著者
古川 智史
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.88-105, 2010-06-30

本研究は,大阪市北区扇町周辺のクリエイター及び関連企業のネットワークを,「バズbuzz」と紐帯の強さの観点から検討することを目的として行った.クリエイターは,案件ごとに制作プロセス内の位置や外注先を柔軟に変えている.彼らの取引ネットワークの多くは,近畿圏という地理的範囲内で形成されている.特に,クリエイター同士の取引ネットワークは,クライアントとのそれに比べて濃密な意思疎通が必要であるため,相対的に狭い地理的範囲で形成されやすい.また,クリエイターは,リスクを回避するために既存の人脈を通じて新たな取引関係を形成することが多い.さらに,ネットワークを形成する契機は,その種類ごとに地理的な差異が存在する.一方,非取引ネットワークは,取引を前提としない対面接触の場を通じて醸成されるが,そうしたコミュニケーションを通じて,異分野のクリエイターとの協業や,暗黙知の共有,クリエイター間での相互触発,クリエイターに関する評価などが行われている.その一方で,非取引ネットワークは,クリエイター自身が評価され選別される場であるともいえる.クリエイターのネットワークは,「バズ」が有効に機能し,強い紐帯のみならず弱い紐帯を通じて取引関係を拡大しているといえる.したがって,クリエイターがネットワークを拡大する利点は大きく,これが扇町周辺にクリエイターを集中させる要因になっていると考えられる.
著者
山崎 勝弘 古川 知之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CPSY, コンピュータシステム
巻号頁・発行日
vol.94, no.384, pp.9-16, 1994-12-09
被引用文献数
2

過去の並列プログラムを極力再利用して並列プログラミングの負担を軽減させる方法について述べる。事例ベース推論は知識獲得の隘路を軽減させる手法として、裁判や故障診断などの実規模の問題に適用されてきた。本研究では並列プログラムの構造を解析して、その骨格を示すスケレトンを作成し、それに細部の肉付けを行って、並列プログラムを作成する手法について検討する。スケレントンにはタスク分割、同期、並列化手法など並列プログラムの最も重要な部分が含まれる。事例はスケレトン、プログラム本体、及びインデックスから成る。新たな問題に対して、類似したスケレトンを事例ベースから検索し、それに自動修正, 派生的類推による修正/ユーザによる修正を行って、並列プログラムを生成する。
著者
古川 亮 今井 正和 烏野 武
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.1054-1063, 1996-06-25
参考文献数
13
被引用文献数
20

連続画像から物体の運動を解析することは, 重要でかつ困難な問題であり, これに対して多くの研究がなされてきた. 本論文で提案するActive Tubesは, 非剛体物体の運動を解析するためのモデルの一つである. このモデルは, Kassらの提案したSnakesを時間軸に沿って重ねたものとみなすことができ, Snakesと同様のエネルギー最小化の手法を用いて時空間画像中の物体を抽出する. 当初, Active Tubesの収束アルゴリズムとして, Greedy Algorithmを用いていた. しかし, Greedy Algorithmはノイズなどの影響を受けやすいため, 新しいアルゴリズムとしてRandomized Greedy Algorithmを提案する. 提案されたアルゴリズムはGreedy Algorithmと同程度に高速である上に, ノイズに対してより頑健である.
著者
古川 誠一
巻号頁・発行日
1999

筑波大学博士 (農学) 学位論文・平成11年3月25日授与 (甲第2024号)
著者
久保田 彰 古川 まどか 藤田 芳史 八木 宏章
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.113, no.3, pp.101-109, 2010
被引用文献数
2 3

根治切除可能な進行頭頸部扁平上皮癌に対する化学放射線同時併用療法 (CRT) の毒性および効果に関連する因子を検討した. stage IIIとIVの115例に対する放射線の中央値は66Gy (58-70) で, 化学療法は5FUの1,000mg/m<SUP>2</SUP> を4日間の持続点滴とcisplatinの60mg/m<SUP>2</SUP> の2コース同時併用を行った. grade 3以上の粘膜炎はN0が13%でN1-2は59%と有意差を認めた. 治療の完遂率はN0が87%, N1-2が82%で有意差はなかった. 経過観察期間の中央値は42カ月 (5.8-91) で3年生存率 (OS) は66%, 3年progression free survival率 (PFS) は55%であった. OSで有意差を認めたのはstage IIIの86%とIVの57%, T0-2の78%とT3-4の62%, N0-1の83%とN2の53%, adjuvant chemotherapy (nedaplatin/UFT) ありの77%となしの50%, 舌の33%と中咽頭の77%であった. PFSで有意差を認めたのは, T0-2の72%とT3-4の49%, CRの77%とPRの53%, 舌の22%と下咽頭の58%, 中咽頭の66%, 喉頭の53%であった. 多変量解析ではT3-4, N2, adjuvantなし, 舌がOS, PFSと有意に関連する独立した危険因子であった. 根治切除可能な進行頭頸部扁平上皮癌のCRTは有用である. adjuvant chemotherapyの追加でCRTの治療成績をさらに向上する可能性があるが, 舌癌は不良で他の治療を検討する必要がある.
著者
池田 陽一 久保田 彰 古川 まどか 佃 守
出版者
The Japan Broncho-esophagological Society
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.264-270, 2002-06-10
被引用文献数
2

頭頸部癌1次治療後に肺転移検索目的で行う胸部単純X-p検査の意義を検討した。1次治療後の胸部画像検査は,1~6カ月ごとの単純X-pと,1年に1~2回のCT検査を行っている。1987年以降当科を受診した遠隔転移および重複癌のない頭頸部癌新鮮例655例中,局所制御後に肺病変が出現したものは27例(4.1%)あり,23例が単純X-pで,4例がCTで発見された。その内訳は転移性肺癌22例,原発性肺癌5例であった。肺病変判明までの期間は平均23.0M(カ月)(1.9~90.9M)で,肺癌判明後の生存期間は平均11.5M(0.3~57.6M)で,5年生存率は0%であった。Wilcoxon法で生存率の有意差検定を行うと,良好な予後を認めたのは組織別にみた腺様嚢胞癌のみで,他はすべて有意差を認めなかった。以上より,1次治療後の単純X-pで肺転移,原発癌を発見しても予後不良であり,手術・放射線により明らかな延命は認められなかった。胸部単純X-p検査の再考とともに,治療については外来化療などQOLに配慮することが重要であると考えられた。
著者
郡司 篤晃 古川 俊之 橋本 廸生 養老 孟司
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1994

ヒトの特性を行動科学的な立場から解析し、先進国の社会構成の安定性を論じ、高齢化に伴う様々な変化を、経済問題、生産構造、包括的生活様式や価値観、生死観にいたる広範な視野から捉え、将来の破局や予兆を推定した。(1)日本の医療システムの研究で、健康寿命の概念を提案した。また寝たきり率の地域差の調査、医療実態の日米比較などでは、医療・ケア・ニードに大きな差がないことが分かった。医療費のマクロ分析では、日本の医療費に見られる地域差と医療費の国際比較により、国民皆保険制度下ではサービスの購入量は需要者がほとんど決定するもとであること、わが国の医療は需給者の両側面から、根本的な構造改革と意識改革が急がれることを明らかにした。(2)日本的身体観の変遷は、医学の将来に重要な影響をもつ問題で、学問的・系統的に扱うべく、中世以降から近代社会の身体観から西欧的身体観に至る幾つかの側面から研究を行っている。客観として外界を捉えるのは脳、捉えている意識自体は主観という矛盾が生じるが、これが身体問題の基本である。ケアとキュアの分離は、そこでの態度の違いに起因する。この4月には、東京大学総合資料館にて、プラスティネーション標本の展示を行う予定で、成人全身4体、全身断面5体、臓器などを多く含め、展示に対する一般人の反応をアンケートなどの調査で確かめる。(3)医療費高騰と病院建築に注目して日本の医療の後進性を系統的に調査した。現代の医療の実態はゲリラ戦に譬えられる。ゲリラが、超大国の軍隊を翻弄するように、正規軍同士の戦闘における理論は成り立たず、ランチェスターの法則は変形されて、正規軍の損耗は組織の大きさに比例する。これが先進国の医療費高騰の重要な素因である。詳細は、冊子体報告書および総括班報告書に記載した他、多数の論文・著作として発表した。
著者
古川 誠之
出版者
西洋中世学会
雑誌
西洋中世研究
巻号頁・発行日
no.2, pp.161-178, 2010
被引用文献数
1
著者
山本 雅人 小笠原 寛弥 鈴木 育男 古川 正志
出版者
情報処理学会 ; 1960-
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1184-1191, 2012-10-15

2011年3月11日に発生した東日本大震災の際,携帯電話などの通信手段が途絶えた中で平常通り機能していたTwitterでは,災害情報や避難地情報などについての情報伝播が活発に行われた.本稿では,東日本大震災発生後のTwitterにおけるリツイートをベースとした情報伝播ネットワークを作成し,震災時のネットワークを分析することで,多くのユーザが関心をもち,より緊急性の高い話題の情報伝播の様子について分析する.そして,観光分野や災害時におけるTwitterでのリアルタイム情報発信の可能性について言及する.
著者
木村 恭之 土定 建夫 塚谷 才明 作本 真 三輪 高喜 古川 仭
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.709-716, 1993-12-15 (Released:2011-08-10)
参考文献数
15

中枢性嗅覚障害で病変の局在がはっきりしている脳腫瘍10例を対象に臨床的検討を行った。自覚的に「正常」と答えた7例中, 実際に検査上正常だった症例はなかった。認知嗅力損失で左右差のあった症例が8例あり, 単鼻孔嗅検査は不可欠と考えられた。検知/認知の差が2.0以上あった解離現象を示した症例が5例あった。解離現象は第3次嗅覚中枢の障害の他に嗅覚の伝達情報量が不足した場合でも起こりうると考えられた。静脈性嗅覚検査では潜伏時間は正常で持続時間が短縮していることが特徴的であったが, この現象は病変の局在を反映するものではなかった。病変と同側性あるいは両側性に嗅覚障害が発症した例が多かったが, 必ずしも当てはまらない症例もみられた。これは頭蓋内は圧迫が他の部分に影響しやすく, 周囲には浮腫性病変も合併しやすいことと関連があると考えられた。
著者
高木 智彦 八重樫 理人 古川 善吾
雑誌
ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム2012論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.1-6, 2012-08-21

拡張有限状態機械に基づく運用プロファイルから,usage distribution coverage と N スイッチ網羅率ができるだけ大きいテストケースを生成するためのソフトウェアテストのフレームワークを提案する.
著者
栗栖 正和 古川 昭雄 田代 勉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会ソサイエティ大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1996, no.2, 1996-09-18
被引用文献数
1

バイポーラトランジスタを用いたECL回路は、超高速動作が可能である。一方、CMOS回路は、微細化によりスイッチング速度の向上が著しい。本報告では、それぞれの技術について、主に高速化の観点から課題と展望を述べる。
著者
古川 千絵
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.77, pp.27-46, 2005-11-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
14

Many people living in advanced countries have sympathy for the desire for self-realization or self-discovery. However, particularly in Japan, society does not provide any support for the process of jibun-sagashi (finding oneself) or the negative consequences of the process. Given this situation, the purpose of this paper is to investigate the possibility of institutional support for jibun-sagashi. For this purpose, the gapyear in the U. K. is chosen as a subject of a case study, since it is an institutionalized support system that allows mainly young people to take time off for a process of self-discovery, with a time limit. The contents of newspaper articles during the past fifteen years are used to examine the social awareness that is said to be the basis for the popularity of the gapyear.From an analysis of the contents of newspapers, it is clear that positive expectations have long been placed on the gapyear, although many problems, which in some cases threatened its viability, have also been revealed during these fifteen years. These problems have included a deterioration of the financial situation of students led by the introduction of university tuition, and the excessive institutionalization and commercialization of the gapyear. There are two aspects of the expectations toward the gapyear: it is seen as a period for finding oneself, and as a period for learning new skills and gaining new experiences. The two are not separate, but rather are related to each other.These findings confirm the fact that it is important for society to support people in taking a gapyear or similar period in response to these expectations. Yet, on the other hand, it seems that expectations are thrown at the gapyear in an uncritical manner, and there is a need to accurately grasp this situation. How do people experience the gapyear or other similar self-discovery, what needs do they feel that makes such a period necessary, and how do these experiences bring actual benefits in their future careers? It is critical to find answers to these questions. In addition, it is possible that the gapyear has resolved the problems resulting from the distortions of the educational system or employment situation, rather than rectifying these systems themselves. These points are essential when thinking about the possibility of institutional support for jibun-sagashi in Japan as well.