著者
佐々木 尚之
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.152-164, 2012-10-31 (Released:2013-10-31)
参考文献数
29
被引用文献数
6 3

近年の社会経済環境のなか,少子高齢化の主な要因として晩婚化や未婚化の進行が指摘されている.しかしながら,これまでの初婚に関する研究では,一貫した結果が得られていない.その原因の一つとして,初婚の要因となる変数の時間的変化をとらえることができないという,データ上の制約があった.そこで本稿では,「日本版General Social Surveyライフコース調査(JGSS-2009LCS)」の詳細なライフヒストリー・データを用いて,学歴,就業状態,居住形態の結婚に対する影響力が時間とともに変化するのかどうかに焦点をあてたイベントヒストリー分析を行った.その結果,それぞれの要因の結婚に対する効果が加齢とともに増減することが明らかになった.雇用環境の急速な悪化にもかかわらず,結婚における男性の稼得力が重視され続けている一方で,女性の稼得役割も期待され始めている可能性がある.将来の経済的展望が不確実な現状では,家族形成は大きなリスクとみなされている.
著者
宍戸 邦章 佐々木 尚之
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.336-355, 2011-12-31 (Released:2013-11-22)
参考文献数
42
被引用文献数
3

本稿の目的は, 2000年から2010年の期間に8回実施されたJapanese General Social Surveys (JGSS) の累積データに基づいて, 時代や世代の効果を考慮しながら, 日本人の幸福感の規定構造を検討することである. JGSSは, 各年または2年に1回実施されている反復横断調査であり, このデータをプールすることで, 単年度の調査では明らかにできない時代や世代の効果を検討することができる. また, 時代や世代の効果を統制しながら, 個人レベルの変数の効果を検討することで, 特定の調査時点だけで成り立つ知見ではなく, より一般化可能な知見を得ることができる. 分析手法は, 階層的Age-Period-Cohort Analysisである. 個人は時代と世代の2つの社会的コンテクストに同時にネストされていると考え, 時代と世代を集団レベル, 年齢および幸福感を規定する他の独立変数を個人レベルに設定して分析を行う.分析の結果, 次のことが明らかになった. (1) 年齢の効果はU字曲線を描く, (2) 2003年に幸福感が低下した, (3) 1935年出生コーホートや80年以降コーホートで幸福感が低い, (4) 出身階層や人生初期の社会的機会が幸福感の加齢に伴う推移パターンに影響を与えている, (5) 絶対世帯所得よりも相対世帯所得のほうが幸福感との関連が強い, (6) 就労状態や婚姻状態が幸福感に与える効果は男女によって異なる.
著者
松田 茂樹 佐々木 尚之
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.169-172, 2020-10-31 (Released:2021-05-25)
参考文献数
9

東/東南アジアの先進国・新興国/地域は,いま世界で最も出生率が低い.この地域の少子化の特徴は,出生率低下が短期間に,急激に起こったことである.低出生率は,各国・地域の持続的発展に影を落としている.欧州諸国で起きた少子化は,第二の人口転換に伴う人口学的変化の一部として捉えられている.しかしながら,現在アジアで起こっている少子化は,それとは異なる特徴と背景要因を有する.主な背景要因のうちの1つが,激しい教育競争と高学歴化である.この特集では,韓国,シンガポール,香港,台湾の4カ国・地域における教育と低出生率の関係が論じられている.国・地域によって事情は異なるが,教育競争と高学歴化は,親の教育費負担,子どもの教育を支援する物理的負担,労働市場における高学歴者の需給のミスマッチ,結婚生活よりも自身のスペック競争に重きを置く物質主義的な価値観の醸成等を通じて,出生率を抑制することにつながっている.
著者
佐々木 尚之
出版者
Japan Society of Family Sociology
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.152-164, 2012
被引用文献数
3

近年の社会経済環境のなか,少子高齢化の主な要因として晩婚化や未婚化の進行が指摘されている.しかしながら,これまでの初婚に関する研究では,一貫した結果が得られていない.その原因の一つとして,初婚の要因となる変数の時間的変化をとらえることができないという,データ上の制約があった.そこで本稿では,「日本版General Social Surveyライフコース調査(JGSS-2009LCS)」の詳細なライフヒストリー・データを用いて,学歴,就業状態,居住形態の結婚に対する影響力が時間とともに変化するのかどうかに焦点をあてたイベントヒストリー分析を行った.その結果,それぞれの要因の結婚に対する効果が加齢とともに増減することが明らかになった.雇用環境の急速な悪化にもかかわらず,結婚における男性の稼得力が重視され続けている一方で,女性の稼得役割も期待され始めている可能性がある.将来の経済的展望が不確実な現状では,家族形成は大きなリスクとみなされている.
著者
宍戸 邦章/佐々木 尚之 佐々木 尚之
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.336-355, 2011-12-31
被引用文献数
3

本稿の目的は, 2000年から2010年の期間に8回実施されたJapanese General Social Surveys (JGSS) の累積データに基づいて, 時代や世代の効果を考慮しながら, 日本人の幸福感の規定構造を検討することである. JGSSは, 各年または2年に1回実施されている反復横断調査であり, このデータをプールすることで, 単年度の調査では明らかにできない時代や世代の効果を検討することができる. また, 時代や世代の効果を統制しながら, 個人レベルの変数の効果を検討することで, 特定の調査時点だけで成り立つ知見ではなく, より一般化可能な知見を得ることができる. 分析手法は, 階層的Age-Period-Cohort Analysisである. 個人は時代と世代の2つの社会的コンテクストに同時にネストされていると考え, 時代と世代を集団レベル, 年齢および幸福感を規定する他の独立変数を個人レベルに設定して分析を行う.<br>分析の結果, 次のことが明らかになった. (1) 年齢の効果はU字曲線を描く, (2) 2003年に幸福感が低下した, (3) 1935年出生コーホートや80年以降コーホートで幸福感が低い, (4) 出身階層や人生初期の社会的機会が幸福感の加齢に伴う推移パターンに影響を与えている, (5) 絶対世帯所得よりも相対世帯所得のほうが幸福感との関連が強い, (6) 就労状態や婚姻状態が幸福感に与える効果は男女によって異なる.
著者
佐々木 尚子
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.219-232, 2003-12-25 (Released:2017-05-26)
参考文献数
41
被引用文献数
1

A 700-year landscape history of Himi-nisengoku-hara, a 40-ha dwarf bamboo-dominated area with Nikko fir (Abies homolepis Sieb. et Zucc.) trees, located near the 1896-m peak of Mt. Kamegamori, was revealed mainly by paleoecological analyses. Pollen and charcoal analyses were done for four sediment cores from small hollows in the dwarf-bamboo thicket. Also, the relationship between the modern pollen assemblage and vegetation was examined by using pollen surface samples collected from the dwarf bamboo thicket and Nikko fir stands. Ratios of Gramineae to Abies pollen (G:A) were useful for differentiating the dwarf bamboo thicket and fir stand pollen assemblages. A feature of all pollen assemblages from the four sediment cores was a high percentage of Gramineae pollen. The G:A ratios of fossil pollen indicated that Himi- nisengoku-hara had open landscapes during the past 700 years. Tree census data and tree-ring cores obtained from three plots suggested that Nikko fir trees were established in the periphery of Himi-nisengoku-hara at least 250 years ago, and invaded to the center of the area in synchrony with the simultaneous death of the dwarf bamboo at AD 1964. The increase of charcoal fragments with buckwheat pollen ca. 300 years ago may have been due to slash-and-burn cultivation around the area.
著者
安井 さち子 河合 久仁子 佐野 舞織 佐藤 顕義 勝田 節子 佐々木 尚子 大沢 夕志 大沢 啓子 牧 貴大
出版者
低温科学第80巻編集委員会
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.80, pp.453-464, 2022-03-31

尾瀬のコウモリ相を把握するため,2017~2019年の6~10月に,森林での捕獲調査とねぐら探索調査を行った.その結果,2科8属11種132個体が確認され,コキクガシラコウモリ,モリアブラコウモリ,ノレンコウモリが尾瀬で新たに確認された.過去の記録とあわせて,尾瀬で確認されたコウモリ類は2科9属14種になった.森林での捕獲調査で,捕獲地点数・個体数ともに最も多い種はヒメホオヒゲコウモリだった.尾瀬のヒメホオヒゲコウモリの遺伝的特徴を明らかにするため,分子生物学的な分析を行った.遺伝子多様度は0.82583,塩基多様度は0.00219だった.他地域の個体を含めたハプロタイプネットワークでは,複数のグループに分かれなかった.
著者
河合 久仁子 福井 大 松村 澄子 赤坂 卓美 向山 満 Armstrong Kyle 佐々木 尚子 Hill David A. 安室 歩美
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.239-253, 2007 (Released:2008-01-31)
参考文献数
29
被引用文献数
1

長崎県対馬市において,コウモリ類の捕獲調査を2003年から2006年にかけて行った.その結果,26カ所のねぐら情報を得ることができ,2科4属6種(コキクガシラコウモリRhinolophus cornutus,キクガシラコウモリRhinolophus ferrumequinum,ユビナガコウモリMiniopterus fuliginosus,モモジロコウモリMyotis macrodactylus,クロアカコウモリMyotis formosus,およびコテングコウモリMurina ussuriensis)のべ267個体のコウモリ類を捕獲,あるいは拾得した.これらのうち,クロアカコウモリは38年ぶりに生息が確認された.
著者
佐々木 尚之 毛塚 和宏 斉藤 知洋 宍戸 邦章
出版者
津田塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2023-04-01

人々のライフスタイルや価値観の変容により、社会調査をめぐる環境は著しく悪化した。本研究では、無作為抽出した対象者に対して、オンライン調査または郵送調査、配偶者票の有無をそれぞれランダムに割り当てることにより、調査モードならびに配偶者票の有無が回答に与える影響を分析する。ICTの活用を代表とする今後の社会調査の可能性を検証し、新たな調査手法導入の是非、導入にあたっての課題、状況に適した調査手法の有無を解明することを目的とする。
著者
延廣 竜彦 佐々木 尚三
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.130, 2019

<p>上川地方南部の南富良野町に位置する人工林流域において、グラップルとレーキブレードを組み合わせた林業用機械を用いた地がき処理を2015年7月に行った。地がきは筋状にササ類の根系と表層土壌を剥ぎ取った(地がき帯)。剥ぎ取った土壌は地がき筋間(残し帯)にまとめ置いた。このような地がき斜面上に土砂受け箱を設置し、2015年8月から土砂発生量の観測を行った。同時に、流域末端の簡易堰堤において流量・土砂濃度を観測し、土砂流出量を求めた。土砂発生量は地がき帯、残し帯ともに地がき後2~3年で森林土壌と同程度まで低下した。これは地がき後に植生が回復し、同時に土壌表面が落葉等で覆われることによって土壌の浸食速度が大きく低下したためと考えられた。2015年の地がき直後には流量増加時に土砂濃度が大きく上昇するケースが認められたが、渓床が大きく浸食された2016年の台風時を除けば流量の増加に対する土砂濃度のピーク値は低下傾向にあり、結果として土砂流出量も大きく低下した。以上より、地がき後の土砂発生量・土砂流出量の低下傾向は植生回復の程度に影響を受けると考えられた。</p>
著者
延廣 竜彦 佐々木 尚三
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.128, 2017

<p>北海道内で最も植栽面積が大きいトドマツは主伐対象となる面積が今後拡大することが予想されており、増大する更新コストを低減することが求められている。本研究で対象とした車両系林業機械を用いて地がき作業を行う手法は更新初期コストを低減する面で有望であると考えられている一方、地がきを行うことによる表層土壌のかく乱やそれに伴う土砂移動、ならびに渓流を通じた下流域への土砂輸送などが懸念されている。しかしながら、このような大規模な地がき施工サイトにおける調査事例は少なく、地がきと土砂発生・土砂流出の関係については不明な点が多い。このため、北海道の上川南部地域のトドマツ人工林において、2015年にグラップルと特注のレーキブレードを組み合わせた林業用機械を用いて地がき作業を行い、地がき斜面からの土砂発生量および渓流からの土砂流出量について調査を行なった結果を報告する。</p>
著者
宮縁 育夫 杉山 真二 佐々木 尚子
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.119, no.1, pp.17-32, 2010-02-15 (Released:2010-05-21)
参考文献数
51
被引用文献数
10 11

Holocene environmental changes and vegetation history are constructed using phytolith and macroscopic-charcoal analyses of a 23-m-deep drilling core obtained at the Senchomuta marsh in Asodani Valley, northern part of Aso caldera, SW Japan. An intra-caldera lake existed in the Asodani Valley prior to approximately 9 cal ka (calibrated 14C age). Multiple large flood events occurred during the period 8.9-8.1 cal ka and emplaced thick sandy deposits in the valley basin. Thereafter, the center of the Asodani Valley (northern part of caldera floor) changed to swampy and fluvial environments. sasa (cool-temperature dwarf bamboo) grasslands and/or forests with understory sasa covered slopes of the Asodani Valley basin between 11 and 9 cal ka. sasa phytoliths significantly increased at ca. 7.3-6.5 cal ka, but thereafter decreased. Miscanthus (Japanese pampas grass) grasslands existed continuously on the slopes. Macroscopic-charcoal particles were abundant during the last 6000 years, and the peak (6.1 cal ka) amount of charcoal particles is consistent with that of Miscanthus phytoliths. This indicates that the existence of Miscanthus grassland might be related to fire events. Inside the Asodani Valley, Phragmites (reed) became established continuously along the shore of the intra-caldera lake (prior to ca. 9 cal ka) and in subsequent marshes. Gramineae phytoliths were detected predominately through all horizons of the drilling core, whereas a small amount of arboreal phytolith was observed at most horizons. We, therefore, believe that forests existed on steep slopes such as the caldera wall where human impacts were small, although sasa and Miscanthus grasslands were maintained by human activity outside Aso caldera.
著者
高原 光 深町 加津枝 大迫 敬義 小椋 純一 佐々木 尚子 佐野 淳之 大住 克博 林 竜馬 河野 樹一郎
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

堆積物中に残存している花粉や微小な炭(微粒炭)の分析から,特に過去1万年間には,火が植生景観に強く影響してきたことを解明した。特に1万~8千年前頃には火事が多発して,森林植生の構成に影響を及ぼした。また,過去3千年間には,農耕活動などに関連して火事が多発し,照葉樹林やスギ林などの自然植生はマツ林と落葉広葉樹林へと大きく変化した。火入れによって,ナラ類を中心とする落葉広葉樹林が成立する機構も解明できた。草原や里山景観の形成には,火入れが強く関連していることが明らかになった。
著者
佐々木 尚
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EID, 電子ディスプレイ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.353, pp.17-20, 2003-09-30

LCDのための視覚線形なガンマ補正の方法を提案する。この方法は自然でかつ正確なものであり、LCDの電気光学的特性のモデリングには区分的階調再現曲線モデルを利用し、視覚の光学感覚特性モデルとしてはDICOMグレースケールを利用する。