著者
寒川 旭
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C (ISSN:1880604X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.672-679, 2008 (Released:2008-08-20)
参考文献数
30
被引用文献数
1

本稿では,地震考古学の研究によって得られた成果の概要を紹介する.まず,液状化現象について,噴砂の流出に伴う礫や砂の級化や地層の流動など,遺跡で得られた新しい知見を示した.また,液状化現象の痕跡を強震動の証拠と考えて,南海トラフから発生する巨大地震の発生年代の解明に用いた.内陸地震については,活断層のトレンチ調査や文字記録に地震痕跡を加えて解釈することで地震の全体像が把握できる.さらに,千数百年前頃に各地に築造された古墳については,地滑りなどの地変を量的に検討できる.
著者
桐村 喬
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2009年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.221, 2009 (Released:2009-06-22)

I はじめに 東京大都市圏の中核をなす東京23区では,規制緩和などに伴い,1990年代後半以降,丸の内地区や六本木地区といった都心部において,超高層のオフィスビルの建設などの大規模再開発が進んだ.また,バブル経済崩壊以降の地価の下落に伴って,マンションの建設も盛んになったことで,都心部における人口が大きく増加するなど,「都心回帰」と総称される現象がみられるようになった(宮澤・阿部2005). 本研究の目的は,このような東京23区を対象とした社会地区分析を行なうことによって,現在の社会経済的な都市内部構造を解明することである.東京23区を対象とした同様の研究は,都市社会学や都市地理学の立場からなされてきた(高野1979; 倉沢・浅川2004).本研究では,これらの成果を受け継ぎつつ,直近の小地域統計に基づいた社会地区類型を示し,その空間的なパターンについて検討する.特に,資料の制約から,これまで日本ではあまり検討されてこなかった,都市内部における外国人居住の空間的パターンについて,東京都が独自に集計した国勢調査結果データを用いて若干の考察を加えたい. II 分析手法とデータ 本研究で用いる小地域統計は,2005年の国勢調査結果と,2006年の事業所・企業統計調査結果であり,基本的には東京都が独自に集計・公開している町丁目別のデータを利用する.このデータでは,国籍別の外国人人口や,外国人のいる世帯数など,東京都独自の集計項目が存在しているが,職業大分類別の就業者数など集計されていない項目もあり,これらについては総務省統計局が公開しているデータを利用する. これらのデータから,東京23区内の全町丁目別に,居住者に関する54変数と,事業所に関する44変数を作成し,分析データセットを作成する.この分析データセットに対して,各町丁目の類型化のために,自己組織化マップ(SOM)を適用する(桐村2007).SOMは,ニューラルネットワークの一種であり,適用するデータからのサンプリングを繰り返しながら学習することによって,元のデータの特徴を抽出するアルゴリズムである.このようなSOMは,多次元データの可視化や類型化などに利用され,地理的なデータへの適用も可能である.SOMを本研究の分析データセットに対して適用することで,居住者および事業所に関する各変数間の関係性を可視化するとともに,対象とした各町丁目の類型化が可能となる. III SOMの適用と社会地区類型の分布 SOMを適用し,Ward法によって分類した結果,11類型が得られた(図1).類型の分布や特徴をみる限り,国籍別の外国人比率など,外国人に関する変数によって特に特徴づけられた類型はみられなかったが,都心商業地区ホワイト・グレーカラー類型は東南アジアを除く各国の外国人比率が高く,都心部に位置する繁華街の周辺部に分布する傾向がみられた.また,足立区などの北部に点在する高密度ブルーカラー類型は,東アジアや東南アジア系の外国人比率が高く,母子世帯比率や高齢単身世帯比率,完全失業者率が高いなど,社会経済的な弱者の多い地区であるといえる.他の9類型が示す空間的なパターンや,各変数相互間の関係など,より詳細な検討が必要であるが,紙幅の都合上省略する. IV おわりに 本研究では,2000年代半ばの東京23区の社会経済的な属性の類型化を行なった.特に,外国人に関する変数を利用したことで,東京23区における外国人居住地の空間パターンについて検討できた.類型の分布をみる限りでは,従来から指摘されてきた,大規模オフィスやホワイトカラー層の居住する都心と,周辺に位置する東西のセクターといった基本的な都市構造に対して,外国人に関する変数が大きく寄与しているとは言い難い.しかしながら,国籍ごとに居住地は大きく異なり,他の変数との関係性について検討することによって,外国人居住の空間的パターンの実態が明らかになるものと考えられる. 参考文献 桐村 喬2007.小地域の地理的クラスタリング―外れ値処理と空間的スムージング―.GIS―理論と応用―15: 81-92. 倉沢 進・浅川達人2004『新編東京圏の社会地図1975-90』東京大学出版会. 高野岳彦1979.東京都区部における因子生態研究.東北地理31: 250-259. 宮澤 仁・阿部 隆2005.1990年代後半の東京都心部における人口回復と住民構成の変化―国勢調査小地域集計結果の分析から―.地理学評論78: 893-912.
著者
大西 智樹
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.183-186, 2019-03-15 (Released:2019-06-01)
参考文献数
2

「しでんの学校」では市民の方から集めた横浜市電の写真をデジタルアーカイブとしてウェブサイトで公開する「しでんちゃん横浜プロジェクト」を2013年から始め、現在では700枚を超える写真の提供を頂いている。同時に、デジタルアーカイブ「デジタルでみる横浜市電の写真マップ」(通称;しでんマップ)の構築を進めており、2018年9月に限定的な公開を開始した。また、提供された写真をデジタルアーカイブとして公開するだけではなく、街歩きや写真展への活用など、デジタルアーカイブを活用した取り組みについても実績が蓄積されつつある。そこで本稿では、これまでの実践をもとに、市民団体がデジタルアーカイブを構築・公開した上で、ウェブサイトと団体の継続的な運営、さらにはデジタルアーカイブを利活用するための一方法論を提案するとともに、それらの課題を明らかにすることを目的としている。
著者
宇野 裕之 立木 靖之 村井 拓成 吉田 光男
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.93-101, 2019 (Released:2019-08-23)
参考文献数
23

動物福祉(アニマルウェルフェア)に配慮したニホンジカ(Cervus nippon)の効率的な生体捕獲を行うためには,機動性が高く,安全に捕獲することが可能なワナの開発が求められている.二つのタイプの小型(1.8 m×4.4 m)の囲いワナ,アナログ式体重計を用いたタイプ(アナログ型)及びデジタル台秤を用いたタイプ(デジタル型)を開発し,2015年1月~3月及び2016年1月~2月にかけて,北海道浜中町の針広混交林内で野生個体を対象にした捕獲試験を行った.10回のワナの作動で,合計17頭(メス成獣6頭,メス幼獣8頭,オス幼獣3頭)のニホンジカを捕獲し,10回の内7回の捕獲で複数頭の同時捕獲に成功した.捕獲効率(ワナ1台×稼働日数当りの捕獲数)は,アナログ型では0.136~0.167頭/基日,デジタル型では0.444頭/基日であった.研究期間中の捕獲個体の死亡率は0%であった.ワナ設置に係る労力として,アナログ型では2~3人の作業で7時間,デジタル型では2人で10時間を要した.電源として用いた12 Vバッテリーは,厳冬期の気温が氷点下になる条件下で,6日間以上機能が持続することが明らかとなった.開発した小型囲いワナは,設置及び運搬が容易,安全性が高く,複数頭の同時捕獲が可能であり,消費電力も比較的小さいことが明らかとなった.
著者
久津木 文
出版者
神戸松蔭女子学院大学学術研究会
雑誌
Theoretical and applied linguistics at Kobe Shoin : トークス (ISSN:13434535)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.47-65, 2014-03-05

バイリンガルのメタ言語知識や言語的気づきが高いことは長い間知られてきた。近年、バイリンガル研究における関心は二言語での経験が及ぼす非言語的な認知的能力にシフトしている。二言語の語彙体系や言語使用の経験がバイリンガル特有の認知的特性を形成する要因だとされている。よって、本稿では、バイリンガルの語彙についての先行研究を概観したうえで、子どものバイリンガルの非言語的な認知的能力についての最新の知見を検討する。
著者
原田 隆宏 政家 一誠 越塚 誠一 河口 洋一郎
出版者
一般社団法人 日本計算工学会
雑誌
日本計算工学会論文集 (ISSN:13478826)
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.20080016, 2008 (Released:2008-06-06)
参考文献数
27

本研究ではGraphics Processing Unit (GPU)上での粒子法シミュレーションをさらに高速化する手法を提案する.スライスグリッドは粒子法の計算のボトルネックである近傍粒子探索を効率化するだけでなく,計算効率も向上させるデータ構造であるが,既存研究はグラフィックスAPIを用いた実装を行なっており,一般的なストリームプロセッサ上でも有用であるかは不明確であった.そこで本研究ではまずスライスグリッドをCompute Unified Device Architecture (CUDA)を用いた実装方法を開発し,より一般的なストリームプロセッサ上での実装を示す.また本論文ではデータの時間軸上でのコヒレンシを利用したGPU上でのブロックトランジションソートを提案し,これを用いて粒子法シミュレーションのデータの空間局所性を高めて更なる高速化をはかる.そしてDistinct Element Method (DEM)を本手法を用いて実装し,近傍粒子探索を約3倍高速化し,計算全体では約1.5倍高速化した.
著者
ますとみ けい 村井 源
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第31回全国大会(2017)
巻号頁・発行日
pp.1D3OS29b3, 2017 (Released:2018-07-30)

物語の基本構造を抽象化するため、星新一のショートショート200作品のオチを分類し、逆転的事象の種類と要因を記述したデータ構造を作成した。オチの分類タグとして[状況設定判明][正体判明][利益喪失]など20前後、逆転のタグとして[人物の立場:被害者>加害者]など10前後を用意し、ケーススタディ分析を行った。今後タグの内容を精査し物語自動生成プログラムの基礎データとする。
著者
堀口 進
出版者
The Japan Institute of Electronics Packaging
雑誌
HYBRIDS (ISSN:09142568)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.16-21, 1990-01-01 (Released:2010-03-18)
参考文献数
32
被引用文献数
1 3
著者
Yuji Kato Takeshi Hayashi Noriko Arai Norio Tanahashi Koichi Takahashi Masaki Takao
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
Internal Medicine (ISSN:09182918)
巻号頁・発行日
pp.2587-18, (Released:2019-05-22)
参考文献数
10
被引用文献数
14

Postural tachycardia syndrome (POTS) can cause orthostatic headache. However, it is difficult to differentiate POTS from spontaneous intracranial hypotension (SIH) caused by cerebrospinal fluid (CSF) leaks. We herein report a 53-year-old woman who presented with SIH associated with POTS. A cervicothoracic and lumbar epidural blood patch rapidly improved not only the headache but also the orthostatic tachycardia, suggesting POTS secondary to SIH. This case suggests that a CSF leak can cause secondary POTS. Therefore, POTS should be considered in patients with orthostatic headaches, even in the presence of a CSF leak.
著者
有本 昂平 髙田 百合奈
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.311-316, 2019-06-24 (Released:2019-08-30)
参考文献数
7

企業間取引ネットワークの構造は、インフラ事情によるサプライチェーンの効率化やリスクの増減に影響を与える。また政策立案を実施する場では、リスク軽減やステークホルダー間の合意形成のため、エビデンスに基づく意思決定のアプローチが求められる。そこで近年、企業活動を測るデータとして、信用調査報告書のデータから構築された企業ビッグデータが注目されている。本稿では、信用調査報告書をビッグデータとしてアーカイブするまでの経緯と、そのデータから企業間取引ネットワーク構造の可視化を試みた実践例についていくつか報告したい。
著者
Sasaoka Masatoshi
出版者
IntechOpen
巻号頁・発行日
2018-08-01
被引用文献数
1

This chapter aims to examine the validity and desirability of “separative conservation model,” a conservation model, which tries to separate human use areas from wildlife habitats to protect “intact nature.” In mountain areas of central Seram, East Indonesia, local people have created and maintained various types of human-modiied forests (HMFs) through arboriculture. Among them, some of damar forests and forest gardens are distributed inside the Manusela National Park in central Seram. Principally, the Indonesian national park management authority has adopted the “separative conservation model” and basically forbids local arboricultural activities for creating HMFs by cuting wild trees inside a national park. In this chapter, I irst describe how the locals have formed HMFs through arboricultural and how resources provided from those HMFs support local livelihood. After that, I describe local knowledge on behavior of a lagship species of Wallacea Moluccan cockatoo and its habitat utilization. Then, I evaluate how some types of HMFs function as habitats for the Moluccan cockatoo by analyzing transect survey data. Finally, I provide implications for future conservation and research.
著者
山根 直人
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.198-207, 2009-06-10 (Released:2017-07-27)
被引用文献数
1

これまで幼児期の楽音の音高識別力については,Seashore(1936)の音楽能力テストや音研式音楽能力診断テスト(音楽心理研究所,1966)などで取り上げられているものの,音高識別力の機序は充分に明らかにされていない。その理由として,幼児の音高識別力の評定する確立した方法がないということがあげられる。現代の乳幼児を取り巻く音楽環境の多様さを考慮すると,幼稚園,保育所における指導,教材等の方法を検討する際,音高識別力の発達の様相を知ることは重要と考える。本研究では,幼児の音高識別力の評定方法について検討するため,まず実験1で3歳児を対象に音研式テストをもとに開発した,絵と音高列とのマッチングによる音高識別実験を行った。そこから明らかとなった評定方法の問題点を考慮し,実験2で音感ベルを刺激とした音高識別実験を,2〜6歳児に実施した。その結果,2,3歳児と4,5,6歳児の間で有意な識別成績の差が見られた。本実験で用いた評定方法より得られた結果は,幼児の音高識別力は識別成績が加齢とともに上昇する傾向を示すものだった。さらに,2,3歳児のための楽音の音高識別力の評定方法の必要性が明らかとなった。
著者
原科孝雄
出版者
克誠堂出版
雑誌
形成外科 (ISSN:00215228)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.507-542, 1998-06
被引用文献数
1
著者
中田 航平 平林 真実 小林 孝浩
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2018論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, pp.234-236, 2018-09-06

ライブコーディングは音楽表現に用いられることが一般的だが、近年映像表現に用いられることが増えている。現状のライブコーディングによって提示されるものは操作される画面の情報のみであり、演者自身の動きまでは提示されない。本稿では、LeapMotionを用いて演者の手の動きを取得し演出に取り入れたライブコーディングによる映像表現を試みた。本稿で試験的に行ったパフォーマンスの映像構成と演出では、演者の手の動きとの関連をすぐに認識するまでには至らず、手を表現するオブジェクトの多様化を始めとした表現の工夫等、今後の改善が望まれる。