著者
曽ヶ端 克哉 水島 康博 松村 将之 川本 雅樹 野村 裕紀 秦 史壮 染谷 哲史 八十島 孝博 佐藤 卓 平田 公一
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.469-473, 2005-04-01
被引用文献数
3

症例は88歳の女性で, 発熱・食欲低下を主訴に受診し, 腹部CTにて虫垂周囲膿瘍と触診にて腹膜刺激症状を認めた.血液検査上, WBC 27,600/mm^3, CRP 34.8mg/dlと高度の炎症所見を伴っていたため虫垂穿孔による汎発性腹膜炎と診断し手術を行った.術中所見では子宮底部に穿孔を認め, 直腸癌が子宮に浸潤し左尿管・左卵巣を巻き込んでいた.膀胱への浸潤を認めなかったため直腸・子宮・左卵巣合併切除および人工肛門造設術を施行した.病理組織学的には, 直腸癌が子宮筋層に浸潤しているのを確認した.本症例は癌の浸潤により子宮内腔が汚染され, 癌の進行とともに子宮に機械的閉塞を生じ子宮留膿腫を引き起こし穿孔したまれな症例であった.高齢女性の汎発性腹膜炎に遭遇した場合, 子宮・付属器の疾患も十分に考慮しつつ骨盤腔を精査し手術に望むべきであると思われた.
著者
佐藤 卓己
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.230-235, 2012-06-01

デジタル・テクストとして物理的存在を欠いた電子ブックの普及は,「書物」の再定義をせまっている。しかし,電子ブック登場以前から,書物はすでに大きな変容を遂げてきている。本稿では比較メディア論の視点から,書物の変容を1920年代のラジオ放送開始,1930年代のペーパーバック革命において検討した。それは「書物のラジオ化/雑誌化」,すなわち「書物の広告媒体(メディア)化」の系譜である。こうした「書物のメディア化」の最終段階として,広告料収入で運営されるメディア企業,Googleによるライブラリープロジェクトが登場する。ウェブ2.0時代のコミュニケーション状況において「書物のデジタル化」がもたらす問題点を整理した上で,電子ブックを既存の書物のリテラシーに接合する必要性を指摘した。
著者
佐藤 卓己 佐藤 八寿子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

従来のテレビ論やテレビ史の大半は娯楽文化論か政治報道論であり、教育・教育とテレビの関係は「子どもとメディア暴力」や「メディア・リテラシー」に集中していた。本研究では「教養のメディア」としてテレビ放送の意義を再検討することをめざした。『テレビ的教養-一億総博知化の系譜』(NTT出版・2008年)などにおいて、NHK、民間放送、放送大学など諸組織ごとに分かれた既存の個別研究を統合する放送メディア教育研究の新しい枠組みを提示した。
著者
佐藤 卓
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.74, no.12, pp.869, 2019-12-05 (Released:2020-05-15)

追悼蔡安邦先生を偲んで
著者
佐藤 卓
出版者
日本中性子科学会
雑誌
波紋 (ISSN:1349046X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.13-15, 2020-02-10 (Released:2021-06-01)
参考文献数
3

In this short note, I first look back the days when the Hamon, a membership journal of the Japanese Society for Neutron Science, had launched. The neutron scattering activities of those days for solid state physics are summarized. Then, a comparison is made to current situation. By an extrapolation, near-future prospect for the neutron scattering community will be analyzed.
著者
糸井 重里 佐藤 卓
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネスassocie (ISSN:13472844)
巻号頁・発行日
vol.9, no.18, pp.80-82, 2010-11-02

編集部(以下、編) 1日1ページの「ほぼ日手帳」が世に浸透して10年。なぜ黒いウイークリーのビジネス手帳を出そうと思われたのですか。糸井重里(以下、糸) 僕らの知っている人は皆「ほぼ日手帳を使っています!」と言ってくれるので、ほぼ日手帳は手帳界の中心ぐらいの感覚でした。が、ある時、手帳市場全体のわずか0・39%しかないと知りまして。
著者
佐藤 卓也
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.149-154, 2018-06-30 (Released:2019-07-01)
参考文献数
8

自動車運転は現代生活において欠かすことのできないものである。高次脳機能障害者が社会復帰する場合, 自動車運転再開について適切な評価が必要である。運転に関する概念モデルとして Michon (1985) 及び渡邉 (2016) があるが, それに対応する高次脳機能として, 視空間認知, 視覚認知, 聴覚認知, 注意機能 (持続, 選択, 配分) , 遂行機能, 処理速度, 作業記憶, そして言語機能が挙げられる。運転評価は, オフロード評価として神経心理学的評価及びドライビングシミュレーター評価と, オンロード評価として自動車教習所での実車評価がある。自験例において, 神経心理学的評価について失語群 60 例 (運転再開可能群 44 例, 再開見送り群 16 例) と非失語群 84 例 (運転再開可能群 64 例, 再開見送り群 20 例) の 2 群で比較検討した。非失語群は, MMSE, 記号探し, 数唱, 語音整列で失語群よりも有意な結果であり, 失語群では負荷が多い可能性が示された。失語群を Goodglass ら (1971) のBoston diagnostic aphasia examination により重症度分類し比較検討すると, 区分 1-3 の群よりも区分 4 及び区分 5 の 2 群が運転再開可能群の割合が高く, MMSE, TMT-A 及び B, 数唱で有意に高い結果であった。言語処理の負荷がこれらの課題において不利となる可能性が考えられ, それは運転にも同様に不利に作用する可能性が示唆された。
著者
外川 佑 村山 拓也 佐藤 卓也 﨑村 陽子
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.599-608, 2017-12-15

要旨:本研究では,半側空間無視(以下,USN)軽度3症例の自動車運転評価結果を分析し,評価中の行動面の特徴に加え,運転再開につながる要因を見出すことを目的とした.全症例のBITがカットオフ値以上を示す一方で,シミュレータ検査や実車評価での車両位置偏位,車線左への脱輪,右方向への接触などの特徴が観察された.また,再評価で運転再開可能となった症例では,運転に関する自己認識の改善がみられ,さらに全般性注意機能の改善が方向性注意機能の低下を補完した可能性が示唆された.USN軽度例の自動車運転評価では,シミュレータ検査や実車を用いて,潜在化したUSN症状のみならず,全般性注意機能の低下や病識の問題にも着目すべきである.
著者
佐藤 卓己
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

流言蜚語がメディアを通じて世論形成に与えた影響に関する日本現代史を体系的に考察した。その成果が『考える人』に連載した「メディア流言の時代」全8回である。補論を加えて2017年に単行本化する予定である。また、メディア流言史の視点から2014年の「朝日新聞誤報問題」についても、論点整理を行った。「誤報事件の古層」(『図書』2014年12月号・岩波書店)や「誤報のパラダイム転換」(『Journalism』2015年3月号・朝日新聞社)である。理論的な総括は、「デジタル社会における〝歴史〟の効用」『岩波講座 現代 1―現代の現代性』(岩波書店・2015年)で行った。
著者
小熊 芳実 佐藤 卓也 佐藤 厚 今村 徹
出版者
日本神経心理学会
雑誌
神経心理学 (ISSN:09111085)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.248-259, 2016-09-25 (Released:2016-11-04)
参考文献数
24

【背景】疫学研究によって,頭部外傷はアルツハイマー病(AD)の危険因子であることが示されてきたが,頭部外傷の既往を有する進行性の認知症高齢者の臨床像はADとして非典型的である場合が少なくない.【目的】頭部外傷の既往と緩徐進行性の認知機能障害を有する患者の臨床的特徴を検討する.【対象】認知症専門外来で精査を完了した787症例の臨床データベースから,以下の条件をすべて満たす6症例を抽出した.①重大な外傷の既往が特定されている,②その際に頭部外傷があったことを示す所見または診断がある,③頭部外傷後,周囲が認知機能や精神・人格に関する後遺症に気づいていない,④頭部外傷後,家庭生活や職業における役割が保たれている,⑤頭部外傷よりも明らかに後に緩徐に発症し進行する認知機能障害が存在する,⑥頭部画像検査上での陳旧性の外傷性病変がみられる.【方法】6症例の認知機能障害と行動心理学的症候について診療録を元に回顧的に分析した.【結果】6症例中3症例で脱抑制,感情・情動の変化や常同行動などが見られ,前頭側頭型認知症(FTD)の臨床診断基準の中核的診断基準と支持的診断的特徴に一致する項目が多かった.しかし,近時記憶障害で発症し,構成障害や道順障害もみられており,原因疾患はADであると考えられた.他の3症例は高齢発症型のADの臨床像であった.【結果】頭部外傷の好発部位は前頭葉底面と側頭葉の前方から外側底面であるので,頭部外傷による脳予備能の減少はこれらの部位でより強いと考えられる.頭部外傷によって前頭葉症状の責任病巣となる部位の脳予備能が減少し,その後に発症したADの比較的初期から,近時記憶障害とともにFTD様の前頭葉症状が出現した可能性が考えられる.