著者
伏島 あゆみ 内山 伊知郎 原井 宏明 大矢 幸弘 漆原 宏次 坂上 貴之 村井 佳比子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.SS-001, 2021 (Released:2022-03-30)

古典的条件づけの発見が学習理論と行動療法に与えた影響の大きさは繰り返すまでもない。一方,古典に過ぎず,その影響は認知心理学などの新たな発見に置き換えられたと思っている人がいるかもしれない。そうではない。不安や強迫,アレルギーのようにありふれた病気の治療においても条件づけの概念は新しい示唆を与えてくれている。このシンポジウムではアレルギー疾患の専門家,不安や強迫の専門家,学習理論の専門家を招き,行動科学学会のミッションである基礎と臨床をつなぐことを目指す。アレルギーの予防や克服にはアレルゲンを回避するのではなく,早くからエクスポージャー(食べること)を通じて免疫寛容を誘導した方が良い(潜在制止)や,強迫に対するエクスポージャーと儀式妨害(ERP)において一般的な不安階層表に従った段階的な刺激ではなく,期待違反効果を狙った予想外の刺激を使う方が効果が高いことなどを示す。パブロフが残した影響は条件づけだけではない。ドグマに毒されず,事実だけを重視することを若手に説き続け,科学者をスターリンから守ろうとした。科学することはどういうことなのか? もこのシンポジウムの中で取り上げれれば幸いである。
著者
鎌倉 やよい 坂上 貴之
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.2-13, 1996-05-25
被引用文献数
3

本研究は開胸術後の順調な回復のために必要とされる効果的な最大吸気練習プログラムの開発のために計画された。プログラムは被験者間多層ベースライン法でなされ、3つのフェーズからなっていた。ベースラインのフェーズでは、被験者は吸気練習器具であるトリフローの使用法について病棟で与えられる通常の教示を受け、吸気練習を自己記録するように言われた。第1の介入フェーズでは日々の吸気回数と吸気量の結果がグラフでフィードバックされ、もし前日の記録よりも上回っていれば言語的賞賛が与えられた。第2の介入フェーズでは、第1のものに加えて、この練習の手術への役割についての新しい情報が与えられた。吸気回数の目標値はベースラインでは20、第1介入フェーズでは50、第2介入フェーズでは80というようにあげられた。19人中、14人が介入によってベースラインのフェーズから第2介入フェーズヘとその吸気量を増加させた。増加しなかった5人は、ベースライン時においてその吸気量を急激に増加させたため、吸気行動を維持できなかった。
著者
土屋 守克 伊藤 幸太 髙橋 誠一 坂上 貴之 眞邉 一近
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.71-78, 2021 (Released:2021-07-20)
参考文献数
29

目的:フライトナースのプレホスピタル・ケアを対象として,撮影された動画のオプティカルフローから算出した活動量(以下,動画活動量)を測定した上で,熟練者と初心者の相違について比較するとともに,機械学習による分類性能について検討することを目的とした.本研究の結果が明らかとなれば,臨床における教育や業務の省力化,効率化が期待できる.方法:熟練者および初心者フライトナースのべ30名を対象とした.対象者は,胸部にウェアラブルカメラを装着した上で業務に従事した.熟練者と初心者の分類のために機械学習および線形判別分析を行い,分類性能を検証した.結果:動画活動量のエントロピーの中央値は,熟練者のフライトナースが有意に低値であった.各分析方法における分類性能(適合率,再現率,F1値)は,サポートベクターマシンとランダムフォレストが高かった.結論:動画活動量のエントロピーが熟練性の指標となり得ること,エントロピーの経時的変化に対して機械学習を適用することにより,高い分類性能を示すことが明らかとなった.
著者
坂上 貴之 山本 淳一 実森 正子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.395-411, 1994-12-20 (Released:2010-07-16)
参考文献数
145
被引用文献数
1

As the opportunity to contact with related areas has increased, the study of the experimental analysis of behavior has experienced revolutionary changes. Some of the most active and important areas-studies of choice, comparative cognition, and human language-are reviewed to acquaint readers. Studies of CHOICE have linked to the molar theories of behavioral economics and behavioral ecology, which promoted research of choice by animals under uncertainty conditions. Further approach has been made to integrate the molar and molecular analyses on the basis of the ideas of behavior dynamics. COMPARATIVE COGNITION is a part of a larger field including cognitive science, behavioral neuroscience, and biological science. Recent developments, aided with a comparative perspective, made significant contributions to our understanding of the phylogeny and ontogeny of cognition. Advances in analysis of human behavior provided tools to study behavioral aspects of semantics, syntax, and pragmatics of HUMAN LANGUAGE. Using the paradigm of stimulus equivalence, the emergence of stimulus relations, stimulus-stimulus networks, hierarchical structure of verbal behavior, and other language-related behaviors have been investigated.
著者
坂上 貴之
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.92-105, 2002

行動分析学における行動経済学は、4つの研究の流れ、すなわち摂食行動についての生態学的アプローチ、伝統的経済心理学研究とトークンエコノミーでの経済分析、強化相対性についての量的定義の追求、そしてマッチングの法則の展開、から形成された。それは、強化の有効性についての新しい指標、実験.条件の手続き的理論的区別、選択行動の最適化理論という3つの主要な成果をもたらした。この最後のもっとも影響のある成果は徹底的および理論的行動主義に対する別の選択肢としての目的論的行動主義を促した。が、同時にそれは経済学から限定合理性と不確実性という2つの問題も引き継いだ。実験経済学と進化経済学はこれらの問題を克服しようとする2つの候補であり、両者ともその実験的理論的枠組みとしてゲーム分析的なアプローチを利用している。特に後者は行動分析にとって魅力ある研究領域である。なぜなら、それは限定合理性を含んだ進化ゲームと、生物学的枠組みとは異なる進化過程の多様な概念的アイデアを提供するからである。

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著者
坂上 貴之
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.443-445, 1998 (Released:2019-04-23)
著者
坂上 貴之
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.88-108, 1997
被引用文献数
2

実験的行動分析における行動経済学の成立過程とその代表的実験を挙げながらこのアプローチの考え方を述べ、選択行動の研究をめぐるこの学の貢献と今後の問題を検討する。行動経済学は心理学と経済学の共同領域として生まれた。しかし、この学がミクロ経済学が蓄積してきた経済理論とその予測を、実験的行動分析における選択行動の実験結果に適用して理論の実証を行ってきたこと、経済学が培っていた諸概念を新しい行動指標として活用していったことから、それまであった伝統的な経済心理学とは異なる道を歩んだ。ミクロ経済学には、最適化と均衡化という2つの考え方がある。それぞれの主要な分析道具である無差別曲線分析と需要・供給分析から導出される予測や概念、例えば効用最大化・代替効果・労働供給曲線・弾力性は、個体の選択行動の様々なケース、例えば対応法則、反応遮断化理論、実験環境の経済的性質などへの行動経済学からの視点を提供してきた。今後、行動生態学、行動薬理学、実験経済学といった諸領域との連携をとりながら、実験的行動分析における独自の枠組みの中での均衡化と最適化の原理が検討されていく必要がある。
著者
増田 真也 坂上 貴之 北岡 和代 佐々木 恵
出版者
日本心理学会 = The Japanese Psychological Association
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.87, no.4, pp.354-363, 2016-10
被引用文献数
6

Certain participants are insincere, or careless when they respond to questionnaires. To identify such participants, we included three items in a questionnaire that instructed participants to choose a particular response category. Nurses (N = 1,000) responded to this questionnaire in a Web survey. One-hundred-twenty participants failed to follow the instructions for at least one item (non-followers). Analyzing their responses indicated the following: (a) non-followers were more likely to give identical, or midpoint responses; (b) the correlations between their responses to regular and reversed items were low or positive, and their responses to scales containing reversed items tended to show lower internal consistency; and finally, (c) the mean scores of non-followers were closer to the midpoint of the scale, regardless of whether the scale included reversed items. One reason that including reversed items lead to lower internal consistency could be because participants occasionally missed responding to these items. However, the results suggested that non-followers were not diligent in responding to regular items, and merely deleting reversed items from scales will be insufficient to ensure accurate results.
著者
増田 真也 坂上 貴之 北岡 和代 佐々木 恵
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.87.15034, (Released:2016-07-09)
参考文献数
29
被引用文献数
6

Certain participants are insincere, or careless when they respond to questionnaires. To identify such participants, we included three items in a questionnaire that instructed participants to choose a particular response category. Nurses (N = 1,000) responded to this questionnaire in a Web survey. One-hundred-twenty participants failed to follow the instructions for at least one item (non-followers). Analyzing their responses indicated the following: (a) non-followers were more likely to give identical, or midpoint responses; (b) the correlations between their responses to regular and reversed items were low or positive, and their responses to scales containing reversed items tended to show lower internal consistency; and finally, (c) the mean scores of non-followers were closer to the midpoint of the scale, regardless of whether the scale included reversed items. One reason that including reversed items lead to lower internal consistency could be because participants occasionally missed responding to these items. However, the results suggested that non-followers were not diligent in responding to regular items, and merely deleting reversed items from scales will be insufficient to ensure accurate results.
著者
坂上 貴之
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.5-17, 2005

ヒトを参加者とした研究の倫理基準(American Psychological Association, 1992版)は以下のようにまとめられる。(1)倫理的自己制御とその限界、(2)他者の権利の尊重、(3)より上位の規定や勧告の遵守、(4)強制のない参加の保証、(5)情報操作の禁止、(6)秘密の保持。このうち、はじめの2つのクラスターを除けば、それらは参加者の対抗制御、特に倫理審査機関、説明付き同意(書)、そして倫理的問題の事例の歴史に関するインターネットによる情報の公開を利用した対抗制御と深く関連している。研究参加者による、対抗制御の行使のための環境随伴性の設計が倫理的行動を促進するために必要であるが、ルール支配行動といった、その他の倫理的行動の特性もその設計が計画される際には考慮されなくてはならない。最後に、従来の応用倫理学的なアプローチに対する可能な候補として、行動倫理学を提案することができる。なぜなら、この学は、ルール支配行動と対抗制御についての概念的、実験的、応用的分析を用いることで、倫理的行動の具体的な環境制御を研究することが可能であるからである。
著者
坂上 貴之
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.5-17, 2005-04-25

ヒトを参加者とした研究の倫理基準(American Psychological Association, 1992版)は以下のようにまとめられる。(1)倫理的自己制御とその限界、(2)他者の権利の尊重、(3)より上位の規定や勧告の遵守、(4)強制のない参加の保証、(5)情報操作の禁止、(6)秘密の保持。このうち、はじめの2つのクラスターを除けば、それらは参加者の対抗制御、特に倫理審査機関、説明付き同意(書)、そして倫理的問題の事例の歴史に関するインターネットによる情報の公開を利用した対抗制御と深く関連している。研究参加者による、対抗制御の行使のための環境随伴性の設計が倫理的行動を促進するために必要であるが、ルール支配行動といった、その他の倫理的行動の特性もその設計が計画される際には考慮されなくてはならない。最後に、従来の応用倫理学的なアプローチに対する可能な候補として、行動倫理学を提案することができる。なぜなら、この学は、ルール支配行動と対抗制御についての概念的、実験的、応用的分析を用いることで、倫理的行動の具体的な環境制御を研究することが可能であるからである。
著者
竹村 和久 坂上 貴之 藤井 聡 西條 辰義 高橋 英彦 南本 敬史
出版者
早稲田大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

本研究は、意思決定の微視的過程を、心理実験、社会調査、行動観察、計量心理学モデリングを用いて検討することを主目的とした。本研究は、眼球運動測定装置や社会調査法を用いて、選択の反復が選好形成に及ぼす効果を検討した。選択過程の眼球運動解析の結果は、ゲーズカスケード効果とは異なる過程を示した。本研究の結果は、自動的な選択の反復によって選好形成がなされることを示唆した。また、社会調査の結果は、時間経過とともに、選ばれた選択肢の優れた属性への重みづけは増加し、選ばれた選択肢の劣った属性への重みづけは減少した。この研究結果は、選択が選好を形成する因果関係を示唆しており、一般に意思決定研究で仮定されている知見とは逆の知見を示唆した。最後に、本研究では、社会的状況における意思決定過程のいくつかの性質を明らかにし、リスク下と不確実性下での意思決定の統一的な心理計量モデルを提唱し、さらに、得られた知見の社会科学への意義についての議論を行った。本研究の成果として、意思決定のマクロ分析についてのいくつかのワークショップを開催し、論文、書籍などを公刊した。