著者
門倉 信 奥脇 徹也 今川 直人 島村 成樹 高田 ひとみ 雨宮 史武
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.229-236, 2019-07-01 (Released:2019-07-18)
参考文献数
26
被引用文献数
1

100例の肝細胞癌終末期患者を対象に,予後予測モデルの週単位(3週生存)の精度について後ろ向きに検討した.Receiver operating characteristic(ROC)解析とArea Under the Curve(AUC)より3週生存における各モデルのcut off値を選定し,予測能を感度・特異度・陽性的中率・陰性的中率・正診率を用いて評価した.Palliative Prognostic Index(PPI)がAUC 0.89,正診率80%・Biological Prognostic Score(BPS)2がAUC 0.72,正診率72%・BPS3がAUC 0.82,正診率79%・Model for End-Stage Liver Disease(MELD)スコアがAUC 0.71,正診率70%と優秀な予測能を示し,これらの組み合わせで予後予測の層別化が可能であった.
著者
赤羽 ひろ 大澤 はま子 中浜 信子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.27, no.7, pp.472-478, 1976-10-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
6

粘稠調理食品のうち, 白ソースをとりあげ, その基本となるルーの性状におよぼす加熱温度および材料配合による水分量の影響などについて実験検討した. さらに, それらのルーを用いた白ソースの性状についても検討を行った. ルーの調製には日常の調理法にもとづく条件をなるべく採用し, バターと小麦粉のほかに, バター脂, サラダ油, 乾燥小麦粉を用い検討した.1) ルーの乾麩量はルーの材料中の水分量と, 加熱温度によって変化した. ルーの加熱温度が80℃以下では乾麩量に変化はみられなかったが, ルーの加熱温度が100℃以上になると, ルーの水分率が0%の場合は乾麩量の変化はみられないが, 水分を増すに従って乾麩量は減少し, ルーの水分率が36%になると, ほとんど乾麩量は0に近づいた.2) 光学顕微鏡的には, ルーの加熱温度140℃までは澱粉の粒形, ならびに複屈析性に顕著な変化は認められなかった.3) バターと小麦粉を用いたルー (水分率36%) から調製した白ソースは, ルーの加熱温度が120℃のものでは粘度がやや高く, ルーの加熱温度140℃では急激に白ソースの粘度低下がみとめられた. しかし, 水分の少ないルーを用いた白ソースでは, ルーの加熱温度140℃になるまで, やや粘度の上昇がみられるが, 急激な変化はみとめられなかった.4) バター, バター脂, サラダ油を用いたルーから調製した白ソースについて, 嗜好特性, 総合評価を5点評点法で評価した結果, バターを用いたものが最も好まれた.5) これらの白ソースの総合評佃, 嗜好特性値の間の関係を絹関行列, 重相関係数, 重回帰式により求めた結果, 呈味, 色, 香りの順でその評価が影響していることが認められた.
著者
富田 真佐子 福地本 晴美 鈴木 浩子 芳賀 ひろみ 河口 良登 竹内 義明 川上 由香子
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.667-675, 2019 (Released:2020-02-06)
参考文献数
25

炎症性腸疾患患者の健康関連QOLを包括的視点と疾患特異的視点から明らかにし,炎症性腸疾患と共にある患者のQOL説明モデルを示すことを目的とする.対象者は,都内にあるA大学病院消化器内科に通院中の外来患者63名.質問紙法により,対象者の属性(疾患名,性別,年代,社会活動,治療年数,治療内容,手術歴),包括的尺度としてSF-8,疾患特異的尺度として著者が作成したIBD患者のQOL尺度19項目を用いた.分析は,各項目について記述統計量を算出し,SF-8の平均値について国民標準値および既存の文献と比較した.QOLモデルを作成するためにSF-8とIBD患者のQOL尺度各項目とのピアソンの相関係数を算出した.QOL尺度は5つの下位概念ごとに因子数を1とした主成分分析によって合成した成分得点を用いた.これらの相関係数を参考にモデル図を作成し,パス解析を行い,総合効果を算出した.倫理的配慮として調査は匿名にて行い,書面にて調査の目的と方法,自由意志での参加,拒否による不利益がないことについて説明した.本研究は昭和大学保健医療学部倫理委員会の承認を得て行った(承認番号:403).対象者は,潰瘍性大腸炎51名(81%),クローン病12名(19%),男性28名(44%),女性35名(56%),年齢は40歳代が最も多く18名(29%),平均治療年数平均11.7±8.9年,治療内容は,5-ASA薬46名(73%)が多く,開腹手術経験ありは8名(13%)であった.SF-8の8つの概念のスコアの平均は50前後で,PCS(身体的サマリースコア)は50.1±6.4,MCS(精神的サマリースコア)は48.6±7.0であった.国民標準値と比較したところほとんど有意な差はなかった.SF-8とQOL尺度の5つの下位概念の成分得点との相関係数は±.218〜.698であった.SF-8のPCSとMCSを最終的な従属変数とした健康関連QOLモデルを描いたパス解析を行った.総合効果では,「心理社会的生活への負担」に最も影響するのは「食生活上の困難さ」であり,健康関連QOLのPCSとMCSに最も影響するのは「心理社会的生活への負担」であった.対象者のSF-8のスコアは国民標準値とほとんど差がなく,下痢や腹痛による苦痛が少なく食生活上の困難も少ない者は,健常者と大差ないQOLを維持できることが示された.パス解析の結果から,仕事や心理的な負担,食生活の困難さを感じている者は健康関連QOLが下がるが,周囲からのサポートは活力をもたらし,心理社会的負担を軽減させ,前向きに病いと付き合うことにつながることも示された.
著者
金本 郁男 金澤 ひかる 内田 万裕 中塚 康雄 山本 幸利 中西 由季子 佐々木 一 金子 明里咲 村田 勇 井上 裕
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.133-140, 2020 (Released:2020-08-19)
参考文献数
24

2種類の低糖質パンを摂取した時の食後血糖推移を食パンおよび全粒粉パンと比較するとともに, セカンドミール効果および糖質の消化性を評価するために試験を行った。健常成人11名 (男性2名, 女性9名) を対象者とした。摂取する熱量を統一した食パン (糖質38.6 g) , 全粒粉パン (糖質36 g) , マイルド低糖質パン (糖質8.5 g, 高たんぱく) , スーパー低糖質パン (糖質3.4 g, 高たんぱく高脂質) のいずれかを朝食に摂取し, 昼食にカレーライスを摂取する4通りの試験を行い, 食後血糖を経時的に測定した。糖質の消化性はGlucose Releasing Rate法で測定した。その結果, マイルド低糖質パン, およびスーパー低糖質パン摂取後の血糖値は低値を示したが, セカンドミール効果は認められなかった。本研究で用いた2種類の低糖質パンのうち, 消化性, 食後血糖, 満腹度の観点からマイルド低糖質パンの方が優れていると考えられた。
著者
ひびき会編
出版者
ひびき会
巻号頁・発行日
1978
著者
直原 一徳 野口 悟 (徳富 哲) 桂 ひとみ 藤堂 剛 石川 智子
出版者
大阪府立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、光依存の磁気センサータンパク質として仮説が立てられている青色光受容体「クリプトクロム」を用いて、青色光照射に伴う磁気の発生について磁気特性測定装置(MPMS3)を用いて測定することを試みた。2018年度に入って、ゼブラフィッシュ由来のクリプトクロムの一種「Zf_Cry-DASH」のタンパク質溶液を用いて青色光照射を行い、光反応に伴って形成されるラジカル状態の磁化発生をMPMS3により検出する測定を遂行した。結果としては、現在のところまだ磁気特性を示すMPMS3シグナルの検出には至っておらず、さらなる測定条件の検討が必要であると考えている。
著者
椋本 ひかり 南 雅代 中村 俊夫 Mukumoto Hikari Minami Masayo Nakamura Toshio
出版者
名古屋大学年代測定資料研究センター
雑誌
名古屋大学加速器質量分析計業績報告書
巻号頁・発行日
no.26, pp.96-101, 2015-03

Bone collagen, the organic fraction of the bone, is commonly used on 14C dating of bone, while it can not be used for cremated bone because of no remain of collagen. Meanwhile, recent studies have presented that carbonate hydroxyapatite (CHa), the inorganic fraction of the bone, can be used for 14C dating of cremated bone, though the CHa is easily contaminated by exogenous carbon and should be purified by chemical treatment. The purpose of this study is to test the reliability of 14C dating of CHa by using a cremated bone of known-age in Japan. The samples used were the cremated bone, which is considered to be remains of Jokei, a Buddhist monk (AD 1155-1213). We examined whether chemical treatment of the cremated bone with 0.1 M acetic acid for a short time of 1 hour is adequate for removal of secondary carbonate to obtain innate CHa for accurate 14C dating. The CHa in six fragments of the cremated bone showed 14C dates between 1155-1280 cal AD, which are similar with the supposed age. The result indicates the effectiveness of acetic acid treatment and the possibility of accurate 14C dating of CHa by the appropriate chemical treatment. 骨の14C年代測定には、有機成分であるコラーゲンを利用するのが一般的である。しかし、コラーゲンが損失しているため、14C年代測定が困難な骨試料も少なくない。そのような骨試料、特に火葬骨に対して、近年、無機成分の炭酸ヒドロキシアパタイト(CHa)を用いた14C年代測定が試みられている。そこで、本研究では、年代既知の火葬骨に対して、実際に、CHaを用いて信頼性のある14C年代測定が可能かどうかの検証を行った。また、二次的な炭酸塩による汚染を除去するための低濃度短時間の酢酸処理の有効性についても評価を行った。用いた火葬骨試料は、奈良県三郷町の持聖院に所蔵されていた蔵骨器内の骨片である。この人骨は、平安時代末から鎌倉時代にかけて活躍した僧・貞慶(AD1155-1213)の遺骨であるとされている。年代測定の結果、本研究で使用した火葬骨6点から得られた14C年代は1155-1280cal ADという、貞慶の没年と2σの誤差範囲で一致する結果となった。一方、酢酸処理により発生したC02は現代に近い年代を示したことから、本研究で使用した火葬骨は、2次的な炭酸塩等の外来炭素の汚染があったものの、酢酸処理によって効果的に除去された結果、CHaの信頼性のある14C年代測定が可能であったことがわかった。また、真空下における、0.1Mの酢酸による1時間程度の酸処理の有効性も明らかになった。今後、より年代の古い試料や保存状態の異なる試料についても検討を行っていく予定である。名古屋大学年代測定総合研究センターシンポジウム報告
著者
椋本 ひかり 南 雅代 若木 重行 中村 俊夫 Mukumoto Hikari Minami Masayo Wakaki Shigeyuki Nakamura Toshio
出版者
名古屋大学宇宙地球環境研究所年代測定研究部
雑誌
名古屋大学年代測定研究
巻号頁・発行日
no.1, pp.102-107, 2017-03-31

Bones exposed to temperatures of more than 600℃ become to possess the high crystallinity of apatite, which protects them against easy contamination. This property now makes it possible to use the carbonate hydroxyapatite (CHa), an inorganic component of bone, for the 14C dating of cremated bones. Other chemical characteristics, such as Sr/Ca and δ88Sr, indicators of trophic levels and/or dietary preferences, are also expected to be preserved in cremated bones. This study was conducted to examine whether the CHa in cremated bones can provide accurate 14C dates and reliable information on diet. Cremated bone fragments from an urn at the Jisho-in Temple in Nara Prefecture, Japan were used as the sample. These bones are thought to be the remains of Jokei, a Buddhist monk (AD 1155–1213). The CHa in two fragments, which have high crystallinity, was determined to have a 14C date of 1040–1220 cal AD (±2σ), a date similar with the presumed age. The log(Sr/Ca) and δ88Sr values obtained from the bone CHa were –2.79 and from –0.140 to –0.125, respectively, values similar to those of herbivores (log(Sr/Ca)= –3.0~–2.5; Balter et al., 2002, δ88Sr =–0.30±0.17‰; Tütken et al., 2015). This finding is consistent with Jokei's dietary custom of not eating meat. The results of this study demonstrate the effectiveness of using CHa in cremated bones for the 14C dating of bones and dietary analysis.最近の研究により、火葬されて有機成分が残存していない骨に対し、骨の無機成分である炭酸ヒドロキシアパタイト(Carbonate Hydroxyapatite: CHa)を用いた14C年代測定の有効性が実証された(Lanting et al., 2001; Zazzo et al., 2011)。CHaは、高温(>600℃)で加熱されると結晶化が進み埋没後に続成作用の影響を受けにくくなることがその理由として挙げられる。そのため、結晶性の高いCHaを含む火葬骨は、生体由来の化学成分を保持でき、栄養段階の指標であるSr/Ca値やδ88Sr値などを分析することにより、14C年代だけでなく食性に関する情報も復元できることが期待できる。そこで、本研究では、仏教徒「貞慶」(AD1155-1213)の遺骨とされる火葬骨のSr/Ca値及びδ88Sr値の分析を行い、貞慶が菜食であったことを実証できるかどうかを検討した。結晶性の高い火葬骨のCHaから得られた14C年代値は貞慶の没年(1213年)と矛盾しない結果であった。さらに、log(Sr/Ca)値は-2.79、δ88Sr値は-0.14~-0.13であり、いずれも草食動物の値(log(Sr/Ca)=-3.0~-2.5; Balter et al., 2002、δ88Sr値=-0.47~-0.13; Tütken et al., 2015))の範囲であった。この結果は、貞慶が菜食主義であったことを示すものであり、考古学的な見解と一致している。これらの結果から、高温で加熱され、結晶性が高い火葬骨CHaは、生体由来のSr/Ca値及びδ88Sr値を保持しており、年代に関する情報だけでなく生前の食習慣を探るのにも有効であることが明らかになった。本研究は、日本学術振興会科学研究費補助金挑戦的萌芽研究[骨の炭酸ヒドロキシアパタイトを用いた炭素14年代測定の試み」(代表者:南雅代、課題番号26560144)の助成を受けて行なわれました。
著者
伊藤 崇博 橋本 公夫 川北 かおり 小菊 愛 秦 さおり 奥杉 ひとみ 近田 恵里 佐原 裕美子 竹内 康人 片山 和明
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.75-82, 2013

子宮内に胎児と奇胎が併存する場合,多くは部分胞状奇胎であるが,正常胎児と胞状奇胎が併存する胎児共存奇胎の可能性もある.胎児共存奇胎であれば児の生存も期待できるが,生児を得ることができるのは半数以下とされる.今回われわれは,生児を得られた胎児共存奇胎の1例を経験したので報告する.症例は30歳,排卵誘発周期に妊娠成立した.経腟超音波検査にて正常絨毛と奇胎を別々に認め,初診時(妊娠9週)の血中hCG値は349,619 mIU/mlと高値であった.羊水染色体検査は46XXの正常核型であり,血中hCG値も妊娠13週以降は低下傾向にあった.早期より切迫流早産徴候を認め,陣痛抑制困難のため妊娠33週での帝王切開分娩となったが,児の予後は良好であった.奇胎娩出後,免疫組織化学的検査により正常胎児と全胞状奇胎との共存であることが確認された.血中hCG値は順調に低下しており,術後34週を経過したが続発性疾患の発症は認めていない.〔産婦の進歩65(1):75-82,2013(平成25年2月)〕