著者
塚本 照美
出版者
中央大学国文学会
雑誌
中央大学国文 (ISSN:03898598)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.37-52, 2017-03-25

寛政から文化・文政期にかけて急速な流行を見るようになった俳諧一枚摺。その一枚摺の中に、文化期に活躍した武州大谷村の俳人・五十嵐梅夫・濱藻父娘の描かれている歌舞伎顔見世番付を模した一枚摺がある。これには「今文化七庚ノ午半」や「蕉風一躰」の書入れがある。このことから、梅夫・濱藻父娘の西国への旅の時期と重なると推察し、梅夫が上梓した『草神楽』と濱藻が上梓した『八重山吹』での興行地や一座した連衆を検証しながら、歌舞伎顔見世番付を模した一枚摺と梅夫・濱藻の西国行脚との関係を考察した。
著者
戸政 佳昭 Yoshiaki Tomasa
出版者
同志社大学大学院総合政策科学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review
巻号頁・発行日
vol.2, pp.307-326, 2000-12-20

本稿は、政治・行政学や公共政策論において一種の流行語となっているガバナンスという言葉が、流行のゆえに混乱をもたらしていると認識し、ガバナンスという言葉そのものについての整理・検討を行っている。言葉が引き起こす混乱は、その言葉が登場することとなった背景が整理されないままに使われることが原因になっていることが少なくないので、まずはガバナンスという言葉が日本の政治・行政学や公共政策論において浸透するに至った背景を6 つに分けて整理している。さらにこれらから、政治・行政学や公共政策論においてガバナンス概念を用いる意義・意味は「ガバメントからガバナンスへ」という文脈で発揮しうるものであるとしている。次 に、ガバナンスという言葉の具体的な使われかたとしては、辞書的用法、規範的用法、分析的用法の大きく三つに分けることができるとしたうえで、規範的用法については、共通点とでもいうべき5 つのキーワードがあることを指摘し、さらにこの用法においての問題点および今後注意すべき点などを整理している。分析的用法については、さらに包括的アプローチ、サード・セクターからのアプローチ、政府からのアプローチ、の三つにわけることができるとした上で、それぞれにつき簡単な説明を加え、さらにこの用法においての問題点および今後注意すべき点などを整理している。なお、本稿は今後作成する予定の論文の一部分に相当するものとして執筆したものである。
著者
大串 旭 大西 俊輝 田原 陽平 石井 亮 深山 篤 中村 高雄 宮田 章裕
雑誌
グループウェアとネットワークサービスワークショップ2021(GN Workshop 2021) 論文集
巻号頁・発行日
vol.2021, pp.1-8, 2021-11-12

日常生活において褒める行為は大切なコミュニケーションである.褒め方の上手さを向上させるためには自分自身の褒め方の上手さを把握することが必要であると考えられるが,自分自身の褒め方の上手さを把握することは困難である.これより,我々は褒め方の上手さを評価するシステムの構築を目指す.この目標を達成するためには,褒め方の上手さを推定できる機械学習モデルの構築が必要である.そこで本稿では,話者(褒める人,褒められる人)の発話内容から,褒め方の上手さを推定できるか明らかにする取り組みを行う.はじめに,話者の発話内容として BERT でベクトル変換したものを言語特徴量として抽出した.次に,抽出した言語特徴量を用いて褒め方の上手さの評価値を推定する機械学習モデルの構築を行った.最後に,話者の発話内容をどのように利用すれば上手い褒め方を推定できるのか分析を行った.その結果,分類モデルにおいては褒める人の発話のみを利用したモデルの精度が最もよく,回帰モデルにおいては褒める人の発話とその後の褒められる人の発話を利用したモデルの精度が最もよくなることが確認できた.
著者
西村 安博 Yasuhiro Nishimura
出版者
同志社法學會
雑誌
同志社法學 = The Doshisha Hogaku (The Doshisha law review) (ISSN:03877612)
巻号頁・発行日
vol.72, no.7, pp.2292-2242, 2021-02-28

平山行三氏が著書『和与の研究』(吉川弘文館、1964年)において指摘する鎌倉幕府の裁判における和与の審査手続に改めて注目し、同氏が取り上げたところの、審査の結果として和与不認可とされたという4つの事例を主な検討素材として、審査をめぐる理解の妥当性について再検討を試みる。その上で、裁判所が「和与を許さない」場合に私和与が生じたとする同氏の理解を批判的に検討することにより、私和与の新たな理解の可能性を探る。
著者
浅沼 岳樹 五十部 孝典
雑誌
コンピュータセキュリティシンポジウム2021論文集
巻号頁・発行日
pp.1116-1123, 2021-10-19

ブロックチェーンのコンセンサスアルゴリズムである Proof of Work (PoW) では,意味のない大量のハッシュ演算計算をベースにしており,電力や計算資源を無駄遣いしている.2020 年において,ビットコインの PoW に費やす電力はベルギーの年間消費電力(82TWh)に及び,持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals; SDGs)に反する重大な問題である.この問題を解決するために本稿では,遺伝的アルゴリズム (Genetic Algorithm; GA) を PoW に組み込むことで PoW を意味のある演算にする Meaningfull PoW (mPoW) を提案する.具体的には,GA の最適化計算により周期的に生成される中間値をビットコインに用いられている Hashcash の入力として利用することにより,PoW に求められる特性を保ったまま意味のある演算(GAの最適化問題)が可能である.さらに,Device binding 技術と組み合わせることで,大量のメモリの利用を求めることなく ASIC 耐性を持たせることも可能であり,mPoW は消費電力と計算資源両方の無駄を削減できることを示す.
著者
齋藤 凌也 山内 利宏
雑誌
研究報告セキュリティ心理学とトラスト(SPT) (ISSN:21888671)
巻号頁・発行日
vol.2018-SPT-29, no.30, pp.1-8, 2018-07-18

SELinux のセキュリティポリシは設定が難しく,配布されている汎用的なポリシを用いる場合が多い.ここで,配布されているポリシは,個々のシステムに必要ない権限を許可している可能性がある.この問題を解決するため,我々は,実行対象のシステムに合わせて,不要なポリシを自動で削除する手法を提案した.しかし,この手法には,大きく二つの問題が存在する.一つ目は,ポリシのソースファイルが存在しない場合,適用できないという問題である.二つ目は,ポリシ削減の粒度が粗いという問題である.そこで,本稿では,上記二つの問題に対処するため,拡張した手法を提案する.拡張した提案手法では,SELinux が保持している SELinux Common Intermediate Language という中間言語で記述されたファイルに着目し,これを利用することで一つ目の問題に対処する.また,ポリシを削減する際の比較に,アトリビュートを元のタイプに置き換えたアクセスルールを利用することで,二つ目の問題に対処する.本稿では,拡張した手法とその評価結果について報告する.
著者
加茂 文吉
雑誌
第29回マルチメディア通信と分散処理ワークショップ論文集
巻号頁・発行日
pp.195-196, 2021-10-18

3次元触覚/力覚インターフェースデバイスを用いてエレキギターピッキング奏法練習ツール PickFeel の開発を行った.15 名の被験者に PickFeel を活用したギターレッスンを行い,アンケートによる主観評価と慣性運動センサデバイスを装着し運動データでの解析を重ねる事で,これまでギター講師が指導不可能であったピックが弦に衝突した時の体感を,バーチャルリアリティ技術を活用して伝達させることにおいて一定の効果が示せたことを報告する.
著者
雨宮 民雄 Tamio Amemiya
出版者
東京海洋大学
雑誌
東京海洋大学研究報告 (ISSN:21890951)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.67-74, 2010-02-26

誰も時間を見ることはできない。誰も時間を聞くことはできない。誰も時間に触れることはできない。だが、時間は確実に人間を支配している。時間は人間にとって不気味な力である。そのような時間を人間は一定の形をもつものとして表象し、それを時計によって測定することによって生活の中に取り込んでいる。しかし、時間に押し流されているという不安は消えない。そのため、人間は時間を空間と同じように自由に移動できる場にしようと試みる。それがタイムトラベルの夢である。物理学の発達によって、タイムトラベルは現実に可能と考えられるようになってきた。私は、物理学的に可能とされているさまざまなタイムトラベルの方法を分析するとともに、理論を立てるという人間の行為との関係においてタイムトラベルがどのような哲学的意味を持つかを考察した。
著者
古林 靖規 高木 剛
雑誌
コンピュータセキュリティシンポジウム2009 (CSS2009) 論文集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.1-6, 2011-10-12

近年,超楕円曲線上のペアリング暗号が注目を集めている.超楕円曲線上のペアリングの安全性は,入力のヤコビアンに対する離散対数問題と出力の有限体上の離散対数問題に依存している.しかし,種数の大きな超楕円曲線上のヤコビアンに対する離散対数問題 (HCDLP) の計算機実験の報告は数件しかなく,実験データに基づく困難性の評価を行うにはデータが不十分である.本稿では,素体F3 上定義される超楕円曲線H : y2 = x2g+1 +1 上に対し,種数の大きな超楕円曲線上の HCDLP に対し漸近的に最も高速である指数計算法を実装し,計算機実験を行った.その結果,種数g = 74 であるJH(F3) のHCDLP(#JH(F3)2≈120)を解くことが出来た.