著者
松元 和伸 小林 薫 森井 俊広 中房 悟
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.139-148, 2016
被引用文献数
1

キャピラリーバリア(以下CB)は,砂層とその下部に礫層を重ねた土層構造であり,浸出水を抑制するための降雨浸透制御技術の一つとして利用されている。砂層と礫層の保水性,透水性などの違いによってCB機能は発揮されるが,実験による検証はCB層境界面が平坦であることが前提となっている。しかし,実施工時に広範囲の層境界面の平坦性を実験と同等に確保することは,施工工程やコストに大きく影響し,品質管理上の課題でもある。そこで,CB構造の展開を図っていく上で,CBの遮水機能つまり,限界長に及ぼすCB層境界面の不陸の影響を定量化しておくことが実務面で非常に重要となる。本論文では,上記課題の検討のため,これまで筆者らの研究で得られているCB境界面が平坦な場合のCB限界長と,新たに実験を行う層境界面に不陸のある場合のCB限界長との比較を行った。その結果,規則的な限定的条件下の不陸ではあるが,砂層と破砕貝殻層の層境界面の不陸は,実施工で発生するであろう30mm程度の規則的な不陸であれば,CB限界長等に影響を及ぼさないこと(CB機能も喪失しないこと)を明らかにした。
著者
和田 義人 茂木 幹義 小田 力 森 章夫 鈴木 博 林 薫 宮城 一郎
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 Tropical medicine (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.187-199, 1976-02-28

奄美大島において1972-1975年に蚊の調査を行なった.成虫は畜舎にかけたライトトラップ及び野外でのドライアイストラップにより,幼虫はその発生場所において,1年を通じて採集を行なった.その結果31種の蚊が得られた.上記の方法による採集の記録と,野外で採集した幼虫の飼育の記録とから,各々の種の,特に冬季における,生態について記載した.また,奄美大島での日本脳炎ウイルスの越冬について,伝搬蚊コガタアカイエカの生態の面から考察を加え,ウイルスの越冬が可能なのは,冬の気温が高く,蚊-豚の感染サイクルが持続する場合においてのみであると結論した.Mosquitoes were investigated on Amami-Oshima Island in 1972-1975. Adults were collected by light traps at animal shelters and by dry ice traps in the field, and larvae at their breeding sites in the whole year. In total, 31 species of mosquitoes were found. From the mosquito catches by the above methods together with the rearing records of some larvae collected in the field, the biology of each mosquito particularly in the winter time was reported. Also, the possibility of the overwintering of Japanese encephalitis virus on Amami-Oshima was discussed on the basis of the biology of the vector mosquito, Culex tritaeniorhynchus. It was considered that the successful overwintering of the virus is attained only by the succession of the pig-mosquito cycle maintained by the continuous feeding activity of the vector mosquitoes in warm winter.
著者
津金澤 洋平 小林 薫 弓削 康平
出版者
日本計算工学会
雑誌
日本計算工学会論文集 (ISSN:13478826)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.20070010-20070010, 2007 (Released:2007-03-26)
参考文献数
15

位相最適設計ツールは,非常に多くの設計変数を扱うためこれまでは適用対象は専ら線形弾性問題に限られてきた.しかし,近年の計算機の性能向上は目覚ましく,今後は非線形問題への適用が期待される.著者らはCAEによるコスト削減効果が高いと言われる自動車衝突安全設計に着目し,これに役立つ位相最適設計ツールの開発を念頭に,グランドストラクチャ法による3次元骨組み構造の衝突最適設計のアルゴリズムを提案した.本研究ではこの方向の研究の一環として,自動車車体設計で重要な位置を占めている薄肉鋼構造の衝突変形時の位相最適設計アルゴリズムを提案する.この最適化アルゴリズムでは最適化を行なう際に繰り返し実施する衝突解析には,自動車の衝突解析で一般的に使われている陽的時間積分法を採用し,要素として陽的時間積分法と組み合わせると非常に計算速度が速いことで知られるBelytschkoとTsayの1点積分シェル要素を使用する.位相最適化には設計変数に局所的な密度を採用する密度法を用いる.密度法ではヤング率や降伏応力を密度のべき乗の関数と仮定し,弾塑性変形には,塑性流れ則を適用する.広く知られている均質化法を用いた位相最適化に比べ複合材のマルチスケール解析を必要としないために材料非線形を伴う最適化において計算コストの負担が軽いという長所があるが,一方でこの方法はチェッカーボード模様が設計領域内に現れやすいという実際の設計に適用する際の問題がある.この問題の対策として各種のフィルターによる除去のほか,節点に密度を配置して要素内の密度は形状関数による内挿によって決定する方法などが提案されている.本研究では後者の方法を採用し,1点積分シェル要素に対する有効性を数値例によって検討する.また本研究では構造物のエネルギー吸収量をパラメータとする目的関数を設定し,設計変数に対する感度は節点変位の履歴より差分近似によって計算する.数値例として,エネルギー吸収量最大化設計計算を示し,目的関数の収束状況,得られたトポロジーデザインの明確さなどからアルゴリズムの実用性に関する基礎的な検討を実施した.その結果,1)1点積分シェル要素に対して節点に密度を配置する法が特に面内変形によるチェッカーボードパターンの抑制に有効であること,2)一定密度以下の要素の削除アルゴリズムを節点密度法と組み合わせて使用するとより明確な位相形状が得られること,3)複数の荷重ケースに対する衝突最適化に対しても明確な位相形状が得られること,4)周期構造を有する耐衝突部材の位相最適設計にも有効なことなどを確認した.
著者
小林 薫 熊谷 幸樹 藤間 律子 近久 博志
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.349-360, 2009 (Released:2012-02-01)
参考文献数
22

地下水流動は、降水、気圧や周辺の井戸利用状況による時間変動、沿岸域の潮汐による日変動、融雪期の季節変動ならびに建設工事に伴う地下水流動阻害などにより変化している。現地の正確な地下水流動特性を把握するためには、地下水流動に影響を及ぼす前述の各種外的要因の定量的データや地盤の間隙水圧などとともに、連続的な地下水流向流速の変化を同時に把握できれば有効なデータになる。このことから、筆者らは地下水流動場の流向流速を簡易かつ連続的に計測することができる連続式流向流速計の開発を目指した研究開発を実施している。本論文は、内陸域や沿岸域の建設工事などで必要となる地下水流動場の流向流速を連続的に計測できる下端部ヒンジ構造を有する浮きセンサを搭載した連続式流向流速計の概要について述べる。次に、流体シミュレーションの結果を基に、開発中の連続式流向流速計に適した浮きセンサの断面形状と塩水および淡水中における各適用限界流速について明らかにする。
著者
林 薫
出版者
文教大学
雑誌
文教大学国際学部紀要 (ISSN:09173072)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.49-64, 2007-07

The Japan's experiences in regional development as represented by "Michinoeki (roadside stations)" and One Village One Product Movement (OVOP)" have been widely recognized as Japanese models of indigenous development and incorporated into aid programs to developing countries by the Government of Japan, Japan International Cooperation Agency and Japan Bank for International Cooperation. The international organizations such as the World Bank which introduced the "Guidelines for the Roadside Stations" in 2004, are showing strong interest to the Japanese models. This article argues that the essence of Japan's experience in this field is not the particular patters or frameworks but the process of agglomeration and innovation. The process is observed in many traditional agro and manufacturing industries some from several hundreds years ago. The key message for the developing countries are; (1) The maximization of the utilization of local resources is quite important but should not exclude the possibility of building interregional production linkage, (2) The benefit from agglomeration should be fully captured, and(3) The globalization of the market will be the source of innovation and strengthening of competitiveness, therefore openness of the regional development is prerequisite.
著者
横沢 保 深田 修司 宮内 昭 松塚 文夫 小林 薫 隈 寛二
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.86, no.7, pp.1117-1125, 1997-07-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
21

日常臨床で,超音波(以下エコー)が,甲状腺疾患に役立つと実感できるのは,触診で迷ったときすぐに,びまん性か,結節性かの鑑別や,嚢胞性か充実性かなどをチェックできることである.更に,習熟すると,以下のような使い方がある. 1.結節性疾患;結節性疾患では, a.嚢胞性か充実性か, b.結節の局在・サイズ・数, c.石灰化の種類(砂粒小体など), d.良性か悪性か, e.癌の甲状腺外浸潤, f.転移リンパ節腫大の有無などが,ある程度診断可能である.しかし,癌の診断と治療方針の決定に対しては,細胞診またはエコーガイド下穿刺吸引細胞診(UG-FNAB)の併用が必要になる. 2. UG-FNAB;エコーガイド下細胞診すると,従来診断が困難で診断がつかないまま外科に送られていた症例を減少させることができる.その主な適応は, (1)触診困難な微小病変, (2)腺内転移(多発癌), (3)嚢胞変性腫瘤, (4)慢性甲状腺炎やバセドウ病に合併した腫瘤, 5.触診細胞診で充分細胞が採れない再検例(石灰化例等), 6.大きな良性結節に合併した小さな癌, 7.甲状腺癌術後の局所リンパ節腫大の診断,などである.当院にUG-FNABが導入されてから5年が経過したが,症例数は年々増加し, 1996年現在,総細胞診例の約8割の症例がUG-FNABを行っている.ただ,新技術の導入によって起こった最大の問題は,微小癌をどうするかということであった.現在,我々は,独自の微小癌への対策基準を設置して実際に行っている. 3.びまん性疾患;びまん性疾患では, 1.バセドウ病や慢性甲状腺炎の結節合併の有無, 2.体積測定, 3.亜急性甲状腺炎の診断と治療効果判定,などに有用である.
著者
鈴木 久美 小松 浩子 林 直子 片岡 弥恵子 樺澤 三奈子 大坂 和可子 大畑 美里 池口 佳子 大林 薫
出版者
兵庫医療大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、乳がん検診受診率の向上をめざし、同意の得られた成人女性33人を対象に乳房セルフケア促進プログラムを実施し、妥当性を評価した。その結果、介入前に比べ介入後1年で、40歳以上の定期的マンモグラフィ受診者は26.1%から60.9%(p=0.008)、30歳以上の定期的自己検診実施者は21.2%から57.6%(p=0.004)と有意に改善した。また、85%以上の参加者は、プログラムに対して満足かつ有用と回答した。以上の結果から本プログラムは妥当であると考えられた。
著者
舘野 義男 山崎 正明 小林 薫(深海 薫) 猪子 英俊
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

MHCは原索・脊椎動物が偶然に獲得し進化的に精緻化を重ねてきた生物機能であるが、MHC遺伝子群だけではなく、その周りのゲノム配列を進化的に解析することにより、その進化的起源や過程を明瞭に示すことができる。この研究では、ヒト(H)、チンパンジー(C)並びにアカゲザル(R)の3種について、MHCクラスI遺伝子群中のBとC並びにクラスI関連遺伝子MICAとMICBの2組の遺伝子の起源と進化に注目をして解析を行った。2組の遺伝子は2組のゲノム重複断片に存在することが分かっている。これらの重複が進化的に何時起こったか正確に推定することにより、2組の遺伝子の起源を明らかにすることが可能となる。ただ、ここで問題になるのは、これらの遺伝子は自然選択を強く受けているので、一定の速度で進化してはいないことである。従って、重複ゲノム断片中でこれらの遺伝子と一緒に進化している中立的な配列部分を選択する必要があり、私達はLINEの断片配列に注目して解析を行った。分岐時間の推定にはLINE断片の進化速度を求める必要があるが、私達はHとCの種分岐時間を、他の研究から得られた値、5.4百万年、をもとに推定した。この速度は、中立遺伝子の速度の範囲内にあることを確認して、BとC遺伝子の分岐時間を、2.23千万年と推定した。同様にMICAとMICB遺伝子の重複時間を1.41千万年と推定した。ゲノム解析の難点は、特定のゲノム領域に存在する遺伝子や他の配列がそれぞれ異なった進化要因を受けて進化しているので、一様に解析する訳にないかないことである。従って、問題としている領域の基本的な進化関係を正確に把握しないと誤った結論に導かれる危険性がある。そこで、H、C、Rのオーソログ領域のそれぞれの進化距離を求め、Rの分岐時間を2.70千万年と推定した。このような方法でRの分岐時間を推定したのは、おそらく世界で初めての試みであり、推定値も妥当と考えられる。上記の推定値もこの推定値に照らして妥当と結論される。
著者
小林 薫
出版者
日本西洋古典学会
雑誌
西洋古典學研究 (ISSN:04479114)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.62-73, 2001-03-05

It is generally agreed that the agon scene between Teucer and the Atreidai over the burial of Ajax in the latter half of Sophocles' Ajax ruins the tragic pathos which is subtly developed in the course of the dramatic action up to the point of the suicide scene Among three topics disputed in the debate-evaluation of Ajax' conduct, legitimacy of the Atreidai's generalship, and Teucer's birth (status)-the last is most frequently alleged to be responsible for the drama's incongruity as having no relevance at all to the question of burial Reexammation of this controversy, however, reveals that it not only holds an appropriate place in the debate but also relates the agon scene to the earlier part of the drama First, the issue of birth is effectively introduced in the agon to highlight the fundamental difference of the opponents of the debate in the moral principles, thus aptly pertaining to the dramatic context The dispute over evaluation of Teucer's birth makes strikingly clear the contrast between the two sides, the Atreidai demanding that all Greeks should be under their supreme authority and no hubris should ever be tolerated, and Teucer, on the other hand, claiming that every warrior is equal and is subject to none but himself Secondly, the dispute over Teucer's birth relates the latter half of the drama to the first by calling into question the objective clarity of 'nobility of birth' To the scornful reproach of his antagonists that he is a barbaros, a slave born of a captive, a non-hoplite, thus having no claim to privileges of free men, Teucer makes strong objections insisting that he prides himself upon his nobility originating from royal-both Greek and Trojan-parents as well as in outstanding performance as an archer, and that the Atreidai too have barbaric elements in their allegedly noble birth This argument of Teucer seriously undermines the Atreidai's assumptions concerning nobility of birth by posing two questions first, by what standard is nobility evaluated, and second, to what extent is nobility of character determined by nobility of birth ? Furthermore, Teucer's protest against the Atreidai's abusive attack on his birth reveals, in spite of himself, the problematic nature of his brother's belief in nobility, which is thoroughly presented in his discourses in the earlier part of the drama Ajax's obsessive preoccupation with his noble birth, inherited from Telamon and to be inherited by Eurysakes, as well as self-chosen death as its proof is put into question ironically in attempt to redeem the honor of his brother Understanding the agon scene in this manner allows us to interpret the scenes to follow as well Odysseus' intervention as an arbiter can be seen as an enactment of possible alternative to nobility by which Ajax abides determinedly to the death, Eurysakes' participation in the rite of burial as problematic presentation of consanguinity of the father and the son It is incontestable, therefore, that the issue of Teucer's birth plays an indispensable role to grant coherent unity to the drama
著者
林 薫平
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

農村共同体における土地利用・土地配分の構造およびその人口圧力下における変容過程を明らかにするために,以下の通りに研究を実施した。まず準備として,資源一般の配分・利用を規制する共同体的メカニズムに関する事例研究を,主に文化人類学の領域を対象として広く渉猟した。成果として,灌概コモンズと漁場コモンズにおけるローテーションや細分化といった様々な共同体的アレンジメントを包括し比較分析することのできる理論フレームを構築した。第二に,上の理論フレームを共同体的土地制度の事例研究に応用した。具体的には,鹿児島県下甑村において極めて人口圧力が高かった昭和20年代の共有田制度を取り上げた。その結果,共有田利用権の配分のさいに細分化とローテーションの組み合わせ方が決定される集合的選択のメカニズムを解明することができた。第三に,以上の知見を東西の土地制度史と照らし合わせ,共同体的土地保有の理論モデルを構築した。具体的には,土地の配分・利用における共同体の規制と各メンバーの個人性の対立関係を描いた。土地資源の利用をめぐる共同体的なメカニズムについては従来の経済学は正面から分析して来なかった。むしろ共同体の影響が除去され土地が私有化されたあかつきの効率性分析に主眼がおかれて来た。本研究の意義は,共同体メンバーの集合的選択によって,個々人への土地配分と各々の土地利用に対して強力な共同体的規制が課される仕組みを,理論的かつ実証的に明らかにした点にある。特に,人口圧力のもとでは,メンバーを養うために規制が強化されることがあるが,従来の理論では説明されなかったこの実態に合理的説明を与えることに成功した。この成果は,政策への含意として,現在発展途上農村地域において広範に行われている土地私有化改革について,推進派と反対派の対立点をクリアにする意義を持つ。
著者
末永 斂 宮城 一郎 氏家 淳雄 林 薫 三舟 求真人 二ッ木 浩一
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.136-142, 1967-12

アーボウイルスの分離と関連してTanzania国のMwanza地方で1966年8月から1967年2月まで蚊の調査を行なった,蚊からのウイルス分離成績については別報でのべられるので,本報では採集された蚊の種類とそれらの生態についてのべる.この地方は海抜1000米以上の高地で比較的涼しく,6月頃から10月頃迄の乾期と11月頃から5月頃迄の雨期とに区別される.Mwanza及びその周辺における蚊の発生可能水域としてはVictoria湖岸の大小の湿地帯,一部破損した古い水洗便所の浄化槽,流れのとまった小さな河川の水たまり,及びその河口附近の岸辺等がある.成虫の採集は湿地帯の附近,市街地の人家内,森林地帯など9カ所(第2表)で実施し,この中3ケ所では二重蚊帳による夜間吸血活動の時間的消長についても調べた.9地点で採集された蚊は9属約38種,雌25185個体,雄2264個体で,この中,Bukobaの森林地帯で採れたHodogesia sanguinae, Eretmapodites grahamiの2種はTanzania国から初めての採集記録であると思われる.恒久的湿地帯の近くではMansonia africanaとMansonia uniformisが圧倒的に多く,市街地の屋内ではCulex pipiens fatigansのみが採集されるが湖に近い人家の附近ではこれらの3種が共にかなり採集される.H356ウイルスが分離されたCulex decensは比較的大きな恒久的湿地帯の近くでかなり採集された.湿地帯を内部にもったBukobaの閉鎖的森林地帯ではMansonia, Aedes, Orthopodomyia, Culex等に属する18種の蚊が採集された.Anopheles gambiae, An. funestus, Aedesaegypti等は少数採集されたにすぎない.Mansonia africana, M. uniformis及びCulex decensの3種は日没と共に飛来し始め,真夜中にピークを示し,日の出前迄吸血活動をつゞける.Culex pipiens fatigansは日没と同時に飛来し,午後8時頃ピークに達し,一且減少するが,早朝にもう一度ピークを示し,日の出前迄活動するように思われる.Mosquito survey in the highland district of the Republic of Tanzania,mainly in Mwanza region situated at south lake-side of Lake Victoria,Were carried out from August 1986 to February 1967. Over twenty seven thousand mosquitoes representing about 38 species of 9 genera were collected mainly by using human baited traps at nine different sites. Four mosquito species, Mansonia africana, M. uniformis, Culex pipiens fatigans and C. decens, were in about 91 per cent of all mosquitoes obtained in the survey. These Mansonia species and Culex decens seemed to breed in the open-permanent swamps near Lake Victoria, and Culex pipiens fatigans was breeding in cesspools and gutters around dwelling houses. Hodogesia sanguinae and Eretmapodites grahami which had not been found in Tanzania were collected at Munene and Ruasina forests in Bukoba area, and Anopheline mosquitoes, though very small in number, were collected in 10 species. The majority of mosquitoes collected were used for the isolation of arboviruses, however out of them only one strain (H336) was isolated from a pool of Culex decens collected nearby a open-permanent swamp, Mwanza. We wish to express our sincere thanks to all staffs of East African Institute for Medical Research, Mwanza for their kindness to accomplishment of our survey and to staffs of East African Virus Research Institute, Entebbe, Uganda for their kind advices, and also to officers of Mwanza Regional Forest Office and its branches for their kind help to collect mosquitoes in forests.
著者
林 薫 Shichijo Akehisa Mifune Kumato Matsuo Sachiko Wada Yoshito Mogi Motoyoshi Itch Tatsuya
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.214-224, 1973-12

Serial surveys on the ecology of Japanese encephalitis virus in Nagasaki area were made during from 1969 to 1971. In total, 11,229 hibernated female mosquitoes of Culex tritaeniorhynchus were caught in early spring every year for virus isolation, however it was unsuccessful. The significant increase of hemagglutination inhibition antibody possessing rate in the sera of slaughtered pigs in early spring was not found in these three years. Virus isolations from the vector mosquitoes in epidemic season were made from 1st to 26th of August in 1969, from 19th of July to 16th of August in 1970 and from 13th to 27th of July in 1971, respectively. Although the isolation efficiencies were not remarkably different at the highest level in a certain limited period in epidemic season during the years 1964 to 1971, the periods for JE virus isolation from the vector mosquitoes became shorter in the years from 1968 to 1971 than from 1964 to 1967. It was considered as one of the reasons that the number of the vector mosquitoes was smaller during the epizootic from 1968 to 1971 than from 1964 to 1967. Subsequently, it was noted that the encephalitis case sbecame to decrease in number in recent years.1969年,1970年及び1971年の3年間に越年コガタアカイエカ11,229個体,65プールについて哺乳マウス脳内接種法でウイルスの分離を試みたが,成績は陰性であった.流行期における蚊からのウイルスの分離は1969年は,8月1日から8月26日まで,1970年は,7月19日から8月6日まで,1971年は7月13日から7月27日までの期間であった.各年の捕集蚊からの日脳ウイルスの分離効率は最も高いときは1969年3.6,1970年4.8,1971年4.4であって,1968年以前の流行盛期のそれと大差がない.以上の事実は,最近3年間の野外でのコガタアカイエカのウイルス汚染が流行期の或る一時期には1968年以前と同じくらいに行われていることを示している.これに反して,蚊からのウイルスの分離期間が異常に短かくなっていることは,コガタアカイエカの発生,消長が最近3年間では著しく減少していることに,その一つの要因を求めることが出来る.これと平行して.患者数も減少し,1969年19名,1970年17名,1971年3名の届出患者があったにすぎない.
著者
林 薫 三舟 求真人 田口 厚
出版者
長崎大学風土病研究所
雑誌
長崎大学風土病紀要 (ISSN:00413267)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.87-95, 1962-06

1961年6月採用した長崎及び佐世保市内の幼稚園児及び小学児童791名の血清についてpolio中和抗体の分布を調査し,長崎市では地区によって各型抗体の獲得状態に著明な差が認められたが,佐世保市ではこのような地域差を認めなかった.長崎市でpolio中和抗体獲得の最も低い幼稚園児60名,小学児童60名,合計120名についてSabin型弱毒polio生ワクチンの服用前及び50日後の中和抗体を同一人について比較し,I型及びIII型抗体獲得よりII型抗体のそれが優勢であることが判かった. Polio中和抗体を証明しなかった生後2乃至7ケ月の乳幼児18名に弱毒生ワクチンを服用せしめ,35日後に中和抗体を測定したところ,なお18名中11名は抗体を保有していなかったが,6ケ月後の検査では殆んどすべての幼児が2種以上の抗体を保有していて,僅かに2名が抗体を有していなかった.そして抗体獲得は幼稚園児及び小学児童の場合と同じくII型が優勢であった.1961年7月以前まで長崎県下でpolio患児が散発し,そのうち教室へ送付をうけた検体からI型virus 5株,III型virus4株を分離したが,後者は離島に発生した患者から分離されたものであった.また,1961年8月6日発熟し,一時的下肢脱力症を伴なった1熱性疾患児の糞便から一定のMS細胞変性virusを分離し,未だ確実な同定には至っていないが,この種のvirusの侵淫を調査し,病原的意義の検討が必要と思われた.擱筆に当り恩師登倉教授の御鞭達と御校閲に深謝し,また実験に協力した山口泰世嬢に謝意を表します。Neutralizing antibodies against polioviruses of 471 sera collected from children from 5 to 8 years of age, were examined in Nagasaki city in June 1961, and incidence was found at 71.5% in type I, at 55.7% and 64.4% in type II and III on the average, showi
著者
林 薫 Mifune Kumato Shichijo Akehisa Wada Yoshito Nishigaki Jojiro Omori Nanzaburo
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.212-220, 1970-02

A serial survey on the ecology of Japanese encephalitis (JE) virus was made in 1968. Virus isolation was negative from 848 hibernated females of Culex tritaeniorhynchus collected in March to early May. In mid May, when newly emerged females appeared, and thereafter, attempts to isolate the virus were continued, but it was July 23 that the first isolation was made. A strain of JE virus was isolated each from C. pseudovishnui in early August and from Aedes vexans nipponii in late July. Eight other species of mosquitoes were negative for JE virus throughout the year. The pigs susceptible to JE virus were exposed in nature to mosquitoes including hibernated females of C. tritaeniorhynchus in spring without detecting the rise in hemagglutination inhibition (HI) antibody in their sera. Continuing the exposure to mosquitoes, the HI antibody was detected only after early August. The number of human cases was smaller than in any of the previous three years. One of the reasons is considered to be that the number of vector mosquitoes was smaller at the time of the epizootic in pigs.前年までに引き続き,1968年に日本脳炎ウイルスの生態学的調査を行なった.3月-5月上旬に採集したコガタアカイエカ越冬雌成虫848個体からはウイルスは分離されなかった.新生雌成虫が出現し始めた5月中旬及びそれ以後も分離を試みたが,始めて日本脳炎ウイルスが分離できたのは7月23日であった.シロハシイエカからは8月上旬に,キンイロヤプカからは7月下旬に,各々1株の日本脳炎ウイルスが分離された.感受性の豚を各々1頭ずつ2月下旬に3部落の豚舎に配って,自然に蚊から吸血されるままにして飼育し続けて,HI抗体が出現する時期を調べたが,抗体が検出されたのは8月上旬以降であった.発生患者数は,過去3年の何れにおけるよりも少なかった.その理由の1つは,豚で日本脳炎の流行が起っている時期のコガタアカイエカの数が少なかったことであると考えられる.