著者
古林 太郎 市橋 伯一
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.240-244, 2021 (Released:2021-07-30)
参考文献数
8

How can evolution shape a diverse biological world from a lifeless molecular world? In vitro evolution of artificial molecular replication systems is an attractive approach to investigate possible pathways of a simple molecular system developing towards biological complexity. We describe the progress of experimental investigation to test evolvability of molecules from the pioneering Spiegelman’s work to our studies on an artificial RNA replication system. Especially, we found that coevolution with parasitic molecules is a key to extend evolvability for emergence of diversity and continuous evolution.
著者
西廣 淳 大槻 順朗 高津 文人 加藤 大輝 小笠原 奨悟 佐竹 康孝 東海林 太郎 長谷川 雅美 近藤 昭彦
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.175-185, 2020-03-28 (Released:2020-04-25)
参考文献数
56
被引用文献数
5

著者らは,かつて里山として利用されてきた自然環境を持続可能で魅力的な地域づくりに役立てる方策を「里山グリーンインフラ」と称し,個々の活動の有効性の検証や社会実装について議論している.本稿では,印旛沼流域に広く分布し,かつて水田として利用され,現在では多くが耕作放棄地になっている「谷津」(台地面に刻まれた枝状の幅の狭い谷)に着目し,谷津の湿地としての維持・再生や,その流域の台地・斜面の草原や樹林の維持・再生によってもたらされうる多面的機能を,既存の知見や現地での調査結果から論じる.具体的には,谷底部を浅く水温の高い水域として維持することは,脱窒反応を通して下流への栄養塩負荷を軽減しうる.谷底部での湧水を保全するとともに水分を保持する畔状の構造に成形することで,絶滅危惧種を含む多様な生物の生息場となる湿地環境を生み出しうる.また定量的評価に課題はあるものの,雨水の流出抑制や浸透を通して治水にも寄与する可能性がある.
著者
周 月霞 吉武 央気 東海林 太郎 森下 祐 小河 健一郎 堀江 隆生 関谷 雄大 中村 洋平 河野 誉仁 林田 寿文
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
河川技術論文集 (ISSN:24366714)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.205-210, 2022 (Released:2022-09-01)
参考文献数
11

気候変動における想定最大規模洪水の発生及び環境の単調化を背景に,治水と環境を一体的検討できる3 次元河道設計ツールが益々重要となっている.本検討では,三重県雲出川の直轄区間を対象として,3次元河道設計ツール(iRIC-Nay2DH, EvaTRiP (Pro))を用いて治水・環境の一体的検討を試行し,その有効性の確認・留意点及び課題を抽出することを目的とした.ALB 測量データを用いて構築した水理解析モデル及び河川特徴を反映する環境評価閾値の設定は,治水,環境を一体で予測できることを確認した.また,大河川において3次元ツールを活用するにあたり,地形等の条件設定の留意点,現地調査結果の精度不足や3次元ツールに中長期視点で植生動態を考慮できない等の課題を整理した.
著者
田中 駿ノ介 蜂谷 勤 平林 太郎 木本 昌伸 濵 峰幸 安尾 将法
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.507-511, 2020-11-25 (Released:2020-12-25)
参考文献数
14

背景.限局した気管支カルチノイドは,外科的切除を行うように推奨されているが,治療法は確立していない.症例1.50歳代,女性.人間ドックの胸部CTで右主気管支内の隆起性病変を指摘され当院を受診した.軟性気管支鏡下で高周波スネアを用いて切除し,定型カルチノイドと診断された.切除後1年が経過し再発は認めていない.症例2.40歳代,男性.人間ドックの胸部単純X線写真で異常影を指摘され当院を受診した.胸部CTで右底幹を閉塞する病変を認めた.胸腔鏡下右肺下葉切除術+リンパ節郭清(ND2a-1)が施行され,異型カルチノイドと診断された.術後5年が経過し再発は認めていない.結論.気管支カルチノイドの治療方針を決める上で,腫瘍の大きさ,位置,組織型,壁外浸潤の有無を確認することが重要である.
著者
篠塚 美穂 林 太郎 渡壁 晃子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Db1226, 2012

【はじめに、目的】 がん患者リハビリテーションという診療報酬項目も設置され、がんのリハビリテーションが注目されているが、医療者全てにはまだ浸透の浅い分野である。今回、全身病状が悪化したため、化学療法が中止となったが、理学療法介入にて化学療法実施判定基準の一つであるPS(Performance Status Scale、以下PSと表記)が向上、再度化学療法適応となり、在宅復帰を果たした症例を報告する。また、当院では、理学療法士が緩和ケアチームのメンバーとなっており、一般病棟における緩和ケアチームの関わりも踏まえて報告する。【方法】 (緩和ケアチームの特徴)当院は電子カルテ採用にて、文書管理システム内に「緩和ケアスクリーニングシート」を作成。緩和ケアチームにコンサルトを希望する場合、職員のどの職種の誰もが発行できる。チームメンバーは随時シートを確認。アドバイス、介入につなげる。(症例)20代男性。進行胃癌(Stage4)。X年-2年、食べた物を嘔吐繰り返し近医受診。胃癌と診断。家人(両親)には余命1年と宣告。1st Line化学療法効果あり、経口摂取可能となるも、X年-1年、経口摂取困難。2nd Line化学療法へ変更。X年、経口摂取困難、緩和療法目的にて当院に紹介受診。受診当時、がん悪液質に近い状態。胃噴門部癌の食道浸潤部に対し、食道狭窄拡張術(ステント留置)施行。PS0。X年+2月、3rd Line化学療法実施。X年+6月上旬、左肩疼痛増強、熱発継続、膿胸にて入院。PS2。化学療法中止。左大量胸水(膿胸)にて呼吸困難出現。一時はO2 5Lまで増量。チェストドレーン留置し、持続ドレナージ開始。左肩甲骨疼痛には放射線治療(36Gy/12fr/2.5W)施行。緩和ケア病棟転棟も視野に入れ、主治医より緩和ケアスクリーニングシート発行あり。緩和ケアチーム介入。X年+7月、リハビリ依頼。理学療法介入。介入時、左側胸部よりチェストドレーン留置中。疼痛に対し、プレペノン持続皮下注実施中。リハビリ前にはレスキューとして看護師により早送り実施。約1か月の臥床にて、筋力低下著明(MMT下肢2レベル)。PS4。呼吸苦は安静時にはなく、Room Airで経過。立ち上がり困難。車椅子移乗も介助必要な状態であった。余命が月単位、急変もありうることから、できれば外出でも一度自宅に帰ることを目標に、リハビリ強化介入開始。また、病状から精神面での不安強く、リハビリ実施時に、想いの傾聴、緩和ケアチーム看護師と連携を図り、病棟看護師との報告も密に行い、精神面でのケアとしても介入。【倫理的配慮、説明と同意】 今回の発表に伴い、ご本人に、個人が特定できない状態での情報の提供を依頼し、理学療法の発展のために役立てて欲しいと同意をいただいた。【結果】 介入から4週間(14回介入)で、PS2まで改善。MMT2であった両下肢は、4まで回復。理学療法介入し、詳細評価で左下肢下垂足が判明。今回の臥床で生じており、Dynamic AFO導入。装着後は、介助下歩行器歩行を経て、チェストドレーン抜去後は、両松葉杖介助歩行、介入2週間で車椅子外出を果たし、退院が視野に入る。精神面でも、介入当初は、車いす座位で「しんどい。もう死ぬかもしれない」と発言されていたのが、日常生活に介助量が減少してくる頃には、「目標がいろいろできた。何をするにしても歩けるようになりたい。がんと共存していかなくてはいけないこともわかっている」という発言が聞かれるようになった。リハビリ開始から4週にて、両松葉杖歩行自立。室内独歩近位監視、段差昇降見守りとなり、自宅退院を果たした。その後も、外来で週2回リハビリ継続。独歩訓練強化。X年+3月には、PS1となり、下垂足も改善。屋内装具除去歩行訓練実施。PS向上、化学療法再開となった。【考察】 体力的消耗、全身状態より、化学療法継続適応ではないと判断され、緩和ケアを主体として緩和ケア病棟転棟への見通しが立っていたが、本人の強い化学療法再開希望にて、理学療法介入、PS回復と遂げ、再度化学療法の適応となった1症例である。がん治療における化学療法適応は、患者自身がどの位動くことができ、身の回りのことが一人で行えるかというPS値で判定されることが多い。PS値を保つことができれば、がん治療の選択肢が増え、理学療法の関わりにより、生命予後を変えることができ、患者の希望を支持できることを改めて感じた症例であった。【理学療法学研究としての意義】 がんと共存する時代の到来で、2015年にはがん患者は533万人に達すると予想されている。今後、積極的に理学療法士としてがんの分野に介入することで、がん患者の「人生」の、QOL向上として関わることができると確信する。今回、この症例を報告することで、がんのリハビリの取り組みが、さらに社会に浸透するように願う。
著者
古林 太郎
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2017-04-26

本研究の目的は、生命の起源で想定されるような単純な自己複製系においても避けがたく発生してしまう寄生性分子(ウイルスのようなもの)が宿主との生存競争を通じて複製系に及ぼす進化的影響を、実験と理論の両面から追求することであった。理論では、区画化された単純な宿主・寄生体複製系の数理モデルの構築と解析を行った。広いパラメータ空間上での網羅的な計算機シミュレーションの結果、原始地球でも実現可能であろう単純な区画ダイナミクスのみによって複製系が安定に持続可能な条件を見出した。また、複製系が安定に持続可能となるためには区画が多数あること、区画の融合分裂頻度が大きいこと、栄養量が適度な範囲にあることなどが重要な要件であることが明らかになった。これらの知見を用いれば、宿主と寄生体の相互作用の程度を段階的に変化させた新しい進化実験の条件設定を行うことができると考えられる。この成果は、平成29年度内に論文化した。実験では、自己複製能力を持つ宿主RNAと寄生体RNAの長期的な実験進化を実施し、その進化ダイナミクスを次世代シーケンサと生化学的なアッセイにより解析した。配列解析の結果、宿主RNAは多系統に分岐進化を起こしていたこと、寄生体の側では新たな分子種が進化途中で発生していたことが判明した。生化学アッセイにより宿主と寄生体の関係がいかに発展したかを解析した結果、宿主RNA側での寄生体RNAの複製を防ぐ適応進化と、寄生体RNA側での進化後宿主への新たな寄生能力の適応進化が繰り返し起こっており、寄生体が宿主の継続進化と多様化に貢献していることを示唆していた。これらの結果は、単純な複製子集団がダーウィン進化を通じて自発的に宿主・寄生体の関係がダイナミックに変動する複雑な生態系へと発展したことを示しており、生命の初期進化について重要な知見が得られたと言える。この成果は、平成31年度に出版予定である。
著者
小林 太郎 武部 純 似内 秀樹 古川 良俊 石橋 寛二
出版者
Japan Prosthodontic Society
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.10-15, 2006-01-10
被引用文献数
3 2

症例の概要: 患者は54歳の男性. 1992年6月に左側口底部の腫瘤に気づき, 岩手医科大学歯学部附属病院口腔外科を受診した. 同年9月に下顎左側口底癌の診断のもと, 腫瘍摘出術が施行された. その後, 左側下顎骨放射線性骨壊死と下顎骨骨折が認められたため, 1993年3月に左側下顎骨区域切除が行われた. 術後経過は良好であったが再建は行われず, 1996年2月に補綴的機能回復を目的として第二補綴科を受診した. 下顎の患側偏位により上顎との咬合接触関係が失われていたため, 下顎顎義歯装着後, 1997年11月に下顎顎義歯ならびに下顎歯列との咬合接触部を設けた口蓋床を製作し装着した. 2001年4月に下顎顎義歯とこれに咬合接触する口蓋床を再製作後, 患側への偏位の抑制と咀嚼機能の改善が認められている.<BR>考察: 下顎の偏位の防止と咀嚼機能の回復を目的として, 口蓋部の咬合接触域にパラタルランプを付与した口蓋床を装着した. その結果, 咀嚼筋のバランスを保つことができ, 下顎の患側への偏位の抑制を図ることができた. 咀嚼機能と構音機能の改善程度を評価したところ, 下顎顎義歯とこれに咬合接触する口蓋床の装着により摂取可能食品の増加が認められた. また, 狭まったドンダーズ空隙を広げることにより, 構音機能の改善も認められた.<BR>結論: 下顎骨非再建症例における下顎顎義歯と, これに咬合接触する口蓋床の装着は, 下顎の患側への偏位の抑制と咀嚼機能の回復に有効であることが示された.