著者
加藤 健一
出版者
松江工業高等専門学校
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

システム自身の状態に依存してそのシステムのタイムラグ,すなわちむだ時間が変動する状態依存むだ時間系に焦点を当て,その安定性解析法・制御系設計法を構築することを目的に検討を行った.状態依存むだ時間系の一つである伝播信号の跳ね返りを利用して自己の位置制御を行う一種の自己位置制御系を対象にとり,その状態推定が,離散時間の非線形状態方程式としての近似とオブザーバの拡張設計によって精密に行えることをシミュレーションによって確認した.
著者
加藤 勇気 小山 総市朗 平子 誠也 本谷 郁雄 田辺 茂雄 櫻井 宏明 金田 嘉清
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第28回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.86, 2012 (Released:2013-01-10)

【はじめに】 動的バランス能力低下を引き起こす要因として、足底感覚の低下が報告されている。その機序の一つとしては、機械的受容器の非活性化が示唆されている。臨床では、機械的受容器の賦活にタオルギャザーや青竹踏みが用いられている。しかし、刺激量が定量化できない事、随意運動が不十分な患者では施行できない事が問題となっている。近年、経皮的電気刺激(transcutaneous electrical stimulation以下TES)を用いた機械的受容器の賦活が報告され始めている。本手法は、刺激量が定量化でき、随意運動が不十分な患者でも施行できる利点がある。過去報告では、下腿筋群に対する運動閾値上のTESによって、足底感覚と動的バランス能力の改善を認めている。しかし、感覚鈍麻を認める患者においては、可能な限り弱い強度での電気刺激が望ましい。本研究では、足底に対する運動閾値下のTESによって動的バランス能力が向上するか検討した。【方法】 対象は健常成人17名(男15名、女3名、平均年齢24.6±3.2歳)とし、10名をTES群、7名をコントロール群に分類した。TES装置はKR-70(OG技研)を用いた。電極には長方形電極(8㎝×5㎝)を使用し、足底、両側の中足骨部に陰極、踵部に陽極を貼付した。TESは周波数100Hz、パルス幅200us、運動閾値の90%の強度で10分間連続して行った。コントロール群は10分間安静を保持させた。動的バランス能力の評価にはFunctional Reach Test(FRT)を用いた。FRTの開始姿勢は、足部を揃え上肢を肩関節90°屈曲、肘関節伸展回内位、手関節中間位とした。対象者には指先の高さを変えない事、踵を拳上しない事を指示し、最大前方リーチを行わせた。測定は2回行い、その平均値を算出した。統計学的解析は、各群の介入前後の比較に対応のあるt検定を用いた。本研究の実施手順および内容はヘルシンキ宣言に則り当院倫理委員会の承諾を得た。対象者には、評価手順、意義、危険性、利益や不利益、プライバシー管理、目的を説明し書面で同意を得た。【結果】 TES群は介入前FRT 34.6±3.2㎝、介入後36.9±3.2㎝と有意な向上を認めた。一方で、コントロール群は介入前34.3±1.9㎝、介入後34.6±2.0㎝と有意差は認められなかった。【考察】 足底に対する運動閾値下のTESは、動的バランス能力を向上させた。過去の報告で用いられた下腿筋群に対する運動閾値上のTESの作用機序としては、筋ポンプ作用によって末梢循環が改善され、機械的受容器が賦活されたと示唆されている。したがって、本研究における運動閾値下のTESの作用機序は異なるものであると考えらえる。運動閾値下のTESは、刺激部位の機械的受容器や上位中枢神経系の賦活が報告されている。機械的受容器の感受性改善は、足底内での細かな重心位置把握を可能とし、上位中枢神経系の賦活は、脊髄反射回路の抑制によって協調的な動作を可能にすると考える。今後、足底に対する運動閾値下のTESと重心動揺、上位神経系との関係を明らかにすることで、動的バランス能力向上の機序がより明確になると考える。【まとめ】 本研究によって足底に対する運動閾値下のTESが動的バランス能力を向上させることが示唆された。
著者
和泉 諭 栗山 大 三浦 祐太朗 安田 尚史 四倉 涼 加藤 靖 高橋 薫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SS, ソフトウェアサイエンス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.523, pp.19-24, 2007-01-26

高血圧や肥満といった生活習慣病の人々が増加している現代において,その予防策が求められている.本研究では,健康に関するオントロジを導入し,生活習慣病改善を目指す人々を支援するシステムの構築を行う.このシステムでは,センサデバイスやモバイル端末を利用し,ユーザの身体データの取得や管理を行い,さらに,取得した身体データを利用し,健康に関するドメインオントロジに基づいて推論を行うことで,ユーザに適した健康アドバイスを導出する.本稿では,支援システムの設計と実装について述べる.
著者
加藤 寛
出版者
公共選択学会
雑誌
公共選択の研究 (ISSN:02869624)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.28, pp.1-2, 1997-04-15 (Released:2010-10-14)
著者
村井 祐一 桝田 修一郎 加藤 高清 諸角 建 野田 健一
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.44, pp.111-112, 1992-02-24

移動物体を発見したり,動きのパターンや形状の時間的変化を調べるために,テレビカメラにより速続して撮られた画像を高速に解析する技術が進んできている.この技術を利用して野球のピッチャーが投げるボール像を2台のテレビカメラで観測し,ボール位置変化の精密計測,ボールのバッター平面到達位置の予測,ロボット捕球,ロボット打球等の高度処理を行うシステムの構築が可能と考えられるようになった.また飛球の速度計測や,ストライク・ボールの判定などは既に実用化されているが,本研究ではより高度な機能を持つ詳細飛行軌跡の観測システムをステレオビジョン方式を基に構築し,最終的にはロボットキャッチャーに捕球させたり,ロボットバッターに打球させることをめざしている.
著者
加藤 清己
出版者
愛知県立瀬戸西高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

1 研究の目的・意義子ども達の理系離れが叫ばれて久しい。高等学校においても、文理の類型選択に理科や数学を不得意とするおいて多くの生徒が理類型をさけ、文類型を選択する傾向が強い。本校では、文類型で2年、3年で合計5単位生物の授業を行っている。3年生の私立文系の類型では例年時間に余裕があり、実験観察の授業を積極的に取り込んでいるが、必ずしも体系化された授業とはなっていない。そこで、生物の不思議のテーマの基に体系的に計画的に実験を行う。それぞれの実験に際してアンケートを実施する。アンケートで生徒の意識調査をすると同時に、アンケートの質問によって自分の経験を他人に伝える意識を持たせるようにする。2 研究方法・計画次の項目に分け、実験を実施した。(1) 植物の生殖の不思議(1)弾子の観察(2)タンポポの綿毛の観察(3)群落遷移と種子の大きさ(2) 自分の体の不思議(1)スリップ現象(2)網膜(3)立体視の原理(4)反応の速さと心理(3) アントシアニンの秘密(1)アジサイ、紫蘇の葉の色素(2)赤キャベツで焼きそば(3)紫蘇の葉でペークロ(4) 日本人の主食米の秘密(1)古代米の観察(2)発芽玄米のしくみ(3)グルテンの作成(5) 生物の体の不思議(1)ウミホタルの発光(2)折り紙で脊椎動物(3)犬の折り紙3 研究の成果(1) 実験考察の集約(アンケートの実施)(1)興味の有無(2)知人へ話すか(3)自分の子どもに話すか についてアンケート調査した。(2) 集計結果(1) 興味の有無 ほとんどの生徒が実施した実験興味を持った。定期考査の問に対しても正答率が高く、成績がよい、悪いには相関がなかった。(2) 知人へ話すかと自分の子供に話すかは同じ傾向が見られた。まだ実験を行っていないクラスの生徒も、友達からの情報で実験内容を理解しており、興味のある話題については情報伝達が早かった。<アンケート結果>No.1赤キャベツで焼きそばNo.2スリップ現象No.3ウミホタルの発光(3) 自分の子供に伝えたい実験(家でやってみた)<アンケート結果>No.1赤キャベツで焼きそばNo.2スリップ現象No.3犬の折り紙ウミホタルの実験を家で見せたいからどのようにして入手方法の質問が多かったが、高価で、かつ入手方法が特殊なため、残念がる生徒が多かった。
著者
小川 佳宏 加藤 茂明 伊藤 信行
出版者
京都大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
2001

【背景・目的】Fibroblast growth factor10(FGF10)は胎生期において四肢や肺、脂肪組織の形成に必須の増殖因子であるが、成体においては主に脂肪組織において発現が認められ、成体の脂肪組織においてFGF10が重要な役割を担っている可能性が示唆される。一方、FGF10ホモ欠損マウスは肺の形成障害により出生後早期に死亡する。本研究では肥満および肥満合併症の発症におけるFGF10の病態生理的意義を検討するために、FGF10ヘテロ欠損マウス(FGF10+/-)を用いて解析を行った。【方法・結果】標準食飼育下においてFGF10+/-と野生型マウス(FGF10+/+)の体重に有意差は認められなかった。しかしながら、10週齢より高脂肪食負荷を行ったところ両者において体重増加を認め、負荷後4週よりFGF10+/+はFGF10+/-と比較して有意に高体重を示した。負荷後8週目のFGF10+/-(31.5±2.7g)とFGF10+/+(41.8±2.5g)における糖代謝を検討したところ、血糖値に有意差は認められなかったが、血中インスリン濃度はFGF10+/-で低値を示した。糖負荷試験およびインスリン負荷試験においてFGF10+/+と比較しFGF10+/-で良好な耐糖能およびインスリン感受性が認められた。また負荷後8週目におけるFGF10+/-の脂肪組織重量はFGF10+/+の約1/2に減少していたが、組織学的には脂肪細胞の大きさに明らかな差は認められず、FGF10+/-とFGF10+/+の脂肪組織重量の差は脂肪細胞の数の差によると考えられた。【考察】FGF10は高脂肪食による脂肪細胞の増殖を促進し、高脂肪食負荷による肥満に伴う糖尿病発症を促進する可能性が示唆された。
著者
柳澤 純 加藤 茂明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

脂溶性ホルモンであるエストロゲンは、エストロゲン標的組織の細胞内に存在するエストロゲンレセプターに結合する。エストロゲンの結合してエストロゲンレセプター(ER)は、DNA上の特異的な配列に結合し、標的遺伝子の転写を制御することにより、様々な生理作用を現わす。ERの転写制御には、リガンド依存的に結合する一群の蛋白質複合体が必須であることが知られている。これらは、転写を活性化する転写活性化因子複合体と転写を抑制する転写抑制因子複合体に分けられる。われわれは、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ融合ER蛋白質を用いたカラムを作製し、新規ER結合蛋白質複合体を精製した。質量分析による同定により、この蛋白質複合体はTRRAP, GCN5,TAFなどを含み、TRRAPを介して、エストロゲンの結合したERに結合することが明らかとなった。In vitro転写系において、この蛋白質複合体は、ERの転写活性を促進することから、転写活性化因子複合体として機能するものと考えられた。TRRAPのアンチセンスmRNAはERの転写活性を著しく阻害することから、この複合体がERの転写活性化において重要な役割を担っているものと考えられた。さらに、乳がん由来の細胞株であるMCF7に、このアンチセンスRNAを恒常的に発現させたところ、エストロゲン依存的な乳がん細胞増殖が顕著に抑制された。この抑制はER結合領域を持つが複合体を形成しないTRRAPドミナントネガティブ体を細胞内に導入した場合にも観察されることから、TRRAP/GCN5複合体はエストロゲン依存的な乳がんの増殖に関与している可能性が示された。今後さらに解析を進めることにより、エストロゲン依存的な乳がんの増殖機構が明らかになり、新たな抗がん剤の開発に結びつくのではないかと期待している。
著者
柳澤 純 加藤 茂明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

核内ステロイドレセプターの一つであるPPAR(パーオキシソーム増殖剤応答レセプター)α、γ、δは脂質代謝、脂肪細胞分化誘導、血管内皮での泡沫細胞形成等の多彩かつ特異的な生理作用を司っている。PPARはリガンド誘導性転写制御因子として働き、リガンドのシグナルに応じて標的遺伝子の発現を転写レベルで調節する。この際、PPARはRXR(レチノイドXレセプター)とヘテロダイマーを形成し、PPAR、RXR各々のリガンド依存的に転写共役因子群を獲得し、基本転写装置と共に転写を開始する。このようなPPAR機能発現には、リガンドの結合が必須であるが、内因性PPARリガンドは複数存在することが知られている。そのためPPARによる多様な生理作用は、多様なリガンド各々固有の作用が担うと予想されている。その分子メカニズムとして、様々なPPARリガンドが転写共役因子群を選択的に使い分けることで、リガンド固有の作用をもたらしている可能性が考えられる。また、一般に既知核内レセプターリガンドの生合成はリガンド産生酵素により厳密に制御されているため、PPARリガンド産生酵素には未同定酵素の存在が考えられる。そこで、本研究ではPPARリガンド群の特異的生理作用をもたらす分子メカニズムの解明を目指し、I.リガンドによる選択的なPPARgと転写共役因子の相互作用、II.PPAR(a,g)リガンドの同定を目指した新規リガンド産生酵素の検索、の2点を検討した。
著者
加藤 茂明
出版者
東京農業大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

ステロイド・甲状腺ホルモン、ビタミンA・D核内受容体群は、一つの遺伝子スーパーファミリーを形成するため、互いに構造・機能が類似している。これら核内受容体群は、そのリガンドの知られたものの他に、リガンド不明のいわゆるオ-ファン受容体の存在が知られている。オ-ファン受容体の中には、未だ同定されていない脂溶性生理活性物質がリガンドとして働く可能性が考えられており、これら新規脂溶性生理活性物質が同定されると、オ-ファン受容体を介する新たな情報伝達機構が明らかにされるばかりでなく、既存の情報伝達系への関与が明確になると考えられている。本研究では、特に生理活性体の他、代謝誘導体の多いビタミンA、Dに着目し、これら既知の核内受容体cDNAを用い、関連受容体の検索を、ラット各臓器由来のcDNAライブラリーより検索した。その結果、数種のオ-ファン受容体を見出したほか、新たなビタミンD受容体アイソフォーム(VDR1)を見出した。VDR1は野性型(VDR0)に対し、その機能を負に制御するdominat negative型のアイソフォームであることが明らかになった。更にラットVDR遺伝子構造を解析した結果VDR1は、イントロン8がalternative splicingの際、残された(intron retentin)結果生じるアイソフォームであることが証明できた。現在までに、VDRにはアイソフォームの報告はなく、ビタミンDに多くの活性体が存在する事を考えあわせると、VDR1は、これらの一つをリガンドとする可能性が予想された。また同様の手法を用い、今回取得されたオ-ファン受容体の性状を解析している。
著者
加藤 茂明
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

現在のところmRNA分解制御の分子メカニズム自体が不明な点が多く、その制御メカニズムを明らかにすることはステロイドホルモン依存的mRNA安定化(不安定化)制御機構解明に向けて必須の課題である。そこで本年度は特に以下の3点に焦点を当て検討した。1)AUUUA配列結合タンパクの機能解析:新規AUUUA配列結合因子(AUF2)のmRNA分解における役割をin vitro mRNA分解活性測定系に導入し検討した。本システムの概要は血清刺激プロモーターに繋いだレポーター遺伝子(β-globin遺伝子)をNIH3T3細胞に導入し、血清刺激により遺伝子産物を一過的に誘導した後、そのmRNAの残存量をノザンブロットにて測定することにより半減期を算出した。2)AUUUA配列結合タンパク共役因子群の検索:AUUUA 配列上に形成される複合体の構成因子を明らかにする目的で酵母を用いたTwo-hybridシステムを導入し、AUF2をbaitにしてヒト脳由来cDNAライブラリーからTwo-hybridスクリーニングによりAUF2とタンパク-タンパク相互作用する共役因子を検索した。3)AUUUA配列結合タンパク共約因子の機能解析:(2)のTwo-hybridスクリーニングによって得られたAUF2結合因子をコードするcDNA断片を用い、ヒト脳由来 cDNAライブラリーから全長cDNAを取得した。得られた全長cDNAを(1)のin vitro mRNA分解活性測定系に導入し、因子の存在下あるいは非存在下においてレポーターmRNAの半減期を測定することによりmRNA分解制御に対するその因子の関与を検討した。更に因子の存在下においてステロイドホルモン存在下および非存在下でも同様にレポーターmRNAの半減期を測定し、ステロイドホルモンの影響も併せて検討した。
著者
加藤 茂明 高田 伊知郎 山本 陽子 大竹 史明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本年度、研究実施計画にある2. 細胞及び軟骨細胞での各種核内受容体群の機能については、各種骨細胞種特異的受容体遺伝子欠損動物を作製、その骨変異を引き続き解析した。昨年度、骨芽細胞特異的なエストロゲン受容体欠損マウスの解析と骨細胞特異的な核内受容体欠損マウスを作出したが、骨芽細胞特異的なエストロゲン受容体欠損マウスに関しては、雄が骨形成と骨吸収が低下することによる低回転型の骨量減少を示し、この表現型についてさらなる詳細な解析を引き続き行なった。具体的には、昨年度骨芽細胞におけるエストロゲン受容体の骨量維持機構の分子メカニズムを明らかにする目的で、骨芽細胞特異的エストロゲン受容体ノックアウトマウスと対照群でマイクロアレイ解析を行ない、その結果発現変動を示した遺伝子がいくつか得られので、これら候補の遺伝子群の発現を定量的PCRなどにより確認し、有意に変動する遺伝子を同定した。また新たな骨細胞特異的なCreトランスジェニックマウス作出に関して昨年度は、Dmplプロモーターを用いたCreトランスジェニックマウスのキメラマウスの作出に成功し、1個体のキメラマウスを取得した。現在得られたキメラマウスと野生型マウスの交配を行い、染色体レベルでの相同組換えを確認している。さらに研究実施計画にある1. 破骨細胞内のゲノムネットワークの解析と3. 細胞及び軟骨細胞特異的な核内受容体転写共役因子群の生化学的同定については、成熟破骨細胞の機能においては性ホルモン受容体が極めて重要な役割を果たすことが分かりつつあるので、性ホルモン受容体群に結合する複合体群を生化学的に同定しその分子機構をさらに解析するために、タグ付きの性ホルモン受容体の発現ベクターを作製し、安定細胞発現株の作製を行っている。
著者
藤井 義明 半田 宏 加藤 茂明 石井 俊輔 鍋嶋 陽一 山本 雅之 岩渕 雅樹 梅園 和彦
出版者
東北大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1997

平成13年度の取りまとめの期間を除く実質4年間に発表された論文数は900報になり、一論文当たりの平均インパクト係数は8.3で、数値の上からも本研究は遺伝子発現の研究領域に実質的な貢献を果たしたものと考えられる。研究はA)転写因子間の相互作用と機能発現の分子機構。B)転写因子の標的遺伝子及び生物作用の個体レベルでの解析の2つの柱のもとに行われ、総括班はこれらの2つの研究の連絡、調整及び研究成果の発表等を行なった。主な研究成果は次の通りである。基本転写因子TFllH、TFllEなどの複合体のサブユニット構造をリコンビナントタンパク質より再構成により確立したこと。転写伸長反応にも正負の調節機構があり、その調節因子群を遺伝子クローニング法によって明らかにし、それらの作用機構を解明したこと。転写共役因子については新しい共役因子MBF1、UTF1を発見し、これまで癌遺伝子として知られていたSkiが抑制的な転写共役因子として働くことを示した。また広範な転写因子の共役因子として働くCBPについてはさらにGLl3、AhR/Arnt、HlF-12、lRF3などにも共役因子として働くことやβ-カテニンと結合してPML複合体に局在することやCBPとP53の相互作用をβ-カテキンが阻害して、P53の転写活性を抑制することを示した。転写因子と結合して、その活性あるいはタンパク質の濃度を調節する因子としてHSP90他にKeap1を発見し、Nrf2r転写因子の調節に働くこと、そのKOマウスを作り、機能を詳細に検討した。また、こと、幹細胞の末分化状態の維持に抑制性の転写因子Hes5、Hes3などが働いていること、多数の転写因子の構造と機能が遺伝子クローニング及び培養細胞での発現や遺伝子欠失動物の作製によって明らかにされた。
著者
加藤 茂明
出版者
東京農業大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

ステロイド・甲状腺ホルモン核内レセプター群はリガンド依存性転写制御因子であり、リガンドである脂容性ホルモン及び脂容性ビタミンの信号を遺伝情報に伝達する。このような核内レセプターを介する情報伝達系は組織の分化・増殖に代表される高次生命現象の制御に中心的な役割を果たしている。従ってこれら核内レセプター群の共通する情報伝達経路や各レセプター固有の情報伝達経路間でのクロストークを明らかにすることは核内レセプターを介する情報伝達機構を知る上で必須の課題である。核内レセプター研究に標的遺伝子組換え技術が導入された結果、当初予想もされなかったレセプターの機能が浮き彫りにされるようになってきた。そこで当研究室ではVDR遺伝子欠失マウスを作製した。1)VDR遺伝子欠失マウスの作製 VDR遺伝子欠失ホモ接合個体を作製した。続いて常法に従い標的遺伝子のゲノム解析や発現量を解析している。またVDR欠失に伴い現われる骨組織や、腎臓での機能障害を調べる。また発生初期や胎児での骨形成について詳細な解析を加える。2)RXR-VDR2重欠失マウスの作製 RXR、VDRホモあるいはヘテロ結合個体を交配させることでRXR-VDR2重欠失マウスを作製する予定である。RXRβ,γ欠失マウスは既にフランス・ルイパスツール大・医・P. Chambon教授より供与された。
著者
武山 健一 加藤 茂明 高田 伊知郎 北川 浩史
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

申請者はポリグルタミン伸長異常タンパクによるSBMAモデルショウジョウバエを用いた神経変性誘導を指標とした(1)分子遺伝学的アプローチおよび(2)生化学的アプローチによる候補因子探索と、(3)その性状解析からクロマチン構造変換機能異常によるエピジェネティック制御破綻への情報基盤を構築した。(1)分子遺伝学的アプローチによる新規神経変性制御因子の探索SBMAモデルショウジョウバエのpolyQ-AR誘導性の個眼神経変性を指標として、神経変性の変動が観察された25系統を単離した。中でも神経変性を顕著に回復する遺伝子としてRbfの同定に成功し、RbfによるE2F-1転写活性化を破綻させている事を見出した(Suzuki et al.,投稿中)。(2)生化学的アプローチによる新規polyQ-AR相互作用因子の探索クロマチン画分からのpolyQ-ARタンパク複合体精製はトランスジェニックショウジョウバエ個眼より精製後、MALDI-TOF/MS法あるいはLC/MS法にて同定する。その結果、ヒストンシャペロンやelongation factor、RNA結合タンパク等を同定した。3 候補因子の性状解析とエピジェネティック制御情報基盤の構築(1,2)で同定した相互作用因子のクロマチン構造変換能をヒストン修飾や構造、クロマチン構造変換能に着目した生化学的解析を行った。具体的にはヒストンアセチル化、メチル化、ユビキチン化およびリン酸化assay、MNase assay、クロマチンsupercoiling assayやdisruption assayによりin vitro系を構築した。これに必須材料となるヒストン八量体およびDNAとのクロマチン再構築は、HeLa細胞核抽出液およびrecombinant系を両者で整えた。
著者
岡崎 具樹 加藤 茂明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

PTHrPおよびPTHrP遺伝子に存在する、負のビタミンD反応性配列nVDREを組み込んだレポーター遺伝子の細胞導入実験によって以下の結果を得た。1)クロマチン免疫沈降(ChIP)法を用いて、HDAC2がビタミンD存在下で特異的に、nVDREを含むプロモーター周囲のクロマチンに動員されるのに対しHDAC1はビタミンD非存在下でのみ動員された。2)ビタミンD存在下ではHDAC2だけでなく、VDRもまた、このクロマチン構造をとったプロモーター領域に動員され、この2者の選択的動員がビタミンDによるnVDRE-VDRを介する転写抑制の主役を担っていると考えられた。これらがヒストンのアセチル化、脱アセチル化を反映していることは、抗アセチル化ヒストンH3、および抗アセチル化ヒストンH4抗体、さらにHDACの特異的阻害剤のトリコスタチンAを用いて行ったChIP法で確認された。3)これらのChIP法の結果は、nVDREを元来持っている内因性のPTHrP遺伝子プロモーター領域でも、異なるプライマーを用いたPCRで確認された。3)さらに免疫共沈降法によって、VDRとHDAC2の両者はお互いに結合しその結合がビタミンD依存的に増強することを確認した。4)ヒト乳癌MCF7細胞にエストラジールを投与して種々の抗体およびnVDREを用いた同様のChIPアッセイを行ったところ、ビタミンD存在下はかりでなくE2存在下でもHDAC2がクロマチン-プロモーター領域に動員され、さらにE2存在下ではERも同様に動員されており、これらの動員はnVDREのDNA配列特異的であった。さらに抗アセチル化ヒストンH3、抗アセチル化ヒストンH4抗体、および抗HDAC1抗体によってこれらの抗体が認識する各蛋白は、ビタミンDの時と全く同様にE2存在下での動員が阻止された。以上よりER、VDRのそれぞれのリガンドによる転写抑制機構に共通のメカニズムがあることが示唆された。
著者
加藤 茂明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

ビタミンDはカルシウム代謝に中心的な役割を果たし、更に細胞分化・増殖、また癌化などにも深く関与することが知られている。同じビタミンであるビタミンAをリガンドとするレセプターには、RAR(α、β、γ)、RXR(α、β、γ)などがあり、リガンドに対し複数のレセプターが存在する。しかしながら、ビタミンDではそのレセプターはVDR1種のみが報告されており、数多く生体内に存在するビタミンD類緑体群を考えると、VDR1種のみでは十分その生理作用を説明することができない。本研究では、VDRと類似したオ-ファンレセプターを探す過程で見出したVDRアイソフォームVDR1の機能解析と、他のビタミンD類緑体との関連を探った。その結果、VDR1は本来のビタミンDレセプター(VDR0)mRNAのスプライシングによって生じるアイソフォームであり、いわゆるイントロンがスプライトアウトされないものであった。このイントロン中には終止コドンが存在するため、VDR1タンパクはC末端に存在するリガンド結合領域を大半失っており、活性型ビタミンD[1α、25-(OH)_2D_3]では結合せず、逆にVDR0の転写促進能を阻害するいわゆるドミナンドネガティブ型のVDRであることがわかった。そこで更にビタミンD関連化合物、また未然の類似体による転写促進能を調べたところ、いずれもVDR1による転写促進能を活性化することはできなかった。一方、VDR1の標的エンハンサー配列を各種ビタミンD応答配列を用い、VDR0に比較したところ、いずれも差異が認められず、同じ配列を認識すると考えられた。
著者
加藤 茂明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本研究では、標的組換え動物(いわゆるノックアウトマウス)などの分子生物学的手法を用いることで、今まで知られていなかったビタミンA、Dの作用を探ることを目的に以下の2点に焦点を当て、これらビタミンの遺伝情報を介した分子メカニズムの解明を試みた。1. 新たなビタミンA、D標的遺伝子の検索:ビタミンA、Dの広汎な生理作用から、無数の標的遺伝子群が存在すると予想されている。同定された標的遺伝子群のみでは、これらビタミンの生理作用を十分●説明できないのは明らかである。そこで上記のレセプター欠損マウスでは、ビタミンAあるいはビタミンDの標的遺伝子の発現が極端に変化していると予想されているため、この標的遺伝子群の発現の差に着目し、RT-PCRを利用したDiffential Display法を用いて標的遺伝子cDNAの単離・同定を試みた。更に得られたcDNA断片をプローブとして全長cDNAの取得を試みた。またクローン化したcDNAを用いコードするタンパクの機能をin vitro系で解析するとともに、当該遺伝子のノックアウトマウスを用いることで全動物での機能を検討した。2. ビタミンA、Dレセプター欠損マウスにおけるビタミンA、Dの代謝:ビタミンA、Dの生合成及びその代謝は複雑な制御を受け、生体には数多くの類縁体が存在する。これらの生合成・代謝の制御を行う当該酵素の性状は不明なものが多い。レセプター欠損マウスは究極のビタミン欠乏動物であるため、これら生合成・代謝酵素活性は大きく変動していると考えられる。そこでこれらのマウスに活性型または代謝型のビタミンを投与し、その生体内での動態を探った。また動態を経時的に迫ることで、各種酵素の性状を検討した。
著者
加藤 茂明 武山 健一 北川 浩史 高田 伊知郎 大竹 史明 武山 健一 北川 浩史 大竹 史明
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

乳癌、子宮内膜癌、卵巣癌などのホルモン依存性癌の治療薬として用いられている「選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)」は、組織特異的な転写制御能を発揮するがその分子機構は明らかではない。我々は、SERM依存的にエストロゲン受容体ERαに結合するタンパク質群の精製を試み、ブロモドメインを有するBRD4を同定した。BRD4はpositive transcription elongation factor b(P-TEFb)と共に転写伸長反応を促進する因子であることから、SERMによる転写制御は、転写伸長の促進/抑制による可能性が示唆された。
著者
加藤 茂明
出版者
東京農業大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

ステロイド、甲状腺、ビタミンA,Dなどの脂溶性生理活性物質をリガントとする核内レセプターは、ひとつの遺伝子スーパーファミリーを形成する。核内レセプターはリガンド依存性転写制御因子であることから、リガンドの信号を遺伝子情報に伝達する最も重要な分子である。したがって、新たな核内レセプターの同定や、未知リガンドの同定は、直ちに新しい情報伝達系の発見につながるため、新規核内レセプターやそのリガンドの検索は極めて有意義であると考えられる。我々は核内レセプタースーパーファミリー内で最も相同性の高い領域をプローブとして新規核内レセプターを種々の臓器由来のcDNAライブラリーを検索し、未だに報告のないタイプのビタミンDレセプターの同定に成功した。特に、ビタミンDレセプターの異なる分子種(VDRアイソフォーム)を同定した。そこで本研究では、VDRアイソフォームのビタミンD情報伝達機構における機能およびそのリガンドの同定に焦点を絞り、研究を進めた。このVDRアイソフォームは今まで知られていたVDR遺伝子のエキソン8と9の間のイントロンがそのままエキソンとして用いられているものであることを、既にVDRcDNA,VDRゲノム構造の解析から明らかにしている。また、このイントロンの挿入によりVDRアイソフォームタンパクは既知VDRのC末端側が欠落することを明らかにした。さらに、このVDRアイソフォームを動物細胞内発現ベクターに組み込み、既に我々が報告しているようなin vitro解析により、転写促進能を調べたところ、dominant negative typeのアイソフォームであることを明らかにした。また、大腸菌内発現にも組み込み、大量合成を行ない、各種ビタミンD類縁体との結合能を調べている。また、このアイソフォーム特異的なcDNAを用い、Northern blot解析を行ない。このアイソフォームmRNAの発現が数多くのビタミンD標的器官でみられた。