著者
岩崎 真佳 田村 晃浩 彦坂 誠 神畠 宏 西上 尚志 河村 晃弘 山上 和寿 岩坂 壽二
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.32, no.9, pp.721-726, 2000-09-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
10

尿路感染を契機とした敗血症において,急性心筋梗塞類似の心電図変化と重篤かつ一過性のび漫性左室壁運動障害を示した急性左心不全例を報告する.症例は44歳男性,約1週間前から肉眼的血尿と熱発を認め,入院当日呼吸困難を主訴に近医を受診した.血圧低下と低酸素血症を認めたため,ドパミンの持続点滴と酸素投与を施行され,当院救命センターへ緊急搬送された.意識障害に対して人工呼吸が施行された後,心電図上側壁誘導にST上昇を認めたため急性心筋梗塞が疑われCCU入室となった.入院時の血行動態は,心係数2.Ol/min/m2,肺動脈楔入圧20mmHgと左心不全を呈しており,心エコー検査では心基部後壁を除きび漫性壁運動低下を認めた.同日緊急冠動脈造影を施行したが,正常冠動脈であった.第1病日より血行動態所見,ST上昇,左室壁運動は改善傾向を示し,第2病日にカテコールアミンを中止し人工呼吸から離脱,第3病日に左室壁運動は正常化し一般病室へ転室となった.今回の感染源として,感染性腎嚢胞によるE.coli菌血症が示唆された.敗血症に合併するショック兆候に際しては,本症例のごとく心原性因子が関与する可能性があり,臨床上注意を要すると考えられた.
著者
土田 英三郎 植田 克己 檜山 哲彦 畑瞬 一郎 亀川 徹 関根 和江 岩崎 真 畑 瞬一郎
出版者
東京芸術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

東京芸術大学が明治期以来の長い歴史の中で、学内各部署に分散蓄積してきた貴重な資料群の所在を確認し、目録を作成のうえ、近年とみに劣化が激しく、このままでは、死蔵されたまま歴史の片隅に埋もれてしまいかねないアナログ録音のオープンテープをデジタル化し、音のデータベース構築する基礎を形成できたこと、そして一部ではあるが、公開の機会を得ることができたことは、本研究の大きな成果である。今後は、本研究で採り上げられなかったアナログ資料をデジタル化し、積極的に公開する方法を探り、公共の財産として活用する方向を目指したい。
著者
鳥居 方策 岩崎 真三
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.35-39, 1995-01-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
18

交叉性失語には, 右半球内の言語表象の組織化が広範で異常なもの (異常交叉性失語) と, 通常の非交叉性失語の際の左半球内の組織化の鏡像を呈するもの (鏡像交叉性失語) とがある.前者は早期発達段階における左半球機能の故障によるものであり, 右半球内の損傷部位と関係なく, 非流暢性発話, 失文法など一定の症状を呈しやすいとされている.後者は遺伝を含む生物学的素因によるものであり, 症状と病巣部位との関係は左半球損傷による非交叉性失語とよく対応する.一方, 交叉性失語の合併症状の研究から, 種々の高次大脳機能の交叉の起こりやすさが問題にされ, 言語機能の方が視空間機能よりも交叉しやすいことが分かった.近年は, 交叉性「右半球症候群」ないし機能側在性の逆転 (reversed laterality) なる名称のもとに, 稀有な症例が報告されているが, これらの側在性の逆転の原因としては生物学的素因の関与が想定されることが多い.
著者
岩崎 真紀
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.467-492, 2004-09-30

本稿は、イスラーム社会の女性の在り方を考える上で重要な対象である身分法についてエジプトを事例として検討した。一九世紀後半に始まったエジプト身分法改革運動は、改革案自体はイスラーム法から逸脱することはなかったが、運動は西洋化志向の改革者によってなされた。夫の一方的離婚権や複婚権を規制する初の法となった一九七九年法制定に尽力したジーハーン・サーダートの運動もまた西洋的なものであり、宗教復興により保守化した当時のエジプト社会において大きな議論を巻き起こした。その結果、一九七九年法は手続き違憲とされ、若干の修正を伴い一九八五年法として制定された。このことは、身分法改革が西洋化を志向する運動として行なわれることの限界を示しているということができるだろう。一方、一九八五年法に続く重要な身分法として制定された二〇〇〇年法は、聖典に基盤を置いた内容であることを前面に押し出した改革であった。これは社会が一層保守化する中で女性がより多くの法的権利を得るためには、イスラーム的価値規範に則った改革運動が必要であることを表わしているということができるだろう。
著者
森 裕介 鈴木 元彦 長谷川 千尋 中西 弘紀 中井 一之 江崎 伸一 竹本 直樹 村上 信五 岩崎 真一
出版者
日本鼻科学会
雑誌
日本鼻科学会会誌 (ISSN:09109153)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.292-298, 2022 (Released:2022-07-20)
参考文献数
22

背景:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は今や全世界に拡大しパンデミック化している。また欧米において嗅覚・味覚障害が重要な症状として報告されているが,本邦における報告はほとんど認められない。以上を踏まえ,本研究ではCOVID-19による嗅覚・味覚障害について検討を加えた。方法:カルテからCOVID-19患者の年齢,性別,臨床症状と血中CRP結果を抽出し,解析した。結果:100例のCOVID-19患者において,嗅覚障害を訴えたのは45例(45%)で,味覚障害は44例(44%)であった。このうち嗅覚・味覚障害の両方を訴えた患者は41例で,嗅覚障害のみは4例,味覚障害のみは3例であった。また嗅覚障害を訴えた症例の年齢と血中CRP値は,訴えなかった症例よりも有意に低値であった。同様に,味覚障害を訴えた症例の年齢と血中CRP値は訴えなかった症例よりも有意に低値であった。さらに,嗅覚・味覚障害の経過についても検討を加えたが,ともに発症後1週間以内に症状が消失する症例も見られた。結語:COVID-19は日本人においても高率に嗅覚・味覚障害を引き起こすことが示された。また,嗅覚障害や味覚障害は若年者でより高率に発現し,血中CRPは低値を示す症例が多かった。少数ではあるが味覚障害のみで嗅覚障害を訴えなかった症例が存在したことから,風味障害以外のメカニズムによる味覚障害の可能性も示された。
著者
鈴木 健大 柿坂 庸介 北澤 悠 神 一敬 佐藤 志帆 岩崎 真樹 藤川 真由 西尾 慶之 菅野 彰剛 中里 信和
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.167-171, 2017-02-01

症例は28歳女性。てんかん発症は19歳。頭部MRIで右傍シルヴィウス裂に多小脳回を認めた。発作症状は,体性感覚前兆,意識減損発作,健忘発作など多彩であった。家族より,寝言が多い翌日は発作が増加する,との病歴が聴取された。長時間ビデオ脳波モニタリングにより「寝言」は右半球性起始のてんかん発作と判明した。医療者は「寝言」が発作症状である可能性を念頭に置き,積極的に病的な「寝言」の存在を聴取する必要がある。
著者
岩崎 真樹
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.8, pp.1381-1387, 2016-08-10 (Released:2017-08-10)
参考文献数
6

2剤以上の適切な抗てんかん薬治療によっても発作がコントロールされない患者に対して,てんかんの外科治療が検討される.専門医による術前精査を経て適応を決めるが,①内側側頭葉てんかん(海馬硬化症),②限局する器質病変による難治てんかん,③半球性病変による乳幼児の難治てんかんは,特に外科治療が有効である.てんかん発作は,就労や運転免許など患者の生活の質(quality of life:QOL)に大きく影響するため,外科適応は早期に判断する.
著者
岩崎 真樹 神 一敬 加藤 量広 大沢 伸一郎 下田 由輝 中里 信和 冨永 悌二
出版者
The Japanese Congress of Neurological Surgeons
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.9, pp.744-749, 2014

両側頭蓋内電極留置によって術前精査と逆側の発作起始を捉えた側頭葉てんかんの1例を経験した. 症例は35歳右利き男性. 20歳のときに難治の複雑部分発作を発症した. 頭部MRIとFDG-PETは正常. 発作間欠時に両側側頭部のてんかん棘波を, 発作時に右側頭部に始まる脳波異常を認めた. 両側海馬と側頭葉に頭蓋内電極を留置して記録したところ, 左海馬に始まり対側海馬に伝播する発作が確認された. 左側頭葉前半部切除術を行い, 術後12カ月にわたり発作は完全消失している. 病理学的に皮質形成異常と海馬硬化が認められた. 側方診断に疑問がある側頭葉てんかんは, 両側電極留置によって発作起始を確認することが重要である.
著者
奥田 稔 深谷 卓 小林 恵子 伊藤 依子 調所 廣之 設楽 哲也 八尾 和雄 小川 浩司 橋口 一弘 佐伯 哲郎 山越 隆行 濱田 はつみ 川崎 和子 石井 豊太 鳥山 稔 増田 哲也 杉山 博 川端 五十鈴 川島 佳代子 八木 昌人 田部 浩生 岡村 浩一郎 木場 玲子 斉藤 晶 安藤 一郎 野村 恭也 吉見 健二郎 窪田 哲明 大谷 尚志 波多野 吟哉 竹山 勇 上杉 恵介 林崎 勝武 鈴木 淳一 澤木 誠司 石塚 洋一 古屋 信彦 安達 忠治 坂井 真 新川 敦 小林 良弘 佐藤 むつみ 山崎 充代 斎藤 洋三 舩坂 宗太郎 斉藤 啓光 石井 正則 浅井 和康 森山 寛 遠藤 朝彦 小林 毅 関 博之 林 成彦 石井 哲夫 窪田 市世 水谷 陽江 荒 牧元 大竹 守 北嶋 整 上田 範子 山口 宏也 牛嶋 達次郎 坊野 馨二 菊地 茂 佐橋 紀男 臼井 信郎 原 俊彰 宮川 晃一 田中 康夫 喜友名 朝盛 井上 庸夫 八木 聰明 大久保 公裕 服部 康夫 町野 満 大塚 博邦 稲葉 真 島田 早苗 添野 眞一 星 慎一 頼 徳成 大橋 和史 村山 貢司 飯塚 啓介 市川 朝也 冨田 寛 小山 明 山内 由紀 渡辺 健一 佐藤 かおる 山田 久美子 木田 亮紀 牧山 清 亀谷 隆一 藤田 洋祐 井上 鐵三 田村 悦代 野原 理 阿部 和也 水野 信一 岩崎 真一 小川 裕 加賀 達美
出版者
The Society of Practical Otolaryngology
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.88, no.6, pp.797-816, 1995-06-01
被引用文献数
6 3

To evaluate the effectiveness, safety and utility of Emedastine difumarate (ED) in the treatment of Japanese cedar pollinosis, a multicentered, double-blind comparative study was performed in 290 patients in 1994.<br>Patients with Japanese cedar pollinosis were divided into two groups; the first group was treated with ED at a dose of 4mg/day starting two weeks before the season and continuing for the whole season. The second group was given an inactive placebo instead of ED during the pre-season and the early portion of the season and then replaced with ED during the later portion of the season.<br>As a result, the final improvement rate was significantly higher in the first group than that in the second group.<br>All subjective symptoms such as sneezing, nasal discharge, nasal obstruction and eye itching were suppressed due to ED treatment.<br>In conclusion, it was better to continuously administer ED to patients with pollinosis from the preseasonal period till the end of the season.<br>However, when the ED treatment was started in the midseason, the outcome was good, although less satisfactory than the outcome of continuous treatment given throughout the entire pollen season.