著者
林 邦彦
出版者
中央大学人文科学研究所
雑誌
人文研紀要 (ISSN:02873877)
巻号頁・発行日
no.90, pp.261-288, 2018

フェロー諸島においてフェロー語で伝承されているバラッドの中に,アーサー王伝説等を題材にしたと考えられる作品Ívint Herintsson(『ヘリントの息子ウィヴィント』)がある。この作品の物語には,中世のアイスランドで著されたサガ(saga)と呼ばれる散文の書物の一つで,アーサー王伝説に題材を取った作品Ívens saga(『イーヴェンのサガ』)の物語の影響が色濃く見られるが,このバラッドの物語中,Ívens saga とは相違が見られる箇所の中に,グラスゴーの司教Kentigern(ケンティゲルン)を扱った聖人伝Vita Kentigerni(『聖ケンティゲルン伝』)のHerbert(ハーバート)版の内容と類似が見られる箇所が存在する。本稿ではフェロー語バラッドÍvint Herintsson の物語とHerbert 版Vita Kentigerniの内容の類似点と相違点,および関連他作品との関係のありよう等を手掛かりに,上記フェロー語作品の物語とHerbert 版Vita Kentigerni の内容との関連性の有無を明らかにすることを試みる。
著者
上田 泰久 福井 勉 小林 邦彦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C4P1164, 2010 (Released:2010-05-25)

【目的】座位姿勢において上半身質量中心位置(Th7-9)を前方へ移動すると頭部を水平に保つために下位頚椎は伸展して上位頚椎は屈曲し、後方へ移動すると下位頚椎は屈曲して上位頚椎は伸展することが観察できる。座圧中心は上半身質量中心位置を投影している重要な力学的な指標である。我々は第64回日本体力医学会大会(2009年)において「座圧中心と頚椎の回旋可動域の関連性」について報告し、左右の移動では座圧中心を頚椎の回旋側とは逆側へ移動すると回旋可動域が有意に向上したが、前後の移動では回旋可動域に有意差はない結果を得た。しかし、座圧中心の前後の移動では頚椎回旋の運動パターンが異なることが観察されたため、頭部肢位の変化により後頭下筋群の働きに違いがあるのではないかと考えた。今回、頭部肢位の違いと後頭下筋群の関係について肉眼解剖を行い観察することができたため報告する。【方法】名古屋大学大学院医学系研究科の主催する第29回人体解剖トレーニングセミナーに参加して肉眼解剖を行った。86歳男性のご遺体1体を対象とした。仰臥位で後頚部の剥皮後、左側の僧帽筋上部線維,頭板状筋,頭半棘筋を剥離し、左側の後頭下筋群(大後頭直筋,小後頭直筋,上頭斜筋,下頭斜筋)を剖出した。剖出した後頭下筋群を観察した後、他動的に頭部肢位を屈曲位および伸展位に変化させた後頭下筋群の状態を観察した。さらに、頭部肢位を変化させた状態から他動的に頚椎を左回旋させ、後頭下筋群の状態を観察した。後頭下筋群の状態はデジタルカメラを用いて撮影した。他動的な頭部肢位の変化と左回旋の誘導は1名で行い、デジタルカメラ撮影は別の検者が行った。【説明と同意】学会発表に関しては名古屋大学人体解剖トレーニングセミナー実行委員会の許可を得た。【結果】頭部肢位を屈曲位にすると上位頚椎も屈曲位となり、左大後頭直筋,左小後頭直筋,左上頭斜筋,左下頭斜筋は起始と停止が離れて緊張した状態になった。一方、伸展位にすると左大後頭直筋,左小後頭直筋,左上頭斜筋,左下頭斜筋は起始と停止が近づき弛緩した状態になった。頭部肢位を屈曲位から左回旋させると、左大後頭直筋,左下頭斜筋は緊張した状態から軽度弛緩した状態へと変化した。一方、伸展位から左回旋させると、左大後頭直筋,左下頭斜筋はより一層弛緩した状態へと変化した。左小後頭直筋,左上頭斜筋は頭部肢位に関係なく他動的な左回旋では著明な変化は観察できなかった。【考察】大後頭直筋は両側が働くと環椎後頭関節,環軸関節を伸展させ、片側が働くと同側に側屈,回旋させる。小後頭直筋は両側が働くと環椎後頭関節を伸展させ、片側が働くと同側に側屈させる。上頭斜筋は両側が働くと環椎後頭関節を伸展させ、片側が働くと同側に側屈して逆側に回旋させる。下頭斜筋は両側が働くと環軸関節を伸展させ、片側が働くと同側に側屈,回旋させる(河上ら,1998)。自動的に左回旋をする場合、左側(同側)の大後頭直筋,下頭斜筋は上位頚椎の回旋運動に大きく関与し、左側(同側)の上頭斜筋,小後頭直筋は回旋運動に対して拮抗する固定的な要素が強いと考えられている(五百蔵,1988)。後頭下筋群は筋紡錘の密度が高く非常に小さい筋群である(Kulkarni et al. ,2001)。そのため、頭部肢位の変化に伴い起始と停止の位置関係が大きく変わることは筋長に決定的な影響を与え、収縮のしやすさが変化すると考える。つまり、頭部肢位が屈曲位にある場合、後頭下筋群は緊張した状態であり収縮しやすい条件であると考えられる。一方で伸展位にある場合、後頭下筋群は弛緩した状態であり収縮しにくい条件であると考えられる。以上より、頭部肢位を屈曲位の条件では後頭下筋群が働きやすく、上位頚椎の回旋が誘導されやすい運動パターンになるのではないかと考えた。【理学療法学研究としての意義】頭部前方変位の姿勢を呈する症例では、胸椎が後彎して下位頚椎は屈曲位で上位頚椎は伸展位になり、後頭下筋群が短縮して伸張性が低下していることがある。このような症例では、後頭下筋群の伸張性を徒手的に改善させるだけでなく、姿勢と関連させて後頭下筋群が働きやすい状態にすることが望ましいと考える。本研究は、肉眼解剖により実際に後頭下筋群を観察して確認した研究である。後頭下筋群は姿勢制御においても大変重要な役割があるといわれており、ご遺体1体の観察ではあるが姿勢と後頭下筋群を関連させた理学療法学研究として意義のあるものと考えている。
著者
萩原 啓二 小林 邦彦
出版者
医学書院
雑誌
臨床検査 (ISSN:04851420)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.98-100, 1995-01-15

1.はじめに ジャッカリン(jacalin)とは熱帯植物jackfruit(図1.日本名:パラミツ,学名:Artocarpusintegrifolia)の種子から得られるレクチンの1つで,もともと1981年にリンパ球のマイトーゲンとして見つけられた,その後1985年にブラジルの研究者によりヒトIgAと結合することが発見されたのを機に注目を浴びたレクチンである.
著者
高澤 知規 三輪 秀樹 林 邦彦 高鶴 祐介
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

老化促進マウスであるSAMP8とコントロールマウスSAMPR1を用いて術後モデル動物を作成し、抗菌薬のミノサイクリンに術後認知機能障害(POCD)の予防効果があるかを調べた。POCDは麻酔よりも手術による侵襲により引き起こされること、ミノサイクリンにPOCDの予防効果があることを発見した。SAMP8ではミノサイクリンによって術後1日目のTNF-α濃度の上昇が抑制された。ミノサイクリンは血液中のサイトカイン濃度を低下させPOCDの予防効果を発揮することが示唆された。ミノサイクリンが術後の認知機能に与える影響を調べるMINPOC-Jトライアルは、予定数のデータ取得がほぼ終了した。
著者
林 邦彦 斎藤 英雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.51, pp.173-180, 2006-05-18
被引用文献数
3

近年、スポーツ映像などで自由な視点からの映像の要求が高まっている。従来手法[5]では、サッカースタジアムのような大規模な空間で、カメラの中間視点画像しか合成できなかった。この従来手法は、空間の3次元モデルを復元をせずに、入力画像間の対応点を算出することで自由視点画像を生成している。そこで、本稿では、サッカーシーンを幾何的な特徴に応じて、動的領域と静的領域に分割し、各領域を平面近似して、それぞれ3次元モデルを簡易的に復元することによって、中間視点画像に限らない自由視点画像を生成する手法を提案する。本手法では、対象の3次元モデルを復元するために、まず、カメラキャリブレーションを行う。その際、サッカーグラウンドにマーカーを置く事はできないので、グラウンド面の平面パターンを利用してカメラキャリブレーションを行う。分割された各領域のうち、選手やボールである動的領域がグラウンドに垂直に立つ1枚の板(ビルボード)で表されるものとして3次元モデルを復元する。一方、静的領域に対しては、複数の平面領域に分割し、各平面の3次元モデルをあらかじめ復元する。本手法をサッカーシーンに適用し、従来生成できなかった中間視点以外の自由視点画像を生成することで有用性を示す。We propose a new method for synthesizing free-viewpoint images from multiple view videos in soccer stadium. The previous method[5] can synthesize virtual viewpoint images at intermediate viewpoint between real cameras. The previous method estimates only pixel-wise correspondences between input images for synthesizing virtual viewpoint images without a 3D reconstruction. In this paper, we propose a new method that can synthesize virtual viewpoint images at free-viewpoints which are not limited at intermediate viewpoint by reconstructing simple 3D models after dividing a soccer scene into static regions and dynamic regions. To reconstruct the object soccer scene, we perform camera calibration without marker objects because we can't put such objects on the soccer ground. For reconstructing of dynamic regions, we employ a billboard representation of dynamic regions. The billboard representation can realize a simple 3D reconstruction and transform textures into the appropriate appearance of the aspect of dynamic regions at virtual viewpoint. For reconstructing of static regions, we divide two planes that are a ground region and a background region. We reconstruct 3D models in each region beforehand. By applying our method to a soccer scene, we can synthesize free-viewpoint images which are not limited at intermediate viewpoint by employing only pixel values of real images.
著者
小林 正史 北野 博司 設楽 博巳 若林 邦彦 徳澤 啓一 鐘ケ江 賢二 北野 博司 鐘ヶ江 賢二 徳澤 啓一 若林 邦彦 設楽 博己 久世 建二 田畑 直彦 菊池 誠一
出版者
北陸学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

縄文から古代までの調理方法を復元し、土鍋の形・作りの機能的意味を明らかにする、という目的に沿って、ワークショップ形式による土器観察会、伝統的蒸し調理の民族調査(タイと雲南)、調理実験、を組み合わせた研究を行った。成果として、各時代の調理方法が解明されてきたこと、および、ワークショップを通じて土器使用痕分析を行う研究者が増え始めたことがあげられる。前者については、(1)縄文晩期の小型精製深鍋と中・大型素文深鍋の機能の違いの解明、(2)炊飯専用深鍋の確立程度から弥生時代の米食程度の高さを推定、(3)弥生・古墳時代の炊飯方法の復元、(4)古墳前期後半における深鍋の大型化に対応した「球胴鍋の高い浮き置き」から「長胴鍋の低い浮き置き」への変化の解明、(4)古代の竈掛けした長胴鍋と甑による蒸し調理の復元、などがあげられる。
著者
藤田 禎三 ターナー マルコム リード ケネス エゼコビッツ アラン 水落 次男 小林 邦彦 松下 操 TURNER Malcolm w REID Kenneth b m
出版者
福島県立医科大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

1).マンノース結合蛋白(MBP)はマン-スやN-アセチルグルコサミンに結合特異性を持つ血清レクチンの一つで、補体活性化能が有り、生体防御上重要な役割を演じている。MBPによる補体活性化のメカニズムに関しては次の2つの説が提唱されている。一つは、補体第一成分C1と同様にMBPはC4,C2の分解にプロテアーゼ成分としてC1の亜成分C1rとC1sを用いるとする考え方である。これはイギリスのReid博士らのMBP-C1r/C1s複合体が形成し得ることを示した再構成実験に基づく。一方,我々の連休からヒト血清MBP画分からC4,C2分解活性能を有するプロテアーゼMASP(MBP-associteel sereine pntease)が単離されたことより、MBPはMBP-MASP複合体を形成して働いているとする見方である。生体的でMBPによる補体活性化(レクチン経路)のメカニズムを解明する上で、MBPとC1r/C1s,MBPとMASPなどの結合性が重要な手がかりとなる。そこで、MBP-MASP,C1の亜成分間の結合性を結合定数の測定により検討した。Reid博士らの調製したC1と我々の調製したMBP-MASPを材料として蛋白成分間の結合状態を調べる装置であるBiacoreを用いてMBP-MASP,MBP-C1r/C1s,C1g-MASP,C1q-C1r/C1s各々の結合定数を求めたところ、これらの値はほぼ同程度てあることが判明した。血清中よりMBP-MASP,C1q-C1r/C1sのみ得られることを考慮すると以上の結果は、これら2つの複合体は何らかの制御機構を受けてin vivoで形成される可能性を示唆している。2).MBP欠損患者が高頻度(白人で5-7%)で知られており、幼児における易感染性との関連が報告されている。これらMBP欠損患者のMBP遺伝子では塩基230の点突然変異でコドン54がGGC→GACに変化していることが明らかにされている。これはMBP蛋白のグリシン(G)がアスパラギン酸(D)への置換につながる変異であり、この結果,変異MBPは合成されても生体内で分解が速いものと推定されている。アメリカのEzekouitg博士らは正常タイプのMBP(MBPG)と変異MBP(MBPD)のリコンビナント体を作製して両MBPの性状を検討した。その結果MBPGがヒト血清中の補体活性化能を示したのに対して、MBPDには本活性が損われていた。そこで,このような活性の違いの原因を解明する目的でMBPとMASPとの反応性に着目して検討を行った。その結果、EZRkouitg博士の調製したリコンビナントMBPのうち、MBPGはヒト血清MBPと同様にMASP共存下、補体成分C4,C2分解を伴なう補体活性化能を示したが、MBPDにはその活性が見られなかった。更に、MBPとMASPとの結合性を検討したところ、MBPGはMASPと結合したのに対して、MBPDは結合しなかった。以上の結果より、MBPDに補体活性化能が損なわれている原因として、MASPとの結合活性がないことが明らかとなった。(投稿中)。3).リウマチ患者血清中のIgGの多くは、非還元末端のガラクトースが欠損して次のN-アゼチルグルコサミン残基が末端に位置している異常な糖鎖構造をしている。MBPはN-アセチルグルコサミンに親和性を持つので、このガラクトース欠損IgGにMBPが結合すると補体活性化をおこし、それがリウマチの病態と関連がある可能性が考えられる。そこで、リウマチ患者血清IgGへのMBPの結合性を調べたところ、正常人のIgGに比べて、より多くのMBPが結合することがわかった。更に、このMBP結合性IgGをプロテインGカラム及びMBPカラムを用いて単離後、MBP-MASPによる補体活性化能をC4消費を指標に調べたところ、明らかな活性化を示した。また、このIgGはIgMタイプのリウマチ因子と複合体を形成していた。これらの結果より、リウマチ患者血清中の異常な糖鎖構造をもつIgGを含大複合体がMBP-MASPを介したレクチン経路の活性化を起すことが明らかとなった。
著者
若林 邦彦
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

ペンスリット爆薬の衝撃起爆機構を明らかにするために、レーザー誘起衝撃波によって衝撃圧縮されたペンスリット単結晶の時間分解ラマン分光実験を実施した。その結果、衝撃圧縮誘起の振動数シフトは振動モードに依存することが示された。ペンスリットのニトロ基が関わる振動が衝撃起爆に影響する可能性があることが分かった。