著者
柳田 浩孝 倉橋 節也
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会誌 (ISSN:09187324)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.251-271, 2021-03-15 (Released:2021-03-30)
参考文献数
26

本研究の目的は,スタートアップ企業のパフォーマンスと彼らに対する外部支援の関連性について調査を行うことである.分析に際しては,2,897件(第1回調査時点)のスタートアップ企業から回答を得られたアンケート調査を用いた.分析手段としては,因果推論手法の1つである傾向スコアマッチングを採用した.まず外部支援とパフォーマンスを分類したうえで個々の支援ごとに効果を検証したところ,大半の支援ではスタートアップ企業のパフォーマンスを改善する因果効果を認めることができなかった.次に,一部の外部支援を採り上げ,その他支援との組み合わせ効果を検証したところ,非公的資金と公的資金支援の組み合わせで売上が有意に成長したなど新たな因果効果が確認された.これらの結果から,目指す自社の将来像に基づき,受け入れる外部支援やその組み合わせを慎重に模索していくことの有効性が示唆された.
著者
陳 俊百 倉鋪 圭太 大塚 真生 吉灘 裕
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集 2016 (ISSN:24243124)
巻号頁・発行日
pp.1A1-08a6, 2016 (Released:2017-06-19)
被引用文献数
1 1

Autonomous mobile robots have been an active research recently. Although laser range finder based navigation is known to work well in limited environment, expanding 3D geometric maps used in those methods to worldwide requires great effort. The same is true of maintaining them up-to-date. For this reason, we develop a visual navigation method using a topological map to reduce prior information and enhance scalability of the map. Topological maps only contain information about impressive places (i.e. intersections) and their linkage with roads. In the topological approach, the robot conducts three primal tasks: 1) road following between impressive places, 2) recognizing impressive places, and 3) taking action at impressive places (e. g., road selection). This paper proposes a visual place recognition method based on GIST descriptor and Support Vector Machine. The proposed method is evaluated at 13 point in outdoor walkways under several situations. As the result, the proposed method could identify all of 13 recognition points.
著者
笹倉 秀夫
出版者
日本法哲学会
雑誌
法哲学年報 (ISSN:03872890)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.128-135, 2008 (Released:2021-03-31)

This comment, firstly, summarizes the nine presentations: Six presenters analyzed legal thinkers who founded the modern way of thinking, while other three analyzed legal thinkers critical of modernity. All nine speakers, however, share a common image of modernity in legal ideas; They presuppose independent individuals who form social institutions based on their rational calculation. Secondly, this comment argues who the first typical modern social thinkers should be ; From this perspective, the line Hobbes - Mandeville - Adam Smith - Hume - Bentham is most important, because they all constructed social theory based upon self-love, which had been rejected since the Greek Antiquity. Thirdly, this comment argues that we should also value the Machiavel lian Humanism, whose pluralistic-dialectical way of thinking had been an important counterpart to the Cartesian-Hobbesian scientific modernity. Lastly, this comment argues that we should evaluate the pre-modern traditions that contributed to the formation of modern social thinking. In order to make this point clear, this comment traces the history of the idea of liberty since the Greek Antiquity, analyzing how pre-modern liberties (the Greco-Roman liberty, the Christian freedom, the liberties of the Middle-Ages) underlie the modern liberty.
著者
川辺 芳子 田中 茂 永井 英明 鈴木 純子 田村 厚久 長山 直弘 赤川 志のぶ 町田 和子 倉島 篤行 四元 秀毅
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR TB AND NTM
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.443-448, 2004-07-15 (Released:2011-05-24)
参考文献数
12
被引用文献数
1

[目的] 防じんマスクの密着性の評価に使用されているマスクフィッティングテスターを用いてN95微粒子用マスク (N95マスク) の顔面への密着性の定量的評価を行うことの妥当性を検討することと, N95マスクの装着状況およびマスクの選択と使用方法の指導の重要性を明らかにすることを目的とする。 [対象] 当院に勤務する職員133名で, 男性29名, 女性104名, 常時N95マスクを使用している者は46名, 毎日は使用していない者87名であった。 [方法] 労研式マスクフィッティングテスターMT-02型TMを用いてマスクの漏れ率を測定し, 10%以下を許容範囲とした。基準に達しない場合は装着方法を指導し, それでも達しない場合はマスクの種類を変更した。 [結果] 1回目で漏れ率が10%以下であったのは87名 (65%) であった。10%を超えた46名のうち40名は指導やマスクの変更により10%以下になったが, 最終的に6名は達しなかった。マスクの選択, 鼻の部分の密着性, ゴムひもの使用方法が問題であった。 [結論] マスクフィッティングテスターはN95マスクの顔面への密着性の定量的評価に有用であり, 顔に合ったマスクの選択と日常的な指導点検, 3種類以上のマスクを準備しておくことが重要であることが明らかになった。
著者
戸倉 夏木 金子 弘真 伊藤 正朗 名波 竜規 本田 亮一 渡邊 正志 寺本 龍生
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.522-527, 2007 (Released:2011-06-08)
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

癌終末期の消化管閉塞による悪心, 嘔吐, 腹部膨満感は患者のquality of lifeを損なう. オクトレオチドは, これらの症状を緩和すると報告されている. 2004年10月にオクトレオチドが保険適応となり一般病棟でも消化管閉塞患者に使用可能となった. 我々は2005年5月から2006年3月までに, 癌終末期消化管閉塞患者7例にオクトレオチドを使用し良好な結果を得た. 平均年齢は67.3±11.2歳, 男性4例, 女性3例で, 胃癌3例, S状結腸癌, 上行結腸癌, 膵臓癌, 原発不明癌が各1例であった. 悪心, 嘔吐, 腹部膨満感はJCOG toxicity scaleでgradeが全例低下し, 5例は経口摂取が可能となった. オクトレオチド投与後, 全例経鼻胃管を挿入することはなく, 輸液も減量することができた. 我々消化器外科医もオクトレオチドを手術適応のない癌終末期消化管閉塞患者の第1選択薬として考えるべきである.
著者
板倉 有紀 伊藤 和恵 佐藤 美智子 佐藤 はま子 大田 秀隆
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.151-161, 2019-08-30 (Released:2021-02-26)
参考文献数
14

「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」では認知症高齢者等にやさしい地域づくりが目指されている.本稿では,認知症啓発・予防および認知症当事者支援が行われる秋田県羽後町の事例を取り挙げる.「若竹元気くらぶ」と「うごまちキャラバンメイト・認知症サポーター協会」という二つのグループの認知症に関する活動が成立する背景要因を検討する.特に「認知症予防」という考え方が,どのように働いているかに焦点化する.認知症予防の取り組みは認知症当事者を結果的に排除するという議論がなされてきたためである.「若竹元気くらぶ」は,認知症予防のための活動として始まったが認知症当事者支援の場にもなっている.「うごまちキャラバンメイト・認知症サポーター協会」は「若竹元気くらぶ」から独立して結成され,当事者支援のための活動として始まったが認知症予防に関心のある会員を取り入れ活動を継続している.いずれの活動においても保健福祉に関する専門知識を持つ行政職員や住民が活動に深く関与している.地域社会において認知症予防という考え方は,認知症の当事者の参加の機会にもなりうる.当事者の参加のためには専門職の関わりかたが重要である.
著者
板倉 有紀
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.17-29, 2013-07-19 (Released:2014-08-31)
参考文献数
32
被引用文献数
2

本稿では,津波被災地における支援・ケアの持続可能性について「多様なニーズ」と保健師職能という側面から考察し,災害時の保健師職能の可能性を提起することを目的とする.被災から2年を経て一部の津波被災地では,保健師人員不足が危惧され保健師の増員がおこなわれている.長期化する復興過程における被害やニーズは,事前にあらかじめ特定される/特定されないものを含めて多様であり,長期的で持続可能な「生活支援」を含めた支援とケア体制が地域社会において今日的な課題となる.本稿はこの「ニーズの多様性」の事例を理論的には災害研究における「ヴァルネラビリティ」の議論に関する問題として位置づけた上で,経験的には「ニーズの多様性」への対処・発見としての災害時の保健師の活動の意義を考察する.保健師の活動は健康面での支援・ケアだけではなく,多様なニーズを発見しそれに対処しうるものとして実践的な可能性を持つことを示したい.災害時に活かされうる保健師職能は平常時からの地区担当制や戸別家庭訪問といった保健師の活動と連続性があると考えられる.災害時/平常時の保健師の活動を維持していくためには課題もあり,効果的な派遣体制や平常時からの業務配置,保健師職能の世代間の継承性についてさらなる議論の余地が残る.
著者
長倉 誠一
出版者
日本シェリング協会
雑誌
シェリング年報 (ISSN:09194622)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.60, 2018 (Released:2020-03-21)

Im Wesentlichen kann man zwischen beiden drei Gemeinsamkeiten feststellen: 1. Die Vereinigung zwischen dem Erhabenen und dem Schönen bildet die Schönheit im strengen Sinne aus, weshalb das Erhabene vom Schönen durchdrungen sein kann; 2. Die künstliche Schönheit setzt die Natur voraus; 3. Spinozismus. Trotz dieser Gemeinsamkeiten muss man auch auf ihre Unterschiede hinweisen. Nach Schillers Definition ist die Schönheit die Freiheit in der Erscheinung, d.h. Schillers Freiheit besteht in der Sinnenwelt. Dagegen besteht Schellings Freiheit in der intelligiblen Welt, weil seine Freiheit die vom Absoluten ist.
著者
倉地 真太郎
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.143-162, 2014 (Released:2021-10-26)
参考文献数
33

本稿の目的は,北欧諸国の税制改革に及ぼす北欧協力関係の影響を明らかにすることである。1980年代後半以降,北欧以外の先進諸国が包括的所得税を追求するなか,北欧諸国は二元的所得税を連鎖的に導入していった。二元的所得税は経済のグローバル化に対抗する所得税類型であるといわれている。したがって,この課税方式の波及プロセスの分析は,高い所得税収を有する北欧諸国税制がどのようにして共通する特徴を持ったのかを明らかにすると考えられる。そこで本稿では北欧諸国の協力関係に着目しながら,デンマークとスウェーデン間で二元的所得税が波及するプロセスを分析した。その結果,二元的所得税の波及には,北欧諸国の政策担当者や専門家が制度を相互参照したことが影響を及ぼしていたことが分かった。
著者
赤井 伸郎 倉本 宜史
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.199-223, 2014 (Released:2021-10-26)
参考文献数
11

本稿は,将来の港湾の整備・運営の在り方を考えるうえで欠かせない視点として,港湾連携の実態を把握するため,これまでになされた港湾投資のパネル・データから,港湾間競争とも言える国内の港湾同士の相互依存関係の実態を検証するものである。また本稿は,現状把握や分析の工夫により,これまで行われてきた港湾政策を,港湾間の競争の観点(国内の港湾同士の相互依存関係)から,その実態を明らかにする点で意義が高いと言えよう。分析の結果,港湾間で競争がなされてきたこと,また,その競争に影響をもたらす参照先や港湾規模によっては,競争の程度が異なることも見出された。国内の港湾間に競争が存在するという,この結果は,連携の必要性を示唆しており,連携に向けては,港湾間の相互参照先を考慮したうえで,補助政策を含めた,より一層の国家戦略が必要であることを示唆していると言えよう。
著者
金坂 成通 倉本 宜史 赤井 伸郎
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.160-183, 2007 (Released:2022-07-15)
参考文献数
22

現在,公営交通事業において過剰投資や非効率経営による問題点が指摘されている。今後は,民間同様の経営効率性を持って,民営化などの組織形態の変更も含めた改革が求められている。 本稿では,このような状況にある公営交通事業の中でもバス事業と地下鉄事業に対し,平成11年度から平成16年度までの年度間におけるマルムクイスト生産性変化指数を計測した。計測結果から,年度ごとに公営バス事業,地下鉄事業ともに各都市のマルムクイスト生産性変化指数にばらつきがあることがわかった。そして,マルムクイスト生産性変化指数の程度に影響を与えている要因を実証分析において検討した結果,公営バス事業の生産性の変化には,補助金が生産性変化指数を低下させる可能性,また経営基盤強化のための経営計画の実施が効果的である可能性が実証分析により示唆された。また,公営地下鉄事業については委託の促進が生産性変化に効果的である可能性が示唆された。
著者
倉山満著
出版者
扶桑社
巻号頁・発行日
2017
著者
倉地 真太郎
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.53-63, 2021 (Released:2022-07-03)

本研究は、デンマークにおけるコロナ下のレジリエンス(危機時の行政・政府の能力や回復力)を、財政と財政をめぐる政治的合意システムの観点から検討することを目的とする。多くの先進諸国はコロナ対策として、類を見ない規模の財政措置を実施してきた。本稿で取り上げるデンマークは一時的な現金給付や付加価値税減税を実施するのではなく、所得保障制度を活用しつつ、政労使の合意により賃金補償を行うなど、既存のセーフティネットを利用・充実させることで雇用を維持している。その結果もあり、政府の対応は有権者から高い評価を得ている。 地方財政に目をむけると、デンマークでは毎年度行う地方財政計画の政府間合意によって地方政府にミクロレベルでの財源保障を行うことができている。また、これらの措置や対策が比較的早いスピードで、労働組合全国連合や地方政府代表組織を巻き込んだ緊密なインフォーマルな協力関係のもとで統合的な意思決定を行ったことも特徴的である。