著者
太田 喜久夫 才藤 栄一 松尾 浩一郎
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.64-67, 2002-06-30 (Released:2020-08-20)
参考文献数
2

我々は,嚥下障害患者の直接嚥下訓練に有効な頸部回旋とリクライニング座位の体位が,その組み合わせにより逆に問題を生じる可能性を考えている.今回その具体例を経験したので症例を紹介するとともにその機序について健常者で実験を行い確認したので報告する.症例は49歳男性で蘇生後脳症による両側性片麻痺や嚥下障害が著しく,主要栄養管理は胃瘻(PEGによる)で行われていた.ビデオ内視鏡検査の所見でリクライニング座位30度・右頸部回旋45度の姿勢で食塊の嚥下前気管内誤嚥を観察した.次に実験として健常者におけるリクライニング座位と頸部回旋の組合せによる食塊の通過経路について嚥下造影検査を用いて検討した.その結果リクライニング座位と頸部回旋の組合せによっては,食塊が回旋側の梨状窩に貯留後上方である反対側の梨状窩へ押し上げられ,嚥下時の喉頭挙上や披裂・声帯閉鎖が不十分な場合には喉頭内侵入や誤嚥が生じる危険が示唆された.以上から頸部回旋やリクライニング座位の姿勢の組合せには誤嚥予防の注意を必要とし,嚥下造影やビデオ内視鏡を用いた食塊通過経路や誤嚥の有無についての評価が行われるまでは,リクライニング座位の場合頸部は回旋させずに食塊が均等に左右の梨状窩を通過するように食事介助を行ったほうが安全ではないかと考えられた.
著者
粟生田 友子 長谷川 真澄 太田 喜久子 南川 雅子 橋爪 淳子 山田 恵子
出版者
一般社団法人 日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.21-31, 2007-11-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
20
被引用文献数
4

本研究の目的は,(1)せん妄発生因子を患者へのケア実践過程にしたがって構造化し,(2)その発生因子とせん妄発症との関連を明らかにすることである.せん妄発生因子は,【背景・準備因子】【身体・治療因子】【患者因子】【周辺因子】の4領域102項目と,薬剤104種類について,せん妄発症との関連を検証した.研究の場は一般病院1施設の,産科,小児科,脳神経外科病棟を除く7病棟であり,2005年1〜3月の3か月間に,基点となる週から2週間ごとに等間隔時系列データ収集法を用いて,6クールのデータ収集を行い,75歳以上の入院患者の全数を調査した.その結果,対象はのベ461名得られ,DRS-Nによってせん妄発症の有無を判定したところ,せん妄発生群96名(DRS-N平均得点16.16点),非せん妄発生群365名(2.44点)となった(発症率20.8%,t=37.687,p=.000).【背景・準備因子】では,「年齢」「入院ルート」「認知症または認知障害」「脳血管障害」「せん妄の既往」の5項目で両群に有意差が認められ,【身体因子・治療因子】で,身体因子の「せん妄を起こしやすい薬物の投与数」「高血圧の既往」「脳血管疾患の既往」「消化器疾患の既往」「感染症徴候(CRP,発熱)」「低血糖/高血糖」「肝機能障害(LDH)」の7項目,治療因子の「緊急手術」「緊急入院」の2項目に有意な差があった.【患者因子】では,日常生活変化の「陸眠障害(夜間不眠,昼夜逆転)」「排尿トラブル(尿失禁,おむつ使用)」「排便トラブル(下痢)」「脱水徴候」「低酸素血症(O2 sat)」「ライン本数」「可動制限(生活自由度)」「視覚障害(眼鏡使用)」の8項目,【周辺因子】では,物理的環境の「部屋移動」,物理的環境への認識/反応の「日にちの確認(カレンダーで確認)」「時間の確認(時計で確認)」「点滴瓶やルートが気になる」の4項目に有意差を認めた.今回抽出できた因子は,せん妄の発症リスクの判断指標となりうるもの,あるいは看護介入によって発症を予防できる可能性をもつものであり,看護職が日々のケアの中で介入可能なものに対して介入方法とその効果を明確にしていくことが今後必要であると考えられた.
著者
青木 佑介 大達 清美 川田 憲一 太田 喜久夫
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.616-622, 2020-10-15 (Released:2020-10-15)
参考文献数
18

要旨:片側性の小脳・延髄外側梗塞で重度球麻痺,失調症,中枢性低換気を呈した症例に対して,包括的リハビリテーション(以下,包括リハ)を実施した.主治医や呼吸サポートチームと連携し,人工呼吸器管理から離脱を図り,日常生活動作(以下,ADL)を改善した.また,栄養サポートチームとも連携して,栄養方法を確立し,嚥下造影検査を用いた積極的な摂食嚥下リハビリテーションを実施した.約1年間の入院後,経口摂取が可能となり,ADL自立の状態で自宅退院となった.人工呼吸器管理など重度の重複障害例に対しては,多職種による包括リハが必要となり,患者の機能予後に好影響を与えると考えられた.
著者
松本 達郎 小畠 郁生 田代 正之 太田 喜久 田村 実 松川 正樹 田中 均
出版者
日本古生物学会
雑誌
化石 (ISSN:00229202)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.1-26, 1982-06-21 (Released:2017-10-02)
被引用文献数
1

In various areas of Japan, non-marine sediments (s.l.) of fluviatile, lacustrine, and brackish-water environments are frequently interfingered with marine ones which contain index species of ammonites and other groups. Therefore, the geological age of the former can be determined by that of the latter in terms of the international scale. The result of the correlation on available evidence is shown in three charts (Figs. 1-3), in which ammonites, other marine biota, brackish-water fauna, fresh-water fauna and land-plants are also stratigraphically allocated. Outside the scope of the three charts, the biostratigraphically well subdivided marine sequences of Hokkaido and the Campanian-Masstrichtian sequences of Southwest Japan do contain transported remains (petrified woods, seeds, leaves, pollen and spores) of land-plants in favourable preservation, whose geological ages can also be determined in terms of international scale. On the ground of these results, the evolutionary history of the non-marine faunas and floras can be studied precisely. This would in turn be a foundation for the correlation of the continental deposits in Eastern Asia. This paper is a contribution to the IGCP Project No.58 Mid-Cretaceous Events [MCE].
著者
寺本 洋一 馬場 尊 才藤 栄一 太田 喜久夫
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, 2003-03-18

健常成人8人(平均35.6歳)を対象に,息こらえによる酸素分圧の低下が酸素飽和度に反映されるかを検証した.実測値の測定は最大吸気から約1,2,3l/呼気し息こらえを開始し,パルスオキシメーターにて安静時,20,40,60秒後,最低の酸素飽和度を測定,息止め時間も記録した.理論値の測定は,Borenの残気量予測式等を用い,肺胞内空気の酸素消費に着目し算出した.実測値と理論値の比較で最高(R=0.85)の相関を認めた.実測値と予測値には10〜20秒のタイムラグがあり,約10〜20秒後の実測値において,予測値とほぼ同値の酸素飽和度が認められた.肺胞壁内毛細血管から上肢末梢血管まで血液が循環するのに必要な時間を考慮する必要があった.予測値と20秒後の実測値の相関をみると最高R=0.81の相関を認めた.各症例の酸素飽和度低下度と各パラメーターとの相関では高年齢,肥満,低肺活量,低活動性,smoking index高値の症例において酸素飽和度低下の傾向が著しいことが示唆された.
著者
粟生田 友子 長谷川 真澄 太田 喜久子 南川 雅子 橋爪 淳子 山田 恵子
出版者
日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 : 日本老年看護学会誌 : journal of Japan Academy of Gerontological Nursing (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.21-31, 2007-11-01
被引用文献数
5

本研究の目的は,(1)せん妄発生因子を患者へのケア実践過程にしたがって構造化し,(2)その発生因子とせん妄発症との関連を明らかにすることである.せん妄発生因子は,【背景・準備因子】【身体・治療因子】【患者因子】【周辺因子】の4領域102項目と,薬剤104種類について,せん妄発症との関連を検証した.研究の場は一般病院1施設の,産科,小児科,脳神経外科病棟を除く7病棟であり,2005年1〜3月の3か月間に,基点となる週から2週間ごとに等間隔時系列データ収集法を用いて,6クールのデータ収集を行い,75歳以上の入院患者の全数を調査した.その結果,対象はのベ461名得られ,DRS-Nによってせん妄発症の有無を判定したところ,せん妄発生群96名(DRS-N平均得点16.16点),非せん妄発生群365名(2.44点)となった(発症率20.8%,t=37.687,p=.000).【背景・準備因子】では,「年齢」「入院ルート」「認知症または認知障害」「脳血管障害」「せん妄の既往」の5項目で両群に有意差が認められ,【身体因子・治療因子】で,身体因子の「せん妄を起こしやすい薬物の投与数」「高血圧の既往」「脳血管疾患の既往」「消化器疾患の既往」「感染症徴候(CRP,発熱)」「低血糖/高血糖」「肝機能障害(LDH)」の7項目,治療因子の「緊急手術」「緊急入院」の2項目に有意な差があった.【患者因子】では,日常生活変化の「陸眠障害(夜間不眠,昼夜逆転)」「排尿トラブル(尿失禁,おむつ使用)」「排便トラブル(下痢)」「脱水徴候」「低酸素血症(O_2 sat)」「ライン本数」「可動制限(生活自由度)」「視覚障害(眼鏡使用)」の8項目,【周辺因子】では,物理的環境の「部屋移動」,物理的環境への認識/反応の「日にちの確認(カレンダーで確認)」「時間の確認(時計で確認)」「点滴瓶やルートが気になる」の4項目に有意差を認めた.今回抽出できた因子は,せん妄の発症リスクの判断指標となりうるもの,あるいは看護介入によって発症を予防できる可能性をもつものであり,看護職が日々のケアの中で介入可能なものに対して介入方法とその効果を明確にしていくことが今後必要であると考えられた.
著者
粟生田 友子 川里 庸子 菅原 峰子 櫻井 信人 長谷川 真澄 瀧 断子 鳥谷 めぐみ 太田 喜久子 小日向 真依 白取 絹恵
出版者
新潟県立看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

環境因子に対して高齢者が示す反応からせん妄発症リスクを予測し、環境による発症リスクを軽減する方法を検討することを目的に、入院中の高齢者のせん妄発症に関わる物理的・人的環境因子に対する高齢者の認知の様態を明らかにし、せん妄発症群と非発症群の比較関連検証を行った。結果、物理的・人的環境に関して2群間に差が認められた項目は<部屋の位置><看護師の訪問頻度><緊張感を助長する検査の有無><他の患者との交流><不安を助長するものがある>であった。
著者
柳井 晴夫 亀井 智子 中山 和弘 松谷 美和子 岩本 幹子 佐伯 圭一郎 副島 和彦 中野 正孝 中山 洋子 西田 みゆき 藤本 栄子 安ヶ平 伸枝 井上 智子 麻原 きよみ 井部 俊子 及川 郁子 大久保 暢子 小口 江美子 片岡 弥恵子 萱間 真美 鶴若 麻理 林 直子 廣瀬 清人 森 明子 奥 裕美 外崎 明子 伊藤 圭 荘島 宏二郎 植田 喜久子 太田 喜久子 中村 洋一 菅田 勝也 島津 明人 金城 芳秀 小林 康江 小山 眞理子 鶴田 恵子 佐藤 千史 志自岐 康子 鈴木 美和 高木 廣文 西川 浩昭 西山 悦子 野嶋 佐由美 水野 敏子 山本 武志 大熊 恵子 留目 宏美 石井 秀宗 大久保 智也 加納 尚美 工藤 真由美 佐々木 幾美 本田 彰子 隆 朋也 中村 知靖 吉田 千史 西出 りつ子 宮武 陽子 西崎 祐史 山野 泰彦 牛山 杏子 小泉 麗 大西 淳子 松本 文奈 鶴見 紘子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

近年、看護系大学の急増と医療の高度化に伴い、卒業までに取得すべき看護実践能力の評価の重要性が増加している。その一環として、臨地実習に入る直前の段階までに看護学生が取得すべき知識・能力を正しく評価しておくことは看護実習の適正化のための急務の課題である。このような状況に鑑み、申請者は、2008~2010年に科学研究費補助金を受け、看護系大学の学生が臨地実習以前に必要とされる知識・能力の有無を検証することを目的として、看護学18領域から約1500の多肢選択式形式の設問を作成し、730名の学生に紙筆形式のモニター試験、および、220名の学生に対するコンピュータ試験(CBT:Computer Based Testing)を実施し、その結果を比較し、全国看護系大学共用のコンピュータ試験の有用性を確認した。