著者
佐々木 博康
出版者
大分大学教育福祉科学部
雑誌
大分大学教育福祉科学部研究紀要 (ISSN:13450875)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.119-133, 2014-10

本稿は,2013 年に出版されたハルトムート・ビンダーの『カフカのウィーン』に依拠しつつ,フランツ・カフカとミレナ・イェセンスカー=ポラックとの9 ヶ月弱にわたる恋愛関係を概観し,破綻に至った原因を追究するものである。カフカは1920 年4 月に療養の地メラーンからミレナに手紙を書いた。手紙のやり取りは急速に恋愛関係へと発展した。二人はウィーンで幸福な四日間を過ごすが,一ヶ月半後のグミュントでの逢瀬では二人の間にすきま風が吹き始める。カフカのミレナとの関係において大きな障害となったのは,性行為に対するカフカの強い不安である。ミレナはこの不安を事前に理解し,ウィーンの森での出会いにおいては適切に対処した。しかしミレナは結局,性行為を抜きにした関係をあくまで求めるカフカに従うことはできなかった。Anknüpfend an Hartmut Binders 2013 veröffentlichtes Buch Kafkas Wien soll hier auf die Liebesbeziehung des Dichters mit Milena Jesenská-Pollak Licht geworfen werden; das Hauptaugenmerk gilt deren Scheitern.Nachdem Kafka Frau Jesenská-Pollak im Prager Café Arco kennenlernte und ihr die Erlaubnis gab, einige seiner Erzählungen ins Tschechische zu übersetzen, meldet er sich im April 1920 brieflich aus Meran, wo er sich zur Kur aufhält. Es folgt ein Briefwechsel, und obgleich nur Kafkas Schreiben erhaltengeblieben sind, wird doch klar, dass sich die beiden verliebt haben. Nach der Kur trifft sich das Paar in Wien und verbringt vier glückliche Tage zusammen. Kafkas Sexualangst begegnet Milena hierbei mit Geduld und Verständnis. Das ändert sich aber, als sich die beiden anderthalb Monate später in Gmünd wiedersehen. Was für Milena das Normalste von der Welt ist – dass Mann und Frau auch geschlechtlich miteinander verkehren, stößt Kafka ab. Der Bruch ist von daher folgerichtig.
著者
豊原 哲彦 仲岡 雅裕 土田 英治
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus : journal of the Malacological Society of Japan (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.27-36, 2001-06-30

岩手県大槌湾の海草藻場において, 本州以南では初記録となるキタノカラマツガイの生活史と個体群動態について調査した。野外調査は1995年10月から1996年11月までおよそ一ヶ月または一ヶ月半おきに行われた。貝はアマモとタチアマモの各群落からかぶせ網で定量的に採集された。海草の葉上に付着する卵塊の観察により, キタノカラマツガイの卵塊は11∿22個の卵が入ったカプセル型であり, 卵はプランクトン幼生期を経ずに底生発生することが示唆された。キタノカラマツガイの繁殖期は初夏であり, 寿命は一年であった。新規加入により5月から6月にかけて個体群密度が急激に増加し, 夏期は比較的高い密度が保たれているが, 8月から10月にかけて著しく減少した。密度の増加はアマモとその付着藻類の豊富な時期と一致しており, また密度の減少はアマモと付着藻類の減少と一致していたことから, 生息場所や餌量が個体数の制限要因になっていることが推察された。特に密度の減少期には個体の成長が停滞していたため, 餌不足が個体数減少の重要な要因であると考えられる。タチアマモ上の個体群密度はアマモ上に比べ年間を通して低く, また新規加入がタチアマモではほとんど見られなかったことから, キタノカラマツガイは生息場所としてタチアマモよりもアマモの方を好むことが示唆された。生息場所の選択に関しては海草2種の群落構造の違いが影響を及ぼした可能性がある。例えば, 平面的な形態的特徴を持つ本種にとって, 一年を通して茎部が少なく平たい葉が優占するアマモの方が付着基質として優れていること, また笠貝は一般に移動力が小さいため, 株密度が低く間隙の多いタチアマモ群落よりもより連続的に分布するアマモ群落の方が生息に好条件であることなどが考えられる。
著者
西山 純一 長谷川 啓一郎 吉野 利尋 鈴木 利保
出版者
The Japanese Society of Reanimatology
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.118-121, 2006-07-20

東海大学医学部付属病院において, 2004年7月からの1年間に6名の救急救命士が気管挿管実習を行った。対象総患者数184名 (男性95名: 女性89名) , 平均年齢48.5±16.0歳, IC取得率約75%, 平均気管挿管成功率89.3±6.9%, 合併症発生率1.1% (口唇損傷2例) であった。気管挿管成功30例達成までの症例数は平均30.7±0.8例, 実習期間平均46.2±13, 4日という結果であり, 実習は約一ヶ月半の期間を必要とした。全員が実習を修了し, 認定登録を受けた。実習は重大な合併症の発生なく安全に行えたが, 実習システムは, 手技主体の指導になること, 規定症例数達成までの実習期間, 症例数に制限がなく, 実習参加が修了認定と同義となっていること, 実習が麻酔科医の献身性によってなりたっていること等の問題があり, 実習施設数の増加, 指導医の業務負担軽減, 行政等による広報他, いくつかの改善策が必要と考えられた。
著者
小谷 究 清水 貴司 松尾 晋典 KOTANI Kiwamu SHIMIZU Takashi MATSUO Shinsuke コタニ キワム シミズ タカシ マツオ シンスケ
出版者
広島文化学園大学社会情報学部
雑誌
社会情報学研究 : 広島文化学園大学社会情報学部紀要 (ISSN:13418459)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.63-75, 2011

The purpose of this study was to examine statistically the relationship between the shooting position and the place of getting rebounds. For the object, We selected randomly 16 games in the men's top league of university. For the method, We videotaped the games. We divided the court into 5 areas by the angles of the shot and 6 areas by the length of the shot and tally up the data of shooting position and the place of getting rebounds. We analyzed the data by Pearson's correlation analysis, and examined with thepercentage of the rebounds. The results are the following.1)For all the angles of the shot, as the length of the shot gets longer, the distance of the rebound becomes longer.2)For 3 point shots, as the shooting angle gets closer to the left corner, the length of rebound becomes longer.3)For the shot over 3.75 meters, the angle of rebound is same as the angle shot on the help-side.4)As the length of the shot gets longer at the right corner, the angle of the rebound becomes closer to help-side corner. From the above results, it revealed statistically the relationship between the shooting position and the place of getting rebounds. In conclusion, it was suggested that when the team control the place of getting rebounds, it was related to getting more rebounds and the possibility leading to ascendancy in the game.
出版者
日経BP社
雑誌
日経エレクトロニクス (ISSN:03851680)
巻号頁・発行日
no.802, pp.197-201, 2001-08-13

「気持ちはよう分かりますが,5月いうんは無茶ちがいますか。あと半年しかないんですよ。ハードウエアの開発に1年はかかるやろうから,いくら急いでも来年末の発売の機種になりますね」「カメラ付き電話はプリクラ」 この時から1カ月前,植松と山下晃司をはじめとするパーソナル通信事業部のスタッフは,IC事業本部がある天理事業所を訪れていた。
著者
須田 亙 宍戸 雅宏
出版者
日本土壌微生物学会
雑誌
土と微生物 (ISSN:09122184)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.93-99, 2009-10-01
被引用文献数
1

葉に代表される植物体地上部の表面である葉圏には,多種多様な細菌が存在し,植物の健康維持や生態系における物質循環において重要な役割を担っていると考えられる。葉圏細菌に関する研究は,特定の機能を持つ菌を分離・培養し,それらの性質を調べる手法で行われてきた。これまで,細菌群集全体の構造や動態に関する研究は他の環境(根圏や水圏等)と比較すると著しく少なかったが,2001年以降,葉圏においても非培養法による細菌群集全体の構造解析が行われるようになり,知見が蓄積されつつある。本稿では,葉圏細菌群の生存戦略,および注目すべき機能について概説し,さらに,非培養法による細菌群集の解析によって明らかになってきた知見および今後の展望について論考した。
著者
岡部 いさく
出版者
海人社
雑誌
世界の艦船
巻号頁・発行日
no.790, pp.144-149, 2014-01
著者
伊東丈夫
雑誌
日医写会誌
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.6-11, 1990
被引用文献数
1
著者
栗原 信鉉
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.459-470, 1999

Nativeに通じる英語論文を作成するために注意すべき点と,海外口頭発表のあり方について,研究者・翻訳者としての経験から述べ,具体例を示して解説した。前編では,Nativeに通じない日本人の英語として,取り扱い説明書や和製英語などの例を示した。また,意味の通じる自然な英語にするための用法について,動詞,冠詞,関係代名詞など,七つのポイントを挙げた。
著者
高久 宏佑 細谷 和海
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 = The aquiculture (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.13-18, 2008-03-20
被引用文献数
2

カワバタモロコは、コイ科ラスボラ亜科に属する全長3-6cmの日本固有の淡水魚で、日本に生息する淡水魚類の中ではもっとも小さいコイ科魚類とされる。静岡県瀬戸川以西の本州太平洋側、四国瀬戸内海側および九州北西部に分布し、主に平野部の農業用ため池や用水路など里山の環境に生息している。本種には繁殖期に顕著な性的二型が見られ、雌は雄より大型化し、雄は鮮やかな黄金の婚姻色を呈する。このような特徴的な形態を持つため、キンモロコ、キンターなど地方名も多く残される馴染み深い魚であり、西日本では里山のシンボルフィッシュとなっている。しかし、近年ではブラックバス・ブルーギルなど肉食性外来魚による食害や、圃場整備などの水田開発、農地の放棄による生息地の荒廃により個体数は激減し、最新の環境省版レッドリストでは絶滅危惧IB類に指定されている。希少種では、生息地や野外個体の数が制限されることが多く、保全に必要な生態情報を得るには野外調査だけでは不十分な場合が多い。飼育実験により得られた生態情報を野外へ還元することは希少種の保全において重要であり、そのためには、まず供試魚を効率的に得るための人工繁殖方法の確立が必要となる。そこで本研究では、カワバタモロコの系統保存技術向上と、生息地保全のための基礎的研究を目的として、ホルモン投与による産卵誘発方法の確立、適した初期飼育条件の選定、基礎的な成長に関する実験を行なった。