著者
前田 一行 中嶋 佑一 市川 雛代 鬼頭 良幸 古﨑 貴大 斎藤 臣雄 本山 高幸 長田 裕之 小林 哲夫 木村 真
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.69-74, 2014-01-31 (Released:2014-06-21)
参考文献数
21

赤かび病菌Fusarium graminearumはトリコテセン系かび毒を産生し穀類を汚染する病原菌である.トリコテセン類は安定性が高く,分解・除去が困難であるため,かび毒の産生そのものを制御する手段の確立が望まれている.我々は赤かび病菌のトリコテセン系かび毒の産生制御に向けた制御化合物の探索を行っている.理化学研究所天然物化合物バンク(NPDepo)から供与される化合物を直接,毒素誘導条件下の菌体に処理してトリコテセン産生への影響を調べる方法に加え,化合物アレイを用いてトリコテセン生合成酵素の阻害剤を探索している.本稿では,これらの手法によって現在までに得られつつある有用化合物に関する活性評価と作用機作についての概要を紹介する.
著者
宮町 宏樹 泊 知里 八木原 寛 井口 正人 為栗 健 山本 圭吾 大倉 敬宏 安藤 隆志 尾西 恭亮 清水 洋 山下 裕亮 中道 治久 山脇 輝夫 及川 純 植木 貞人 筒井 智樹 森 済 西田 誠 平松 秀行 小枝 智幸 増田 与志郎 加藤 幸司 畠山 謙吾 小林 哲夫
出版者
特定非営利活動法人日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.227-237, 2013-03-29

2008年に実施された屈折法地震探査によって得られたP波初動走時により,姶良カルデラおよび桜島火山の深さ3kmまでの速度構造を推定した.本研究地域の基盤層である四万十層群は4.6-5.0km/sのP波速度を持ち,姶良カルデラの中央部に向け傾斜している.姶良カルデラの中央部には,4.2-4.4km/sの低速度域が深さ1.5-3kmに存在している.そして,この低速度域はカルデラ下に存在する深部マグマ溜まりからのマグマ供給系が活発であることを示唆している.また,基盤層は鹿児島地溝帯の北西域の境界に沿って深さ1kmから2.5kmに急激に落ち込んでいることがわかった.桜島火山の速度構造は3.6-3.7km/sの領域が存在することで特徴づけられる.桜島火山の山頂直下で発生している火山性地震の震源域と速度構造の比較から,地下構造が種々の火山性地震の震源域の広がりに強い影響を与えていることを示した.
著者
小林 哲夫
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

デンプン分解に関わる酵素遺伝子群の発現を統括する糸状菌転写因子AmyRの誘導物質依存的核移行メカニズムの解明を目的とし、以下の成果を得た。1.AmyRは誘導物質依存的にDNA結合能を獲得すること、また、AmyRを含むタンパク質複合体の分子量が、誘導条件下で低下することが示された。これらの事実ならびにDNA結合ドメイン内に核移行シグナルが存在することを踏まえ、AmyRの誘導物質依存的核移行は核移行シグナルを含むDNA結合ドメインのマスキング/アンマスキングにより制御されていると考えられた。2.AmyRは誘導物質体存的にリン酸化される。推定リン酸化部位の変異解析により、T424、S436、S445のアラニン置換により、AmyRが構成的に核移行することが明らかとなった。また、T424、S445の変異により転写活性化能が消失するのに対し、S436の変異では構成的な転写活性化が引き起こされた。これらの変異はいずれもMH3ドメインに存在する。MH2が転写活性化ドメインであり、MH4が核移行制御ドメインであるとする過去のデータと考え合わせ、MH2、3、4の複雑な相互作用によりAmyRの核移行や転写活性化能の制御が行われていると考えられる。
著者
森脇 広 新東 晃一 小林 哲夫
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.329-338, 1991-12-25 (Released:2009-08-21)
参考文献数
63

This paper outlines the previous studies of many Quaternary gigantic pyroclastic flow deposits widely distributed in Kyushu in terms of Quaternary studies: (1) age, distribution, and source, and (2) influence on the Jomon Culture of Kyushu in the Holocene and on late Pleistocene slope erosion of Yaku and Tane islands.Seven gigantic pyroclastic flows are recognized in the late Pleistocene: Koya (source: Kikai caldera, age: 6, 300yBP), Ito (Aira caldera, 21, 000-22, 000yBP), Aso-4 (Aso caldera, 70, 000yBP), Nagase (Kikai caldera, 75, 000yBP), Ata (Ata caldera, 85, 000yBP), Aso-3 (Aso caldera, 105, 000yBP) and Torihama (Ata caldera, 100, 000-150, 000yBP) pyroclastic flows. Co-ignimbrite ash falls associated with all of them are found in distal areas more than 1, 000km distant from their sources. The ages, estimated by stratigraphic positions of those ash falls as well as radiometric datings, indicate that the eruptions of gigantic pyroclastic flows concentrate in the early stage of the late Pleistocene. Those pyroclastic flows showing circular distribution extend to a distance of 100-150km from the source.In contrast, the age, distribution, and source of middle-early Pleistocene gigantic pyroclastic flows are not sufficiently clarified, except for the Aso-2, Aso-1, Kakuto and Shimokado pyroclastic flows in the late stage of the middle Pleistocene.A clear difference in Jomon pottery between the layer above K-Ah ash associated with Koya pyroclastic flows and that beneath it, is widely recognized in Kyushu, suggesting that Koya pyroclastic flows eruption played an important role in the change in Jomon culture.We can often recognize slope deposits, including blocks of Nagase pyroclastic flows deposits in Yaku and Tane islands. This may suggest that unstable conditions occurred on the slopes over a wide area around the Kikai caldera owing to this eruption.
著者
小林 哲夫 吉江 弘正
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.11-17, 2012-03-28 (Released:2013-04-24)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1
著者
近藤 一郎 小林 哲夫 若林 裕之 山内 恒治 岩附 慧二 吉江 弘正
出版者
特定非営利活動法人日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.281-291, 2008-06-30
被引用文献数
3

母乳に含まれるラクトフェリン(LF)は鉄結合性糖タンパク質であり,抗菌作用などの生理活性を有することが知られている.本研究では,ウシLF配合錠菓(森永乳業)を3カ月間摂取した場合の歯周炎患者に及ぼす影響を,臨床的,細菌学的,および生化学的に検討した.同意が得られた軽度慢性歯周炎患者18名を無作為に,ウシLF含有錠菓摂取群(実験群:8名)およびプラセボ錠菓摂取群(コントロール群:10名)に分けて,ともに錠菓を1日3回(1回2錠)3カ月間摂取し続けてもらった.錠菓摂取直前(ベースライン),摂取1週後,1カ月後,および3カ月後の来院時に,1)歯周組織検査,2)定量性PCRによる歯肉縁下プラークおよび唾液細菌検査(総菌数,Porphyromonas gingivalis数,Prevotella intermedia数,3)サンドイッチELISA法による歯肉溝滲出液(GCF)および唾液ヒト・ウシLF濃度検査,4)リムルステストによるGCFおよび唾液エンドトキシン濃度検査,を二重盲検法にてそれぞれ行った.各来院時での検査結果の群間差をMann-Whitney U testにて統計解析した.本実験期間中でウシLF錠菓摂取に伴う副作用は一切認められず,同錠菓の安全性が再確認された.実験群ではコントロール群と比べてベースラインに対する歯肉緑下プラーク細菌数変化量の有意な低下が,総菌数(1カ月後),P.gingivalis数(1,3カ月後),P.intermedia数(1週後)においてそれぞれ認められた.唾液細菌数および臨床所見における群間差はみられなかった.ウシLF濃度は,コントロール群と比べて実験群で有意に高いレベルが維持された.ヒトLFおよびエンドトキシンの濃度変化量には群間差はみられなかったが,実験群のGCFでは低レベルで推移する傾向が認められた.以上から,ウシLF配合錠菓の継続的な経口投与により,歯周病原細菌が減少することが臨床レベルで初めて確認された.ウシLFのレベルがGCFである程度維持され,歯肉縁下プラーク細菌を抑制した可能性が考えられる.食品成分であるウシLFを配合した錠菓の経口投与は,より安全な歯周病の予防法として有望であることが示唆された.
著者
小林 哲夫
出版者
九州大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

乾燥土壌面からの蒸発とは,土壌表面が乾燥して,水蒸気が土壌中でのみ生成される状態を意味する。したがって,日中,土壌表面温度が大気温に比べて極めて高くなりうるために,土壌表面付近では水蒸気密度だけでなく温度勾配も水蒸気移動の駆動力となりうる。その結果,従来の蒸発速度測定法の多くは,乾燥土壌面からの蒸発には適用不能となる。このような温度勾配が水蒸気の駆動力となる蒸発過程を非等温蒸発と定義し,その機構を明らかにしてモデル化した。さらに,非等温蒸発時の蒸発速度測定方を開発し,その有効性を実証した。土壌層を湿潤土層(WSL),相変換層(PTZ)および乾燥土層(DSL)に分類し,それらが表面に露出している状態を,それぞれ,蒸発の第1,第2および第3段階とした。第1段階では水蒸気の生成(相変化)はすべて土壌表面で行われるが,第2段階では表面に露出している厚さ有限のPTZ内で行われる。第3段階ではDSLが表面に露出し,乾燥土壌面からの蒸発に相当する。温度勾配の影響はDSLと大気の境界面付近で作り出され,小対流(MCJ)によって接地気層内に運ばれる。その結果,接地気分層内に湿度逆転(日中,高度と共に比湿が減少する現象)が発現する。温度勾配の影響はDSL内では比較的小さいので,DSL内の水蒸気上昇フラックスを評価して蒸発速度を推定するDSL法を開発した。また,リモートセンシングによって測定可能な土壌表面温度と厚さ5cmの表土層内の平均体積含水率のみを用いて評価できるようDSL法をパラメーター化したDSLバルク法を提案した。両方法は,鳥取砂丘とマサ土を用いて検証され,有効性が確認された。
著者
渡邊 公一郎 今井 亮 横山 拓史 板谷 徹丸 三谷 泰浩 小林 哲夫 本村 慶信 セティジャジ ルーカスドニィ 高橋 亮平 米津 幸太郎 糸井 龍一 池見 洋明 実松 建造 HARIJOKO Agung SHERSTEN Anders IDRUS Arifudin WARMADA I Wayan DUNCAN Robert A.
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

インドネシア及びフィリピンの金・銅鉱徴地と地熱資源、タイ及びマレーシアの含REE花崗岩風化殼、フィリピンの斑岩銅鉱床および浅熱水性金鉱床についての地質調査を行い、鉱床生成条件の解析に基づく資源量と開発可能性の評価を行った。また、地質試料と室内実験データについて、地理情報システムとデジタルデータベースを併用した統合管理システムを構築した。
著者
小林 哲夫 森 牧人 長 裕幸 荒木 卓哉 安武 大輔 北野 雅治
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

半乾燥地の黄河上流域(甘粛,中国)に実験圃場を設置し,また日本における室内実験を併用して,二種類の塩類化土壌の改良技術,すなわち灌漑畑地の塩類化プロットから塩類を除去する有効な技術として著者によって提案されたPSW-Well法と,土壌からの塩類吸収能力が高い作物(クリーニングクロップ)の栽培に基づく生物学的改良法,についての実験を行った.その結果,両方法が有効に機能するための必要条件が示された:(1)PSW-Well法は,流域内の帯水層系が均質で,宙水面が発達しないことが有効に機能するための必要条件である.(2)クリーニングクロップは,塩類をよく吸収するだけでなく,水要求度が低いことが必要である.