著者
津島 昌弘 浜井 浩一 津富 宏 辰野 文理 新 恵里 上田 光明 我藤 諭 古川原 明子 平山 真理
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

EUの女性に対する暴力被害調査を踏襲した本調査は、近畿圏在住の女性を対象に、2016年に実施された。重大な発見は、日本では、加害者が非パートナーの場合、一定程度の女性が被害を警察に通報しているが、加害者がパートナーの場合、警察に通報した女性は皆無であった(EUでは加害者がパートナーと非パートナーとでほとんど差がない)ことである。これは、日本では、DVや親密圏で起こった暴力は表面化しにくいことを示唆している。家族や地域が弱体化するなか、親密圏で起きた当事者間の紛争解決において、公的機関の介入が不可避となっている。近隣の人が異変を見つけたなら、警察や支援団体に相談することが重要である。
著者
森永 康子 坂田 桐子 古川 善也 福留 広大
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.375-387, 2017 (Released:2018-02-21)
参考文献数
44
被引用文献数
11

「女子は数学ができない」というステレオタイプに基づきながら, 好意的に聞こえる好意的性差別発言「女の子なのにすごいね(BS条件)」(vs.「すごいね(統制条件)」)が女子生徒の数学に対する意欲を低下させることを実証的に検討した。中学2, 3年生(研究1), 高校1年生(研究2)の女子生徒を対象に, シナリオ法を用いて, 数学で良い成績あるいは悪い成績をとった時に, 教師の好意的性差別発言を聞く場面を設定し, 感情や意欲, 差別の知覚を尋ねた。高成績のシナリオの場合, BS条件は統制条件に比べて数学に対する意欲が低かったが, 低成績のシナリオでは意欲の差異は見られなかった。数学に対する意欲の低下プロセスについて, 感情と差別の知覚を用いて検討したところ, 高成績の場合, 低いポジティブ感情と「恥ずかしい」といった自己に向けられたネガティブ感情の喚起が意欲を低めていること, 怒りなどの外に向けられたネガティブ感情はBS条件の発言を差別と知覚することで喚起されるが, 数学に対する意欲には関連しないことが示された。
著者
菅 文彦 古川 拓也 舟橋 弘晃 間野 義之
出版者
Japan Society of Sports Industry
雑誌
スポーツ産業学研究 (ISSN:13430688)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.4_321-4_335, 2018 (Released:2018-10-12)
参考文献数
30
被引用文献数
1

Although a causal relationship has been suggested between Team Identification and Place Attachment, it may be necessary to verify the existence of the parameters between them. In this research, "The rise of Team Identification is accompanied by the rise in the evaluation of the social environment of the community, and leads to the rise of Place Attachment," was aimed at the hypothesis to be verified.    As a result of the two-way analysis of variance based on data from three longitudinal surveys, we determined that Team Identification ascending group significantly increased both Place Attachment and the bonds of the community as compared to the non-ascending group, and it was suggested that the evaluation of the social environment of the community rose in the ascending group. It can be said that the hypothesis was supported, considering the fact that "regional attachment influence structure" was confirmed in Imabari-City, the area of survey on this study.
著者
岡部 貴美子 牧野 俊一 島田 卓哉 古川 拓哉 飯島 勇人 亘 悠哉
出版者
The Acarological Society of Japan
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.1-11, 2018-05-25 (Released:2018-06-25)
参考文献数
30
被引用文献数
4 4

マダニ類は様々な脊椎動物の寄生者で、重要な害虫でもある吸血生物である.化学防除に対する懸念から,生物防除によるマダニ個体群およびマダニ媒介疾患拡大の制御への期待が高まっている.本研究では,実験室内でオオヤドリカニムシ(Megachernes ryugadensis)によるマダニの捕食を初めて観察した.アカネズミ類に便乗しているカニムシ成虫および第三若虫を採集し,シャーレ内で実験した.これらのカニムシはチマダニ属の幼虫,オオトゲチマダニ若虫および雌雄成虫を捕食した.カニムシは概ね,幼虫を与えられた最初の一日間に,2,3頭を捕食した.カニムシ成虫の雌雄間で,初日の捕食数および与えられた幼虫を食べ尽くすまでの日数には差がなかった.またマダニの若虫,雄成虫の捕食に費やす日数に差はなかったが,カニムシ雄成虫は雌成虫よりも短期間でマダニ雌成虫を捕食した.供試数は少ないが,カニムシ第三若虫もマダニ幼虫および若虫捕食において同様の傾向を示した.オオヤドリカニムシのマダニ天敵としての評価のためには,マダニとカニムシの生活史特性,小型げっ歯類および巣内の生物相への影響に関する更なる研究が必要である.
著者
古川 俊一 磯崎 肇
出版者
特定非営利活動法人 日本評価学会
雑誌
日本評価研究 (ISSN:13466151)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.53-65, 2004-03-29 (Released:2010-06-15)
参考文献数
27
被引用文献数
3

政策の評価を行うに当たっては、基本的な原単位の数値が確定されている必要がある。生命価値はその最たるものであり、規制評価が政策評価の中で、主要なものとされているにもかかわらず、十分な研究蓄積に乏しい。本論文では、リスク工学の考えも応用し、第1に、死亡事故のリスクに対する「統計的生命価値」の推定モデルを探求する。第2に、自動車購入時に、使用者が評価しているリスクから「統計的生命価値」を推定する。第3に、その結果を現在我が国で主として用いられている逸失利益をベースとした人命の価値と比較し、費用便益分析においての取り扱いを考察する。道路建設等の分野における約3, 000万円という従来の人命の価値は、今回分析の結果示された「統計的生命価値」8~10億円や、質問法をベースにした場合の我が国における「統計的生命価値」において妥当な数値との指摘のある数億円と大きな格差がある。もし生命価値が、一桁高い評価を受けることになれば、規制政策等の評価結果が大きく変更される可能性がある。
著者
古川 忠延 阿部 修也 安藤 剛寿 岩倉 友哉 志賀 聡子 高橋 哲朗 井形 伸之
雑誌
研究報告 デジタルドキュメント(DD)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.3, pp.1-6, 2011-10-01

本研究では,センサーや統計等を通じては獲得できない社会的事象の抽出と活用の可能性調査を目的として,犯罪情報を対象に Twitter 投稿の分析をおこなった.分析を通じ,(1) Twitter 上の犯罪関連投稿には,投稿者自身の犯罪の目撃や被害に関する投稿,公共・公的機関が発表した情報等を引用した投稿,ニュース記事の引用という3種類が存在すること,(2) それらの間で記述されている犯罪種別傾向の違いから,Twitter からのみ抽出できる犯罪情報が存在していること,が分かった.また,犯罪関連投稿を自動抽出する実験結果についても報告する.We analyzed criminal Twitter posts. The purpose is to investigate the possibility of extraction of various social phenomena which can not be acquired by a sensor or statistical prediction. Through the analysis, our findings are: (1) There are three types of criminal tweets: user's experience, announce by public institution, and cited news article. (2) By analyzing the difference between these three types of criminal tweets, there may be criminal information existing only on Twitter. We also show the result of an experiment to extract criminal tweets automatically.
著者
茶谷 誠一 瀬畑 源 河西 秀哉 冨永 望 舟橋 正真 古川 隆久
出版者
志學館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

1948年6月から1953年12月までの激動期に初代宮内庁長官を務めた田島道治の資料群(「拝謁記」、「日記」、「関係資料」)を原文から翻刻して活字化し、それぞれ解説を付して出版する。また、資料の出版にとどまらず、編集作業を通して明らかになった事実をまとめ、シンポジウム開催と解説書の執筆により、学界から一般社会まで幅広い層に象徴天皇制形成期の昭和天皇と宮中の実態につき、研究成果を還元していく。
著者
松野 哲男 巽 好幸 島 伸和 鈴木 桂子 市原 寛 清杉 孝司 中岡 礼奈 清水 賢 佐野 守 井和丸 光 両角 春寿 杉岡 裕子 中東 和夫 山本 揚二朗 林 和輝 西村 公宏 古川 優和 堀内 美咲 仲田 大地 中村 崚登 廣瀬 時 瀬戸 康友 大重 厚博 滝沢 秀明 千葉 達朗 小平 秀一
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

We started integrated marine investigations of Kikai Caldera with T/S Fukae-maru of Kobe University on October, 2016. Aims of our investigations are to reveal the structure of the caldera, the existence of magma reservoir, and to understand the mechanism of catastrophic caldera-forming eruption at 7.3 ka and a potential for a future catastrophic eruption. We conducted multi-beam echo sounder mapping, multi-channel seismic reflection (MCS) surveys, remotely operated vehicle (ROV) observations, rock sampling by dredging and diving, geophysical sub-seafloor imaging with ocean bottom seismometers, electro-magnetometers (OBEMs), some of which equip absolute pressure gauge, ocean-bottom magnetometers, and surface geomagnetic surveys.The first finding of our investigations is lines of evidence for creation of a giant rhyolite lava dome (~32 km3) after the caldera collapse. This dome is still active as water column anomalies accompanied by bubbling from its surface are observed by the water column mapping. Chemical characteristics of dome-forming rhyolites akin to those of presently active small volcanic cones are different from those of supereruption. The voluminous post-caldera activity is thus not caused simply by squeezing the remnant of syn-caldera magma but may tap a magma system that has evolved both chemically and physically since the 7.3-ka supereruption.We have been conducting integrated analyses of our data set, and have planned the fourth research cruise with T/S Fukae-maru on March, 2018, consisting of MCS survey, ROV observation, OBEM with absolute pressure gauge observation, and bathymetric and surface geomagnetic survey. We will introduce results of the data analyses and the upcoming cruise in the presentation.
著者
徳田 栄一 Stefan L. Marklund 古川 良明
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.139, no.7, pp.1015-1019, 2019-07-01 (Released:2019-07-01)
参考文献数
16
被引用文献数
2 2

Amyotrophic lateral sclerosis (ALS) is a lethal neurodegenerative disease that is characterized by the loss of motor neurons, which results in progressive muscle atrophy. The pathology spreads from the initial site of onset to contiguous anatomic regions. Mutations in the gene encoding Cu/Zn-superoxide dismutase (SOD1) have been identified in a dominantly inherited form of ALS (ALS-SOD1). A major hallmark of ALS-SOD1 is the abnormal accumulation of conformationally aberrant SOD1 protein (i.e., misfolded SOD1) within motor neurons. Emerging experimental evidence has suggested that misfolded proteins associated with neurodegenerative diseases exhibit prion-like properties, i.e., misfolded proteins act as conformational templates that convert normal proteins into a pathogenic form. Possibly as a result of this prion-like self-propagation property, misfolded forms of pathological proteins are considered to accumulate in the central nervous system and cause neurodegeneration. In this article, we review recent evidence for the role of prion-like mechanisms in ALS-SOD1. In particular, we discuss the propensity of misfolded SOD1 to act as a pathological seed, spread between cells, and propagate neuroanatomically.
著者
一方井 祐子 中村 史一 麻生 尚文 神谷 隆之 近藤 菜穂 久保田 好美 徳田 周子 豊田 丈典 古川 遼 宮田 舞 渡邉 俊一 横山 広美
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 高等教育研究部 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.83-93, 2012-06

This study focuses on the difference of public interest and expectation for eight scientific fields. The investigated fields included astronomy, planetary science, particle physics, mathematics, solid state physics, paleontology, seismology, and molecular biology. For analyzing the interest and expectation for the eight science fields, a survey was administered to 780 people over 20 years old. Expectation was rated high in the fields in which research contents are easy to understand and the research findings are believed to be linked to daily life. On the other hand, fields considered to be abstract and not related with daily life were rated lower in public interest and expectation. On the basis of these findings, we will discuss the future of science communication in these fields.
著者
五島 淑子 大石 奈津美 竹中 りえこ 古川 和樹
出版者
山口大学
雑誌
研究論叢. 人文科学・社会科学 (ISSN:02860589)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.A31-A50, 2003-12-20
被引用文献数
2

大学生の朝食の実態を把握する目的で、山口大学学生を対象にアンケート調査を行い、以下のような結果を得た。1)山口大学学生の起床時刻は平日では7時台が多く、休日はより遅い傾向にあった。また、就寝時刻では0時〜2時が多かった。2)17時以降アルバイトをしている学生は4割であった。外食(市販の弁当などの利用を含む)の利用頻度は、7割の学生が週1回以上外食を利用していた。3)朝食を食べる習慣のある学生は約6割であり、4分の1の学生に欠食傾向があった。朝食を食べない理由は、「時間がない」「面倒くさい」であった。4)6割の学生は起きて20分以内に朝食を食べ始めていた。また、朝食摂取時間は20分以内で済ませるものが9割であった。朝食の内容は、「パンを食べる」ついで「ご飯を食べる」であった。5)朝食を約半数が作っていなかった。作らない理由は、「作る時間がない」「店で買った物を食べる」「面倒くさい」であった。6)朝食を外食で済ませたことがある学生は、4分の1で、「半年に2〜3回」がそのうちの半数であった。場所はファミリーレストランが最も多く、和食が半数を占めていた。朝食を外食する理由は、「作るのが面倒くさいから」が多かった。今後、朝食の外食が増える可能性がある。7)平日早く起きる学生は、休日の起床時間も早く、平日の就寝時間が早い傾向があった。平日早起きの学生は、起床から朝食までの時間、朝食摂取時間が長く、朝食を料理する学生が多かった。朝食にかける時間が短い学生ほど作らない学生が多かった。8)自宅の学生は、平日早起きが多く、朝食を毎日食べている学生が多かった。9)アルバイトの回数が増えると就寝時刻が遅くなる傾向があった。アルバイトをしている学生の方がしていない学生より朝食を食べていない。10)学年別にみると、高学年になるにつれ、平日の起床時刻、休日の起床時刻、平日の就寝時刻が遅くなっていた。1年生では、朝食を「毎日食べる」が5割であったが、学年があがるにつれてその比率が減少し、「ほとんど食べない」が増加した。また、朝食を作らない学生も増加した。朝食の外食は、学年が上がるに従い増加した。11)理想の朝食を和食と答えた学生が多かった。品数は2〜4品が多かった。食生活の問題点として、朝食、栄養、食生活に関する内容があげられていた。12)朝食を食べるためには、まず早起きの習慣をつけることが必要である。高学年になるほど欠食率の増加、外食への依存が高まることから、「食べること」の意識を改めて問い直すための総合的な食教育が必要と考える。
著者
古川 裕生志
巻号頁・発行日
2008-03-21 (Released:2018-03-12)

授与大学:弘前大学; 学位種類:修士(教育学); 授与年月日:平成20年3月21日; 学位記番号:修第418号
著者
古川 安
出版者
日本科学史学会
雑誌
科学史研究 (ISSN:21887535)
巻号頁・発行日
vol.49, no.253, pp.11-21, 2010 (Released:2021-08-02)

Umeko Tsuda (1864-1929), a pioneering educator for Japanese women and the founder of Tsuda College, was a scientist. As an English teacher at the Peeresses School in Tokyo, the young Tsuda was granted a leave of absence by the government to study "teaching method" at Bryn Mawr College, a women's college near Philadelphia. During her stay in Bryn Mawr (1889-1892), however, she majored not in pedagogy but in biology, despite the fact that the Peeresses School officially banned science education for noble women. Following the vision of the feminist Dean Carrey Thomas, Bryn Mawr College offered full-fledged professional education in science comparable to that of Johns Hopkins University. Bryn Mawr's Biology Department was growing; there, Tsuda took courses from such notable biologists as Edmund B. Wilson, Jacques Loeb, and the future Nobel Laureate Thomas H. Morgan. In her third year, under Morgan, she carried out experimental research on the development of the frog's egg, which was published in a British scientific journal as their joint paper two years later. Tsuda was considered one of the best students in the department, and Bryn Mawr offered her opportunities for further study. However, after much consideration, she chose to return to Japan. Although Tsuda gave up a possibly great career as a biologist in American academe, she knew that it was almost impossible for a woman to pursue a scientific career in Meiji Japan and wanted to develop her dream of establishing an English school for women. Her experience of "forbidden" scientific study at Bryn Mawr seems to have given her great confidence in realizing her feminist ideal of enlightening Japanese women at the women's school she founded in 1900, the forerunner of Tsuda College.