- 著者
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山本 勝
- 出版者
- 九州大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2005
Venus-1ike AGCMを用いて,超回転や大気波動の自転傾斜角依存性を調べた(Yamamoto and Takahashi 2007, GRL).金星条件では,自転傾斜角が大きくなるにつれて超回転が弱くなる.自転傾斜角が小さい場合,Gieraschメカニズムにより,効率よく角運動量が上方輸送され,100 m/s程度の高速超回転が形成維持される.また,数万日周期の変動も見られる.自転傾斜角を10度から20度に大きくするにつれて,超回転は小さくなる.さらに,自転傾斜角を増大させると,超回転は小さくなり,20m/s程度の値に漸近する.このパラメーター領域では,加熱域の季節変化に対応して,東西流や子午面循環も大きく季節変化するが,数万日の長周期変動はほとんど見られなくなる.この場合,冬至や夏至で角運動量上方輸送効率が落ちるので,超回転が弱くなる.これまで,自転速度や南北加熱差が金星超回転の重要なパラメーターであると思われていたが,自転傾斜角も非常に重要であることがわかった.惑星スケール波が金星中層大気大循環に及ぼす役割や雲加熱に対する大循環や波動のsensitivityを調べるために,金星中層大気GCMも開発した(Yamamoto and Takahashi 2007, EPS).赤道域のスーパーローテーションは潮汐波によって維持されるが,中層大気全体の角運動量収支に関しては子午面循環による角運動量上方輸送と波による下降輸送によって維持される。つまり,雲層上端赤道域の局所的な角運動量バランスに関しては潮汐波による加速(潮汐説)が重要であるが,中層大気全体では子午面循環による角運動量鉛直輸送(ギーラッシ説)が重要であった.