地よさの重要性を指摘する。つづいて「裾野を広げる戦略」と「生活の中に溶け込む戦略」という,リキッド消費に対応した2つのブランド戦略を提案する。そして最後に,研究全体を振り返るとともに,限界点や今後の課題について議論する。
著者
森 洵太
出版者
大阪市立大学経営学会
雑誌
経営研究 = The business review (ISSN:04515986)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.57-70, 2019-05

Several changes in the International Accounting Standards Board(IASB) are evident since the 2008 financial crisis. For example, on the organizational front,the IASB built a mechanism with the involvement of numerous stakeholders(groups), while on the procedural front, its stance emphasizes due process. On the other hand, its retreat from insistence on the application of fair value accounting is evident. This study takes two legitimacies employed in previous EU-related research as its analytical perspective. Since the financial crisis, the IASB retreated from its original claims and is moving its central focus of standards development to coordination with various countries and groups. As the number of concerned groups expands, the IASB encountered prolonged standards development, with a resulting risk of reduced output in terms of its legitimacy. That is to say, the IASB may potentially fall into the same dilemma as the EU.
著者
前田 修平 竹村 和人 小林 ちあき
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.99, no.2, pp.449-458, 2021 (Released:2021-04-14)
参考文献数
17
被引用文献数
3

本研究では、ユーラシアパターン―ユーラシア北部において冬季に卓越するテレコネクションパターン―に関連する惑星波の変調を、JRA-55を使用した合成図分析により解析し、波―平均流相互作用を含むユーラシアパターンの力学的メカニズムを明らかにする。 平年偏差の点からは、ユーラシアパターンは、北ヨーロッパ、中西部シベリア、および日本に作用中心を持つ、等価順圧な鉛直構造をした定常ロスビー波型のテレコネクションとして知られている。一方、帯状平均からのずれの観点では、ユーラシアパターンは、東アジアの冬季モンスーンに関連する惑星波の活動度を変調する。 強化された東アジア冬季モンスーンに対応するユーラシアパターンの正位相では、対流圏のユーラシア中部から北太平洋において東方・上方に伝播する惑星波が平年より強まる。この惑星波の強化には、東アジアにおける帯状平均から擾乱への傾圧エネルギー変換が寄与する。強化され東方・上方に伝播した惑星波は、上部対流圏で収束し、それにより中高緯度の直接循環偏差と、中緯度下部対流圏への寒気流出を引き起こす。これらの結果は、ユーラシアパターンは主に惑星波の活動に関係する全球的な力学モードの1つであることを示す。

2 0 0 0 OA 皮肉社会見物

著者
三四郎 著
出版者
日本書院
巻号頁・発行日
1920
著者
岡崎 貴世
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 61回大会(2009年)
巻号頁・発行日
pp.274, 2009 (Released:2009-09-02)

【目的】冷蔵庫は毎日の食事で私たちが口にするものを保存している場所であるため、衛生には特に注意を払い清潔に保っておきたい。しかし、台所のシンクやガスコンロ周りなど汚れが目につきやすい箇所は掃除の頻度が高いが、冷蔵庫は温度が低く菌に汚染されにくいというイメージがあり、定期的に掃除を行う家庭は少ないのではないのかと考えられる。そこで一般家庭の冷蔵庫の細菌汚染状況及び掃除頻度を調査した。【方法】調査は本学学生86名を対象とし、2008年6月17日から7月16日に実施した。細菌検査は、生菌数用・標準寒天と大腸菌・大腸菌群用XM-G寒天(フードスタンプ「ニッスイ」)を使用し、冷蔵庫の棚とドアポケットの2ヶ所を検査した。冷蔵庫の掃除頻度は、自記式アンケートで調査を行った。【結果・考察】調査した全ての冷蔵庫から一般生菌が検出された。また、4割を超える冷蔵庫から大腸菌群が検出された。掃除頻度の低い冷蔵庫ほど検出される菌数は多い傾向にあったが、各冷蔵庫でばらつきがみられた。庫内の汚染状況は、ドアポケットより棚の方が菌の検出率が高かった。これは、棚に置いている他の食材からの汚染が原因のひとつと考えられた。冷蔵庫の掃除は、「年に1回程度している冷蔵庫」では年末やお盆前など決まった時期に行っていることが分かった。しかし、「年に2~3回している冷蔵庫」は『気が向いた時』や『汚れた時』など、不定期に掃除を行っているケースが多く、汚れた部分のみを掃除している可能性が考えられた。今回の結果より、各家庭の掃除頻度は予想以上に低く、また冷蔵庫は多くの細菌に汚染されていることが明らかとなった。
著者
橋本 行史
出版者
関西大学政策創造学部
雑誌
政策創造研究 = The journal of policy studies (ISSN:18827330)
巻号頁・発行日
no.14, pp.1-25, 2020-03

本研究はJSPS研究費JP17K02054の助成を受けたものである。
著者
酒井 正士 片岡 豪人 工藤 聰
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.85-90,66, 2002-02-01 (Released:2013-04-25)
参考文献数
38

ホスファチジルセリン (PS) は脳に存在する主要な酸性りん脂質であり, 古くから脳機能との関連で研究が進められてきた。1986年にはDelwaideらが, 牛脳由来ホスファチジルセリン (牛脳PS) を老人性痴呆症患者に経口投与することにより症状が回復することを初めて報告した。これ以後, 欧米で10件を超える二重盲検試験が行われ, いずれの場合にも老人性痴呆症に対する有効性が確認されている。特に494人の老人患者を対象としたイタリアにおける臨床試験では, 抗痴呆剤として牛脳PSを摂取することにより, 副作用は認められず行動と知的能力のパラメータが改善されることが示されている。しかしながら, 牛脳には感染性スポンジ脳症を媒介する恐れもあることから, 安全性の観点から見て食品素材としては適していない。また, 牛脳から得られるPS量はそれほど多くなく, 安全で充分な量を確保できる天然素材は他に見当たらない。この問題を解決するため, ホスホリパーゼDを用いて大豆レシチンとL-セリンとを原料にPS (大豆転移PS) を製造する技術が開発された。大豆転移PSの脂肪酸組成は牛脳PSとはかなり異なるが, 牛脳PSと同様にスコポラミンで誘発した齧歯類の記憶障害を回復させた。さらに, 老齢ラットに大豆転移PSを連日投与した結果, 牛脳PSと同様に水迷路試験の成績が回復したことから, 大豆転移PSも牛脳PSと同様の効果を持つことが期待される。