著者
松前 ひろみ 長谷 武志 清水 健太郎
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:21888957)
巻号頁・発行日
vol.2020-CH-122, no.2, pp.1-5, 2020-01-25

ヒトのゲノム情報からは,人類の系統や混血などの歴史を詳細かつ統計的に推定することができる.そうしてゲノムから推定される民族集団史の系統関係と,文化,とりわけ言語の分類には,一定の関連があると考えられてきた.しかし言語の分類のうち,言語族という語彙レベルで近縁な言語間の関係を除くと,遠い言語同士の関係(例えば日本語,アイヌ語,韓国語)を定量的に分析することは,これまで困難であった.私たちは文法の比較法である言語類型論の研究者とともに,文法のデータベースから定量的に語族を超えた言語の特徴の類似性を抽出し,ゲノムに基づく民族集団の関係との関係性を分析することに成功した.データベースに蓄積された文化と生物学の情報を統合的に解析する方法を提案する.
著者
山本 ひろ子
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.19-30, 1985-05-10 (Released:2017-08-01)

天皇制イデオロギーの一思想源流とみなされる北畠親房の三種の神器観念の生成過程を、研究ノート的な『元々集』から歴史叙述の書『神皇正統記』への展開の内に考察する。出発は中世神話的世界にありながらも、神器の問題を天祖-天孫の伝受の絶対的関係に限定することで麹房は三種の神器を天皇支配の正当性と道徳性の根源として定立した。それは神器がコスモロジーを離脱して国家神話の圏内にとりこまれていく構造を示すものであった。
著者
井上 靖悟 大高 洋平 小田 ちひろ 後藤 悠人 守屋 耕平 工藤 大輔 近藤 国嗣 松浦 大輔
出版者
日本転倒予防学会
雑誌
日本転倒予防学会誌 (ISSN:21885702)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.47-54, 2017-03-10 (Released:2017-09-25)
参考文献数
15
被引用文献数
1

【目的】本研究の目的は,新人理学療法士に対する転倒予防の新たな教育プログラムが,リハビリテーション病院の理学療法中の転倒を減少させるのかについて検討することである。【方法】2011年4月から2016年3月の5年間に理学療法中に発生した転倒事例について後方視的に調査を行った。2014年4月より新しい理学療法士の新人教育プログラムを導入し,その前後の転倒発生の変化について調査した。新しく導入したプログラムは,理学療法中の過去のインシデントを基に,各動作における環境設定や介助方法などリスク管理に必要な注意点を細分化したリストを活用した実践型プログラムである。指導者はリストの各項目について説明を加えながら実際の動作を見せることで新人の指導を行い,新人は指導者の行う場面の見学,そして模倣を繰り返した。また,指導者は随時実施内容の修正やフィードバックを与え,新人の技術向上を図った。経験段階をすべての項目についてチェックし,最終的にすべての技術を1人で実践できることを目標とした。この教育研修プログラムを,新人教育期間である4月から6月の3か月間にわたり理学療法科全体で実施した。 年間転倒件数および理学療法士1人あたりの年間転倒発生件数,転倒時動作の種類,転倒時動作の自立度について,新しい教育プログラムを導入した前後で比較した。【結果】新人理学療法士の数は,平均±標準偏差にて,教育プログラム導入前10.0±1.7名,導入後9.5±2.1名と大きな変化を認めなかった。新人理学療法士の平均転倒件数は,導入前は10.7±2.5件,導入後は5.0±1.4件と半減し,理学療法士1人あたりの平均年間転倒発生件数も,導入前1.1±0.1件,導入後0.5±0.5件と半減した。転倒時動作の種類は歩行が一番多かったが,教育プログラム導入後は,そのうち介助歩行の患者の転倒が減少する傾向を示した。【結論】新人理学療法士に対する動作ごとのリスク管理のリストを用いた現場教育は,理学療法中の転倒件数の減少に有効である。
著者
竹下 正哲 中西 一弘 高橋 丈博 蓑原 隆 前山 利幸 戸祭 克 益満 ひろみ 後藤 元
出版者
日本農作業学会
雑誌
農作業研究 (ISSN:03891763)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.183-194, 2018 (Released:2019-06-20)
参考文献数
50
被引用文献数
2

ドリップ灌漑はヨーロッパ,イスラエルなどを中心に世界に普及しているが,日本では全灌漑地の2%でしか使用されていない.その理由は,日本は四季を通じて十分な降雨があるため,露地栽培でドリップ灌漑は必須ではないとみなされてきたためと考えられる.本研究では,降雨が十分にある日本の露地において,ドリップ灌漑を導入することで,ピーマンの単位面積あたり収量を増加させることができるのではないかという仮説を検証した.「ドリップ灌漑の有無」「固形肥料・液体肥料の違い」の2要因を設定し,そのどちらが影響しているか,あるいは交互作用があるかを検証するために,ピーマンを用い,二元配置の分散分析実験を行った.結果は,「固形肥料・液体肥料の違い」に関わらず,ドリップ灌漑をした試験区の方が,ドリップ灌漑をしなかった試験区(天水のみ区)より収量(生重量),乾燥重量,着果数が増加した.とくに収穫量が落ちてくる9,10月の収量が,ドリップ灌漑区で多くなっていた.その差の要因は多頻度灌水にあると考えられ,日本の露地のように十分な降雨がある耕地においても,ドリップ灌漑により毎日定期的に灌水することで,ピーマンの着果数を増やし,収量を増加させることができることが示唆された.
著者
金澤 文子 半田 康 宮下 ちひろ
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

難分解性の有機塩素系(POC)農薬は内分泌撹乱作用を持つと懸念されている。POC農薬の胎児期曝露が次世代の小児アレルギーリスクに与える影響を明らかにするため、2002年から2005年の期間、札幌市の一産院で妊婦514名をリクルートし、POC農薬の母体血中濃度を320名で測定した。交絡要因を調整したロジスティック回帰分析で、母体血中POC農薬と18か月の小児アレルギー発症のリスクに有意な関連は認められなかった。曝露レベルが低いため、生後の小児アレルギーに与える影響が低い可能性が示された。免疫機能が発達し、アレルギー症状の診断が明確になる学童期まで追跡調査する必要があると考えられた。
著者
柴崎 博行 八木 ひろみ 中 久美子
出版者
香川県産業技術センター
巻号頁・発行日
no.8, pp.86-88, 2008 (Released:2011-02-04)

高齢者の乾燥肌(ドライスキン)に対するオリーブオイル塗布の効果について検証した。皮膚の水分量、保湿性が低下した高齢者に対して、オリーブオイルの継続的な塗布は皮膚水分量の増大及び水分蒸散を抑制(バリア性向上)することが示唆された。
著者
高橋 ひとみ 衞藤 隆 Hitomi Takahashi Takashi Eto 桃山学院大学法学部 東京大学教育学研究科
雑誌
桃山学院大学人間科学 = HUMAN SCIENCES REVIEW, St. Andrew's University (ISSN:09170227)
巻号頁・発行日
no.37, pp.35-61, 2009-10-20

In February 2009, we tested the far-vision visual acuity and near-vision visual acuity of school children at "A" elementary school, a municipal school. The purpose of the test was to examine whether the present far visual acuity test could also identify the children whose near visual acuity is bad. Based on the past study, we set the standard of near visual acuity at 0.8. We recommended that children whose near visual acuity was under0.8 see an ophthalmologist. There were many children whose far visual acuity was under 1.0, more than half of all children, especially in the upper grades. This result shows that there is concern with the control of children's eyesight after the test.On the other hand, more than ten percent of the children of each grade scored less than 0.8 in uncorrected vision. We found children who have trouble seeing near objects who are overlooked in the present far visual acuity test. We have to check children's near visual acuity in order to find children who have trouble with near visual acuity.
著者
加藤 美生 石川 ひろの 奥原 剛 木内 貴弘
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.66, no.12, pp.746-755, 2019-12-15 (Released:2019-12-25)
参考文献数
18

目的 複数の国や地域で事業展開する研究開発型多国籍製薬企業は,社会的貢献の対象である患者団体との繋がりが深い。社会的貢献の内容は多岐にわたり,寄付金や協賛費などの直接的資金提供から,企業主催の講演会などに伴う費用などの間接的資金提供,患者団体への依頼事項(原稿執筆や監修,調査)への謝礼,さらには社員による労務提供がある。研究開発型企業の場合,ユーザーである患者の声を生かし,より患者に寄り添った医薬品の開発が求められる。そのため,企業と患者団体との関係性に関する透明性を担保することは,あらゆるステークホルダーにとって重要である。本研究の目的は研究開発型多国籍製薬企業の社会的貢献活動と患者団体の関係の透明性を確保するための情報開示動向を,日米欧の業界団体規程を軸に把握することである。方法 欧州製薬団体連合会(EFPIA),米国研究製薬工業協会(PhRMA),日本製薬工業協会(JPMA)による「製薬企業と患者団体との関係の透明性」に関連する規程の記述内容について,「透明性」「対等なパートナーシップ」「相互利益」「独立性」の4概念を用いて質的帰納的に分析した。結果 記述内容のほとんどは「透明性」に関していた。最も具体的に記載されていたのはEFPIAの規程であり,患者団体の制作物内容への影響を与えないことや企業主催あるいは患者団体主催のイベントやホスピタリティに関する記載があった。3団体の規程とも財政支援や活動項目の目的や内容について,記録をとることを課していた。しかし,透明性の確保のための情報公開については,PhRMAでは必須とせず,JPMAでは明確な更新スケジュールについて明記がなかった一方,EFPIAでは年1回公開情報の更新を義務付けていた。「対等なパートナーシップ」については,相互尊重,対等な価値,信頼関係の構築などのワードが共に抽出された。いずれの規程も「相互利益」についての言及がなかった。「独立性」に関しては,いずれの規程も患者団体の独立性を尊重または確証することが記述されていた。結論 各団体が規程を示し,各会員会社による自発的な情報開示を推奨していたが,団体によりその詳細の度合いが異なっていた。業界団体の規程は会員会社のポリシーの基となることから,できるだけ詳細にかつ地域を超えて,同様の情報開示内容や規程が揃えられることが望まれる。
著者
佐伯 英人 木村 ひろみ
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.231-238, 2018-03-19 (Released:2018-04-06)
参考文献数
17
被引用文献数
1

本研究の目的は, 市販の洗濯用合成洗剤を使って教材研究を行い, また, 授業実践を通して, 水の温まり方を調べる実験の有効性を議論することであった。研究の結果, 明らかになったことは次の①~④の4点である。①多くの児童が実験をして(観察をして), 水の温まり方の正しい概念を身に付けることができた。②多くの児童が授業を受けて「よく分かった」という意識をもつことができた。その要因の1つとして実験があった。③多くの児童が実験をして(観察をして)「よく分かった」という意識をもつことができた。④教員の授業に対する意識は「良好」であった。その要因の1つとして実験があった。
著者
永島 早苗 岩倉 良子 真壁 法子 渡部 ひとみ 野々村 美穂 古賀 美紀
出版者
松江市立病院
雑誌
松江市立病院医学雑誌 (ISSN:13430866)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.23-26, 2005 (Released:2019-08-21)
参考文献数
4

小豆を用いて冷めても不快感や重たさを感じない安定性のある温罨法を作製し,快適性および持続性を検討した.対象は健常男女40例で無作為に小豆パック群20例とバスタオル群20例の2群に分けた.従来のバスタオルを利用した温罨法に比べ,小豆を使ったものは皮膚温,快適性,重量感において勝っていた.終末期の患者,腹部膨満感のある患者には小豆を使った温罨法が適しているが,加熱時間や貼付部位の考慮が必要と思われた.