著者
大西 季実 吉田 裕美 藤井 美代子 鈴木 まさ代 伊東 美緒 高橋 龍太郎
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.101-107, 2010-01-15

はじめに 精神科では、自殺・事故防止の観点から、入院生活に何らかの制限が設けられていることが多い。病棟内に持ち込む日常生活用品を制限することもその1つである。制限される物品としては刃物やガラス製品、ベルト、電化製品のコード、耳かき、爪楊枝、毛抜き、割り箸など多岐にわたる。刃物など明らかに危険な物品については、マニュアルなどに明文化され対応が統一されていることが多いが、危険度が必ずしも高いとはいえない耳かき、毛抜き、爪楊枝、割り箸などの取り扱いについては、病院・病棟により規定が異なる上、看護者の判断によっても対応に違いが存在するのではないだろうか。 縊死に関連した日常生活用品の持ち込み制限に関する田辺らの調査においても、コード、ネクタイ、針金ハンガーなどは持ち込みを許可する病棟と許可しない病棟がそれぞれ半数ずつであり、看護者が異なる視点で判断している可能性を示唆している*1。病棟内においても看護者間の考え方や対応の相違により混乱が生じることは多々あり、特に精神科の臨床では日常的に遭遇する体験であるという*2。病棟内の看護者間において価値観そして実際の対応方法が異なる場合、患者に混乱をもたらし、そこで働く看護者を悩ませる要因にもなりうる。 過度な物品管理、不必要な制限は患者の依存や退行を引き起こし、自立の妨げになる可能性があり、病棟生活を送る患者の生活の質(QOL)に影響を与えることが示唆されている*1。QOLや人権に配慮しすぎると事故の危険が高まる*3ものの、事故防止を優先しすぎると日常生活を送る上で不都合が生じる。看護師が事故防止を優先するのか、QOLを優先するのかによって日常生活用品の持ち込みの判断に影響が生じると予測される。 そこでこの研究では、①病棟内への日常生活用品の持ち込み制限と優先傾向(事故防止・QOLのどちらを優先するのか)との間には関連があるのか、②看護者のバックグラウンドと優先傾向との間に関連があるのかの2点を明らかにすることを試みた。
著者
黒川 昌彦 渡辺 渡 吉田 裕樹
出版者
九州保健福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ウイルス感染症に対して有効な汎用的経口アジュバントの開発を目指して、細胞性免疫を賦活化できる経口抗原を検討し、その免疫賦活化作用を明らかにすることを目的とした。本研究では、主な宿主免疫防御機構が遅延型過敏反応である単純ヘルペスウイルス(HSV)経皮感染マウス用いて、乳酸菌06CC2株やモリンガ葉水エキス(AqMOL)が、これまで報告したプロポリスAF-08と同様に、腸管免疫を介したTh1免疫誘導によりHSV感染マウスの感染病態を軽症化することを明らかにした。したがって、これら3種のサプリメントが、腸管免疫を介して細胞性免疫を賦活化できる汎用的経口アジュバントとして利用できる可能性を示唆した。
著者
吉田 裕久 Hirohisa Yoshida
出版者
安田女子大学
雑誌
安田女子大學紀要 = Journal of Yasuda Women's University (ISSN:02896494)
巻号頁・発行日
no.47, pp.181-191, 2019

『まことさんはなこさん』・『いなかのいちにち』・『いさむさんのうち』(1949年、写真1)は、戦後初期における入門期国語教科書として編纂された。GHQ/CIE係官として着任したヤイディ(Jeidy)及びストリックランド(Strickland)は、その中身(内容・表現)について厳しく検閲した。内容としては連続性のある読み物(ストーリーメソッド)に、また表現については語彙の提出を少数にすることを求めた。文部省は、これらの指示に基づいて、入門期国語教科書を大改訂した。こうしてできあがった3冊の入門期国語教科書の編纂方法は、これに続く検定国語教科書の編纂方法に大きな影響を与えた。これら入門期国語教科書の編纂は、母語学習の国語教科書編纂に外国の検閲(指導)を受けたという点で、国語教科書史上まさに画期的なできごとであった。
著者
吉田 裕紀 向 文緒
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.532-540, 2019-10-15

要旨:本研究では,若年層作業療法士の職業的アイデンティティ(Occupational Identity;以下,OI)に影響を与える因子を検討した.愛知県,岐阜県,三重県で勤務する35歳未満の作業療法士に郵送調査をし,アンケートは,回答者の個人属性,環境属性,OI測定尺度で構成した.その結果,有効回答率は36%となった.統計解析の結果,年齢,臨床経験年数と,OI得点間に弱い相関が認められ,後輩指導経験の有無,取り扱い件数目標の有無,多職種カンファレンスへの参加の有無による,OI得点に有意差が認められた.また,重回帰分析では,臨床経験年数,取り扱い件数目標の有無,多職種カンファレンスへの参加の有無の3因子に対する影響が示唆された.
著者
吉田 裕一 本村 翔
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.26-31, 2011 (Released:2011-01-21)
参考文献数
9
被引用文献数
2 3

イチゴ高設栽培の普及にともなって,ポット育苗からトレイ育苗への転換が進んでいる.空中採苗したランナー子株をトレイに挿し苗することによって,省力的な促成栽培用イチゴ苗の育苗が可能であるが,トレイで育苗した苗はポット苗と比較して開花が遅れる株の割合が高くなることが多い.挿し苗育苗した苗はクラウンが深く埋もれることが多いことから,クラウンの深さ,挿し苗時期と苗の大きさがイチゴ‘女峰’の開花に及ぼす影響について検討した.その結果,培地から露出したクラウンより深く埋もれたクラウンの茎頂分裂組織付近の温度が高く,花芽分化が遅れることが明らかになった.また,小さなランナー子株を遅い時期に挿し苗した場合には,特に開花が不揃いになりやすいが,クラウン周辺の培地を取り除いて露出させることによって茎頂分裂組織付近の温度が低下し,開花が早く斉一になった.以上のように,深く埋没したイチゴのクラウン周辺の培地を取り除いて露出させることにより,花芽分化が安定したイチゴのトレイ苗を効率的に生産できることが明らかになった.
著者
吉田 裕
出版者
早稲田大学法学会
雑誌
人文論集 (ISSN:04414225)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.113-167, 2015-02-20
著者
吉田裕著
出版者
岩波書店
巻号頁・発行日
1992
著者
吉田 裕平 西上 諒太 川端 裕二 表 洪志 松村 恵理子 千田 二郎
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.691-696, 2016 (Released:2018-01-29)
参考文献数
10

ディーゼル機関の更なる高効率化かつ低エミッション化が求められている.本研究ではEGRガスを燃料に溶解させ,気体の析出効果によって噴霧の微粒化を改善する手法の確立を目的とする.また,噴霧内のEGRガスが直接燃焼に寄与することでNOxの大幅な低減効果が期待できる.本報ではCO2の溶解が噴霧特性に与える影響を把握した.
著者
吉田 裕介 白井 康裕
出版者
北海道農業経済学会
雑誌
フロンティア農業経済研究 (ISSN:21851220)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.117-123, 2018-03-31

The purpose of this paper is to demonstrate disparity factors in income by examining the influence of farm size and farm efficiency on farming income. The following were the four main findings; 1) The influence of farm size and farm efficiency on income showed annual fluctuations. 2) For some cases of large-scale upland farming operations there were large fluctuations in incomes because of fluctuations in farm efficiency, resulting in small average annual incomes. 3) The statistical relationship between revenue and income per unit area was very low, while there was a clear relationship between expenses and incomes per unit area for large-scale upland farming operations. 4) In large-scale upland farming operations where there were decreases in income, financial outlays were still necessary to maintain revenue. As above, large-scale upland farming suffering from lowered incomes showed low efficiency because of increases in expenses to ensure maintenance of revenue per unit area and avoiding overcropping of wheat. These farming enterprises caused some of the problems detailed in literature reviews, and other problems they encounter are to maintain farm efficiency by considering the balance between revenue and expenses.
著者
藤原 佳典 柴田 博 原田 謙 新開 省二 吉田 裕人 星 旦二
出版者
東京都立大学都市研究センター
雑誌
総合都市研究 (ISSN:03863506)
巻号頁・発行日
vol.81, pp.39-48, 2003

先進三カ国の主要都市、東京とニューヨーク、パリの健康水準の実態を都心部、周辺部、全体に分けて検討した。同一主要都市内では中心部で平均寿命が短く、AIDS・結核発症者の割合が多かった。高齢期の総死亡率や主要な疾患別死亡率については主要都市内での格差よりも主要都市聞での年齢階級別の相違のほうが顕著であった。とりわけマンハッタン地区は年齢階級の上昇とともにパリ中心部地区及び東京都23特別区に比べて相対的に死亡率の低下を認めた。乳児死亡率・新生児死亡率については主要都市間及び同一主要都市内でもニューヨーク全体つまり、マンハッタン地区の外側が高かった。次に、高齢期の総死亡率と乳児死亡率について三主要都市ごとに中心部地区の分布及び相関を見た。各死亡率に対するマンハッタン20区のばらつきが目立った。また、65才以上総死亡率と乳児死亡率の相関関係についてはパリ中心部地区のみ両者に有意な負の相関がみられた。三主要都市間あるいは内部の健康水準の格差をもたらす規定要因を明確にするには、今後、三主要都市における衛生行政に関する指標、人口学的指標及び社会・経済学的指標を含めて国際比較の視点から学際的・総合的に相関関係を検討する必要性が示唆された。We reported healthy standard of the three international megalopolises, Tokyo, New York, and Paris, in advanced countries, comparing with central area and around it respectively. Central areas had shorter life expectancy, and had more incidence of AIDS and tuberculosis in every three city. In terms of age-specific total death rate in older persons and main diseases, there was more remarkable difference among inter-cities than among inner-cities. Whole New York City, around Manhattan area showed highest infant mortality rate (IMR) and neonatal mortality rate in every area in the three cities. Total death rate for older persons showed significantly inverse correlation with IMR only in 20 central wards in Paris.
著者
河野 芳廣 田村 幸嗣 吉田 裕一郎 森山 裕一
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.D4P3171-D4P3171, 2010

【目的】効果的な呼吸理学療法実施のために、目的に応じた最適姿勢を見つけることは理学療法士の重要な役割である。今回、急性薬物中毒により、ICU内の人工呼吸器(SIMV(VC)+PS)での管理のもと、閉塞性無気肺を呈したケースに、呼吸理学療法を施行し、効率的に改善した経験を若干の考察を加え報告する。<BR>【説明と同意】今回の報告は当院の倫理委員会の承認を受けている。<BR>【症例と経過】急性薬物中毒による入院歴がある40歳代の女性。薬の多量服用後、誤嚥によりERに搬送。気管挿管とBF(気管支鏡検査)にて精査し誤嚥性肺炎あり、右上肺野、左肺野に無気肺認める。ICUへ転棟、体動あり、鎮静薬(ドルミカム、マスキュラックス共に5ml/h)下でSIMV+PSモードで呼吸管理SIMV12回に同調。上記の誤嚥性肺炎あり、ポジショニングと吸引施行継続する。鎮静剤減量(3ml/h)後、自発呼吸認めるも呼吸回数は12回、TV500ml/回で呼吸器に同調。肺エアー入りは全体的に弱く断続性ラ音聴診。BT38度台まで上昇。口腔内は粘調度の高い喀痰、気管チューブは水様性の喀痰吸引。吸引持続するも体動はない。2時間後に低換気で、気道内圧上昇アラーム(+)、両肺特に右肺より粗い断続性ラ音聴診、吸引も少量、開放吸引実施し中等量。体位は左側臥位にて30分ごと吸引療法実施。5時間後に鎮静剤off、開眼、うなずき(+)、BP170台、自発呼吸あり呼吸回数増える。TV500ml/回前後で安定も両肺から粗い断続性ラ音聴診、CXP上左肺の陰影悪化、無気肺おこしている状態、BF施行し右肺は中等量、左肺は分泌物なし。理学療法処方となる。実施施行後、胸写再検後、左陰影改善し、PSモード、サーモベント5L経過後、呼吸器離脱し抜管、酸素マスク5Lで咳嗽可能となり、翌日転院となる。<BR>【結果】Servoi(シーメンス社製)SIMV(VC)+PS、PEEP5cmH2O、設定にて管理中。バイタル変化:(SPO298→100%HR94→87bpm,BP135/87→149/79,RR12→22,BT38.3→38.7°C2時間おき計測、理学療法前→後)呼吸器モニター変化(MV/EtCO2 7.3/37→10.9/29,気道内圧23→16,VTi/VTe599/557→481/4232時間おき計測、理学療法前→後)意識レベル:E4VTM6→E4V5M6 <BR>理学療法:聴診にて左下肺は気管支音聴診(左上肺は断続性ラ音)。ポジショニング(右半腹臥位→右側臥位)で呼吸介助実施(30分間)。ヘッドアップ30度のポジショニングをとる(60分間)。その後、再度右側臥位で呼吸介助実施後、吸引(白黄色の粘稠痰中等量)。左下背野は肺胞音聴取、深呼吸の促がしも可能でリズム良好となる。<BR>【考察】人工呼吸器管理下(SIMV+PS)で、しかも自発呼吸が減弱しており、十分な咳嗽が行えない状況では、換気血流不均等是正やVAP防止のため、仰臥位の延長を可能な限り避けて、目的に合った体位を選択し、呼吸理学療法の技術を加え実施した。また、当ケースはBMI29のobesityでその体型の呼吸機能への影響も多いと考え、ウィ-ニング中で自発呼吸の促進を効率的にするため、仰臥位から坐位へという体位を選択して、呼吸理学療法を実施することは抜管にむけて効果的であった。<BR>【理学療法学研究としての意義】呼吸理学療法を実施するにあたり、チーム連携により体位は重要と考え、できる限り早期に、しかも目的に沿った呼吸理学療法を展開することで、二次的合併症の重度化を防止することや在院日数短縮ということを経験できた。<BR><BR>