著者
深澤 俊貴 田中 佐智子 川上 浩司
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.777-781, 2022 (Released:2022-08-01)
参考文献数
13

医療データベース(DB)を用いた観察研究の発展には、目を見張るものがある。情報技術革新に支えられた大規模DBの構築と柔軟かつ高度な疫学手法の掛け合わせは、リアルワールドにおける医薬品の使用実態調査、および有効性や安全性の評価をタイムリーに実現させている。本稿では、診療報酬請求情報(レセプト)DB、Diagnosis Procedure Combination(DPC)DB、電子カルテDBを中心に解説するとともに、それらを用いた観察研究を紹介する。
著者
川上 浩司
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.434-440, 2019-10-25 (Released:2019-11-22)

法に基づいて実施されている乳幼児健診や学校健診を,その場限りの受診勧奨だけではなく,個人情報保護に配慮しつつデータベースを構築するとともに,個人や地域に分析を還元し,また生涯を通じたライフコースデータとして本人の健康増進や医学研究に役立てていくための基盤構築を行っている.また,全国の医療機関と連携して,診療情報データベース(RWD-DB)を構築することで,医療機関における診療の可視化や,臨床疫学研究や薬剤疫学研究を通じた医療の評価ができるような基盤が確立している.これらの基盤は,健康長寿社会に向けた政策にも重要である.
著者
元賣 睦美 吉瀬 蘭エミリー 松山 博昭 細谷 知広 門岡 幸男 浅田 千鶴 内田 俊昭 川上 浩
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.442-446, 2007-10-15 (Released:2007-11-30)
参考文献数
20
被引用文献数
2 3

ラクトフェリン可溶化鉄(FeLF)は溶解性および生体利用性に優れ,鉄特有の異風味を殆ど呈さない特徴を有する.本研究では貧血傾向のある成人女性にFeLFを含有したサプリメントを12週間摂取させ,FeLFが貧血指標に及ぼす影響について検討した.その結果,血中Hb値13g/dl未満あるいはフェリチン濃度45ng/dl以下の被験者において,血中Hb濃度,MCV,MCHおよびフェリチン濃度が有意に上昇した.また,血液生化学的検査項目に関して臨床上の問題は認められず,一般的な鉄剤にみられるような胃痛やむかつき等の副作用もまったくみられなかった.以上の結果から,FeLFは医薬品で治療するレベルではない貧血傾向あるいは潜在的貧血傾向の人々が安心して日常の食生活の中で摂取できる安全性の高い素材であると考えられた.
著者
塩瀬 隆之 川上 浩司 片井 修
出版者
脳機能とリハビリテーション研究会
雑誌
脳科学とリハビリテーション (ISSN:13490044)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.7-13, 2008 (Released:2018-11-13)

製造業, 伝統産業, 医療現場を問わず, あらゆる局面の最後にその成否を左右するのは, 円熟したベテランがもつ卓越した技である. この熟練の技が, いま失われようとしている. 2007年問題として知られる団塊世代の大量退職や, 構造的な後継者不足, 慢性的な人手不足を背景に, それら熟練の技を次世代に伝える方法の模索が急務である. しかし, 熟練の技は言葉にすることが難しく, また安易な形式化によりその価値が失われることも危惧される. 翻って徒弟制度やOJT(On the Job Training)に対する期待が高まるものの, 無責任に見習いを現場に放り込むこととの明確な差異を見いだせずにいる. 本稿では, 技能を形式化することの功罪, 徒弟制度の功罪を整理し, 技能継承を成功裏に進めるために, 技能を伝える側/受け取る側のそれぞれが意識すべき点を考察する.
著者
近藤 滋 川上 浩一 渡邉 正勝 宮澤 清太
出版者
大阪大学
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2004

ゼブラフィッシュの皮膚模様形成機構に関して、以下の結果を得た。1)色素細胞間の相互作用のネットワークを明らかにした。2)上のネットワークを組み込んだ計算機シミュレーションが、模様形成の過程を正確に再現した。3)模様変異突然変異2種の遺伝子クローニングした。4)クローニングされた遺伝子は、Kチャンネルとギャップジャンクションであった。5)クローニングされた遺伝子、または改変した遺伝子を導入することで、模様がさまざまに変化することを発見した。6)5の事実から、模様形成のためのシグナル伝達には、イオンや低分子が重要な役割を果たしていることが明らかになった。以上により、ゼブラフィッシュの皮膚模様形成に関して、多くの事実が発見され、模様形成原理の解明に大きく近づくことができた。
著者
川上 浩一 近藤 滋
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

川上は、ゼブラフィッシュにおいては成魚のストライプパターン形成異常変異Hagoromoの原因遺伝子であり、マウスにおいては指形成異常変異Dactylaplasiaの原因遺伝子であるhagoromo遺伝子(Dactylin遺伝子)の産物の機能解析を.行った。すなわち、マウスDactylin遺伝子産物の生化学的解析を行い、特異的なターゲット蛋白質をユビキチン化し、蛋白質分解経路へ導く働きをするSCFユビキチンリガーゼの構成成分であることを明らかにした。近藤は、ゼブラフィッシュストライプパターン形成を制御する普遍原理の研究をさらに発展させた。縦じまと横じまをもつ近縁な熱帯魚種間でのパターン変化を説明する新しい理論を考案し、簡単なパラメーターの変化でパターンが変化しうることを証明した。これは、熱帯魚の体表面のストライプパターンが、「反応拡散システム」で作られるという近藤の従来からの仮説を強く裏付けるものである。
著者
川上 浩司
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.37-43, 2017-08-31 (Released:2017-10-06)
被引用文献数
1 3

昨今,各種の診療情報由来のデータベースを用いた薬剤疫学研究が実施できるようになってきた.観察研究に用いられる資料としては,リアルワールドデータ (RWD) 系と疾患登録系とがある.このうち,RWD においては,診療報酬請求 (レセプト) 情報,調剤情報,DPC 情報に加えて,我が国でも医療機関における電子カルテ由来の診療情報を統合したデータベースの構築も始まっている.一方,日本では,母子保健法や学校保健安全法等に基づいて,自治体が各種の健康診断情報を所管しているが,これらのデータベース化の取組みも開始され,ライフコースデータとして予防医療や難病理解,創薬等に大いに役立つ知見を得ることが期待されている.
著者
川上 浩 惠畑 隆 松下 肇
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.535-544, 1992-06-01 (Released:2010-01-28)
参考文献数
62
被引用文献数
1 2

Many nucleoside analogues, which lack 2'-substituents, have been known to be a useful compound as anticancer and anti-virus agents. On the other hand, synthesis of these derivatives utilizing the condensation reactions between sugars and nucleic bases have a difficulty in the stereoselectivity of these reactions. In this paper, our investigation on the condensation reactions with some 2-deoxysugars are discussed in the point of stereoselectivity. Transformations to 2', 3'-dideoxynucleosides and 2', 3'-didehydro-2', 3'-dideoxynucleosides are also described.
著者
川上 浩良 田中 学
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

地球温暖化防止、持続的な経済成長を両立させる観点から、即効性が高く我が国をはじめ先進諸国で積極的に研究が進められている二酸化炭素(CO2)回収・貯蔵(CCS:Carbon Dioxide Capture and Storage)へ応用可能な、次世代型CO2分離膜を検討した。CCSの実現のため、特にCO2透過性を飛躍的に向上させる革新的CO2分離膜を検討した。本研究では、(1) 超高CO2拡散性、高CO2溶解性を示すナノスペースを有する新規表面精密制御ナノ粒子の合成、(2) ナノ粒子含有複合膜の超薄膜化 について研究し、新規粒子の合成と薄膜の方法論を明らかにした。
著者
有村 保次 西田 俊彦 南 麻弥 横山 葉子 三品 浩基 山崎 新 石崎 達郎 川上 浩司 中山 健夫 今中 雄一 川村 孝 福原 俊一
出版者
Japan Society for Medical Education
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.259-265, 2010

我が国の臨床研究の推進には,臨床と研究手法に精通した臨床研究医(clinical investigator)の養成が必要である.我が国初の臨床研究の系統的な教育を行う臨床研究者養成(MCR)コースが京都大学に開設された.今回,本コースの卒業生が臨床研究を実施する上で直面している問題点を調査し,今後の改善策を検討した.<br>1) MCRコース3期生までの全履修者28名を対象に,履修後の臨床研究実施に関する現状や将来像等について自己記入式質問紙調査を行った.<br>2) 回答者24名中(回収率86%),臨床研究を行う上で,「時間がない」,あるいは,「研究協力者がいない」といった問題を挙げる者は,それぞれ40%程度いた.<br>3) 「臨床研究を進めるために職場や周囲への働きかけ」を行った者は20名(83%)いたが,職場において臨床研究の支援が得られたのは1名のみであった.<br>4) このような状況下,自らの10年後の将来像として「病院で臨床研究を行う臨床医」と回答した者が半数以上いた(54%).また,「臨床研究を行う医師のキャリアパスを想像できる」と回答した者は42%であった.<br>5) MCRコースは改善の余地があるものの人材育成の具体的なモデルを呈示した.臨床研究のさらなる発展のため,医療現場における支援体制や人的・物的インフラ整備の必要性が示唆された.
著者
川上 浩司
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理學雜誌 = Folia pharmacologica Japonica (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.140, no.4, pp.174-176, 2012-10-01

薬剤疫学は,医薬品等の研究開発段階において安全性を予測するモデル等の開発,臨床試験に関連する各種規制ガイドラインのあり方や制度に関する調査とシステム研究といったレギュラトリーサイエンス,市販後のファーマコビジランス,市販後のリスクマネジメントの考え方の確立と実施,そして社会福祉の中における医療における費用対効果研究といった様々なアクティビティを包括した新しい道が示されていく必要がある.また,先制医療の時代になると,病気にならないための薬剤介入の可能性の勘案も必要となる.医療,医薬品の安全性や有効性,経済性の評価は,今後多様化しつつ発展していくであろう.
著者
早川 将史 平岡 敏洋 野崎 敬太 川上 浩司
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.28, 2014

先行研究において,潜在的衝突リスクに基づいて右腿下部へ触力覚情報提示を行 うシステムを提案し,早めの減速準備行動が促されることを確認した. しかし,長期使用時に,システムに対する依存や煩わしさによる受容性が低下する恐れがある. これらの問題を解決するために,本研究では,安全運転評価結果に基づいてドライバに提示する触力覚情報を変化させるシステムを提案する.
著者
川上 浩司 須藤 秀紹 半田 久志 塩瀬 隆之 小北 麻記子 谷口 忠大 片井 修 平岡 敏洋
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009-04-01

本研究課題は、便利の追求で見過ごされて来たが実は人を含む系においては重要であった事項を整理し、効率化や自動化に代わるシステムデザインの指針を探るものである。国内外の動向を整理すると共に、各種のデザイン領域における事例を収集・整理した結果は、学術雑誌や学会で報告するだけにとどまらず、平成23年に一般啓蒙書(不便から生まれるデザイン:DOJIN選書42)にまとめ、web でも逐次発信をしている。また、場のメカニズムデザインへの応用事例は、2013年に閣議決定された計画に盛り込まれた。日用品デザインへの応用事例は、各種メディアで採り上げられた。
著者
川上 浩司 片井 修 塩瀬 隆之 須藤 秀紹 半田 久志 谷口 忠大
出版者
京都大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

手間いらずで効率的に要求が満たせる「便利な道具や方式」よりも、むしろ不便な道具や方式に、能動的工夫の余地・対象系の物理的理解促進・自己肯定感の醸成、などの効果がある。我々はこれらを積極的に評価する「不便益」という考え方を提唱し、この視点からの新たなシステム設計方法論の構築を試みた。最終年度にあたる2008年度に得られた成果を以下にまとめる。[不便益の総論:]初年度から継続する各種講演やOSを年に数回開催し、そこで得られた多くの知見の整理を通して不便益の輪郭を明らかにして、HI学会論文誌に総説論文としてまとめた。[不便益の各論:]システムデザインにおける「便利」を基礎づけるものとして、因果に基づく明瞭な説明・分類/分割による高いモジュラリティ・あいまいさの無い推論・中央集権的システム構成に注目し、それらが援用できない「不便」、すなわち均衡(バランス)に基づく説明・明瞭な分割ができないこと・解釈(推察)の多様性・分権的制御などから得られる益を積極的に活用する考え方を提出するとともに、それらのいくつかには具体的な活用方法や数理的基盤を与えた。[不便益の応用:]不便益に関する知見をシステムデザインに応用することによって、その有効性を検証した。適用対象としては、情報伝達に関して「見るのではなく触れることしかできない絵画」や音と画像による情報伝達におけるテロップの効用分析、解釈の多様性に関して比喩表現やピクトグラムによる非言語コミュニケーションの有効性検証と、エージェントシミュレーション、デザインの実践として月に一度のインクルーシブデザインワークショップ(塩瀬)、などを実施した。