著者
長谷川 達人 田中 基貴
雑誌
情報処理学会論文誌コンシューマ・デバイス&システム(CDS) (ISSN:21865728)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.38-48, 2022-05-31

2018年に本国において70年ぶりの漁業法の一部改正が決定された.新漁業法の主な目的は,水産資源の持続的な利用を確保し漁業生産力を発展させることとされている.この目的の達成には,操業や水揚げ等の情報を用いた資源調査を行い,科学的な知見に基づいた客観的な指標により資源評価を行い,評価結果に基づく指標に従った資源管理を行うことが重要である.一方,漁獲した尾数や,魚種,魚体長といった資源評価に必要な基礎情報は,各漁場で手動で計測されていることが多い.本研究では,Mask R-CNNを用いた画像認識により漁獲物の基礎情報を自動で収集するシステムを提案する.特に,Copy-Paste Augmentation(CP-Aug)と敵対的訓練により少量のラベル付きデータのみを用いてモデルを訓練した点と,クラス分類Headを1 class分類に変更した点が特色である.評価実験の結果,CP-Augにより複数魚の検出精度が大幅に向上した.また,敵対的訓練によりアノテーション誤差に頑健な特徴表現の獲得がなされ,1 class分類により未知魚に対する精度向上も達成した.
著者
山本 欣司 Kinji YAMAMOTO
雑誌
学校教育センター年報 (ISSN:2432258X)
巻号頁・発行日
no.4, pp.13-21, 2019-03-25

小学校国語教材「おてがみ」(アーノルド・ローベル)は、一般に理解されているように、手紙をもらったことが一度もなくて落ち込んでいたがまくんが、かえるくんから手紙をもらい、元気を取り戻す物語ではない。注目すべきは、がまくんを驚かそうと思ったかえるくんが、足が極端に遅いかたつむりに手紙の配達を依頼するというドジを踏んだことである。これにより、以降の展開はかえるくんの目論見通りにならず、がまくんの喜びも幾分か減じたはずなのである。ところが、その失策がかえって思いもかけない豊饒な結果をもたらすところに、この物語のユニークな特質がある。他者の孤独を癒やすための実践的な知恵が、さりげない形で盛り込まれているところに、「おてがみ」という物語の素晴らしさがある。
著者
田中 紗和子 中村 美緒
出版者
日本福祉大学大学院
雑誌
日本福祉大学大学院福祉社会開発研究 = The Study of Social Well-Being and Development, Nihon Fukushi University Graduate schools (ISSN:24362018)
巻号頁・発行日
no.17, pp.51-59, 2022-03-01

本論文の目的は,地域における支え合いの基礎となる「人々の関係」に着目し,地域における作業療法での作業の特徴と役割を明らかにすることである.方法は,日本の作業療法創設期から刊行されている 3 誌を対象とした文献調査である.分析では,実施場所ごとの作業療法実践の比較から,近年の作業療法の動向を把握した上で,作業を介した人々の関係,意識と行動,関係や場の経時的変化といった視点から実践事例を捉え直し,地域における作業療法での作業の特徴と役割を明らかにした.その結果,日本では,高齢化社会を目前に控え,2000 年代以降,病院・施設から地域生活へと支援の中心が移行しており,それに応じて,作業療法の対象や領域,手段も多様化し,実践の場も病院・施設から地域へと拡大していることが示唆された.地域における作業療法では,障害の有無や立場に関係なく参加者が共に作業を展開する場づくりが多く行われていた.作業は,共通の話題や共感の対象となることで,自然な交流を促すという特徴を生かし,人々の関係や,意識と行動に変化をもたらす役割を果たしていた.また,作業を介して時間と場所を共有することの積み重ねは,支え合う関係や心の拠り所となるような場の変化を生みだしていた.地域における作業療法では,人々の関係に目を向けることの重要性が示された.
著者
黒﨑 佐仁子
雑誌
聖学院大学論叢 = The Journal of Seigakuin University (ISSN:09152539)
巻号頁・発行日
vol.第34巻, no.第2号, pp.69-83, 2022-03-15

本稿は「な(さ)過ぎ」を含む複合語の使用実態調査を目的とする。過剰を表す「過ぎ」は,様々な品詞と接合する。助動詞「ない」と接合すると,「な過ぎ」や「なさ過ぎ」となり,「さ」の挿入が起こり得る。本研究では,以下の問いを課題とする。(1)「な過ぎ」と「なさ過ぎ」の出現割合は変化しているのか。(2)どのような動詞が「な過ぎ」または「なさ過ぎ」と接合するのか。(3)「な過ぎ」と「なさ過ぎ」の出現割合は,話者の出身地と関係があるのか。 国会会議録を資料として調査を行い,「さ」の有無は,年代によって割合は変化していないこと,動詞の活用型や話者の出身地が関係していることが明らかになった。
著者
平 倫子
雑誌
北星論集 = Hokusei Review (ISSN:03871886)
巻号頁・発行日
no.18, pp.163-186, 1981-01
著者
川崎 明子
出版者
中央大学人文科学研究所
雑誌
人文研紀要 (ISSN:02873877)
巻号頁・発行日
vol.99, pp.25-54, 2021-09-30

本論文は,ルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』(Through the Looking-Glass, 1871)における冒険が,主人公アリスが鏡に向かって行うごっこ遊びと独り言の延長であり,彼女が睡眠中も継続する想像・創造であるという前提のもと,鏡やチェスの原理が作品のシステムとして作用する様を明らかにするものである。まず1 では,冒頭でアリスが猫と鏡を使った遊びからファンタジーの想像・創造に至る過程を確認する。2 では,作品における鏡について論じ,2.1で鏡の原理である<反転>のうち<対面し見つめる>ことと<空間的・時間的反転>の具体化を,2.2で本作独自の鏡の使い方といえるアリスが自分の鏡像を見ないふりをすることについて考察する。3 では<時間的反転>の1 種である過去への逆行の例として,各章に登場する子どもの遊びや学びを検討する。最後に4で,『鏡の国のアリス』に関係する諸人物間の連関の形成について,キャロルとアリス・リデルをも含めて考察する。
著者
阿部 直之 平野 充 高田 直行 小林 巌
雑誌
旭川赤十字病院医学雑誌 (ISSN:09134417)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.39-42, 2018-03

2012年8月より4年間の当院における転落・墜落外傷178例について検討した。その結果、37例(21%)が雪下ろし作業関連の転落であった。転落外傷全体の年齢構成は60歳代が最も多く、次いで70歳代と高齢者に転落が多かった。ISSと転落の高さには相関がみられなかった。雪下ろし群と非雪下ろし群で比較すると、年齢、男女比、業務中かの比率で有意差を認め、雪下ろし群では高齢の男性が自宅での作業中に多く転落していた。また、雪下ろし群は非雪下ろし群と比べ、肋骨や腰部に骨折が多く、頭部、下肢で少ない傾向にあった。
著者
安達 聡子 坂本 真仁 中沢 実
雑誌
研究報告高度交通システムとスマートコミュニティ(ITS) (ISSN:21888965)
巻号頁・発行日
vol.2022-ITS-89, no.4, pp.1-7, 2022-05-19

遠距離恋愛では主なコミュニケーションの方法としてチャットや電話が使用される.しかし,直接会わないとできないことがある点や時間を合わせることが難しい点は寂しさや物足りなさを感じる原因になると考える.特にスキンシップのような物理的なつながりをノンバーバルコミュニケーションとして得られないことで寂しさを感じやすくなる.そこで,本研究では人型の抱き枕を用いて離れている相手の心拍音,体温,抱きしめる動作をリアルタイムで再現するシステムを作成した.心拍音は Web アプリ,体温は電気ヒーター,抱きしめる動作は腕に入れるバネを用いた軸を動かす機構で再現し,考察を行った.
著者
渋谷 峻
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2019-03-25

本研究では,仮想物理世界で動作する機械式論理回路を改良し,安定して動作する「歩く論理回路」を実装した.また,論理回路が無数にある環境の中で,回路同士が自然に組み上がる様子を観測し,将来人工生命モデルとして利用できることを提案する. 既存の人工生命の研究では,コンピュータ上に仮想環境を構築し,その中で生命モデルを動作させる手法が取られている.環境を複雑に定義したり,生命モデルを動かす人工知能(AI)を実装することで,複雑なシミュレーションを可能にしている.しかしAI部分は仮想環境の外で予め定義されているため,想定されない環境になった際に適合することは期待できない.しかし生命はそのような進化を実現している.仮にAIそのものを仮想環境内で実装すれば,そのような環境の変化に対応できる人工生命モデルを構築出来る可能性がある. 一方で分子ロボティクスの分野では,分子を使って自己組織化や論理回路が作成されている.未来には体内に入る微細なロボットの実現が期待されるが,例えばDNAを使った反応は遅く複雑な回路を実装する上での問題点を議論するには実験環境が不十分である.仮想空間で実験出来れば,ロボット構築へ向けた技術的課題を先に検討出来る可能性がある. 「歩く論理回路」の先行研究では,仮想物理世界で機械的に動作する論理回路に足パーツを取り付けることで移動可能な回路を実装した.しかし,動作が不安定であり,センサー等の機能は実現出来ていなかった.本研究で実装した歩く回路は,NAND/AND の出力を持った二種類のゲートのみを複数個組み合わせることで,歩くだけでなくセンサー機能も実現している.障害物に衝突すると後退することが出来る.本研究の歩く回路は先行研究のものより安定しており200倍以上高速に動作する. また,磁石のように引き付け合う力を加えることで,環境内で自動的にリングオシレーターのような回路が組みあがることを観測した.今後大規模な環境で評価できれば,動き回るような回路が自然に出来上がり,環境内で進化する回路が生まれてくる可能性もある.本提案は,ほぼ同じ二種類のゲートのみで構成されているため,分子ロボティクスのように自己組織化してロボットを構築するという目的に有効であると考えられる.
著者
片野 実 吉田 享子
出版者
専修大学ネットワーク情報学会
雑誌
専修ネットワーク&インフォメーション = Network and Information (ISSN:13471449)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.23-35, 2015-03-10

In recent years, the volume of Japanese Bonsai exports has increased because of the "Bonsai boom" in foreign countries. Bonsai is one of Japan's cultural traditions, and there are several high-grade Bonsai brands in Japan. Though, Japanese bonsai have spread globally and become well known by their Japanese nomenclature. More recently, Bonsai culture has begun to lay down roots in many countries. However, the ancient bonsai culture and industry today in Japan is at a crossroads due to various problems. Most notably, there are problems such as the aging of bonsai growers, a lack of successors, and a sluggish domestic demand. In this paper, the authors investigate the Bonsai boom abroad and the domestic problems within the bonsai industry, concluding by proposing two bonsai distribution processes for the purpose of promoting of Japan bonsai worldwide.
著者
金 俊成
出版者
京都市立芸術大学
巻号頁・発行日
2018-03-23

平成29年度