著者
室橋 春光 河西 哲子 正高 信男 豊巻 敦人 豊巻 敦人 間宮 正幸 松田 康子 柳生 一自 安達 潤 斉藤 真善 松本 敏治 寺尾 敦 奥村 安寿子 足立 明夏 岩田 みちる 土田 幸男 日高 茂暢 蓮沼 杏花 橋本 悟 佐藤 史人 坂井 恵 吉川 和幸
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

発達障害は生物学的基盤を背景とし、社会的環境の影響を強く受けて、非平均的な活動特性を生じ、成長途上並びに成人後においても様々な認知的・行動的問題を生ずる発達の一連のありかたである。本研究では発達障害特性に関する認知神経科学的諸検査及び、社会的環境・生活の質(QOL)に関する調査を実施した。脆弱性と回復性に関連する共通的背景メカニズムとして視覚系背側経路処理機能を基盤とした実行機能やワーキングメモリー機能を想定し、事象関連電位や眼球運動等の指標を分析して、個に応じた読みや書きなどの支援方法に関する検討を行った。また、QOLと障害特性調査結果の親子間の相違に基いた援助方法等を総合的に検討した。
著者
室橋 春光
出版者
札幌学院大学総合研究所 = Research Institute of Sapporo Gakuin University
雑誌
札幌学院大学心理学紀要 = Bulletin of Faculty of Psychology Sapporo Gakuin University (ISSN:24341967)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.13-26, 2021-02-26

二重過程理論dual process theory は,カーネマンらの行動経済学に関する著作により広く知られることになった。本論では,Evans らによるシステムⅠとシステムⅡからなるモデルを紹介した。システムⅠは,進化的に古くから存在しているとみなされるメカニズムである。生得的な入力モジュールと領域特定的な知識を利用して自動的処理を行うサブシステムからなる。他方システムⅡは,進化的に新しいメカニズムで人特有のものであるとされる。抽象的な推論や仮説的思考を可能にするメカニズムであるが,そのような高次処理は制限容量に強く制約される。対極的な特性をもつこれらのシステムの関係について,さらにNey やカウフマンらの考え方に沿って,処理系列上の特性,学習への適用などについて検討した。最後に,このモデルを自閉症スペクトラム症に適用した研究を紹介し,臨床適用の有用性についても検討した。
著者
西田 恵三 室橋 春光 山本 強
出版者
公益社団法人 日本金属学会
雑誌
日本金属学会誌 (ISSN:00214876)
巻号頁・発行日
vol.41, no.11, pp.1101-1106, 1977 (Released:2008-04-04)
参考文献数
19
被引用文献数
2 6

Iron test pieces were diffusion-annealed in an evacuated silica capsule containing the powdered (100∼200 mesh) 50 wt%Sb-Fe alloy consisting of α and ε phases as an Sb vapor source for 9∼440 hr at 700∼950°C. The test pieces were then analysed with an EPMA and the penetration curves of them were obtained.Each penetration curve was analysed by means of the Matano-Boltzmann method to obtain the chemical diffusion coefficients (\ ildeD). From these values the activation energies for diffusion (\ ildeQ) were calculated.Surface concentration of the test pieces (αmax) at each annealing temperature coincided approximately with the solubility observed in the phase diagram of an Fe-Sb system at lower temperatures, while a significant deviation was found in solubility at higher temperatures. Fine alumina makers placed on the test pieces prior to diffusion were found always on the surfaces after annealing so that it is considered that Sb atoms diffuse predominantly in the α-phase of this system. Each penetration curve was similar to an error function curve and \ ildeD at each temperature showed a relatively small dependence upon Sb concentration. There was a gap in the Arrhenius plot owing to magnetic transformation. The activation energies for diffusion (\ ildeQ) obtained from the data at higher temperatures varied from 59.5 kcal/mol for 1 at%Sb to 52.5 kcal/mol for 4 at%Sb and that for impurity diffusion of Sb in iron (QSb*) was evaluated to be about 63 kcal/mol.
著者
日高 茂暢 眞鍋 優志 小泉 雅彦 室橋 春光
出版者
北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター
雑誌
子ども発達臨床研究 (ISSN:18821707)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.35-48, 2019-03-25

野外での療育活動の実践研究は、特定のスキル獲得が中心であり、子ども・青年の関係性に焦点をあてた検討は少ない。本研究の目的は、神経発達症のある子どもと青年の異年齢期交流が発達にもたらす影響を明らかにすることである。本研究では、親の会が企画する登山キャンプに参与観察し、キャンプ内で生じる参加者の異年齢期交流を調査した。登山キャンプでは、子どもと青年の間にナナメの関係性が生じやすいことが分かった。その結果、子どもにとっては近未来像として取り入れるロールモデルになること、青年にとっては支援者の行動を模倣し子どもに実践する養育性形成の場になることが考えられた。また登山キャンプは居場所として、集団精神療法のような心理的安定を促す要素があることが考えられた。神経発達症のある子どもや青年にとって、同年齢集団と比べ、異年齢集団の方が能力の差異を肯定的に承認されやすいと考えられた。
著者
橋本 竜作 岩田 みちる 下條 暁司 柳生 一自 室橋 春光
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.432-439, 2016-09-30 (Released:2017-10-05)
参考文献数
30

症例は 11 歳 5ヵ月の女児。主訴は漢字の学習障害であった。本例は口頭および文字言語の習得を阻害する要因 (知的発達障害や感覚障害) はなかった。検査の結果, 音読速度は遅く, 漢字の書字困難を示した。さらに絵の叙述において困難が認められた。新しく作成した構文検査を本例に行い, 生活年齢対照群および語い年齢対照群の成績と比較した。結果, 本例は格助詞の使用に特異的な困難を示し, その他の群で困難は認められなかった。誤答から, 本例は動作主が明確な能動文では, 動作主に「ガ格」を付与し, 動作主が理解しづらい使役文や受動文では基本語順文の格配列順序 (ガ格-ニ格-ヲ格) に従って格助詞を付与していた可能性が示唆された。本例を通じて, 学習障害の背景として口頭言語の障害の存在を検討する視点の必要性と, そのための検査を提案した。
著者
富永 大悟 日高 茂暢 室橋 春光
出版者
北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター
雑誌
子ども発達臨床研究 (ISSN:18821707)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.35-39, 2017-03-15

発達障害のある青年は、自尊感情の低下が自己喪失感へと結びつき、学校や会社などのコミュニティから居場所を失ってしまう。本研究は、社会参加が難しくひきこもりがちな青年に対し、社会につながるための支援を検討することを目的とした。本研究では、青年とその保護者がもつ問題意識について実 態調査を行った。実態調査の中から、ひきこもりがちな青年とその保護者を対象とした訪問支援とICTを活用したSNS 型居場所支援を平行して実施した。その結果、就労や将来に関する不安や引きこもり状態では達成されにくい対人交流欲求が認められた。またSNS 型居場所支援は、在宅であっても支援につながり得ることへの高い期待をもたらした。本研究により、訪問支援とは異なるコミュニケーションの場として、支援者とのつながりを感じられる補助的な拠点として、SNS による居場所支援の可能性が示唆された。
著者
渡辺 隼人 蒔苗 詩歌 室橋 春光
出版者
北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター
雑誌
子ども発達臨床研究 (ISSN:18821707)
巻号頁・発行日
no.9, pp.41-45, 2017

ごぶサタ倶楽部は北大土曜教室を前身とした集まりで、発達障害を持つ青年・成人と長期にわたる交流を継続している。およそ10年間の活動を通してごぶサタ倶楽部の活動形態は変化してきた。そこで本稿では、ごぶサタ倶楽部設立から現在までを3つの時期に区分し、それぞれの時期でどのような活動を行っていたのかを整理した。⑴北大土曜教室の一部としてのOB会が発足した時期、⑵北大土曜教室の外部組織として「ごぶサタ倶楽部」が設立した時期、⑶北大土曜教室終了後から現在までについて、それぞれの時期の活動内容とその時期のごぶサタ倶楽部の役割に関して検討した。ごぶサタ倶楽部には全時期を通して「ゆるさ」という特徴があり、この「ゆるさ」こそがごぶサタ倶楽部ではメンバーやボランティアとの長期にわたる交流を支え、彼らの居場所を構成することに寄与していると考えられる。
著者
片桐 正敏 河西 哲子 室橋 春光
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.117, pp.39-43, 2007-06-21
被引用文献数
1

Milneらは,高機能自閉症を持つ人たちが健常者と比較して,背側経路における弱い情報システムを持つことを指摘している。自閉症がスペクトラムとしての特徴を持つのであれば,自閉症の診断を持たない広域表現型の人たちにおいても自閉症の持つ視覚処理の特性が見られるのだろうか。本研究は,健常成人を対象に自閉症スペクトラム指数(AQ),社会スキル得点,および運動コヒーレンス閾値を検討した。その結果,AQと社会スキル得点は運動コヒーレンス閾値と相関した。
著者
豊巻 敦人 渡辺 隼人 柳生 一自 室橋 春光
出版者
日本生理心理学会
雑誌
生理心理学と精神生理学 (ISSN:02892405)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.41-49, 2013-04-30 (Released:2014-01-07)
参考文献数
21
被引用文献数
1

社会的認知の偏奇を中核障害とする自閉症スペクトラム障害においても安静時機能画像によるDefault mode networkを評価した検討が多くあるが必ずしも所見は一致していない。機能画像ではなく,脳波・脳磁図を用いたDefault mode networkの評価も関心が持たれてきおり,本研究では脳磁図による機能的結合の解析を行い,自閉症スペクトラム障害でDefault mode networkの異常の有無を検討した。信号源波形の位相同期性による機能的結合について自閉症スペクトラム障害ではベータ帯域において前部帯状皮質と後部帯状皮質の結合強度が低下している傾向が観察された。また内側面の局所的な結合強度の増大は,細部への注意やコミュニケーション能力と相関していた。これらのことから,脳磁図計測でも自閉症スペクトラム障害の認知特性に寄与するDefault mode networkの異常を評価出来ることが示された。
著者
室橋 春光
出版者
北海道大学大学院教育学研究科附属子ども発達臨床研究センター
雑誌
子ども発達臨床研究
巻号頁・発行日
vol.1, pp.11-17, 2007-03-30

「生きにくさ」には時代的・社会的背景があり、容易には定義し難い。しかし「生きにくさ」は、多数派の生活が基準となりそれが「普通」となるとき、少数派の生活様式のうちに「普通」ならざるものとして現れる。発達障害のある人々は、その特性の強さから往々にして少数派としての生活を強いられる。 同じ「人」であるが故に、そのわずかな違いが偏見を生む。「障害」に現れる心理的特性の背景には、生物学的基盤と社会的環境との相互作用がある。それらの背景に存する諸基盤を理解した上で彼らを援助し支えることのできる社会こそが、真に強い社会であるといえる。
著者
和田 義哉 室橋 春光
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.115, pp.165-179, 2012-06-29

本研究では,算数の文章題において絵図を導入することで,問題解決にどのように効果があるのか検討する。調査では健常児と学習困難児それぞれに同じ算数の文章題を行った。文章題には,文章を理解する,絵図を作成する,式を作る,計算する問題があり,対象児間で絵図なし群,絵提示作成群,図提示作成群の3群を設定した。その結果,健常児では3つの対象物の比較問題において図の使用による効果 が現れ,学習困難児では文章の理解が不十分な問題において,絵が提示されることで理解が促進された。すなわち,絵は文章理解の助けとなるが,式を立てることに効果はなかった。一方,図は理論的に構成要素が配置されていても,その読み方や描き方を学習しないと有効に活用できないと考えられる。また,絵図の効果に差が出た問題については,事実関係が複雑で,文章内から書かれていない事実を抜き出 すことを要求するような文章題には,絵図の効果があると考えられる。